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渡島半島の山越え路線 第3回
無人地帯続く山越えをへて
駅を出るとあっという間に無人地帯へ入っていき、山は再び深くなる。天の川はあいかわらずきれいな水をたたえながら流れている。次の神明駅まではさほどの距離は走らなかったものの、山の深さはどんどん増すばかり。神明駅は周辺に民家数件だけあるだけの極小集落で、木造の古めかしい待合室がのどかな雰囲気にマッチしていた。
さて、この神明駅と次の吉堀駅の間が江差線で最も駅間が長く、ちょうどサミットを越えていくことになる。所要時間も20分以上かけて進むのであるが、距離以上に勾配のきつさがあってか、列車のスピードはガクンと落ちてしまうがための時間のロスといえる。もちろん沿線は深い山の中で無人地帯。ヒグマですら、いつ姿を見せてもおかしくないようなそんな山中といえ、鉄道に乗っていなければとても来ることができないような場所のオンパレードである。途中にはトンネルがいくつかあるが、できるだけトンネルは造らないようにしようという昔の路線そのものといえる。おそらく新線を作るなら、湯ノ岱から吉堀まで長大トンネルをぶち抜いているだろう。
稲穂峠越えのサミットを抜けると、ようやく列車のスピードが上がり快適な運行となる。鉄道とほぼ並行して道道が走っており、時々線路に近づくこともあるが、ほとんど車の姿はない。昼間ならともかく、夜間は絶対に走りたくない道路である。やがて、少しずつ平地が現れ始め、田んぼも見られるようになったところで、やっと吉堀駅に到着する。とはいっても、まだまだ周囲に人家はまばらな場所である。
吉堀から渡島鶴岡を経て木古内の手前くらいまでは、再びのどかな田舎の風景が車窓を流れていく。そしてだんだんと平野部が広がりを見せ、住宅も増えていくころ、右手から堂々とした複線が近づいてくる。昼前に乗ってきた津軽海峡線である。それに沿いながら列車は静かに木古内駅へと到着する。列車によっては、この先函館まで乗り入れるものもあるが、この列車は木古内止まりである。数少ない乗客も全員が下車する。
(つづく)
折り返し江差へ向かいます