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田園と渓谷美の路線 第4回
(07年7月の旅)
山間の小さな終着駅
渓谷を抜け、樽見盆地に入ってすぐに水鳥駅に着く。この駅に直結している施設は、地震断層観察館である。明治時代に起きた濃尾地震でできた断層をそのまま展示しているという場所である。濃尾地震は内陸部で起きた直下型としては日本最大級の地震と言われ、多くの死傷者を出したという。地震で生じた断層は「根尾断層」と呼ばれ、国の特別天然記念物に指定されているそうである。今回は時間の関係で立ち寄りはできなかったが、一度は見学に訪れたいものだ。
水鳥駅を出るといよいよ終点の樽見である。列車は名残を惜しむかのようにこの区間、かなりゆっくりとしたスピードで走る。駅のまわりには集落があるが、典型的な山間の小さな町といった感じである。やがて、列車は島式ホームへゆっくりと進み停車する。樽見駅はホームだけの小さな駅である。いや、そうなってしまったという表現が正しいのかもしれない。というのも、今年のゴールデンウイークの最中に駅舎が火災で全焼してしまったそうである。そういえば、ホームに隣接するところにさら地があるので、ここに駅舎があったのだろう。火災から2ヶ月以上が経過しているが、駅舎を再建しようという感じには見受けられない。廃線が予想される路線ゆえなのだろうか。
駅前からは、うすずみ温泉までの送迎バスが連絡しており、そのまま温泉施設へと向かう。バスの車中で中越沖地震の第一報を聞き、かなりびっくりしたので施設から実家へ電話をかけ無事を確認するハプニングもあった。
うすずみ温泉での入浴と食事を楽しみ、送迎バスで再び樽見駅へ向かい、今度は大垣駅まで一気に戻っていく。樽見から乗ったのは私ともう一人の男性だけ。根尾谷を経由する区間では乗降客も少なかったが、本巣から先はだんだんと乗客が増えていった。北方真桑駅ではくだんの女子中学生たちも乗り込んできた。大垣に着くころには立っている人もでるほどで、少なくても本巣−大垣はそれなりの乗客がいることをうかがわせた。ただ、単独の第3セクター路線が健全経営できるほどの乗客とは言いがたいところである。
そんなわけで、樽見鉄道の乗車は終わった。今後、存廃論議がどんな展開になるのかは不明であるが、状況からすると見通しは決して明るくない。多くの第3セクター路線が廃線を余儀なくされているなかで、樽見鉄道にはなんとか頑張ってほしいものと願うのである。一方では「これが最初で最後の乗車なのか」との思いも持ちながら。
(この項おわり)