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田園と渓谷美の路線 第3回
(07年7月の旅)
根尾川の渓谷に沿って
本巣からは少しずつ山間へと入っていく。続く織部駅は、古田織部ゆかりの地ということで、正真正銘道の駅と直結している。時間があれば立ち寄りたいところでもあるが、今回は見送らせてもらい次へと急ぐ。この先、林間が続くうえにトンネルも現れ始め、山の中という印象を強く持つ。さらには揖斐川支流の根尾川も寄り添うようになってくる。台風の大雨の影響もあって川は増水しており、濁った水がゴウゴウと流れている。
木知原駅のすぐ近くには鮎やなの店もあるが、この濁流では鮎どころではないだろう。その川の向こうにかつては名鉄谷汲線が走っていた。宮脇俊三氏は著書・時刻表二万キロのなかで「突然対面の斜面の樹間から小ぢんまりした2両連結が現れ・・・私は狐火を見たようにはっとした」と語っている。氏もよくぞこんなところにまで名鉄は路線を敷いたものだと感心しているが、おそらく谷汲山への参拝客がかつては多く利用していたのであろう。谷汲口駅からは名鉄に代わり、谷汲山まで結ぶバスが出ている。
次の神海駅が、かつては美濃神海駅として国鉄樽見線の終着駅であった。往時を思うと、かなり渋い終着駅だったのだろうと想像がつくが、今は単なる途中駅にすぎず、乗降客もないままに列車は過ぎ去っていく。
この先は、新しく建設した路線ということもあってか、路盤がかなり安定し車両のゆれはほとんどなくなった。そして、いよいよ根尾川の深い谷間に沿って鉄路が進んでいく。ここから終点の樽見まではトンネルも数多いが、渓谷美なども十分楽しめる区間となる。根尾川温泉郷最寄り駅という鍋原や次の日当、高尾といった小駅は、秘境駅の雰囲気も持つ魅力的な無人駅ばかり。ログハウス風の待合室も駅の雰囲気にマッチしていてなかなかいい。思わず途中下車したくなるが自重する。
トンネルとトンネルの合間には渓谷をまたぐ鉄橋が敷設されている。かなり高い位置を列車が走っているし渓谷も狭いので、橋げたというのはないと想像される。これだけ深い山間を走っているというのもなかなかすごいわけであるが、だからこそ樽見の人たちがその名を冠にしてまでも鉄道を求めてきたというのがよくわかる。昇り勾配もかなりきつい。
(つづく)
終点・樽見に近づいていきます