以前の「ひとこと」 : 2025年7月前半
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7月1日(火) コファー錯視(その2)
錯視の話のつづきです。
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先日ご紹介したコファー錯視ですが、この画像、こんな風に作っているのだと思うのです。ゆっくり変化するアニメーションを作ってみました。
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長方形の板チョコのように見える認知はどのタイミングで現れるでしょうか?(もちろん全員が同じではないはずです。)
一方下のアニメーションは、変化させる部分の変化量をすこし揺らがせてみたものです。
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これはどんな風に見えるでしょうか?
<おまけのひとこと>
時間がないので簡単な更新です。
7月2日(水) 正方形の正方形分割(その1)
正方形を正方形に分割する問題です。
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2002年に正方形による分割という記事を書いたことがあります。正方形を、全て異なる大きさの正方形に分割するという「ルジンの問題」をご紹介したものです。そのときの引用元の “別冊「数理科学」パズルI 1976年11月 サイエンス社 より pp.100-105『長方形の正方形による分割』大附辰夫” を久しぶりに眺めてみたら、「全て異なる」という条件を外した場合の自明でない例が出ていました。先に問題のほうをご紹介します。
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上の13枚の正方形で大きな(23×23の)正方形を作ってください 1辺の長さが1,2,3,4,5,7,11,12 の8種類の正方形を考えます。サイズが4と7と12は1枚ずつ、それ以外の5種類は2枚ずつ、全部で13枚の大小さまざまな正方形を用意します。これら13枚を適切に並べると1辺の長さが23の大きな正方形ができるのです。方眼紙と鉛筆で解いても頑張れば解けるレベルの問題だと思います。
正方形を正方形に分割するとき、「全ての正方形のサイズが異なる」という条件を付けたものが「ルジンの問題」で、これは最小解が21個でした。同じサイズの正方形が現れても良いことにすると、正方形を2×2の4つの合同な正方形に分割するのが最小解ですが、これは自明で面白い解ではありません。少なくとも複数のサイズの正方形を含む、とすると、1辺の長さが3の正方形を、2×2が1つと1×1が5つの6個に分割する、というのが最小解かなと思います。これもあんまり面白いとは言えないと思います。
逆に、23×23の正方形を2種類以上のサイズの正方形に分割することを考えると、上の図の13個というのが最小解でしょうか? たぶんそうだと思うのですが、ちょっと考えてみようと思います。
(つづく) ○
確か6月22日(日)の午後だったか、妻が「庭の木の枝に小鳥がとまっていて、親鳥がエサを運んで食べさせている!」と教えてくれました。カメラを持って見に行くと、部屋の中からすぐ目の前の木の枝にふっくらした幼鳥(ヒナ)がとまっていました。
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しばらく眺めていたのですが、親鳥が帰ってくる前にヒナのほうは写真が撮りにくい枝の陰に飛び移ってしまいました。あきらめて観察するのはやめたのですが、妻はその後までずっと見ていて、もう一度エサを食べさせているところを見ることができたそうです。
ちなみにこの鳥の種類はなんだろうと思ってChatGPTやcopilotやGrokなどに画像を入れてみたのですが、みんな答は違いました。幼鳥ですし正面から見た画像ですし、判別が難しいのかなと思いました。
<おまけのひとこと>
今日は健康診断です。昨夜夕食を食べてから何も食べずに出かけます。昨日も病院に行って採血しましたが、今日も採血です。あんまり嬉しくありません。
7月3日(木) 正方形の正方形分割(その2)
正方形を正方形に分割する問題のつづきです。
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昨日の23×23を8種13個の正方形に分割する答を載せます。特に隠さなくてもいいかなと思うのでそのまま載せます。
13個 (8種類:同種最大数2) 同じ23×23の正方形を、他のやり方で正方形に分割してみました。このとき、解の好ましさとして
- 用いる正方形の数が少ないほど良い
- 用いる正方形の種類(サイズ)が多いほど良い
- 同じサイズの正方形の数(同種の最大数)が小さいほど良い
という条件で考えたいと思います。23×23=529なので、単位正方形529に分割できるのは自明ですがこれは面白くないです。なので、使う正方形の数はできるだけ少なくしたいのです。たとえば22×22を1つ使って、残りの45個を単位正方形で埋めると使う正方形は46個まで減らせます。上記の13個より良い解はあるのでしょうか。(なさそうですが)
以下、完全な手作業で見つけた解です。「たまたま見つかった」だけで、もっと良い解があるかどうかは未確認です。また、以下の図ではそれぞれの図の中では同じサイズの正方形は同じ色にしていますが、図をまたがると同じ色でも違うサイズになっている場合があります。
13×13を使った例は、正方形14個の解がありました。
14個 (7種類:同種最大数5) 14×14を使った例も、正方形14個の解がありました。
14個 (7種類:同種最大数3) 15×15を使った例では、正方形14個の解が2種類見つかりました。
14個 (7種類:同種最大数3) 14個 (6種類:同種最大数3) 最初に決めた評価指標では、使用正方形の種類が多いほうが好ましいと決めたので上の左側のほうがスコアが良いことになりますが、右側の1,2,4…の2のべき乗の正方形を3個ずつ使っている系列が美しいのでそれも載せました。
16×16を使った解にも14個のものがありました。
14個 (7種類:同種最大数4) 17×17以上の正方形を使った解は、14個(以下)のものは見つけられませんでした。
改めて冒頭の13個の解は美しいなあと思います。
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今朝の新聞に、「夢見た科学の未来 今なのか」(穂村弘)というコラムが載っていて興味深く読みました。昔は「科学」というのは「夢」「未来」「平和」「正義」といったイメージと同義であるかのごとく使われていけれど、今はそうではないのではないかと感じる、という内容でした。確かに「原子力」に関する世の中のイメージや、「コロナワクチン」に関する世の中のイメージは、科学に全幅の信頼を置いていた時代からは明らかに変化してきていると思います。
今、科学技術という観点で最も変化が激しいのはAI(人工知能)関係だと思います。改めて考えてみると、AIって科学なのでしょうか? 何を科学の定義とするのでしょうか? 仮に自分が尋ねられたらこう答えるかなあと思いながら、AI(copilot と chatGPT、どちらも無料で使える範囲のもの)に以下の質問をしてみました。
AI(人工知能)というのは学問の分野としてはどこに分類されるのが適切なのでしょうか。 疑問に思った理由は、「科学(science)」の定義を考えてみたとき、AI、特に現在とても進化しているLLMをはじめとする生成AIは「科学」なのだろうか? と思ったのです。
- 「科学」の定義は何でしょうか?代表的な定義の例をいくつか教えてください。
- 「数学(mathematics)」の定義は何でしょうか? 数学は科学に含まれるのでしょうか?
- 生成AIは科学に含まれるのでしょうか、数学に含まれるのでしょうか、それともそれ以外の分野に属すると考えるほうが適切なのでしょうか、それとももしかすると独立した学問分野と考えるのが適切なのでしょうか。
おおむね同じような回答が得られました。無料のシステムに入力できるので、やってみると面白いです。(問いの中に「数学」を混ぜたのは私の趣味です。)
<おまけのひとこと>
上記のようなプロンプトを入力するときには、私としてはPCでキーボード入力というのが一番楽です。
7月4日(金) 雑談
7/4(金)から週末にかけて忙しくて更新ができませんでした。7月6日(日)の夜に 7/4(金)〜7/7(月)の4日分をまとめて書いています。
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ふと、英語の “Hold up!” と日本語の「お手上げ」の類似点・相違点が気になったのです。 Hold up! と言えば、誰かが拳銃を突きつけて「手を上げろ!」(逆らうな、武器を捨てろ、抵抗するな)というようなシーンが目に浮かびます。一方日本語の「お手上げ」は、実際に両手を上に上げるという動作というよりは「やれることをやり尽くした、あきらめた」という状態を表しているように思います。
最近はこういう時はちょっと考えてみてから、LLM(大規模言語モデル)に尋ねてみることが多いです。
日本語で「お手上げ」という表現があります。「降参する」「とるべき手段が見つからずあきらめる」といった意味の言葉だと思います。英語の hold up と日本語の「お手上げ」はほぼ同じニュアンスのある言葉なのでしょうか? それとも微妙に使われ方が異なるのでしょうか? そもそも「両手を上にあげる」というのは武器を持っていないことを表すジェスチャーなのだと思いますが、日本と英語圏で独自に類似な表現が生まれてきたのでしょうか、それとも翻訳によって片方の文化がもう片方(例えば英語圏から日本)に広まったのでしょうか?日本語と英語ではニュアンスが異なる、英語のほうが実際に手を上にあげる動作を指すことが多い、英語だと「あきらめる」に相当する表現は他にいろいろある、といった回答が返ってきて面白かったです。たとえばボクシング由来の I'm throwing in the towel. (私はタオルを投げ込みます=降参します)、という表現がある、というのを読んで、自分がもしこれを対面で言われたら即座に意味が理解できるだろうか、と思いました。ボクシングでセコンドがタオルを投げ入れる意味は映画やマンガなどで知ってはいます。検索してみると日本語でも使われる例があるみたいです。
<おまけのひとこと>
LLMは言語モデルで、もともと翻訳や要約などが得意だったので、こういう対話をするのは楽しいです。
7月5日(土) ラーメン迷路
迷路の話です。
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デイリーポータルZを見ていたら、難しい迷路を作りたいので麺を描き写した(トルー, 2025/07/05) という記事があって楽しく読ませていただきました。
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ラーメン迷路 袋麺の乾麺の写真を撮ってPCに取り込み、それをトレースして作った迷路だそうです。作業時間は1時間程度とのことで、感心しました。私も子供のころ、迷路を作る(描く)のが好きでした。
<おまけのひとこと>
高校生の時にもB5サイズの用紙いっぱいに迷路を描いて、同級生に解いてもらったりしたことがありました。のどかな時代でした。
7月6日(日) 正二十面体のカプセルトイ
多面体のおもちゃの話です。
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毎週日曜日は市役所の近くで資源ごみの収集をしているので、ビニールごみやビンなどを出しに行ったついでにちょっと買い物をしてきました。カプセルトイのコーナーを見ていたら、半透明な正二十面体が200円だったので1つ試しに買ってきました。5色あるようなのですが黄色が出ました。YELLという会社が作っている「フロスティストレッチ ジュエル」という製品のようです。googleで検索してみたのですがほとんど情報がありませんでした。
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写真 1 実はこれ、やわらかい素材でできていて、弾性変形するのです。指でお煎餅のように押しつぶしても、数秒で復元します。
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写真 2 「食べ物ではありません」という注意書きがありましたが、色といい手触りといい、ゼリーやグミの仲間のお菓子のように見えます。危険です。また、紙や木材の上で長時間放置するとくっついて取れなくなるそうです。いろいろな色のものを並べたらきれいかなと思ったのですが、後々扱いに困りそうなので1つで十分かなと思いました。
<おまけのひとこと>
多面体を見かけるとつい買ってしまいます。
7月7日(月) プリント生地
手芸屋さんに行きました。
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ちょっと思い付いたことがあって手芸屋さんに行きました。いきなりこんなプリント生地(端切れ?)が半額になっていました。この生地を見た瞬間に買い物かごを持ってきてかごに入れました。
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写真 1 ちょっと広げてみました。
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写真 2 検索してみたら、この生地は楽天で購入できるようなのです(コットンブロード 数学)。「幼稚園、小学校のもちものに最適!」と書かれていました。うーん、この内容だと対象年齢はもっと高いのではないでしょうか。
<おまけのひとこと>
買ったはいいがどうしたものか…
7月13日(日) これは何に見えますか?
すみません、更新が滞りがちです。7月17日(木)の朝に7/13(日)〜7/17(木)の5日分をまとめて書いています。
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読んでいた論文にこんな図が出てきたのです。
中央の白い部分はどんなかたち? これ、どのように見えますか?
(つづく) ○
昔、庭にちょっとだけ植えたワイルドストロベリー(イチゴ)が庭中に広がっています。がんばって収穫すればコップ1杯くらいにはなるかもしれませんが面倒でそのままにしています。
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これは給湯器のボイラーのすぐ脇に実っていたものです。
<おまけのひとこと>
庭がひどいので、少しずつ庭仕事をしています。
7月14日(月) 出張
昨日の「何に見えますか?」の解説をすぐ下に書くのがためらわれたので、どうでもいい話題をはさみます。
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7月4日(金)の午後に、勤務日としては翌日にあたる7月7日(月)に出張することが決まってあわただしく準備をして出張してきました。実験室や実験装置の見学をさせていただいて打ち合わせをする目的だったのですが、先方の都合で1か所目は20時から、2カ所目は21時半からの打ち合わせでした。2カ所目の打ち合わせから徒歩圏内でホテルを探したら、西武新宿駅のすぐ前のホテルが9千円台で予約できました。月曜日ならばこの程度の金額で泊まれるというのはありがたかったです。
それはともかく、打ち合わせが終わったのが23時近くで、私としてはいつもならとっくに寝ている時間です。見学と打ち合わせ自体はとても面白かったので全く眠くはならなかったのですが、終わった後でコンビニでアルコール飲料を買ってホテルでリラックスしました。アルコール度数が高い缶チューハイを2本買ったのですが(サントリーの製品でした)、ふと見ると飲み口のかたちが違うのです。同じメーカーなのにこういうこともあるんだ、とちょっと驚きました。
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翌日は夜(18時から)のリモート会議に自宅から参加する予定だったので、新宿14時発の特急列車に乗りました。13時半過ぎに新宿駅に着きました。こんな時間に新宿駅で時間があるのは珍しいです。いつもならものすごく長い待ち行列ができているEATo LUMINE(イイトルミネ)の羅家 東京豚饅が2人しか待っていなかったので、この機会に購入してみました。
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特急列車もすいていて快適でした。
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買って帰ったその日の夜にいただきました。期待通りとても美味しかったです。長時間並んで買う気にはならないので次の機会がいつになるかわかりませんが、また買いたいと思いました。
<おまけのひとこと>
東京は夜もとても暑かったです。
7月15日(火) 立体を平面に描いた図の主観的輪郭
一昨日の「何に見えますか?」の解説です。
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2005年1月に、こんな図をご紹介したことがありました。
図 1 : カニッツァの三角形 こちらは有名なカニッツァの三角形です。この絵は過去にこの「あそびをせんとや」でも何度かご紹介しています。
これに基づいて、こんな絵を描いてみた方がいらっしゃるそうです。
図 2 : 何に見える? ちょっと調べてみたら、この図の元の論文が閲覧できることがわかりました。こちらの Illusion volumes from conformation(Peter Ulric Tse : Perception, 1998, vol.27 pp977-992)です。この論文のFig.10 の (d) を参考にして描いたのが上の図2だったのでした。
Fig.10 (d) of above paper カニッツァの三角形は平面図形(三角形)の主観的輪郭の図でした。上の図は立体である四角錐の主観的輪郭図形なのです。でもこれを「四角錐」と読み取るのは、何らかの文化的背景が必要なのではないかと思います。
私が描いた図2と違って、四角錐の頂点が白抜きではっきり描かれています。これはかたちを理解する上で大きな手掛かりになっていると思います。
ちなみに一昨日に載せた図ですが、同じ論文の Fig.22 からの引用でした。
Fig.22 of above paper 黒い部分がなければ、上図左のようにワイングラスのようなかたちに見えると思います。黒い部分があるため、この図は多義図形としての解釈が成立します。白い円柱に対して黒いイモムシみたいなものが巻き付いている、という解釈と、黒い楕円形の敷物があって、その手前にワイングラスみたいなかたちのものが置かれている、という解釈が可能です。この2つの解釈は同時には成立しません。
<おまけのひとこと>
多義図形や図と地の問題はとても面白いです。