| XIII 転回対位法による単一主題の鏡像フーガ、4声部、3/4拍子、各56小節
 原 形
 転回形
 
 フーガの技法出版譜のContrapunctus inversus 12にあたる曲です。
 自筆譜では3/4拍子で書かれており、出版譜はそれを
 3/2拍子に改めると同時に、曲全体の音価を2倍にしています。
 
 
  上が自筆譜、下が出版譜です。
 
 もう1つの大きな相違として、配置の変更があります。
 自筆譜ではこの曲の原形と転回形が上下に並べて記載されています。
 つまり、曲全体を逆さまにしたことが一目でわかるようになっているのです。
 下の楽譜の上4段が原形、下4段が転回形です。
 
 
  自筆譜のイメージです。実際には上3段がハ音記号で記されています。
 ツァルリーノは「和声教程」の中で、この楽譜のように
 原形と転回形を同時に作曲するように勧めています。
 
 これに対して出版譜では原形と転回形が個別の曲のように
 各2ページずつに割り付けられており、また奇妙なことに
 原形ではなく転回形が先に置かれています。
 
 このほか、音符の追加と細かい修正がいくつか見られます。※
 以下は12-14小節のバスに見られる音符の追加です。
 14小節が13小節の反復になるように変えられているのです。
 
 
  変更された部分を青い音符で示しました。
 上の楽譜には原形のみを示しましたが、
 転回形の対応する箇所も同様に変更されています。
 
 ※Gilbert, K.によるチェンバロ独奏のおかげで、この曲とXIVは
 独奏可能だという誤解が生じましたが、出版譜と自筆譜に
 そのような相違はなく、どちらも独奏は困難です。
 
 なお、この曲の原形と転回形のどちらが先に作られたかについて、
 転回対位法によるフーガの原形において調査結果を報告しています。
 
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