以前の「ひとこと」 : 2021年11月前半
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11月1日(月) 三手を想定したあやとりを一人(両手)で取る
11月になりました。最近すっかりはまっている三手のあやとりの話です。
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先月ご紹介した、三手を前提としたこの3回回転対称あやとりですが、
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hh211030-3 このあやとりは実は自分の両手で取っています。こんな感じです。
Fig.1 今日の更新は、端的に言うとこの図を載せたかっただけなのです。
これは、下の図のように「両手の薬指と小指」が1つ目の手、「左手の親指・人差し指・中指」が2つ目の手、「右手の親指・人差し指・中指」が3つ目の手、とイメージしています。
Fig.2 三回回転対称あやとりを一人で両手で取る、というのは創作あやとりの新たなジャンルなのではなかろうか、と思ったりしています。私が知らないだけかもしれませんでれども。
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両手の10本の指で、あたかも手が3つあるかのように振る舞うというと、連想するのがポリフォニー(polyphony)、多声音楽です。例えば下の譜例1は、J.S.バッハの平均律クラヴィーア曲集第2巻の1番のハ長調の三声のフーガの一部です。3つの声部がそれぞれ独立に旋律を奏でます。
譜例1 手が3つあれば、鍵盤が3段とか4段とかあるパイプオルガンで、それぞれの声部を別の段で演奏することができます。
通常はこれを大譜表表示して、特に内声は両手の内側の指で適当に役割分担しながら演奏します。(この例は内声=中声はすべて右手が担当する例で、あまり良くなかったですが。)
譜例2 特に内声を、あたかも単独の手で演奏しているかのように滑らかに奏でるのはかなり難しいです(私には)。
「手が3本ある前提でデザインされたあやとり作品を両手の10本の指をなんとかやりくりして取ってみる」というのが、この「独立した旋律線が3つある三声の曲を両手の10本の指をなんとかやりくりして奏でる」というのに似ているなあと思うのです。どちらも普通より難しいですが、どちらも楽しいです。
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というわけで早速、三回回転対称あやとりを1つご紹介します。こういう発想のデザインの伝承あやとり作品は見たことがない気がします。創作あやとり作品にはあるのでしょうか。
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hh211101-1
- 三手の人差し指の構え
- 全ての指を向こうへ1回転ひねる
(仮想的な3つの手はすべて左手と考える)- 焼け焦げた葉のククイの終了処理
(仮想的なそれぞれの手で、親指・小指の
内側の糸を人差し指の輪を通して取り合う)取り方の手順は「3つの左手」を前提に書いています。同時に使う指の本数は最大で9本なので、これも一人の両手で取ることができます。ただ、かたちを整えるのは手から外さないと難しかったです。
これを、一人の両手で取る普通のあやとりの手順として記述しようとすると無駄にややこしくなります。これも、パターンあやとりの記述法を適用することで、取り方の説明がものすごく簡略化できている例だと思います。
例えば3人の両手(全部で六手)を使うことで、雪の結晶のような美しいあやとりをデザインできるのではないかなあと思ったりします。手の数を増やすとか、あやとり紐の輪の数を増やすとか、こういった作品も1973年の野口広「あやとり」(河出書房新社)ですでに紹介されていますが、その方向への創作あやとりの発展はほとんど見当たらないのかなあと思います。いろいろな理由があると思いますが、あやとりを取る手順の記述が標準化されておらず、写真や動画で見ても複数人になると視点が増えて再現が非常に難しくなるのがその理由の1つなのではないかと想像します。
多手あやとりや多人数あやとりでも、記述が易しくて、その記述を読み書きできる人なら簡単に再現や記録ができるようになれば、もっと発展する可能性があるのではないかと期待したくなります。折り紙がここ数十年で大きく発展したように、あやとりも様々な方向に大きく発展してくれないかなあと夢見ています。
<おまけのひとこと>
「3つの手のあやとり」のことを「三手あやとり」と呼んでいるのですが、こう呼ぶと「3ステップの手順で取れるあやとり」と誤解してしまうかなあとちょっと心配しています。省略せずに「3つの手のあやとり」と呼ぶべきでしょうか。
一昨日の三手のあやとりの図、全て左手で作ったつもりが1本だけ右手が混じっていました。修正しましたが、ブラウザが前の画像をキャッシュしていると古い画像が表示されてしまうかもしれません。すみません。
11月2日(火) ボードゲーム「トライク」、三手あやとり
アブストラクトゲームのご紹介と創作三手あやとりのご紹介です。
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Trike(Alek Erickson:2020)というボードゲームを知りました。二人対戦型で運の要素の無い、情報完全公開型のアブストラクトゲームです。簡単にルールを説明したいと思います。
【名称】Trike(トライク) Alek Erickson(2020)
【人数】2人
【ボード】全体が正三角形のかたちの六角格子(サイズは任意)
【ピース】それぞれ自分の色のマーカをたくさん、「ポーン(Pawn)」1つ
【勝利条件】
ポーンが動けなくなったとき、ポーンのマス及び隣接するマス
にある自分の色のマーカの数が多いほうが勝ち
【ゲーム開始】
先手が盤上に自分のマーカを1つ置き、その上にポーンを置く
【ポーンの移動】
六角格子の6方向にまっすぐ、空いているマスを好きなだけ移動できる。
マーカのあるマスには入れないし飛び越せない。
【自分の手番でやること】
ポーンの移動先に自分のマーカを置き、その上にポーンを動かす。
【ゲームの終了】
自分の手番開始時にポーンが動かせなければ終了。
その時点でのスコアを計算して勝利判定する。適当にプレイしてみた例を載せます。
例1 この例では、4対1で先手(赤)の勝ちです。自分の色がたくさんあるエリアにうまくポーンを閉じ込めるのが基本的な戦略かなあと思いました。
なお、上記のプレイはこんな風に書くと、途中経過が再現できます。一度置かれたマーカは動かないし取り除かれることもないので、ポーンが無くてもペンで数字を書いてゆくことでプレイすることができます。
例2 これはちょっと面白いかも、と思いました。2020年にデザインされたゲームということで、とても新しいですね。
なお、こちらにもう少し大きな盤を使ったプレイの実例がアニメーションで紹介されています。これを見るのもゲームを理解する参考になると思います。
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外周が正六角形になるようなあやとりを取ってみたいなあと思ってやってみました。取り方の手順は左手が3つある前提です。特に手の指定がない手順では、3つの手が同じ動作をします。一人で取るときには、自分の10本の指のうちのどの指が仮想的な3つの手の親指・小指を担当しているのかを決めて取ってゆきます。
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hh211102-1
- 三手の人差し指の構え
- 親指で人差し指の手前の糸を取る
- 小指で人差し指向こうの糸を取る
- 人差し指の輪を外す
- 親指で反時計回り側の小指の手前の上の糸を取る
- 小指で時計回り側の親指の手前の上の糸を取る
手から外したこの写真を見ると、あやとり作品には見えないかなあと思います。(そこが良いと思っています。)これは、使うあやとり紐が長すぎても短すぎても両手の中できれいにかたちが整いません。普通使う長さのあやとり紐くらいが意外と良さそうです。
取り方の手順の説明が微妙です。最後の手順5と6、場所によって親指と隣接する小指のどちらの糸を先に取るかが違う場合があります。また、「上の糸」という表現も微妙です。きちんと説明すると長くなるので、出来上がりから理解できると判断して厳密には説明していません。
なお、下の図の青い矢印が時計回り(CW:clockwise)側、赤い矢印が反時計回り(CCW:counterclockwise)側です。
緑色で示した小指から見て、時計回り側の親指はすぐ隣ですが、反時計回り側の親指はあやとり全体のちょうど向かい側で、一番遠い指になります。これは全部左手だという前提での話で、全部右手だと逆になります。
<おまけのひとこと>
このところ忙しくて、明日の祝日がありがたいです。
11月3日(水) 三角魔方陣、設計あやとり
簡単な魔方陣の話と、完成形からあやとり手順を考える話です。
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こんな魔方陣を見かけました。
正三角形の頂点と辺の中点の6か所に数字の1から6を1つずつ入れて、3つの辺それぞれの3個の数字の和が同じになるようにしてください、という魔方陣です。(図を見かけて、多分そういう問題だろうと想像しました。)
適当に1,2,3,4,5,6を入れてみたら、和はこんな風になりました。
魔方陣が完成したとき、1辺の和はいくつになっているでしょう? 答は1つとは限りません。
○
先日ご紹介したこのあやとり(下図左)、どう考えて取ったか説明したいと思います。
⇒ このパターンを、外周の青い長方形の部分と、その内側のキャンディ
のような赤い部分に分けてみます。このままだと青い輪と赤い輪の2つのあやとり紐が必要になってしまいます。そこで、どこか1か所、例えば左端の縦の2本の糸は平行ではなく交差していると考えます。そうすれば全体は1本の輪になります。
これをイメージして、こんな取り方の手順を考えました。
手順2.で左手の親指・小指に巻き付けた輪が、最終的には外周の長方形になります。手順3〜8. で、キャンディの真ん中の部分をひねる操作をしています(この段階で、右手の親指・小指にキャンディの真ん中に相当する部分が掛かっています)。手順9-10.でキャンディの真ん中の部分が外周の長方形に掛かるようにしています。
ということは、上記の手順6-8.を省略すれば、中央菱形の左右は「折り返し」から「単純交差」になるはずです。
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hh211031-2(再掲)
- 始めの構え
- 右手で左小指向こうの糸を掴んで左親指と左小指に1周巻き付ける
- 右親指の輪を右人差し指に、右小指の輪を右薬指に移す
- 右親指で右薬指の向こうの糸を取る
- 右小指で、右親指向こうの糸の内側で人差し指の手前の糸を取る
- 左親指手前から左小指向こうへの左掌の糸を、右手の親指・小指で取る
- 右親指・右小指をナバホ取り
- 右人差し指の輪を右親指に、右薬指の輪を右小指に移す
先週末にご紹介したこの2パターンは、こうして取ったのでした。
あやとりの完成形を先に考えて、その取り方を考える、という創作の仕方もあると思います。「いくつかの一筆書きの輪に分割して、それぞれをどう作るか考える」というのは、そんなアプローチで創作あやとりを考えるときの1つの手段になるのかなあと思いました。
<おまけのひとこと>
今日は週の真ん中の祝日です。仕事を2日して水曜日に休みがあってまた週の後半に2日仕事をして、というのはたいへんありがたいです。(ここ数週間は若干オーバーワーク気味です。)
11月4日(木) 三角魔方陣の解、あやとり
三角魔方陣の解と、あやとりの話、他です。
○
昨日ご紹介した三角魔方陣ですが、
解をこちらに置きました。ご覧になりたい方はどうぞ。
この三角魔方陣を見ていると、盗人隠しという古典パズルを連想します。リンク先のtritoの「パズル遊びへの招待:オンライン版」(高木茂男)によると、盗人隠しとは「物の配列を変えて、数の増減したのをごまかすパズル」と説明されています。
三角魔方陣では三角形の頂点の位置のマスに入れた数字は3つの和のうち2つの和の計算で使われます。一方、三角形の辺の中点の位置のマスに入れた数字は1つの和の計算でしか使われません。仮に「三角魔方陣の3辺の3つの和の合計がこの三角形に入っている数の総和だ」という誤った仮定をしてしまうと、配置によってその総和は変わってしまいます。盗人隠しはその誤りを逆手にとって、外部から観測される数の総和を変えずに、内部の総数を変えるというパズルになっているのです。
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先月末にご紹介した、親指小指が二重の輪になったパターンから4本指のパターンに移行するDTF拡張処理を用いたあやとりです。
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hh211104-1
- 焼け焦げた葉のククイ
- 人差し指の構え
- 全ての指を向こうへ1回転ひねる
- 内側の輪を通して親指・小指の内側の糸を取り合う
- 親指・小指を外側に1回転ひねる
- DTF拡張処理(二重の2本指→4本指)
- 親指の2本の輪のうち、斜めに走る糸を人差し指に移す
- 小指の2本の輪のうち、斜めに走る糸を薬指に移す
- 親指・小指を外側に1回転ひねる
- 焼け焦げた葉のククイの終了処理
- 人差し指・薬指の輪を通して親指・小指の内側の糸を取り合う
- 人差し指・薬指の輪を外す
これは両手の中でかたちを整えるのはとても難しいと思います。手から外して整える必要があると思います。このあやとりも出来上がりの模様が美しいと思います。手から外してかたちを整えて楽しむあやとりというと、日本の菊 とか ボリビアの 足あと とかありますので、手から外して整えて楽しむ、というのもあやとりとして許されている手法かなあと思っています。
○
現代人は「Google検索を自分の知識と勘違い」して自分が賢いと誤解していたという記事を興味深く読みました。 日本に住む私たちの大部分の人にとって、今の生活をすることができるのは水道や電気などの社会インフラが提供されているからです。この記事を読むと、インターネットというのも私たちの生活を維持するための必須のインフラとして定着しているのだな、と思いました。
昔、ジュール・ヴェルヌの神秘の島という冒険小説を読んだ時、最も印象深かったのは着の身着のままで遭難した数名の男性のグループが水や食料や住居や衣服などの生活基盤を作り上げてゆくプロセスの描写でした。使えるのは身につけているごくわずかなものと、自然界に存在しているもの、頼れるのは自分の頭の中にある知識と自分が持っている技術だけ、という設定です。この条件で生き延びられるだけの知識や経験や技術を持っている人は、現代ではほとんどいないだろうなと思います。(軍隊でのサバイバルトレーニングとかを受けていると、可能なのかもしれません。良く知りませんけれども。)
確か以前、この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた という本をご紹介したことがあったと思います。これも思考実験、読み物としてはとても面白いですが、できればそういう状況を体験しないで済むといいなと思っています。
教育というのは難しいなと思います。人類の知識はずっと蓄積されて増える方向にありますから、今のこの文明社会を成立させている技術や知識を一人の人間が全て学ぶことは到底不可能です。完全な自給自足生活をしていない誰もが「仕組みや原理は全く知らないけれど、誰かがやってくれている」サービスを前提に生きています。生き物は、環境に適合した個体が生き残り繁栄することで環境に合わせて進化してきました。今の時代は、Networkが発達してそれが常に使えることを前提として、そのサービスを上手に使えることが環境に適合している(適者生存)ということなのだと思います。
例えば現代は交通機関がものすごく発達していますが、逆にだからこそ身体を鍛えることの重要性が意識され、コストをかけてスポーツジムなどで運動をする人がいたりします。同様に、Netが発達して様々な情報にごく短時間でアクセスできることが前提の世の中であっても、だからこそいかにその情報を活用するか、というところに頭の使いどころがあると思っています。いくら簡単に検索できるとはいえ、情報を入手するためにも、得られた情報を理解し活用するためにも、基本的な能力がとても重要だと思います。Netで検索した結果を見て、そこには書かれていないこととの関連性や類似性、その情報の活用先などに気が付ける、思い付けるというのは結局その人の頭の中身に依存します。
さらにはそのような機能もAIで実現できるだろう、という意見もあるかもしれません。それに対してもいろいろ考えていることはありますが、今日は時間切れです。
<おまけのひとこと>
ちょっと目にした記事から連想したことを書き始めたら長くなってしまいました。忙しいのに…
11月5日(金) あやとり、正八面体骨格を連ねた鎖かたびら
あやとりの話と、多面体構造の応用の話です。
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昨日に続いてDTF拡張処理を用いたあやとりです。「テントの幕」からの派生です。
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hh211105-1
- テントの幕
- 親指・小指を内側に1回転ひねる
- DTF拡張処理(二重の2本指→4本指)
- 親指の2本の輪のうち、斜めに走る糸を人差し指に移す
- 小指の2本の輪のうち、斜めに走る糸を薬指に移す
- 親指・小指を外側に1回転ひねる
- 焼け焦げた葉のククイの終了処理
- 人差し指・薬指の輪を通して親指・小指の内側の糸を取り合う
- 人差し指・薬指の輪を外す
昨日のあやとりは、最初に作るのが「焼け焦げた葉のククイ」でしたが、それを「テントの幕」にしたものです。手順1「テントの幕」が下図左、手順2で親指・小指の捩れをなくしたのが下図右でした。
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sf211016-1(再掲) hh211017-1(再掲) ここからDTF拡張処理をしたものが今日ご紹介したあやとりでした。
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圧力に応じて硬さが変わる素材 by カリフォルニア工科大学 という記事が面白かったのです。正八面体骨格をこんな風に絡ませて、
これを格子状に並べて平面状の鎖かたびらの構造を作ります。普段は隙間があるので柔らかいのですが、力を加えて圧縮されるととても硬くなるのだそうです。
⇔ おそらく現状では作るのに手間がかかる(=製造コストが高い)と思いますが、多面体好きとしては気になる素材です。
<おまけのひとこと>
今日は久しぶりに鉄道を利用します。いつ以来だろう…
11月6日(土) ポリオミノの小さな問題(その1)、創作あやとり
ポリオミノの話とあやとりの話です。
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丸いクラッカーに開けられた穴の配置から連想されたパズル、という話を見かけました。
これを、下図のような21単位の盤面であると見なします。
この盤面をポリオミノで埋めることを考えてみました。例えば、下の5種類のテトロミノを1つずつ使うと20単位となります。どこに隙間が空いても良いことにして、この5つで21単位の十字型の盤面が埋められるか、というとこれは解がないようでした。
さらに、テトロミノ1種類5ピースで埋められないか考えてみたのですが、それもダメそうでした。
では、ペントミノだったらどうでしょう? 一種類のペントミノ4ピースを21単位の十字型に重ならずはみ出さずに置けるのは、以下の12種類のうちどれでしょう?
(つづく) ○
四段ばしごというあやとりは菱形が横に4つ並んでいます。菱形4つを2×2の配置になるようなあやとりができないかな、と思って試してみました。いつもの「パターンあやとり」というよりは、創作あやとりに近いかなあと思います。最初にこんなかたちを作りました。
さらにここから、親指・小指が二重になっているので、そのうちの1本を外周の輪の上になるように外します。
完成形、もう少しきれいに整えればよかったです。
<おまけのひとこと>
今日は「あやとり会」です。昨日の夕方、発表を希望されている方が他にもいらっしゃるということで、私がいただける発表時間が当初の予定とは変わる、というご連絡をいただきました。このサイトのトップで告知をさせていただいておりますけれども、それをご覧いただいてご来場くださる方はおそらくいらっしゃらないかなあと思いますが、もしどなたかにご迷惑をおかけしてしまったら大変申し訳ありません。でも、「あやとり会」の活動が活発なのはとても喜ばしいことだと思います。
11月7日(日) あやとり「二つの鱗」
あやとりの話です。
○
昨日は国際あやとり協会(日本)のあやとり会に参加をさせていただきました。リアルにあやとりの話がたくさんできて、とても楽しく、刺激も受けました。1980年ころのあやとり協会の黎明期の資料とかをみせていただいて、当時発表されているシシドユキオさんの独創性や研究の広さ、深さに感銘を受けました。
1981年のあやとり協会の会報「あやとり No.8」
の「あやとりマンダラ(2) ・・・宍戸行夫」の冒頭に紹介されている、「二つの鱗」を取ってみました。
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二つの鱗
(c).1981 SHISHIDO Yukioこの文献では、このあやとり作品の左右にある8の字のような装飾を「エイト展開」と呼んでいます。エイト展開の手順は、石野さんのあやとりサイトに紹介されている、同じく宍戸さんのXという作品の手順8から手順18までに相当します。
これを、中指の構えからやってみました。
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中指の構えからエイト展開 これはどこかでみたことのあるかたちでした。
(つづく) <おまけのひとこと>
明日は職場で100人くらいの人を対象とした技術発表会で1枠(30分)担当していて、今日はその準備をしなければなりません。資料は、イメージと素材はあるのですが現時点では何もできていいません。午後はそれをやらないと明日困ります。
11月8日(月) 折り紙の「きのこ」、あやとり「X」
折り紙の話とあやとりの話です。
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こちらの折り紙の「きのこ」の簡単な折り方というのを見て、まねして折ってみました。
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きのこ ドット模様の茶色っぽい折り紙用紙を使うときのこっぽいかなと思ったのですが、ドットが規則的で細かいので、いまひとつでした。
ちなみに裏側はこんな感じです。
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きのこ(裏) きのこの傘の部分の輪郭がなめらかになるように、お手本より少し細かく折っています。また、自立するように、きのこの根元の部分にすこし小細工をしています。でもあまり安定は良くありません。
○
昨日も言及した、宍戸さんのXという作品を改めて取ってみました。
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X
(c).1981 SHISHIDO Yukioこれは途中で中央にX字型の構造ができて、そこから「エイト展開」するのですが、中央にX字型というと、人差し指の構えからエオンガツバボしても同じような構造を作ることができました。
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hh211108-1
出来上がりが「X」に似ている
- 人差し指の構え
- エオンガツバボ
- Xが掛かる掌の糸の中央を中指で取る
- エイト展開
オリジナルの「X」は、Xの文字の下側が絡み付いていますが、エオンガツバボから取った「Xもどき」のほうはXの文字の上側が絡んでいます。
エイト展開、ここからさらにTTF拡張処理(2本指→4本指拡張)をしたりできそうです。
(つづく) <おまけのひとこと>
昨日、「はじめまして、私とのやり取りは…」というタイトルのメールが来ました。「私とのやり取り」を「私のあや取り」と読み間違えて、てっきりあやとり協会の関係の方からのメールかなあと思ってしまいました。単に変なサイトに誘導しようとする迷惑メールでした。
11月9日(火) あやとり「エイト展開」と「大きな星(裏)」
今日はあやとりの話だけです。
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昨日、シシドユキオさんの「X」と似た「Xもどき」をエオンガツバボ開始処理から作ってみました。開始処理としてのエオンガツバボのページに書いたのですが、人差し指の構えからエオンガツバボを取ると交差型になりますが、それは簡単に平行型に変えることができます。
交差型エオンガツバボ 平行型エオンガツバボ
そこで、平行型からも「エイト展開」してみました。
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Xもどきhh211109-1
平行型
- 人差し指の構え
- エオンガツバボ(交差型)
- Xが掛かる掌の糸の中央を中指で取る
- エイト展開
- 人差し指の構え
- エオンガツバボ(平行型)
- 中指で掌の糸を中央の平行な輪の間で取る
- エイト展開
「イヌイットの網の終了処理」をすると、両側の8の字型が2つになって面白いです。
交差型エオンガツバボ→イヌイットの網 平行型エオンガツバボ→イヌイットの網 ○
昨日、中指の構えから「エイト展開」すると大きな星みたいなパターンになることをご紹介しました。以前ご紹介した大きな星(裏)の手順が「エイト展開」になったら面白いなあと思って試してみたのです。
うまくかたちが整いませんでした。まあでもこれはこれでべつのあやとり作品と言っても良いかもしれません。
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ちなみに上記の途中のこのパターン、これもなかなかきれいだと思いました。
<おまけのひとこと>
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hh211109-4
- 人差し指の構え
- エオンガツバボ(平行型)
- 人差し指で掌の糸を、平行な輪の間で取る
- 7つのダイヤモンドの逆展開
昨日の午前中の発表は、まあ可もなく不可もなく、といったところでした。ありがたいことに忙しいのですが、ちょっとオーバーワーク気味です。
11月10日(水) 木製パズルの画像、あやとり「五角星」他
webで見かけた木製パズルの話とあやとりの話です。
○
IQ Wooden Brain Teaser Burr Puzzles Traditional Intelligence Educational Wood Game For Adults Children (大人と子供のための、伝統的な知的教育ゲームであり頭の体操である木製の組木パズル) というカテゴリの中に、こんなパズルが紹介されていました。
1つのピースはこんなかたちのようです。
どうやら、立方体の3つの面に、直角二等辺三角形が貼り付けられている構造のようです。これを8つ組み合わせて、大きな立方体(直角二等辺三角形の厚みの分だけの十字型の隙間ができますが)を作るパズルのようです。
写真ではピースの構成がわかりません。適当な構成で、解の数を調べてみたくなりました。こういう時にいつもお世話になっているBurrToolsを使うことにしました。 BurrTools は様々な基本格子を選ぶことができますが、シンプルに単位立方体が並んでいる三次元格子でこのパズルと論理的に等価なものを作ってみることにしました。
(つづく) ○
1981年のあやとり協会の会報「あやとり No.8」の「あやとりマンダラ(2) ・・・宍戸行夫」
に紹介されている、「エイト展開」で終了する一連の幾何学模様のあやとり作品が素晴らしいのです。「五角星」を取ってみました。
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五角星
(c).1981 SHISHIDO Yukio
この時代、まだ原稿が手書きです。描かれている美しい図も含め、大変な労力だと思います。こうして記録を残して下さっていることにとても感謝していますし尊敬します。
宍戸さんが使われている表記は以下のように記事の冒頭にまとめられています。
指は番号で表す 1. 親指 2. 人差し指 3. 中指 4. 薬指 5. 小指 ra 手前側 (radial) ul 向こう側 (ulnar) L 輪 (Loop) PL 指の根元側の輪(Proximal Loop) DL 指の指先側の輪(Distal Loop) IIL 2つの輪この単語についてはこちらにちょっとだけ書きましたが、国際あやとり協会(日本)のあやとりトピックス061をご覧ください。
私はなんとか宍戸さんの表記を読み解くことができるようになりました。新たなスキルを1つ身につけた感じです。一応自分用には、普段使っている石野さん流の表現で取り方を記録しています。
○
もう1つおまけです。
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hh211110-1
- ナバホの構え
- 小指で、人差し指の輪の下を通って親指の向こうの糸を取る
- 薬指で人差し指の向こうの糸を取る
- 内側3本指でガイアナの星
- 中指を外す
- 薬指の輪を小指に、人差し指の輪を親指に移す
- 親指を逆二重ナバホ、小指を逆ナバホ
(親指も小指も外周の下になるように斜めの糸を外す)これは特に気に入っているというわけではありませんが、「ナバホの構え」から何かできないかなと思って試していた時にできたものの1つです。
<おまけのひとこと>
石野さんのあやとりしてみようのサイトに紹介されているあやとり作品が581に増えていました。嬉しいです。こんな素晴らしい情報を公開して下さっていて本当に感謝です。
11月11日(木) 立方体フレームパズルの研究(その1)、あやとり「土星」他
立体パズルの話とあやとりの話です。
○
昨日の木製パズル、名前が無いのが不便です。仮に勝手に「立方体フレームパズル」と呼ぶことにしました。このフレームパズルは立方体の骨格のうち、8つの頂点がピースになっていて、12本の稜が2分割されてそれぞれの頂点に半分ずつくっついている構造になっています(わかりにくい説明ですみません)。
1本の稜について考えてみました。立方体の頂点を構成する小立方体を半透明にして、2つに分けられた稜を赤と青で表しています。以下の2ピースが連結すると
こうなります。
これを、BurrToolsで計算できるように、3次元の立方体の格子で表現してみます。こうすればよいということがわかりました。
これは、上の直角二等辺三角柱のものと論理的には等価になります。
8つのピースすべてを描画してみました。それぞれの半透明な立方体には、赤2つ、青2つ、緑2つの「ジョイントピース」が付いていることになります。
これで BurrTools で計算するためのモデル化の方針が決まりました。
(つづく) ○
1981年のあやとり協会の会報「あやとり No.8」の「あやとりマンダラ(2) ・・・宍戸行夫」より、「土星」です。これは前半は宍戸さんの空飛ぶ円盤の前半部分になっていて、そこからXで説明されている「エイト展開」をすると作ることができます。
この「空飛ぶ円盤」の前半部分は、親指小指で「始めの構え」のような長方形の外周があって、そこに8の字型に糸がかかっているので、勝手に「外周に8の字の開始処理」と呼ばせていただきます。
○
これを見ていたら、以前ご紹介した上下に2つの8の字を連想しました。ここからエイト展開してみました。
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hh211111-1
- 上下に2つの8の字
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- エイト展開
うーむ、やっぱり「土星」のほうが美しいかな。
○
先日の「あやとり会」で、「四段ばしご」の最後の処理を「オーセージ展開」と呼んだのです。そうしたら石野さんがそれを気にかけて下さって、あやとり協会のシャーマンさんに問い合わせて下さったそうです。その結果「オーセージ展開」という呼び方は一般的ではないこと、共通の呼び名は普及しているものがまだなさそうだということ、しいて言えば「はしご展開(Hashigo Extension)」というのが無難ではないか、ということのようでした。
10年前、日本数学協会の機関誌「数学文化 第16巻(2011)」にあやとり表記法を紹介する記事を書いたときに、堂々と「オーセージ展開」という用語を使ってしまいました。まずかったかなぁ…
今後は私も「はしご展開」という用語を使うようにしようと思いました。過去のページに注釈を入れるのは大変なので、当面はそのままにしようと思います。(一生やらないかも)
<おまけのひとこと>
来週の週末、11月20日(土)、21日(日)に、パナソニックセンターの「アケルエ」でワークショップをやらせていただくことになりました。当初は今年の4月を予定していて、それが7月に延期になり、9月に延期になり、ようやく実施できそうです。教材は以前のものと同じですが、スライドで表示する関連トピックを何にしようか、多面体の構造を生かした面白い話ができるといいなと思って考えています。
11月12日(金) 立方体フレームパズルの研究(その2)、あやとり「六角星」他
立体パズルの話とあやとりの話です。
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昨日「立方体フレームパズル」と勝手に名付けた構造を、BurrToolsでモデル化して解析してみました。1つは解があるように適当にピースを設計してみました。
たまたまこのピースのセットでは10解あることがわかりました。
このパズルは、立方体のある頂点の回りの3つの正方形の面に、直角二等辺三角形を3つ貼り付けたかたちになっています。
まずは3つの直角二等辺三角形の位置の対称性が高いピースについて考えてみました。
Type.A Type.B
Type.C Type.D これらのうち、どれをいくつ組み合わせると、目的のかたち(大きな立方体)ができるでしょう?
(つづく) ○
1981年のあやとり協会の会報「あやとり No.8」の「あやとりマンダラ(2) ・・・宍戸行夫」より、「六角星」です。「エイト展開」はXの後半をご参照ください。
「上下に2つの三角」の開始処理、というのは私が勝手に呼ばせてもらうことにした呼び名です。「六角星の開始処理」のほうが適切かなとも思ったのですが、この開始処理から様々な装飾や終了処理をしてゆくと、必ずしも六角星にならないことも多いので、素朴に「2つの三角」を選びました。
この開始処理、手順が左右で非対称なのが面白いのです。
人差し指の構えを通常通り右手を先に取って、左はナバホ取り、右は二重ナバホ取りすると「2つの三角」になります。逆に、左を二重ナバホ取り、右をナバホ取りにすると、外周の親指同士、小指同士にパターンが引っかからなくなって、水平な二本の輪になってしまうのです。
最初の「人差し指の構え」を左手を先に取ると、この関係は逆転します。
上の右の「上下に2つの水平な輪」は「平行型エオンガツバボ開始処理」によく似ていますが、絡み目の位置が異なります。
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この、「上下に2つの水平な輪」から「7つのダイヤモンドの終了処理」をしてみました。
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hh211112-1
- 「上下に2つの水平な輪」の開始処理
- 人差し指の構え(←右手が先)
- 親指の輪を手前へ半回転ひねる
- 小指の輪を向こうへ半回転ひねる
- 左親指で左人差し指手前の糸を取って二重ナバホ取り
- 左小指で左人差し指向こうの糸を取って二重ナバホ取り
- 右親指で右人差し指手前の糸を取ってナバホ取り
- 右小指で右人差し指向こうの糸を取ってナバホ取り
- 7つのダイヤモンドの終了処理
2つの水平な小さな輪の長さを整えたり変えたりするのがちょっと大変なので、全体のバランスを調整するのにやや手間取ります。
<おまけのひとこと>
今日は更新が少し遅い時間になってしまいました。
11月13日(土) 立方体の稜の4点(その1)、あやとり「二つの鱗」からの発展、他
三次元幾何の話とあやとりの話です。
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昨日のパズルの話はいったん保留して、別の話です。こんな図を見かけて、面白いと思ったのです。青い四角形の4つの頂点は、立方体の稜をそれぞれ3:1に内分しています。
あとあと議論しやすいように、頂点に名前を付けておきましょう。
1辺の長さが1の単位立方体 ABCD-EFGH を考えます。稜BA, BC, HG, HE を 3:1 に内分する点をそれぞれ P,Q,R,S とします。このとき、
- P,Q,R,S の4点が同一平面上にあることを示して下さい
- 四角形PQRSが正方形であることを示して下さい
- 正方形PQRSの1辺の長さが1より大きいことを示して下さい
(つづく) ○
先週、完成写真だけご紹介した「あやとり No.8(1981)」の「あやとりマンダラ(2) ・・・宍戸行夫」の「二つの鱗」、取り方を載せていなかったのでご紹介することにしました。(「エイト展開」はXの後半をご参照ください。)
「二つの鱗の開始処理」というのは私が勝手に呼ばせてもらっている名前です。ここに書いた取り方の手順は、オリジナルの宍戸さんの文言そのままではなくて、自分流(石野さん流)に表現を変えています。
○
日本の伝統文様に「鱗文様」というのがあります。
鱗文様 宍戸さんの「二つの鱗」は、この鱗文様を念頭に名付けられていると思います。鱗文様についてちょっと検索してみたら、我妻善逸の羽織にも描かれた「鱗文様」の三角形は女性の心に潜む鬼を表していた?歌舞伎の衣装で検証! という記事がありました。安珍清姫伝説、恐ろしい哀れな話です。「道成寺繪巻」の絵が怖い。
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「二つの鱗」の開始処理からいろいろ装飾を加えてみました。
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hh211113-1
- 「二つの鱗」の開始処理
- 親指・小指を外側に1回転ひねる
- 中指を向こうへ半回転ひねる
- 焼け焦げた葉のククイの処理
- DTF拡張処理(二重の2本指→4本指)
- 親指・小指を外側に1回転ひねる
- タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理
肝心の中心の「二つの鱗」がきれいにかたちが決まりません。ここにはあまり張力がかからないのです。(周辺の装飾をゆったりした感じにしているため。) あと、左右の大きさが非対称なのも気に入らないのですが、そこを調節するのが面倒だったので、このくらいで妥協しました。あらためて、オリジナルの「二つの鱗」はバランスが良くて美しいなあと思うのです。
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あやとり協会の吉田さんから、宍戸さんの「土星」「六角星」を取ってみました、というお便りをいただきました。また、エイト展開以外の終了処理との組み合わせも試して下さって、「Xもどき」(交差型エオンガツバボ開始処理)から「焼け焦げた葉のククイの終了処理」の写真もいただきました。ありがとうございます。将来の自分のための覚書と割り切ってはいるのですが、それでも自分以外の方がここを見てあやとりを取ってみて下さっているということはとても嬉しいことです。
<おまけのひとこと>
私の記録間違いでなければ、昨日はいつもの倍くらいの方がこのサイトをご覧くださったみたいです。(といってもそんなにたいした数ではないですが。)ありがとうございます。
11月14日(日) 立方体の稜の4点(その2)、あやとり「パルサー」、他
三次元幾何の話の続きとあやとりの話です。
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昨日の、立方体の4つの稜の上に取った点を結んでできる図形が正方形であるという話を説明しておきます。
1. P,Q,R,S の4点が同一平面上にあること
4点PQRSの「対角線」PR,QSを結んでみます。PQRSが同一平面上になければ、この2本は「ねじれ」の関係になるはずです。でも、立方体の対称性から、この2本は立方体の中心で交わります。ということはこの4点は同一平面上にあることは明らかです。
2. 四角形PQRSが正方形であること
四角形PQRSの向かい合う辺の長さが等しい(=平行四辺形である)ことは明かだと思います。隣り合う2辺、SR と SP の長さを計算してみましょう。
ご覧の通り、等しくなります(もっと簡単にできますが、このままにしておきます)。ということは少なくともPQRSは菱形です。
さらに、この4点は立方体の中心からの距離が等しいです。(菱形なので、対角線は交点で二等分されます。また、立方体の中心をOとすると、対称性から△OPQが二等辺三角形であることは明らかです。)ということはこの4点は円に内接します。円に内接する菱形は正方形しかありません。
3. 正方形PQRSの1辺の長さが1より大きいこと
これは、先ほどの計算でPQRSの1辺の長さが √(18/16) でしたから、1より大きいことは明らかです。
(つづく) ○
あやとり協会の会報「あやとり No.8」(1981) の「あやとりマンダラ(2) ・・・宍戸行夫」より、「パルサー」です。「エイト展開」はXの後半をご参照ください。これは、簡単なオープニングからエイト展開を2回やります。
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パルサー
(c).1981 SHISHIDO Yukio
- 中指の構え
- 中指の輪を手前へ半回転ひねる
- 左右の中指の輪を交換する
- エイト展開(1回目)
最後の人差し指は外さず中指に移す- エイト展開(2回目)
若干かたちが整いにくいですが、これも美しいパターンだと思います。先日の「土星」
とちょっと似ています。
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最初の構えから左右の指の輪を交換する、といえば、あやとり協会の吉田さんからこんな手順を教えていただきました。ありがとうございます。自分でも取ってみました。
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8888
吉田@ISFA
- 人差し指の構え
- 左右の人差し指の輪を交換する
- エオンガツバボ
最後に人差し指の輪を中指に移す- エイト展開
人差し指の輪を交換しなければ、「X(もどき)」でした。(余談ですが、宍戸さんが1981年の「あやとり No.8」にこの交差型の作品を発表されたときには、「筋交い(あるいは六十四)」と名付けておられました。8×8=64、ですね。)
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hh211108-1(再掲)
Xもどき私は「8」という数字には思い入れがあるので、この “8888” は気に入りました。「左右の人差し指の輪を交換してからエオンガツバボ、エイト展開」という表現だけでこのあやとりが伝わる、再現できる、というところがとてもいいなあと思うのです。
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先日「あやとり会」でお目にかかった愛知県のKさんから、YouTubeのチャンネル taharakite と blog 趣味の部屋 (fc2.net) を教えていただきました。ご了承いただきましたので、紹介させていただきます。
音楽教育のスズキ・メソードという音楽教室があります。これは乳幼児が言葉を覚えるように音楽を学ぶという思想の音楽教育で、楽譜ではなくひたすら耳で聴いた音を自分が再現するという手段で音楽を身につけるそうです。あやとりも同様に、目の前でやってもらって、文字通り手取り足取り教わることで伝承されてきたのだと思います。動画であやとりを学ぶ、というのはそのスタイルに近いのだろうなあと思います。
確かに、あやとりを言葉や図だけで伝えようとしても難しいことはあります。「エイト展開」も私は最初はよくわからなくて苦労しました。「あやとり会」で見せていただいたKさんの技も、その時には充分に理解できませんでした。こうして動画で見せていただくと「なるほど」と思いました。ありがとうございます。
<おまけのひとこと>
先日、11月6日の「あやとり会」でお話をさせていただいたときに使った資料をpdf化して提供しようと思って準備をしているのですが、来週のワークショップの準備や本業のほうの仕事が忙しくて(でもこのサイトの更新はしていますが)なかなか手が回りません。すみません。
11月15日(月) 立方体の稜の4点(その3)、あやとり「八角星」、他
三次元幾何の話の続きとあやとりの話です。
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1辺の長さが1の立方体を考えて、稜を3対1に内分する4点を図のように取ると、その4点を結ぶと正方形になっていること、またその辺の長さは1より大きいことを示しました。
ということは、このようにこの正方形が水平になるようにして、1辺の長さが1の同じ立方体をまっすぐ下ろしてくると
こんな風に立方体を通り抜けることができることになります。この、「単位立方体に、それと合同な立方体が通り抜けられる穴を開けられるか?」という問題は、「ルパート王子の立方体」(Prince Rupert of the Rhine(1619-1682)) として知られている問題です。これはその解の1つです。
立方体が通り抜ける「穴」を開けた立方体を図示するとこんな風になっています。
さて、それでは立方体以外の正多面体ではどうでしょうか?
同様に、自分自身が通り抜けられる「穴」を開けられるでしょうか?
(つづく) ○
昨日、「パルサー」というあやとり作品をご紹介しました。これは「エイト展開」を2回行うものでした。今日は、同じく「あやとり No.8」(1981) の「あやとりマンダラ(2) ・・・宍戸行夫」より、「八角星」です。これはさらにシンプルで、中指の構えからエイト展開を2回やるだけです。
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八角星
(c).1981 SHISHIDO Yukio
- 中指の構え
- エイト展開(1回目)
最後の人差し指は外さず中指に移す- エイト展開(2回目)
最後に「お手伝いの人」に親指同士、小指同士水平に結ぶ外周の糸の中央付近をつまんで外側に広げてもらいます。中央に2つの正方形が重なった美しいパターンができます。
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昨日、あやとり協会の吉田さんから「8888」というあやとりを教えてもらったことをご紹介しましたが、終了処理を変えると「888888」になりました。
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8888(再掲)
吉田@ISFA888888
hh211115-1
- 人差し指の構え
- 左右の人差し指の輪を交換する
- エオンガツバボ
最後に人差し指の輪を中指に移す- エイト展開
- 人差し指の構え
- 左右の人差し指の輪を交換する
- エオンガツバボ
- イヌイットの網の終了処理
中央部分を「二つの鱗」にすると、「888」、「88888」になりますね。面白い。
<おまけのひとこと>
「ルパート王子の立方体」も検索すると山ほど情報が出てきます。webの黎明期から比べると、Netの情報は爆発的に増えています。逆に、質の高い情報や良い情報を探すのが難しくなっているのかなあと思います。