以前の「ひとこと」 : 2026年7月後半
それぞれの日の記事へのリンクです
Sun Mon Tue Wed Thr Fri Sat 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
7月16日(木) 立方体の表面上の最短経路(その1)
7月後半です。暑くなってきました。すみません、正四面体上の最短経路の話の解説を書きたいのですが、時間がなくて立方体の話題に移ります。
○
今週は月曜日から正四面体の表面の2点を結ぶ最短経路の本数の話を始めました。その解説や論文のご紹介をする前ですが、今日はそもそもこの問題を考えるきっかけとなった問題のご紹介をします。
Tanya Khovanova's Math Blog というブログに、Two Points on a Cube という問題が載っていました。著者が出版した数学パズルの本の中の問題の1つだそうです。問題のタイトルには「有名な問題の新たなひねり」と書き添えられています。
下の図のように立方体の相対する2面の中心にそれぞれ点PとQと取ります。この2点を結ぶ立方体の表面を通る最短経路は図のように4本あります。
立方体上の2点を結ぶ4本の最短経路 それでは、「立方体の表面上に2点P,Qを取って、PQの最短経路がちょうど3本になるようにできますか?」 というのがこの問題です。(上の図は自分で作ってみましたが、リンク先のオリジナルの図のほうが見やすいかもしれません。)この問題を考えて自分なりの解を見つけて、では他の正多面体だとどうなのだろう? と思って、立方体の次に易しそうな正四面体で考えてみることにした結果、月曜日からの正四面体の話になったのでした。
(つづく) ○
机の上にこんなものがありました。。
![]()
ぱっと見て、「数字の5」に見えました。
拡大した写真を撮ってみると、あんまり「数字の5」には見えませんでした。
![]()
人間の視覚情報処理は面白いなあと改めて思います。ちなみにこれは何かというと、千切りキャベツのかけらがこぼれて乾燥したものでした。
<おまけのひとこと>
大相撲名古屋場所、地元出身で贔屓している御嶽海は初日から白星が出ず、昨日までで四連敗です。名古屋場所はかつて2回、優勝したことがある場所で、出身地の木曽谷から近いので、地元からの応援団が駆け付けやすい場所でもあります。若いころに幕内で番付がどんどんあがっていったころ、御嶽海のご両親は健在で、特に若いお母さんが注目されていました。お父さんが亡くなり、驚いたことにお母さんも若くして亡くなってしまいました。このところ二場所連続で勝ち越していて番付も少し上がってきていたので期待しているのですが、相性が良いはずの名古屋場所でまさかの苦戦をしています。もちろんどんなに負けても応援しています。きっといつものように千秋楽まで勝ち越しも負け越しも決まらない、五分の星まで戻してくれるはず、と思っています。
7月17日(金) 立方体の表面上の最短経路(その2)
立方体の測地線の話です。
○
昨日の問題、「立方体上に2点を取って、その2点を結ぶ最短経路がちょうど3本になるようにしてください」ですが、私は以下のように考えました。
最初に、昨日の「4本解」の状態から、赤と緑の輪を少し手前(青側)にずらします。立方体の1辺の長さを1とすると、ずらす前は4つの経路の長さはすべて2でしたが、ずらした後は赤と緑は2のままで、青は2より短く、黄色は2より長くなります。
立方体上の2点を結ぶ4本の最短経路 手前へ少しずらす 図を見比べても違いがよくわからないかもしれないので、アニメーションで切り替えて表示してみました。
ずらした後、上下の点をそれぞれ左と右に同じ距離だけずらします。黄色はさらに距離が長くなるので表示しないことにしました。左右にずらす距離が同じなので、赤と緑は相変わらず長さ2のままです。青は斜めになった分、少し長くなります。青が再び距離2になるようにずらせば、最短経路がちょうど3本になるはずです。
こういうのは適切な展開図で考えると最短経路が直線になるので、青が連続した直線になるような展開図を考えてみます。
こうすると、最初に手前にずらした距離に応じて左右にずらす距離を適切に決めれば、青の距離を2にすることができるのがわかると思います。
最初の図で、赤と緑の経路の輪をあまり大きく手前にずらしてしまうと、その後で点を左右にずらす距離が計算上1/2を越えてしまうのです。そうならない範囲でずらす量を決めたので、投影図では違いがわかりにくくなってしまったのでした。
○
立方体の上の2点を、立方体の頂点に置いても良いことにすると、立方体で三次元的にもっとも離れた2つの頂点に2点を置くと(下図)、経路は何本になるでしょうか?
「最短経路がちょうど3本になるようにしなさい」という問題の解として、こちら(https://puzzling.stackexchange.com/questions/136483/two-points-on-a-cube-with-exactly-three-shortest-paths-connecting-them)に解説が出ていました。私が考えた解よりちょっと複雑なことをやっています。この解説をみると、どうやら上図の頂点に置いた2点から、経路を減らすように点をずらすというアプローチで考えたようです。
<おまけのひとこと>
昨夜は飲み過ぎました。飲み足りない気がして寝る前に追加で飲んだのがバカでした。
7月18日(土) カリソンパズル(その1)
タイルの敷き詰めパズルです。
○
いつもは先に話題を紹介して、後で論文をご紹介する、というスタイルなのですが、今回は先に論文のご紹介からしたいと思います。The Calissons Puzzle(カリソンパズル)という2023年の論文を見かけたのです。「カリソンパズルってなんだろう?」と思って最初のほうを見てみました。
カリソンパズル(Calissons Puzzle)
正六角形を単位正三角形に分割した三角格子を考える。この格子を、単位菱形(互いに辺を共有する2枚の単位正三角形からなる菱形)で隙間なく重なりなく敷き詰める。
単位菱形の向きは3通りある。向きが同じ菱形を同じ色で着色する。
盤面には格子辺に沿って有限本の短い黒線があらかじめ描かれている。完成した菱形敷き詰めにおいて、各黒線は必ず向きが異なる2枚の菱形の境界となっていなければならない(黒線の両側の単位三角形は同一の菱形に属してはならず、黒線の両側の色は必ず異なる)。
この条件を満たす菱形敷き詰めを求めることが目的である。論文の図2には、以下のような具体例が載っています。
Figure 2 of above paper この論文は、このパズルを解くアルゴリズムについて調べているのですが、上記の条件付き菱形敷き詰め問題を以下のように解釈しているのです。
カリソンパズル(Calissons Puzzle)の三次元的解釈
一辺 n の立方体を積み上げた「立方体の山」を等角投影したとき、見える3種類の面を3色で塗り分けた図形が菱形敷き詰めになる。黒線は「その両側の面の色が異なる」という条件を表す。続いて、図3で以下の2つのサンプル問題が示されています。サンプル問題の右側のほうは、図15に解と途中経過が紹介されていて、確実に解けることがわかります。
Figure 3 of above paper まずこのパズルの解き方を体感するため、上の左側の例題に取り組んでみたのです。でも解けないのです。「黒線の両側が異なる菱形に属していれば良い(向き・色が同じであっても良い)」ならば解けるのです。「黒線の両側が向き(色)が異なる菱形に属さなければいけない」ならば解けない気がするのです。
- 私が問題の定義を誤解している
- 実は定義通りに解けるのに、私が解が見つけられないでいる
- 著者が例題として、意図的に「解けない」例を載せている
- 著者の意図に反して図が誤っていて、解ける例を載せたつもりが解けなかった
のいずれなのだろう? と思いました。
こういうパズルがお好きな方、もしこれが解けるのでしたら教えてください。 中央の縦に並んだ2本の黒線、これがうまくおさまらないのです。claudeに解いてみてもらおうとしたのですが、無償で使える範囲では解析が終了しませんでした。
(つづく)
<おまけのひとこと>
X(twitter)などでよく見かけるのですが、サービス業で顧客対応をするときに「簡単な作業なんだからそのくらい無償でやってくれ」と言われて途方に暮れるという話があります。「誰でもできる簡単なことだろう?」と。そういう相手に「(誰でも簡単にできるなら)それならあなたご自身がなさったらいかがですか?」と言いたいのだが言えなくてつらい、部品代にコストがかかるのは(しぶしぶ)理解してもらっても、「技術料」「手間」は無償だと思っている顧客がたまにいて大変、というトピックをしばしば目にする気がします。
顧客対応ではないのですが、ちょっとこれに似たことが身近にあったのです。自分がやると大変なんだけれども相手がやると簡単にやっているように見えることに対して、私自身が相手にちゃんと感謝しているだろうか、と思ったのです。自分のほうが得意なことは(それが大変なことであっても)気持ちよくやってあげるべきだし、相手のほうが得意なことをやってもらうことは「あたりまえ」ではなくて感謝すべきことだよな、と改めて反省したのでした。
7月19日(日) 三次元立体ジグソーパズル
買い置きのパズルで遊びました。
○
3D立体ジグソーパズルを買ってあったのですが、それをやりました。実はやったのは五月連休だったのですが、ちょうど更新をお休みしていたころだったので、掲載しそびれていました。当時、組み立てながら撮った写真をご紹介します。
![]()
![]()
![]()
ピースは60枚あります。凧型六十面体のかたちです。
![]()
地名を手掛かりに、陸の部分から組んでゆきました。上図左が南北アメリカ大陸、中央がヨーロッパからアフリカ付近、右が中国からオーストラリアの東アジア付近です。
![]()
とりあえず1つにつながりました。だいぶ丸くなってきました。見えているのはインド洋のあたりですね。
![]()
あとは海のピースばかりになりました。
![]()
最後の1ピースです。ユニット折り紙多面体も、ペーパーモデル多面体も、最後に閉じるところが難しいです。これも、力の加減を間違えないように気を付けて組み込みました。
地図のジグソーパズルは、そのピースに描かれているのがどの場所なのかを考えながら探すのがとても楽しいです。
<おまけのひとこと>
連載「あやとりの楽しみ」の原稿を書いています。今回はかなり苦戦しています。入れたいと思っている説明や画像が入りきらないのです。にもかかわらず、内容はやや地味な感じかなあと思っています。もう少し考えます。
7月20日(月) カリソンパズル(その2)
一昨日のパズルのつづきです。
○
一昨日のカリソンパズルの文献の例題、相変わらず左の例題は解けないのですが、ちょっと複雑な右の例題を解いてみました。
Figure 3 of above paper
![]()
完成形が美しいです。解いていて楽しいです。が、基本ルールで「60度の鋭角に限定された部分に入る菱形は一意に定まる」「黒線の両側の菱形の色(向き)が異なる」という局所的な基本条件だけでこの問題は解けてしまいました。解き筋とか巧みなテクニックがあるようなパズルなのか、よくわかりません。
3色で塗分けるパズルなのでペンシルパズル向けではないかもしれません。でも、色は塗らずに向きが異なる菱形の間に線を入れて、もともとの黒線を伸ばしてゆくパズル、と考えればペンシルパズルとして成立するかもしれません。もう少し例題を解いてみたいところです。
○
先週は水曜日のお昼から金曜日まで出張でした。お昼は水・木・金の3日とも立ち食いそばを食べました。金曜日の夕方も駅そばを食べて帰ってきました。
7月15日(水) 自宅最寄り駅の駅そば 肉そば(700円) 写真1 7月16日(木) 新橋:おくとね 舞茸天そば大盛(600円) 写真2 7月17日(金) 新橋:吉そば 豚しゃぶつけ蕎麦(750円) 写真3 7月17日(金) 東京駅構内:そばいち かき揚げそば特盛(740円) 写真4 初めて行った「おくとね」が良かったです。そのほかの3店は複数回利用しています。
<おまけのひとこと>
大相撲名古屋場所、応援している御嶽海が中日八日目にようやく初白星です。1勝7敗、あと1つ負けたら負け越しです。いつも黒星が先行しても星を五分に戻すのが得意な御嶽海です。初日から7連敗は初めてだと思いますが、後半、奇跡の8連勝で勝ち越し、を応援しています。
7月21日(火) 詰ガイスター問題(その1)
カリソンパズルの続きはしばらくお休みです。
○
昔、2005年9月29日に、ガイスター(Geister)という二人で対戦するシンプルなボードゲームをご紹介したことがあります。ルールはリンク先で書きましたが、概要だけもう一度書いておきます。
ゲーム盤は6×6の36マスで、使用コマは「良いオバケ(青)」8コマと「悪いオバケ(赤)」8コマです。お互いに青と赤のコマを4つずつ取ります。良いオバケと悪いオバケは背中のマークの色で区別しますが、相手からはわかりません。初期配置は互いに自分の側の中央の8マスに、赤と青を自由に配置します。自分の「良いオバケ(青)」をB、自分の「悪いオバケ(赤)」をR、相手のコマ(良いオバケなのか悪いオバケなのかわからない)をuで表します。
ガイスターの初期状態(赤と青の配置は自由) どのコマも、前後左右の4マスに1歩だけ進めます。斜め移動はできません。行き先に自分のコマがあったらそこには進めません。(飛び越えることもできません。)相手のコマがあるマスに侵入すると、相手のコマは盤面から取り除かれます(コマを取る)。相手のコマを取った段階で、それが赤なのか青なのか確認できます。良いオバケ(青)は、相手の側の両端のマスに到達すると、次の手番で6×6の盤面の外に出ることができます。自分ならa1かf1、相手はa6かf6のマスです。矢印で表記しています。
勝敗は以下の3つのいずれかが発生した瞬間に決まり、その時点でゲームが終了します。
- 良いオバケ(青)を盤面から脱出させると勝ち(矢印のマスに侵入した段階ではまだ「勝ち」ではなく、つぎの手番で外に出て初めて「勝ち」になります)
- 相手の良いオバケ(青)を全部取ると勝ち
- 自分の悪いオバケ(赤)を全部相手に取らせると勝ち
最近、組合せゲームの文献などを調べているときに、不完全情報ゲーム『ガイスター』における2種の詰め問題の提案と考察(石井岳史, 川上直人, 橋本剛, 池田心:2019) という文献があったのです。完全情報ゲームではない(相手のコマが赤か青かわからない)ガイスターの「詰めガイスター問題」はどうなるのだろう? と興味を惹かれたのでちょっと読んでみたのです。最初にこんな例が掲載されています。
詰めガイスター問題の例:上記文献図2より(5手詰め) 相手の赤はまだ2コマ残っているので、あと1つは取ることができます。取ったコマが運よく青だったら条件2で勝ちが確定しますが、「詰めガイスター問題」では運に頼って勝つ手順は許されませんので、赤か青かわからない相手のコマは、自分にとって不都合なほうだと考えます。一方、相手方は自分にとって最も「やってほしくない」(=最も手数が長くなる)動きをする、と想定します。この「最強の抵抗をする」という考え方は詰将棋と同じです。
まず、相手が条件1(青の脱出)で勝つ場合は、b3のマスのコマが青だとして、最短で5手かかります。また、このb3のコマを捕まえることはできません。なのでb3の相手コマは放っておきます。
正解は次の図のように、e2の赤コマでe1の相手のコマを取ります。これで相手の残りのコマ青と赤が1つずつになります。次に相手がd1のコマでe1の赤を取ると、そこで条件3で終わってしまうので、相手はそれ以外の手、例えばb3→b4のように、青を脱出させる動きをします。
⇒ 1. e2→e1 x (2. b3→b4)
3. f2→f1あとは自分の青コマ(良いオバケ)を脱出させれば良いので、3手目は上図右のように青を脱出口に移動します。これはもう相手は防げません。相手が4手目にどう動いたとしても、青が5手目に脱出して勝利です。
(つづく) ○
今日の冒頭のリンク先の2005年9月の記事では、写真画像を小さく縮小してトリミングして掲載していました。当時の環境では大きな画像を載せられなかったのです。主にwebサーバの容量制限が理由ですが、コンテンツを閲覧するハードウェアの画面の画素数の制約もありました。当時の写真のオリジナルデータを画像全体をトリミングなしで(それでも若干縮小して)掲載します。
![]()
2005年1月29日 21:16
Nikon coolpix 4500
![]()
2005年1月29日 21:16
Nikon coolpix 4500当時、「どうせトリミングするからいいや」と思って周辺に余計なものが写っていますが、今みるとそれらが懐かしいです。使ったカメラも画像ファイルのExif情報を読みだしてみて、Nikon の coolpix 4500 だったということがわかって懐かしく思い出しています。
<おまけのひとこと>
昨日、三連休の最終日に娘と孫を東京まで車で送り届けました。連休最終日の上り線は渋滞が予想されます。中央道は小仏トンネル付近がひどい渋滞になることが多くて、時間帯によっては通過に2時間近くかかるといったことになりがちです。車の中にいる時間が長いと負担が大きいので、とにかくできるだけ渋滞にあわないようにということで、極端に早起きしてもらって早朝に移動しました。目標出発時刻を朝4時半にさせてもらって、渋滞にあわなければ7時半くらい(カーナビの予想時刻が4:30出発で7:13到着でした)、渋滞や休憩の時間も考慮して、最悪でも9時くらいには到着することを狙って移動しました。(平日だと、朝6時過ぎくらいでも調布や国立府中あたりで渋滞していることがほとんどなのです。なぜ知っているかというと、通勤で中央道→長野道を使っているので、朝の渋滞情報は移動時にハイウェイラジオでいつも聴いているのです。)
実際には4時20分に家を出て、4時40分には最寄りICから中央道に乗ることができました。当初5時に高速に乗ることを目指していたので、幸先よくこの時点で計画より20分早まっていました。途中、後部座席のふたりがほとんど寝ていてくれたので休憩をする必要がなく、八王子を過ぎた石川パーキングで一度5分程度のトイレ休憩をしただけで、予定していた一番早い時間よりもかなり早い、6時40分くらいには到着することができました。調布〜高井戸付近も休日だったことが幸いしてとてもスムーズに流れていました。現地で荷物を降ろすために10分程度停車しただけで、とんぼ返りですぐに帰路につきました。往復で350kmくらいのドライブだったのですが(東京といっても東側ではなく西側なので、少し距離が短いのです)、ほぼ5時間程度で往復することができました。片道で5時間を覚悟していたので、本当に助かりました。
だんだんこういう無理がきかなくなってゆくのだろうな、と想像していて、今回もかなりきついかもしれないと思っていたのですが、思いのほか身体への負担は残っていなくてほっとしています。
7月22日(水) 詰ガイスター問題(その2)
二人対戦ゲーム「ガイスター」のつづきです。
○
不完全情報ゲーム『ガイスター』における2種の詰め問題の提案と考察 の内容のご紹介のつづきです。
ガイスターの初期状態(赤と青の配置は自由) 改めて、3つの勝利条件を書いておきます。
- 良いオバケ(青)を盤面から脱出させると勝ち(矢印のマスに侵入した段階ではまだ「勝ち」ではなく、つぎの手番で外に出て初めて「勝ち」になります)
- 相手の良いオバケ(青)を全部取ると勝ち
- 自分の悪いオバケ(赤)を全部相手に取らせると勝ち
ガイスターは不完全情報ゲームで、相手のコマが悪いオバケ(赤)なのか良いオバケ(青)なのか、取ってみないとわかりません。実際にプレイしてみると、ジレンマや葛藤やブラフがあります。なので、情報完全公開型の対戦ゲーム(囲碁や将棋、チェスやオセロをはじめ、多くのアブストラクトゲームは完全情報ゲームです)と比べると一人で両方のコマを動かしてみながら研究する、ということがやりにくいゲームです。相手のコマの種類がわからないゲームと言えば、軍人将棋を思い出します。軍人将棋は興味があって小学生のころ買ってもらったのですが、あれを遊ぶにはプレーヤー二人と審判の3人が必要なため、結局ほとんどまったく遊んだことがありません。
「詰ガイスター問題」は、実際に誰かと対戦してみなくても手筋や先読みの考え方を学べるのですばらしいと思うのです。ただ、条件2(相手の青を全部取ったら勝ち)で勝つ「詰ガイスター問題」は作ることができません。たとえば相手のコマが青と赤の1つずつが残っているとき、相手のコマを取って、それが青なら条件2により勝ちですが、取ったコマが赤なら条件3で負けてしまいます。確率的に負けるかもしれない手は「詰め問題」では選択できません。
論文では、様々な盤面をランダムに生成して、その状態から必勝の手順があるかどうかを調べるという方法で「詰め問題」を作成して分析をしています。その中で、多くの問題は単に自分の青コマがまっすぐ脱出口に向かうだけで勝ててしまうような手数が少ない問題が多く生成されたそうです。
その中で、単に青が脱出して終わりではなくて、相手の青(かもしれないコマ)の脱出を防ぎつつ、自分の青を取られないように脱出される問題としてこんな2例が紹介されています。
上記文献の図4 (a) 上記文献の図4 (b) 上の左の図4(a)は相手のコマを3個まで、右の(b)は2個まで取ることができます。相手の赤が残り1個になった段階で、詰めガイスター問題としてはコマを取れなくなるためです。
図4(a)では、右上のe2にいる青はキャプチャされずに右上f1の脱出口から外に出られそうです。が、もしも左下a6にいる相手のコマがたったひとつ残った青だったとしたら、このコマが脱出した瞬間に負けてしまいます。なので初手はa5の赤でa6の相手のコマを取るのが必須です。(取ったコマは赤だったとして継続します。)
では、図4(b)では脱出させる青ゴマは2つあるうちのどちらでしょうか。また脱出口は左(a1)か右(f1)か、どちらを目指すべきでしょうか?
○
また、典型的な手筋として「赤ゴマ壁利用」という技が紹介されています。要は、自分の赤ゴマが最後の1個になったら、そのコマを相手が取ってくれたら勝ちなので、遠慮なく相手に隣接するマスに侵入したり居座ったりできる、ということです。この「最後の赤ゴマ活用」の手筋の問題として、以下の2つの問題が紹介されています。
上記文献の図5 (a) 上記文献の図5 (b) このゲームの本質はブラフにあるので、実線では「最後に残った赤ゴマのふりをして実は青ゴマを大胆に進める」という戦術もあるかもしれません。
今日ご紹介した4つの問題、まずは考えてみることをお勧めします。特に9手の問題はなぜ9手かかるのかわかるでしょうか。論文にはこれらの問題の考え方が丁寧に書かれているので、自分で解がイメージできたら(もしくは納得できなかったら)読んでみると良いと思います。
(つづく) ○
今朝の八ヶ岳は雲の中です。雲の向こうから朝日がのぼってくる様子がうかがえます。
![]()
2026年7月22日 5:30ころ撮影 今日も暑くなりそうです。
<おまけのひとこと>
AIの進化がすごいです。これからの若い世代はいったい何を学べばよいのだろう、と思うことがあります。自分が再雇用という立場だということもあって、ときどき、どこか他人事のように感じることがあります。これではダメだと自分を戒めています。真剣に、この先が良くなるためには何ができるのか、どうしたらいいのかをちゃんと前向きに考えたいです。
7月23日(木) 詰ガイスター問題(その3)
二人対戦ゲーム「ガイスター」のつづきです。
○
一昨日からご紹介した論文と同じ著者らによる、 後退解析による詰めガイスター問題の列挙(川上直人,池田心,石井岳史,橋本剛:2020) もみてみました。前回の論文でも、相手の一部のコマの色を特定した場合(強く確信している場合)を想定して、相手の一部のコマの色が明かされた問題も調べられていましたが、この論文ではお互いにコマが2個ずつ残った状態を、非公開(相手のコマの色が未知)と公開(相手のコマの色が既知)の場合に分けて調べ上げています。
なお、昨日ご紹介した論文と今回の論文では盤面の表記する縦軸の数字の並びが逆になっていますが、私の記事でのご紹介は昨日と同じ座標系で表記することとしました。論文の本文の解説を読むときにはご注意ください。
一応今回も冒頭にガイスターの初期状態と勝利条件を転記しておきます。
ガイスターの初期状態(赤と青の配置は自由) 改めて、3つの勝利条件を書いておきます。
- 良いオバケ(青)を盤面から脱出させると勝ち(矢印のマスに侵入した段階ではまだ「勝ち」ではなく、つぎの手番で外に出て初めて「勝ち」になります)
- 相手の良いオバケ(青)を全部取ると勝ち
- 自分の悪いオバケ(赤)を全部相手に取らせると勝ち
○
この論文で、最初に興味深いなと思ったのが「引き分け」の局面があるということです。こんな例が載っていました。
上記文献の図 8 この状態で、a1にいる自分のコマが脱出しないということは、相手にはこれが赤でもう1つのb3のコマが青だ、ということはわかってしまいます。仮にc1の相手コマが赤でf1が青だとすると、f1がひたすら右下f6の脱出口を目指せばよさそうに思います。でもそれだと間に合わないのです。
初手はa1→b1と相手コマに寄ります。相手がこのコマを取ってくれれば勝ちなので安心して相手に隣接できます。(もちろんこの動きでこのコマが赤であることはばれますので、相手は取ってくれません。)これで自分の青の脱出経路が作れました。この後どうなるでしょう?
○
また、上記の論文の図6には、互いに2コマずつ残った状態における最長手数(19手)の問題の例と(下図左:図6)と、最長手数でさらに解が一意解の問題の例(下図右:図14)が紹介されています。これはなぜ19手になるのかは論じられていません。
上記文献の図 6:最長手数 上記文献の図 14:最長手数の一意解問題 ちょっと考えるともっと短い手数になるのかな、と思ったのですが、それは相手の最適な手を見落としているためなはずです。どうしてこれが19手なんだろう? と考えてみています。
(つづく) ○
3連休の最終日、早朝に東京に車で往復したあとで、図書館の本の返却期限が前日の日曜日だったので慌てて返しに行きました。天気が良くて気温が高くて炎天下に車をとめるとあっというまに車内が高温になります。それを少しでも避けたくて、いつもなら発進しやすいように逆向きにとめるのですが、わずかな木陰に運転席付近が入るようにあたまから車をとめました。
![]()
2026年7月20日(月) 11:00ころ撮影 多少は効果があったと思います。この後で行きつけの本屋さんに寄って、本を3冊、取り寄せをお願いしてきました。昨日「1冊目が届きました」と電話をいただきました。2冊目は明日24日(金)になるそうで、明日まとめて買いに行こうと楽しみにしています。3冊目はもう少し時間がかかるそうです。それはそれで楽しみです。
<おまけのひとこと>
通販で買うほうが早いし自宅で受け取れて便利、という意見が大多数なのだろうなと思います。でも、取りに行くなら自分でタイミングを決められますし、慢性的な運動不足の私としては少しでも歩く機会があったほうがいいですし、地元の本屋さんがなくなってほしくないですし、このスタイルを継続しようと思っています。
7月24日(金) 詰ガイスター問題(その4)
二人対戦ゲーム「ガイスター」の詰め問題の話、いったん今日で終了します。
○
今週は詰めガイスター問題に関して論じている論文をご紹介してきました。どうやら下記の3つの論文が「三部作」のようになっているようです。
- 不完全情報ゲーム『ガイスター』における2種の詰め問題の提案と考察(石井岳史,川上直人,橋本剛,池田心:2019)
- 難しい詰めガイスター問題の生成法(石井岳史,川上直人,橋本剛,池田心:2019)
- 後退解析による詰めガイスター問題の列挙(川上直人,池田心,石井岳史,橋本剛:2020)
最初に御紹介したのが1番目で、昨日ご紹介したのが3番目の論文からの問題でした。1番目と2番目の第一著者(first author)が同じ方で、3番目が違う著者が第一著者なのですね。盤面の記述の座標系が3番目だけ違っていたのはそのためなのかなと思いました。
今日は2番目の論文に載っていた問題をいくつかご紹介して、詰めガイスター問題の話題を終えたいと思います。
一応今回も冒頭にガイスターの初期状態と勝利条件を転記しておきます。
ガイスターの初期状態(赤と青の配置は自由) 勝利条件は以下の3つのうちどれかの状態になったときです。自分の手番ではなく、相手の手番で勝利が確定する場合があります(条件3)。
- 良いオバケ(青)を盤面から脱出させると勝ち(矢印のマスに侵入した段階ではまだ「勝ち」ではなく、つぎの手番で外に出て初めて「勝ち」になります)
- 相手の良いオバケ(青)を全部取ると勝ち
- 自分の悪いオバケ(赤)を全部相手に取らせると勝ち
○
改めて本日ご紹介する問題が載っている論文難しい詰めガイスター問題の生成法(石井岳史,川上直人,橋本剛,池田心:2019)では、ユーザに制限時間内に詰めガイスター問題を解いてもらって、「おもしろさ」「むつかしさ」を主観評価で5段階評価してもらい、その結果を分析しています。一般に手数が長いほうが難しくなる傾向がありますが、詰めガイスターの場合、自動生成した問題には手数が長くても単調で面白くない問題も数多く含まれるそうです。ペンシルパズルの世界でも、試行錯誤をせざるを得ない問題は好まれず、発想や手筋の巧みさが評価されます。そのため人間が創った問題のほうが「面白い」と評価されますが、問題の「面白さ」が判定できれば大量に自動生成した問題の中から良問を選んで出題することでパズルとしての解き味の良い問題を楽しむことができます。
そういう趣旨の研究なのですが、まずは問題生成に部分パターンが使えないか、というアイディアの説明に使われた例題です。
上記文献の図 10 相手コマの色が判別している状態です。仮に色がわからなかったとして、相手の赤があと1つしかないので相手のコマは取れません。a6にいる相手コマが青だったら、次の手番で脱出されてしまうので負けですし、a6が赤だったとしたら、それを取ったら負けです。いずれにせよこのコマを放置するしかありません。なのでこの状況で勝つためには、a6のコマが赤だと想定して勝ちパターンがあるかを考えることになります。実戦ではa6が青だと思って取る、という判断をするかもしれません。それが青だったらゲームは続行しますが、相手のe6が青だったら、次にこのコマがf6の脱出口に移動するので、いずれにせよ負けです。
なのでこの盤面では、右下のf6のマスから相手が脱出するのを防いだ後で左上のb2の自分の青コマをa1から脱出させる、という作戦になります。
○
下の例は短い手数なのに面白いという評価点が高かった問題だそうです。(論文では、図8の左右の図の説明が逆になっているようです。)
上記文献の図 8:短手数で面白い問題 この例では相手のコマのうち1つだけが「赤」であることがわかっているという条件の問題です。たとえば脱出口に到達したのだけれども脱出しなかった、という場合はそのコマはまず間違いなく赤であると断定できます。その場合、わかっている相手の赤コマを取らずに残りのコマを全部取れば勝利条件2の「相手の青を取り尽くす」ことによって勝つことができます。自分の青を取らせずに相手の不確定コマ2つを取るのが目標です。
○
最後に、図7に掲載されている「面白さ」「難しさ」の評価のスコアが高かった問題を掲載します。論文によると「(図7左の面白い問題は)駒数は多いが左上部の攻防が軸となる問題で,初手が意外だったとの評価」、「(図7右の難しい問題は)一見簡単な問題に見えるが相手の駒を取っていいのは最悪な状況を考えると1駒までという制限が状況を難しくする問題」とコメントされています。
図 7(左):面白い問題 図 7(右):難しい問題 左の問題は互いに赤と青が3コマずつ残っているので、2コマまでは取ることができます。方針としてはa4の青をa1に持って行って脱出させることをねらいつつ、d4やe3の相手コマが(青だとして)f6から逃がさないようにする、ということでしょうか。90秒の制限時間で解ける気がしません。今回の被験者はガイスターをプレイした経験が少ない8名とのことのようですが、これを「面白い」と思えるのはアブストラクトゲームの基礎力が高い被験者グループなのかな、と思いました。
右の難しい問題、a5にいる相手コマがa6の脱出口から脱出されると負けなので、初手はc6→b6しかない気がします。あとは、中央上にいる青(d2)を右上のf1から脱出させるか、左の青(b4)をa1から脱出させるか、相手の守りゴマ(b1)の動きに応じて左右の出口を目指す戦略な気がします。相手のd4が脱出するには手数がかかりすぎるので、途中の変化は多そうですがそれほど「難しそう」という気がしませんでした。相手方の最適な手(もっとも自分を苦しめる、手数が長くなる手)を見つけるというか判断するのが難しい、という意味でしょうか。
図7も左右の盤面の図と説明が逆になっていましたが、図8も逆なほうがしっくり来る気がしました。
○
昨日の夕方、学会の賛助会員優待券をもらいに勤務先とは別の事業所に行ってきました。打ち合わせをお願いした会議室に「危険なので窓をあけないでください」という貼り紙があって、そとを見てみたら大きなハチの巣がありました。
![]()
貼り紙には「総務部門が対策検討中です」とも書かれていました。総務の施設担当のお仕事かと思いますが、場所が場所だけに専門家に駆除を頼むにしても、足場をどうするかなど、かなり大変そうです。
<おまけのひとこと>
詰めガイスター問題の論文、面白かったです。
7月25日(土) ロープで作ったハンガー掛け
週末なので軽い話題です。
○
最近、部屋の扉の蝶番からきしみ音が鳴るようになってしまいました。原因はわかっていて、ドアの上にフックを取り付けているのですが(下の写真は「あやとりの楽しみ」の「あやとり紐について」で載せているものです)、考え無しにここにいろいろ掛けて、想定以上の負荷をかけてしまったことが理由です。
部屋の中にシャツやTシャツを掛けておけると便利なので、カーテンレールを利用して綿ロープを張って、余長を利用して「ハンガー掛け」を作ってみたのです。
ロープをあまり強く張るとカーテンレールを固定している部分に余計な負荷がかかるので、ドアのきしみ音の二の舞にならないように、若干ゆるめに張っています。ハンガーはできるだけ壁に近いところにとどまっていてほしいので、たるんだロープの中央付近に滑り落ちてこないように簡単な結び目を作って置くことにしました。
せっかくなので奥から手前にかけて高さがだんだん低くなるようにしてみました。
![]()
Four clothes hangers are hanging from a rope hanger setup. 結び目、きれいでも上手でもないですが、実用上は問題がないのでこうして使っています。
![]()
100円ショップで買った1本の綿ロープだけで作れます。なかなか気に入っています。
○
「鳥たちはなぜ都会を選んだのか」(著者:柴田佳秀(文) 安斉俊(イラスト), 発売日:2026.07.03,山と渓谷社)を行きつけの本屋さんで取り寄せてもらって入手しました。見開きで1つのトピックになっていて、右側が文章、左側がイラストになっています。とても読みやすくて、手に取ってイラストを眺めているだけで楽しいです。イラストがとても素晴らしいです。
「鳥たちはなぜ都会を選んだのか」 入手してよかったと思いました。
<おまけのひとこと>
仕事猫のTシャツ、プリントではなく刺繍なのです。気に入って家で着ています。
7月26日(日) 「ヒトとAI」
本の話です。
○
「ヒトとAI」(岡野原大輔:2026, 岩波新書) が7月24日(金)から発売になりました。珍しく初日に入手したのですが、これがものすごく面白くて、約200ページを夢中で読みました。
![]()
第1部では「ヒト以外の知能」ということで、現在のAIの特徴をヒトと比較しながら論じています。第7章の自然言語に関する議論で、「言語がなぜ強力なのか」に対する3つの理由、(リンク先の本書の目次に書かれているので書いてしまいますが)1. 曖昧さの強さ、2. 離散化とコピー可能性、3. 無限の表現力、というのが、もともとNLP(自然言語処理)の専門家である岡野原さんの言語に関する立ち位置がよくわかって感心しました。第8章の「理解」に関する議論も納得できました。「相手が理解しているのか」は、相手が人間であってもAIであっても、結局外から観測するしかなくて、それはどんな入力(問いかけや投げかけ)に対してどんな出力(応答)が返ってきたか、対話の中で判断するしかありません。「理解」を構成する5つの観点を挙げ、現在のAIはいずれの観点もかなり高い水準で実現できていることが述べられています。
では人間(の知能)とAIとでは本質的に何が違うのか、を論じているのが第2部です。なぜ人は死ぬのか、人間という種は生物としてなぜ死が必然であるように進化してきたのか。感情とはどんな意味があるのか、AIは感情を持つようになるのか。文化とは何か。意識とは、自己とは何か。AIは意識を持つのか。AIをどのように設計するかによって、こういった観点でももっと人間に寄せる余地があることが語られつつ、社会的な位置づけや社会構造をどうしてゆくのか、という観点が重要であることが説明されます。
第3部では、このような前提を踏まえてこれからの社会がどう変わってゆくのか、私たち人間の仕事や役割はどうなってゆくのか、人間に求められる能力はどう変化してゆくのか、またその時代においてどんな教育がなされるべきなのか、といったことが論じられます。大変示唆に富んだ、納得感のある議論です。
本当に面白い本なので、ご一読をお勧めしたいです。自分の本業にとっても、とても価値のある本でした。仕事の関係者にも推薦しようと思いました。
○
この本もさっそく仕事机の「今読んでいる本」に並べました。
![]()
自分が持っている本のうち、児童書やマンガ、音楽関係の書籍などをのぞいた主だった本はこちらの書斎に並べています。
![]()
書斎の写真(7月5日(日)) 3週間前に整理したばかりなのですが、すでに乱れ始めています…
今読んでいる途中の本とか、頻繁に参照したい本を書斎から持ってきて仕事部屋の机に置いています。ここの本は数日から数週間でどんどん入れ替わっています。
<おまけのひとこと>
実は昨日は「数学セミナー」の「エレガントな解答をもとむ」にはまっていました。一応解答にはたどり着いたのですが、おおよそ「エレガント」とは言えないものです。それでも、たとえ凡庸な答案であっても出題者としては応募が多いほうが嬉しいと思うので解のレポートを作ろうと思っているのですが、なにせエレガントではないものですから場合分けが多くてレポートをつくるのが面倒なのです。(最終的な解はシンプルなのですけれども、それ以外には存在しないことを示すのが下手くそなのだと思います。)まあでも枯れ木も山の賑わいで、締め切りまでには答案を送ろうと思っています。
7月27日(月) カリソンパズル(その3)
一週間前に書いたパズルの話のその後です。
○
先週ご紹介したこの論文 The Calissons Puzzle(カリソンパズル)の例題が解けなそうだ、という話です。冒頭に載っているこの例題
Figure 3 of above paper この左の問題が解けないというのを示しておこうと思いました。ルールを再掲します。
カリソンパズル(Calissons Puzzle)
正六角形を単位正三角形に分割した三角格子を考える。この格子を、単位菱形(互いに辺を共有する2枚の単位正三角形からなる菱形)で隙間なく重なりなく敷き詰める。
単位菱形の向きは3通りある。向きが同じ菱形を同じ色で着色する。
盤面には格子辺に沿って有限本の短い黒線があらかじめ描かれている。完成した菱形敷き詰めにおいて、各黒線は必ず向きが異なる2枚の菱形の境界となっていなければならない(黒線の両側の単位三角形は同一の菱形に属してはならず、黒線の両側の色は必ず異なる)。
この条件を満たす菱形敷き詰めを求めることが目的である。なぜ改めて左の問題が解けないことを示そうと思ったかというと、先日、千葉県のJさんから「この左の問題は解がないと思う」というメールをいただいたのです。ありがとうございます。自分の勘違いや見落としの可能性がかなり少なくなったと思ったので、確認したプロセスを記録しておこうと思ったのでした。
改めて問題の図を作りました。
問題 この図の中央付近の2本の縦の黒線に注目します。この間にはさまれた2つの三角形を覆うパーツのパターン、および黒線の外側の三角形を覆う菱形は以下の2パターンしか許されません。このそれぞれからルールに基づいて一意に決まる菱形を置いてゆきます。
case 1 case 2 途中経過をgifアニメーションにしてみました。黒線を1つの菱形が覆うことができない、というルールと、黒線の両側は色(向き)が異なる菱形をおかなければならない、というルールで次々と決まってゆきます。その結果上の図のように、どちらもわずか数手で破綻してしまうのです。
case 1の経過 case 2の経過 破綻した状態の図も載せておきます。どちらも黒線を跨がないと菱形が置けない状態に至ってしまいました。
case 1:行き詰り case 2:行き詰り 仮に、これがルールの解釈誤りで「黒線の両側は、色(向き)が同じでも別の菱形であればよい」だとしましょう。そうすると今度は解が一意に定まらなくなるのです。下の図はいずれもcase 1からスタートしていますが、赤色に変えた黒線の両側が同じ色の菱形になっています。
別ルールによる解の例1 別ルールによる解の例2 以上より、ルールの誤解や解の見落としではなく、例題の図が間違っているというのが真相ではないかと思います。
Jさんからいただいたメールには、おそらく意図解は上の左の例1ではないか、中央の縦線1本が図を作るときに誤って増やされてしまったのではないか、外周に近いほど直感的に線の位置がわかりやすいけれども中央に近くなると人間はずれを認識しずらくなるので、それが原因ではないか、と推察されています。納得感のあるご説明だと感心しました。
Jさんには以前もパズルに関する情報をいただいたことがあります。たとえば(2023年5月29日のひとことでもご紹介させていただきました。私のサイトは感想やコメントをいただけるのは珍しいので、とても感謝しています。ありがとうございます。
<おまけのひとこと>
今朝は妙に涼しいです。外の気温は17℃くらいです。
7月28日(火) カリソンパズル(その4)
カリソンパズルのつづきです。
○
カリソンパズルは正三角形2つを接合した菱形で面を埋め尽くすパズルです。3種類の向きに応じた色を付けておくことで、立方体を積み上げた立体の等角投影図に見えます。論文でもその解釈を用いて「高さ」という概念を使ったりしています。
この3方向の菱形だけを使って不可能物体が描けないかなと思ったのです。不可能立体といえばペンローズの三角形です。作ってみようとしたのですが失敗しました。
図 1:ペンローズの三角形(失敗) もうひとつ試してみました。これも失敗です。
図 2:不可能立体(失敗) 上の2つの例がなぜダメだったかと言うと、「立方体を積み上げたかたち」になっていないからなのです。不可能でないかたちでも、立方体が四角い枠のように並んでいる場合、三次元的にはある立方体の上空に、間に空間をはさんで別の立方体がある構造になると、隠れる面がでてくるので「同じ向きの菱形」では塗れなくなるのです。
上記を考慮して、こんな風に工夫してみると三方向の菱形を並べるだけで不可能立体の等角投影図を作ることができました。
図 3:不可能立体(一応できた) この図形を解の一部分に含むようなカリソンパズルはデザインできるでしょうか? 言い換えると、内側に残った白い部分、赤・青・黄色の菱形をうまく組み合わせれば埋め尽くすことはできるでしょうか?
(つづく) ○
昨日は勤務先の事業所に出社したのです(今月2回目です)。進捗報告をするのと、PCのOSのアップデートを実施するのが目的でした。OSのアップデートの最中はPCが使えません。昔ならば複数のPCを実験用に活用していたので、1台がふさがっていても問題なかったのですが、今は一人1台です。共用PCを借用することも可能ではあるのですが、それも面倒なので、良い機会なので「ヒトとAI」に目を通して、何かの際に引用したくなるかもしれないと思ったところに付箋を入れていってみました。
![]()
すごい数になりました。いくつかここに書き写そうかと思ったのですが、時間がないのでまたの機会にします。
<おまけのひとこと>
等角投影図を初めて習ったのは中学校の技術家庭科の製図の時間でした。(50年くらい前の昭和の時代です。) 当時は男子と女子は違う内容を学んでいました。男子は技術科ということで製図して木工をやったり、板金加工して塗装してゴミ箱を作ったり、エンジンを分解して整備して組み立て直したり、金属加工をしたり、いろいろ楽しかったです。女子は家庭科ということで、裁縫をやったり調理実習をやったりしていました。
7月29日(水) カリソンパズル(その5)
カリソンパズルのつづきです。
○
昨日、カリソンパズルのタイル(カリソン)で不可能立体を作ってみて、これを解の一部に含むカリソンパズル問題が作れるだろうか? と考えてみたのです。昨日の例の内側をカリソンで埋めてみようとしたのですが、下図右のようになりました。
→ 図1(a):不可能立体1 図1(b):中は埋められない そもそも内部の三角格子の三角形の数が奇数だったのです。これでは2単位のカリソンで埋めることはできません。
では、内部が偶数になるように不可能立体を広げてみました(下図左)。
→ 図2(a):不可能立体2 図2(b):中は埋められない でも、最後に2単位の正三角形4枚の領域が残ってしまいました。赤・青・黄のどのカリソンを置いても、残りの2つの三角形は分断されてしまいます。これ以外の埋め方を考えてみても、いずれも最後の2つの三角形が離れてしまいます。これもダメです。
もう少し広げた不可能立体を作ってみました。
図3(a):不可能立体3 だいぶ「ペンローズの三角形」っぽくなりました。これもいろいろ内部を埋めてみたのですが、もっとひどいことになっています。(ちなみにこの例も内部が奇数なのでそもそもダメなのですが。)
図3(b):中は埋められない 図3(c):中は埋められない 改めて、元の論文The Calissons Puzzle(カリソンパズル:Jean-Marie Favreau, Yan Gerard, Pascal Lafourcade, Leo Robert:2026) に戻ってみることにしました。
(つづく)
<おまけのひとこと>
厚紙もしくはマグネットシートなどの素材でカリソンのかたちを作って、実物で遊べる「カリソンパズル」を作ってみようかなと思いました。壁に飾ったら楽しそうです。あ、でもJOVOブロックの正三角形のパーツを使えばいいのか。やってみようかな。
7月30日(木) カリソンパズル(その6)
カリソンパズルのつづきです。
○
不可能立体のようなかたちを部分的に含むカリソンパズル問題は作れないだろうか? と思って試したところ、穴が空いたかたちであればカリソン(正三角形を2つ連結した菱形)で不可能立体を描くことができること、でも内部の穴をカリソンで埋めようとしても、試した範囲ではうまくいかなかった、ということをご紹介してきました。
改めて、元の論文The Calissons Puzzle(カリソンパズル:Jean-Marie Favreau, Yan Gerard, Pascal Lafourcade, Leo Robert:2026) に戻ってみることにしました。
論文では、カリソンパズルは3次元の立方体格子の階段状表面(stepped surface) の投影として記述されること、この表面は立方体格子における高さ関数(height function) によって定義される単一値の関数として記述可能なこと、が述べられています。(x,y)座標から高さzへの写像 z=f(x,y) が存在して、領域全体でこの高さ関数が整合的である(=一意に定まる)ことが、タイリングが存在するための必要条件となります。
階段状表面というのがどういうことなのか説明します。たとえば下図のカリソンパズルの盤面の一例です。図のように座標系を決めます。
![]()
図 1:カリソンパズルの一例 立方体格子の各マスごとにx軸方向、y軸方向の断面を考えてみると、いずれの方向にも必ず単調増加になっています。これを階段状表面と呼んでいるのです。
![]()
![]()
図 2(a):x軸方向に単調増加 図 2(a):y軸方向に単調増加 x,y座標方向に進んだときに高さが減少してしまうと、「隠れ」が生ずる可能性があるため、カリソンでは描けなくなってしまうのです。
○
不可能立体を含む盤面が成立しないのは、「高さが一意に定まる」という条件を満たさないからなのです。ただし、これが成立するのは円と同相な単純連結領域、要するに穴のないひとつながりの領域での話です。不可能立体の内部の穴をカリソンで埋められなかったのはそのためなのです。(たまたま試した例が悪かったのではなく、原理的にできない。)
逆に言うと、すでにカリソンで不可能立体が描画できているわけですから、それそのものが「盤面」であるとすれば、そういうカリソン問題を作ることができるわけです。カリソンパズルにはなっていませんが(カリソンの配置を制限する黒線を入れていない)、盤面の形状としてたとえばこんなかたちがあったとします(図3)。
図 3:穴のあるカリソン盤面 これはたとえばこんなカリソンの配置が可能でした。
図 4:カリソン配置例 この配置における「高さ」を考えてみると、下図のように右回りと左回りで高さが違ってしまうのです(だから「不可能立体」なのですが)。
図 5(a):左側は高さ 4 図 5(b):右側は高さ 5 つまりこれは数学で言う「被覆空間」(covering space) になっている、ということだと思います。この「穴」を時計回りに回ると高さが1つ減ります。反時計回りに回ると高さが1増えます。これは、次の図のようにカリソンの配置を変えても(回転方向による変化量は)変わりません。
図 6:別のカリソン配置例 この「周回すると高さが1だけ変わる」というのは何が決めている特徴なのでしょうか。この盤面で、高さが2以上変わる、もしくは高さが変わらないカリソン配置は作れるでしょうか。あるいはこの盤面とは異なる形状で、高さがもっと変わる盤面は作れるでしょうか。
(つづく)
<おまけのひとこと>
昨夜、「数学セミナー」8月号の「エレガントな解答を求む」を1問だけですが解のレポートを作って送付しました。解説が掲載されるのは11月号(10月12日発売)です。こういう気の長い楽しみを仕込んでおけるというのはとてもいいなあと思います。
7月31日(金) パズル Meowdoku(ミャウドク)
カリソンパズルの考察が間に合わないので、別な話題です。
○
スマートフォン用のパズルゲームのアプリのMeowdoku(リンクは Google Play の該当アプリのページです) というのをちょっと遊んでみたら、けっこうおもしろくてはまってしまいました。
Meouwdoku の問題の例 N×Nの盤面が、N個の連結な領域に色分けされています。下記のルールに従ってネコ(コマ)を配置するのが目的です。
- 盤面の各行/各列にはちょうど1つのコマが置かれる
- 各領域(同じ色のマス)にはちょうど1つのコマが置かれる
- 各コマの8近傍(縦横斜め)には別のコマは置けない
上記の例題を解いてみた途中経過はこんな風になりました。(最後のネコを置いたとたんに画面が切り替わるので、完成形の画像はありません。)
![]()
スマートフォンアプリは広告が多くて辟易します。パズルを解いている時間より広告を表示している時間のほうが長いと感じます。ありがたいことに https://meowdoku.app/というブラウザで遊べるシンプルなサイトがありました。上の例題はこのサイトの10番目の問題です。
○
このパズル、いかにもペンシルパズルになっていそうなのですが、同じルールのペンシルパズルを見たことがない気がします。調べてみると、このルールのパズルの起源はスターバトル(Star Buttle)と呼ばれるパズルで、 「Hans Eendebak(オランダ) が 2003 年の World Puzzle Championship(WPC) のために作った新作パズル」ということのようです(https://www.puzzlepage.app/blog/play-star-battle-online)。意外と歴史が新しいことに驚きます。スターバトルは、各行/列/領域に置くコマ(星)の数を 1 にするか 2 にするか、というパズルデザイン上の自由度があるようですが、ルールはまったく一緒です。Meowdoku は、コマの数が1のバージョンのみに特化したルールのパズルです。
「パズル通信ニコリ」ではもっと以前から新作パズルのアイディアが寄せられて、人気のあるパズルが作問されて発展していますが、こんなシンプルなルールのパズルは検討されていなかったような気がします。(新作パズルについてはあまりフォローしていないので過去に提案されて消え去っているのかもしれません。)
比較的新しいパズルなのですが、New York Times が Two Not Touch という名前で掲載して、アメリカでも広まったという記載がありました。数独(Sudoku)と並ぶ「新しいロジックパズル」として広まっているのだそうです。(ちゃんと根拠が調べ切れていないので、間違いかもしれません。)
上記のサイトやアプリで、もう少し解いてみたいと思います。
<おまけのひとこと>
7月も今日でおわりです。熊本の地震には胸を痛めています。あんなに大きな地震がまた同じ熊本で発生するなんて、言葉を失います。自分が生きている間に、(少なくともいまのところは)戦争当事国にならなかったのは本当にありがたいですが、これほど大きな地震が何度も発生するとは思いませんでした。1000年〜2000年という長い期間で考えたとき、この数十年の大きな地震の数は特異的に多いのか、それともこのくらいの頻度で大きな地震が発生していたことも過去にもあったのか、どうなのだろう? と思いました。