Canon per Augmentationem in Contrario Motu
反行形による拡大カノン、2声部、2/2拍子、109小節
これまでの曲はすべてフーガ様式で書かれていましたが、
この曲と続く3曲は、後続声部が先行声部を常に模倣し続ける
カノン様式で書かれており、タイトルも"Canon"で始まっています。
(主題)
曲はカノン様式となってはいますが、冒頭には
装飾変形した基本主題が示されています。
![](img308.gif)
装飾された主題の骨格を青い音符で示しました。
後続声部は反行形で、かつ音の長さが2倍に拡大されています。
![](img309.gif)
後述のとおり、これらの主題は曲の後半の開始部分にも示されます。
(曲の構造)
2声部の曲で、大きく前半、後半に分かれており、
後半は前半の繰り返しですが、8度の2重対位法によって
上下の声部が入れ替えられています。
![](img310.gif)
曲の構造を以下の表に示します。
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小節
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内容
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小節数
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前半
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1-52
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上声部が先行するカノン |
52
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後半
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53-104
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下声部が先行するカノン
(前半の上下声部を入れ替え) |
52
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コーダ
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105-109
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上声部に主題呈示 |
5
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なおこちらにも示したように、バッハは当初
この曲のタイトルを以下のようにしていました。
"Canon per Augmentationem in Contrapunto all ottava"
「8度の2重対位法による拡大カノン」
このことは、バッハがこの曲を10度や12度のカノンと
並列で扱っていたことを示していると考えられます。
(曲の詳細)
先述のとおり曲の冒頭に変形された基本主題が示されます。
これを追う下声部は反行・拡大形となっています。
この5小節〜の下声部を、Contrapunctus7のような反行形の応答と
同様と考えれば、この曲は拡大・反行フーガとも言えます。
![](img311.gif)
上の楽譜に示した A、A' は、2小節のモチーフを反復しています。
このA、A'を反行・拡大形で模倣する下声部に対して、
上声部には更に4小節のモチーフB、B'が示されます。
![](img312.gif)
このB、B'も下声部において反行・拡大形で模倣されますが、
これに対する上声部はそれぞれ独自の旋律となっています。
![](img476.gif)
下声部が上声部の24小節までを模倣したところで前半が終了し、
後半は8度の2重対位法で上下声部が入れ替わります。
![](img477.gif)
内容としては前半をそのまま反復しているだけですので、
後半の詳細は省略します。
曲の最後では再び上声部に主題を示し、コーダとしています。
![](img478.gif)
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