以前の「ひとこと」 : 2003年9月前半
9月1日(月) 新シリーズ開始
9月になりました。今日からは新しい連載をはじめたいと思います。 まず、突然ですが問題です。次の図は何を表したものでしょうか?
すみません、細部をきちんとご覧いただきたくて、いきなり大きな画像です。ファイルサイズは18kbyte程度で、それほど大きくはないのですが・・・
(つづく) <おまけのひとこと>
そういえば先日、このページのトップにあるカウンタで、57577番というのを自分で見ました。三十一文字です。ちょっと嬉しかったです。
今日掲載した画像(CGです)が出来たときにはとても嬉しかったです。ちょうど去年の今頃は、この「あそびをせんとや」というページの公開を始めてから1年半、カウンタが1万5千くらいということで、ちょっとしたプレゼントをしました。 実は今年も何かやろうかと思っていたのですが、今回はパーツなどを用意する時間がありません。そこで、もしご希望があれば、今日の画像や、明日以降いくつかご紹介する予定の類似の画像を、高解像度のCGにして葉書に印刷してポストカードにしたもの2〜3枚を1セットにして、数セットを用意しようかと思っているのですが(まだやっていませんが)、ご希望はありますか? (あんまりなさそうですね)
ちなみにCGなので、解像度は上げることができます。とりあえず1枚だけ、6400×4800ピクセルの画像を作ってみて、それを印刷してみました。3,000万画素相当です。葉書に印刷するには少々オーバースペックでしたが、なかなかきれいにできたのではないかと思っています。
9月2日(火) CG続き
昨日に続いて、とあるCGを2つほど掲載します。 今日はひとまわり小さい画像です。
図 1
図 2 これはパソコンに計算してもらって作っています。
(つづく) <おまけのひとこと>
昨日、私の実家からみょうがをたくさん送ってもらいました。子供のころはみょうがは苦手だったのですが、いつのころからかあの味と香りがとても好きになりました。とりあえずきゅうりの塩もみにしてもらって、昨夜も今朝ももりもり食べました。
みょうがとかしょうが、にんにくといった食物というのは、素朴な甘みや旨みとはまるで違った味わいで、子供のころには全然そのおいしさがわかりませんでした。やっぱり子供たちは苦手なようです。
9月3日(水) 多面体骨格を平面上で表す
昨日、一昨日と、平面上に細い白い棒が連結されたかたちのCGをご覧いただきました。 おわかりになった方もいらっしゃると思いますが、これは多面体の頂点と稜の構造を平面上のグラフとして表したものです。 一昨日の9月1日のものは捩れ十二面体、昨日の9月2日のものは菱形三十面体と小菱形二十面十二面体でした。
今日は、正多面体でも準正多面体でもないかたちを2つほどお目にかけたいと思います。これらの2つのうち、少なくとも一方はジオシェイプスで作ったものを以前このページに載せたことがあったと思います。これらはそれぞれどんなかたちなのかお分かりになりますでしょうか?
図 1 図 2 これらの画像は、私がCGを描くときにいつも使っているPovRayで作ったものです。 PovRayのシーンファイルはC言語でかいたプログラムで生成しています。 頂点を結ぶそれぞれの線が、どんなに長かろうが短かろうがフックの法則に従う理想的なゴムひもだとして、図の最外周の頂点を固定したときに、内側の頂点がどの位置でつりあうかを計算しています。ですから、最外周以外の任意の頂点に注目して、その頂点から出る線分をベクトルだと見ると、そのベクトルの和がゼロになっています。
ランダムな初期値とか、3次元の多面体の頂点の座標から計算をはじめて、2次元のつりあいの位置に落ち着くまでの経過をアニメーションにしてみると、その途中の動きがとても面白いです。ただし面倒なので運動方程式を立てて解いているわけではなく、力のベクトルに応じた微小変位を繰り返すだけのいい加減なモデルですので、本物のゴムひものネットならばパラメータによっては発生するであろう減衰振動などは見られません。まああえてこじつければ、粘性抵抗の高い環境での過減衰の状態になっている、と言えなくもないですが。(アニメーションはファイルサイズがとても大きくなるので掲載できません。)
○ …すみません、ちょっとわかりにくい話を書いてしまいましたが、要はこのような図は、多面体の面や稜の繋がり具合を調べるときに、とても便利なのです。 こういった図では面のかたちや稜の長さの情報は失われていますが、「どのようにつながっているか」という構造は保たれています。このあいだのお盆休みに、またちょっと違う設計原理でいくつか多面体を作ってみたのですが、そのときのパーツの設計のために、このような多面体の構造図が非常に役に立ちました。 ところがそれについてこのページに書きたいと思ったときに、この構造図をきれいに描くのが大変です。そこで、計算機に自動で描かせてみようと思ってプログラムをかいてみたのが今回の話のはじまりだったのでした。
(つづく) <おまけのひとこと>
こういった多面体の構造を2次元のグラフで表現した図を掲載しているサイトはどこかにあるのかな、と思ってちょっと探してみたのですがみつかりませんでした。そのため自分で作ることにしたのでした。 明日からはこういった構造図を使って設計したパーツを組んだペーパーモデルの話を書こうと思っています。
一昨日に書いた、「こういったCGを高解像度にして、ポストカードにしてプレゼントする計画」について、一通だけ興味がありますというメールをいただきました。興味を持ってくださる方が全くいなかったわけではなくて、ちょっとほっとしています。
9月4日(木) ハミルトン路、他
今週の月曜日から、多面体の頂点と稜の構造を平面上のグラフとして表した図形をご覧いただきました。5つの正多面体に関しては、同様の図をご覧になったことがある方も多いかと思います。一応掲載しておきます。
正四面体 立方体 正八面体 正十二面体 正二十面体 上の図の黒い線で描いたほうが普通の正多面体の斜視図で、青い線で描いたほうが、それを平面上のグラフとして表現したものです。 私がこのような図を初めて見たのは「ハミルトンの世界一周遊戯」というパズルでした。正十二面体の20個の頂点を全て1回ずつ訪れて、スタートの頂点に戻ってくる経路を探しなさい、ただし同じ稜は1回しか通れません、というパズルです。これを立体で考えているとわかりにくいので、頂点と稜の構造を平面上に表すと考えやすいのです。このような経路(ハミルトン路)は、正十二面体に限らず、5つの正多面体全てに存在していますが、おわかりになりますでしょうか? (たとえば、昨年の6月26日〜27日のひとことのあたりにあるいくつかの図は、立方体や正八面体のハミルトン路になっています。)
どんな多面体でもハミルトン路が存在するわけではなく、例えば菱形十二面体はハミルトン路は存在しません。これはなぜでしょう? 余力がある方は、ここ数日掲載していた、もうちょっと複雑な多面体の構造図で、ハミルトン路を探してみるというのも楽しいと思います。
・・・というような話を書いていたら、ペーパーモデルについて書く時間がなくなってしまいました。とりあえずパーツの図と写真だけ載せておきます。解説とそのバリエーションは明日(以降)ということにさせていただきます。
図 1 図 2 この技法は、たとえば、H.Hamanaka very private pageの濱中さんの菱形十二面体の星型(その1)と同じです。また、今年の5月22日のひとことでご紹介した正十二面体の組み方が、同じ発想で作ったものです。明日以降、この技法で作った模型をいろいろご紹介してゆく予定です。
○
このページをご覧いただいているmotoroさんとおっしゃる方から、この「あそびをせんとや」でご紹介しているいろいろな多面体模型を発展させた作品などを掲載されているホームページを作っておられるということを教えていただきました。「色々いろ」というページです。多面体のペーパーモデルや折り紙、木の模型などの写真がたくさん掲載されています。 たいへんすばらしい内容で、とても感激しました。いろいろ感想を書きたいのですが、今日は時間が無いので、明日にでも書かせていただきます。ぜひご覧下さい。
<おまけのひとこと>
今朝は資源ごみの日で、どうしても今日出したいというものがあったので、さっきひもをかけて車に積んで出してきました。そんなことをしていたら、今日の更新の時間がほとんどなくなってしまいました。
9月5日(金) 斜めに編む多面体:切隅八面体
さて、昨日ご紹介をはじめた多面体を斜めに編むシリーズということで、今日は切隅八面体をご紹介します。これは正八面体の6つの頂点を切り落としたかたちで、正八面体の8つの三角形の面に由来する六角形が8つと、頂点に由来する6つの正方形からなる立体です。
図1〜図4は、いつものようにそれぞれ「一般的な視点から見たところ」「六角形の面から見たところ」「正方形の面から見たところ」「2つの六角形の間の稜の方向から見たところ」です。
図 1 図 2 図 3 図 4 斜めに編む多面体というのは、多面体のそれぞれの稜の部分で2つのパーツが交互に上下に編む構造になっているものです。それぞれのパーツは、多面体の各面の隣り合う稜を辿ってゆくかたちになっています。そのため、各面を構成するパーツの数は、三角形なら3本、正方形なら4本、五角形なら5本、六角形なら6本・・・というようになります。
正三角形の面では、昨日のパーツのようにV字型にしないと3つのパーツが噛み合えないのですが、正方形ならば直角二等辺三角形4枚できれいに面を覆います。五角形以上の場合は最も単純に二等辺三角形のパーツにすると(図5)、今日のモデルのように中心に穴が空きます。これを避けるためには、図6のように多角形の中心を第4の頂点とする凧型にすると、三角形や正方形の場合と同様な見かけのモデルになります。
図 5 図 6 六角形の場合でしたら、今日のものは図5に相当する、頂角が120度の鈍角二等辺三角形を使いましたが、これを正三角形2枚の菱形を使えば、面がちょうど閉じます。個人的には、今日のもののように穴の空いた構造のもののほうが好きです。 三角形や正方形の面も、パーツをV字型にしたり切り込みを深くしたりすれば中央に穴をあけられますけれども、それだとちょっとわざとらしい感じがします。
(つづく) <おまけのひとこと>
昨日ご紹介した、色々いろですが、私にとっては
A.すでに作ってあってまだページに掲載していないもの
B.図面だけ作ってあってまだ製作していなかったもの
C.構想だけがあって、図面もまだ作っていないもの、そして
D.作ろうと思ってもみなかったもの
がありました。いずれもとても興味深く見せていただきました。例えば、5角60面体編みのページですが、この五角六十面体は、いずれ作ろうと思ってはいたものの、まだ図面を作っていなかったもの(上記のC.)です。 写真を見て、とても作りたくなりました。 またこのページの一番下の写真には、凧型六十面体や花形十二面体、花形切隅八面体の集合写真がありました。いろいろ作っていただいていて嬉しいです。 また、黄金菱形多面体各種編みのページのものは、私もいろいろ作ってありました。でも凹型菱形30面体というのはやってみていませんでした。これに菱形二十面体を合体させたり、acuteとobtuseを組み合わせたりというのはとても楽しいですね。
hirax.netのメインコンテンツが久しぶりに更新されていて、興味深く読みました。「俺」「僕」「わたし」「私」と「あたし」「わし」というタイトルで、Web日記の中での一人称について論じているものです。今後が楽しみです。
9月6日(土) 斜めに編む多面体:切隅八面体のパーツ設計、他
昨日ご紹介した切隅八面体を例にとって、パーツの設計方法を説明したいと思います。図1は、切隅八面体の頂点と稜の構造を平面上にグラフとして表したものです。(外周を六角形にしたほうが面のゆがみがまだしも少ないのですが、利用しているソフトウェアの関係で、正方形をベースにしたほうが対称性の高い図が描きやすいため、このようにしています。) 今週の月曜日、9月1日から何日か掲載したCGは、こういったパーツを設計するために作ったものだったのですが、実はその目的を離れて、いろいろな多面体の構造の平面図のCGを作ることが自体が楽しくて、「斜めに編む」パーツを設計する目的のない多面体についても、いろいろ作ってみたのでした。
図 1 図 2 図 3 さてこの図1ですが、「斜めに編む多面体」では、面ではなくて稜が互い違いに上下になるようにします。そして、多面体のそれぞれの面で考えると、すぐとなりの辺につながってゆきます。 例えば、多面体の稜が道路だとして、頂点が交差点だとしましょう。図2を見ていただきたいのですが、この編み方では、パーツが辿る稜の道路は、交差点では必ず右・左・右・左・・・と交互に曲がってゆきます。 切隅八面体では、図2のように十二本の稜を辿ると元の頂点に戻ってくることがわかります。
図3は、図2で辿った稜の間に、三角形の面を張ってみたものです。数字の4と6は、それぞれ四角形(正方形)と六角形の面の2辺を繋いでいることを表しています。平面で表しているので形はひずんでいますが、どういった三角形を繋いだらよいかということが、この図から読み取れます。
6 6 4 6 6 4 6 6 4 6 6 4 で一回りしています。6は正六角形の隣り合う2辺による、頂角が120度の二等辺三角形、4は正方形の隣り合う2辺による直角二等辺三角形ですから、結局パーツは図4のようになります。(2種類の二等辺三角形が区別しやすいように色をつけてあります。)いつものように、オーバーラップする分を2つ追加してあります。この例ではたまたま両端が120度の青い三角形になっていますが、片方を端をピンクの直角二等辺三角形にすることもできます。(例えば右端に直角二等辺三角形を加えて、左端の青い三角形をはずす)
図 4 この編み方は、稜の部分でパーツが上下になります。パーツの両端の三角形の稜が「下」になるように組み始めないと、両端が外にはみ出してしまいますのでご注意下さい。
○
同じ編み方で作った立方八面体です。これは図4のパーツで編んだものではありませんのでご注意下さい。 写真は1枚で十分でしょう。よく見ないで写真を撮ったので、一番手前の正三角形のところでパーツが終端になっていて、重なっているのが見えるかと思います。
図 5 明日以降はもう少し見栄えのいい(と私が思っている)モデルをいくつかご紹介したいと思います。
(つづく) <おまけのひとこと>
お休みで、ちょっと更新時刻が遅くなってしまいました。
9月7日(日) 斜めに編む多面体:小菱形二十面十二面体
ここ数日ご紹介している「斜めに編む多面体」シリーズ、今日は正二十面体と同じ対称性を持つ仲間の1つである、小菱形二十面十二面体をご紹介します。まずは写真をご覧下さい。
図 1 図 2 図 3 図 4 図1が一般的な視点から見たところ、図2が五角形の面の方向から見たところ、図3が三角形の面の方向から見たところ、そして図4が正方形の面の方向から見たところです。
この小菱形二十面十二面体の稜と頂点の構造を平面上に表したものを、9月2日のひとことの図2でご紹介しました。 下の図5に、同じものを一回り小さくして(ついでに白い線も細く明るくして)再掲しました。この図を用いて、このモデルのパーツの設計ができます。
⇒ 図 5 図 6 昨日説明したように稜を辿ってみると、図6の赤い線のようになります。これは、昨日の表記法で表すと
(3 4 5 4) - (3 4 5 4) - (3 4 5 4) - (3 4 5 4) - (3 4 5 4) となります。このパーツを12本用意して組むと、写真のようなモデルになります。パーツが五角形を通過する部分のかたちを二等辺三角形から凧型に変えると穴の無いモデルができます。 私はこの穴を利用してクリップで仮止めしながら作ったので、穴があるほうが組むのが楽でした。
(つづく) <おまけのひとこと>
先日もちょっと書いた「美しくなければならない―現代科学の偉大な方程式」という本、いろいろ面白いエピソードがあって、楽しいです。例えば
古今東西の進路相談のなかでもとりわけとんでもないへまと言われる話だが、フォン・ヨリーは20歳のプランクに、物理学の道に進むのはやめろと助言したのである。(p.30)等々です。
ふたりの物理学者(プランクとアインシュタイン)は、一緒に音楽を奏でるのを楽しんだ。その後18年にわたって、昼間は古典物理学の土台を切り崩しながら、夜になると逆にクラシック(古典)の室内楽に専念した。(p.49)
かつて作曲家のハイドンはこんなことを言った。友人たちによく自分の才能を褒められるが、自分はいつでも後輩のモーツァルトのほうがずっと上だと思っている、と。プランクにも同じ思いがあり、アインシュタインを「コペルニクスの再来」と呼んでいた。(p.51)
9月8日(月) 斜めに編む多面体:切隅二十面体
斜めに編む多面体シリーズ、本日は切隅二十面体、いわゆるサッカーボールのかたちです。5角形が12個と六角形が20個、いずれも中央に穴が開いた形状になります。
図 1 図 2 図 3 図1が一般的な視点から見たところ、図2が五角形の面の方向から見たところ、図3が六角形の面の方向から見たところです。 「かご」のような雰囲気があります。
(つづく) <おまけのひとこと>
上の子の小学校のクラスの音楽会の合奏の演目が、「オリーブの首飾り」になったそうで、ちょっと大変そうな楽器については、そろそろパートの割り振りを決め始めるんだそうです。うちの子は、ピアノの候補の一人になっているのだそうで、「どうやって候補者を決めたの?」と尋ねてみたら、立候補だそうです。 おいおい、うちはちょっと家で親がみてやっているだけで、先生についてレッスンに通っているわけではないのに大丈夫か、と思って楽譜を見せてもらうと、これがそう簡単ではないのです。全曲の半分くらいは左手だけなのですが、それが単純ではない和音で、しかもずっと後打ちリズムです。後半の曲の山場のところでは右手が旋律で入るのですが、そこのリズムはさらに難しくなります。 合奏として重要なのは和声とリズムを受け持つ左手でしょうから、立候補した以上、せめて左手だけはこの週末でできるようにしていかないと恥ずかしいよ、と言って、練習に付き合いました。ひとりで練習していると、リズムや音が間違ってもよくわからないようだったので、旋律を入れてやったり、間違えるとやり直させたり、指遣いを見てやったりしました。 ちゃんと習っている人が選ばれるかな、とは思うのですが、スポーツであれ楽器であれ、本人がやる気になってくれたタイミングがチャンスだな、と思います。
9月9日(火) 斜めに編む多面体:切隅十二面体
斜めに編む多面体シリーズをご紹介していますが、本日は昨日の切隅二十面体に続いて、切隅十二面体です。(漢字で書くと似ていますね。) この切隅十二面体は、20個の小さな正三角形と、12個の大きな正十角形から成る多面体です。この2種類の面のかたちや大きさの違いが大きいため、独断ですが準正多面体の中ではあまりぱっとしない印象を持つ多面体かなあと思います。 例えば準正多面体を好きな順に並べてくださいといわれたとき、この切隅十二面体が一番、という人はあまりいないのではないかと思うのです。 ところが、この斜めに編む手法でこの多面体を作ってみたら、これが大変美しい(と私は思う)のです。 今我が家に転がっている、この「斜めに編む多面体」の10個くらいの模型の中では、今日ご紹介するこの切隅十二面体が一番好きです。
図 1 図 2 図 3 図 4 図の上の段、図1と図2が一般的な視点から見たところ、図3と図4が特定の面の方向から見下ろしたところです。左側の図1と図3が正十角形の面を底面として置いたところ、図2と図4は小さな正三角形の面で立てたところです。 工作の精度が悪いため、若干ひずんでいます。 パーツをA4サイズの紙から切り出すため、かなり細いパーツになってしまいまして、パーツの巾は3mmよりも細いです。 それでも、もちろん接着剤等は使わずに紙の弾力だけで安定しています。
一昨日の小菱形二十面十二面体は12本のパーツで編みました。昨日の切隅二十面体は10本のパーツでした。そして、今日の切隅十二面体は6本のパーツです。
(つづく) <おまけのひとこと>
H.Hamanaka very private pageの表紙の画像が変わっていました。 美しいです。 これは、同じ濱中さんのページの、過去の表紙17の正12面体への帯巻きと同じ構造のものですね。 表紙の写真の左側の紙に描かれている図、これが気になります。多面体の構造図のように見えますが・・・
9月10日(水) 斜めに編む多面体:二十面十二面体
斜めに編む多面体シリーズ、ここ3日ほど正二十面体や十二面体と同じ対称性を持つ準正多面体をご紹介してきていますが、今日はもう1つ、二十面十二面体です。 これは黄緑色の用紙を使ってみたのですが、普段使っている厚手のインクジェットプリンタ用紙よりもすべりがよいようで、形が整いにくくて組むのが大変でした。出来上がりの精度も低くなってしまいました。この紙は組んで作るタイプのモデルにはよいのですが、編むタイプのモデルには向かないことがわかりました。
図 1 図 2 図 3 図1が一般的な視点から見たところ、図2、図3はそれぞれ五角形、三角形の面の方向から見たところです。このモデルは、それぞれのパーツは12枚の五角形の面の周りを縁取るように配置されるため、パーツが12本必要です。
(つづく) <おまけのひとこと>
小池・阿津研による傘ラジオホームページというページをみつけました。 すばらしいです。 昔、「子供の科学」だったか「模型とラジオ」だったかに、「電池なしラジオをスピーカーで聴こう:バケツ型ゲルマラジオの作り方」(タイトルは不正確です)というような記事が載っていて、いつか作ってみたいなと思ったのを思い出しました。
9月11日(木) 斜めに編む多面体:ジョンソンの多面体J91
斜めに編む多面体シリーズ、今日は先日8月30日のひとことでご紹介した、ジョンソンの多面体J91を作ってみたものをご紹介します。これも昨日の二十面十二面体と同じく、色のついた用紙を使ってみました。まずは写真をご覧下さい。
図 1 図 2 図1のように正方形の面で立てるのが自然な置きかたかなと思います。真横から見るとふくろうの顔のようです。 図2のように五角形の面を底にしても斜めに安定しています。(重心の位置を考えると自明です。) このとき上の五角形も水平になります。
さて、このモデルのパーツはどのようになっているでしょうか? 例によって平面上に構造図を描いてみました(図3)。
図 3 どこか適当な辺を選んで、「右・左・右・左・・・」と進んでみてください。どうなるでしょうか? (最外周か最内周の正方形の辺からスタートしてみることをお勧めします。)
(つづく) <おまけのひとこと>
山形浩生氏の、コンピュータのき・も・ちという連載がまるごと公開されているときいて、さっそく読みに行きました。山形氏の独特の文体は、違和感のある方もいらっしゃると思いますが、私は全13回、非常に面白く読みました。 もちろん全面的に賛成しているわけではありませんけれども、例えばUnixやMacを使う人たちがなぜ「いばっているか」といった説明は、非常に上手いと思いました。 連載第7回に出てきた、 いやはやVOS3には泣かされました に共感できる私。
9月12日(金) 斜めに編む多面体:パーツの設計
ここ1週間ほど、多面体を紙の帯で編む手法の1つである、斜めに編む多面体について書いています。 昨日ご紹介したジョンソンの多面体の1つであるJ91ですが、正方形の辺から構造図を辿ると、下の図1のようになります。自己交差が3回も出てくるのです。
⇒ J91構造図 (再掲) 図 1 もう1つ、三角形と五角形の間を交互に巡る、十字星の形の軌跡があります。以上の2種類の軌跡が2本ずつ描けるので、パーツを設計すると、下の図2のような2種類のパーツがそれぞれ2本ずつで、このJ91を作ることが出来ます。
図 2 実際に組んでみると、この自己交差の処理がなかなか厄介なのですが、2種類4本のパーツが、この立体の上下と左右をそれぞれ受け持つといった印象で、組み方としてはわかりやすい部類かと思います。ただ、この自己交差のおかげで簡単ではありません。
ちなみに、前回このJ91といっしょにご紹介したJ92、この2つはいろいろ類似点があるのですが、このJ92のほうも同様にパーツを設計してみると、こちらは2種類3本ずつのパーツになります。(まだ作っていません。)
○
さて、同じように捩れ立方体の構造から、斜めに編むパーツを設計してみましょう。(実はこの考察は、今年の5月28日のひとことあたりで検討している内容と同じです。)
⇒ 捩れ立方体 図 3 まずはいつものように、捩れ立方体を平面の構造図にしてみます。これは準正多面体なので、頂点の構造は全て同じですから、パーツは1種類しかないはずです。いつものように適当な1辺を選んで、右・左・右・左・・・と辿ってみてください。 やっぱり自己交差が3回出てくると思います。
5月に検討したときと同じ理屈で、パーツは下の図4のようになります。これが4本で捩れ立方体が組めるはず、なのですが、この自己交差が大変厄介なのは明らかなので、パーツのpdfファイルまでは作りましたが、印刷して組んでみようという気が起こりません。
図 4 ちなみに上の図3の捩れ立方体の構造を平面に表した図、これは描こうと思えば描ける人には簡単に描ける図ではあるのですが、今までWebや文献等で見た記憶がありません。(単に私が知らないだけかもしれません。) なのでせっかくなので載せることにしました。これは小菱形立方八面体の図を最初に考えて、いくつかの正方形に対角線をひいたもの、と考えることもできます。
斜めに編む多面体のシリーズを長々とご紹介してきましたが、一応あと1回で終わりにしたいと思います。
<おまけのひとこと>
だいぶ日が短くなってきました。しばらく前ですと、朝5時といえばもう明るかったのに、今はその時間だとまだ真っ暗です。だというのになぜこんなに暑いんでしょうか。
最近は特に、このページの内容がいわゆる「常連さん」向け、毎日ご覧いただいている方にしかわからないような内容になってしまっているなあと思っています。もっと内容を整理したほうがいいのかな・・・
9月13日(土) 斜めに編む多面体(最終回):菱形十二面体
今日は、斜めに編む多面体のシリーズの一応の最終回ということで、菱形十二面体をご紹介します。まずは写真をご覧下さい。
図 1 図 2 図 3 図1が一般的な視点から見たところ、図2が次数3の頂点の方向から見たところ、図3が次数4の頂点の方向から見たところです。菱形十二面体は、普通に「面で編む多面体」として構成することができます。そうすると菱形の面には何も余分な線が出てこなくてすっきりするのですが、今回の手法ですと菱形の各面に対角線が現れます。こうすると、長い対角線に注目すると正八面体が、短い対角線に注目すると立方体が見えてきます。
図 4 先日1枚だけ写真を載せた、同じ手法で作った立方八面体と並べて写真を撮ってみました。この2つは互いに双対多面体の関係にあります。
なお、今日の菱形十二面体は、6本のパーツから構成しました。菱形十二面体は稜が24本あって、それぞれの稜の部分でパーツが互いに上下に重なっています。これはちょうど、面で編む多面体における菱形二十四面体(昨年の4月16日のひとこと参照)と同じ構造です。
○ 昨日のお昼くらいだと思うのですが、おかげさまでこのページのアクセスカウンタが6万を越えました。いつもご覧下さる皆様、本当にありがとうございます。
明日からはまた別な話を書こうと思います。多面体のCG関連にしようか、JAVAのパズルにしようか、読書感想文にしようか、それとも別の素材の多面体の話にしようか、思案中です。(明日は運動会その1なので、今日中に準備しておかないと・・・)
<おまけのひとこと>
昨日、捩れ立方体の稜を辿るモデルのパーツをご紹介して、「面倒そうなので作っていません」と書いておいたら、H.Hamanaka very private pageの濱中さんがクラフトテープで作ってくださいました。 器用な人はすごいなとつくづく感心します。
いつも見せていただいている茉莉花の部屋のBBS3に、ユニット折り紙による幾何学構造のページへの情報が載っていました。美しいですね。ユニット折り紙の多面体というのはとても参考になりますし、見ていると新しくいろいろ作りたいもののイメージが広がります。
今日はなんだかんだと更新が遅い時間になってしまいました。
9月14日(日) ハミルトンの世界一周遊戯
先日、9月4日のひとことで、正多面体の頂点と稜の構造を平面上の図に表したものをご紹介したときに、「ハミルトンの世界一周遊戯」というパズルの話をちょっと書きました。そのハミルトンのパズルをJAVAアプレットにしてみました。こちら、もしくは下の図からリンクしています。
ハミルトン・パズル ちょっとした試行錯誤で解ける、易しい部類のパズルだと思います。慣れてきたら、最初の何手かはデタラメに選んでみたりしてみてください。 このパズルが失敗が確定するためには、何手目まで進める必要があるでしょうか? (逆に言うと、何手目までだったらデタラメに進めても大丈夫なのでしょうか?)
<おまけのひとこと>
今日は下の子の運動会です。雲は重く垂れ込めていますが、遠くの空は晴れています。なんとか無事にできるといいのですが・・・
9月15日(月) 正十二面体骨格の易しいパズルシリーズ(その2)
昨日、「ハミルトンの世界一周遊戯」というJAVAアプレットによるパズルをこちらにご紹介しました。私がこういったちょっとしたプログラムを書くのは、そのプログラムが出来たときにそのプログラムを作るのにかけた時間に見合うだけの価値があるときです。 言い換えれば、プログラムを作る時間よりもそれで遊ぶ(あるいは研究する)時間のほうがはるかに長い場合に限ります。 今回の「ハミルトン・パズル」は、これだけをご紹介するのであれば、何もアプレットにする必要はなくて、紙と鉛筆があれば十分です。 ではなぜこのアプレットを作ったかというと、正十二面体の骨格を盤面としたパズルやゲームができないかなと思って、それを研究するための道具としてこれを作ってみました。 盤面を描画することやどの頂点がクリックされたかを判断すること、また頂点同士が隣接しているかどうかを判断することなどは、全て同じ部品として利用できるので、1つ出来てしまえばいろいろ遊べるのです。
というわけで今日はこの正十二面体骨格を利用した、易しいパズルをもう1つJAVAアプレットにしてみたものをご紹介します。
「ライツアウト」というパズルがあります。正方形が並んだマス目があって、どこか1つのマスを選ぶと、そのマスおよび周囲の色が反転する、というものです。 例えば下の図で、(a)のようにAの文字のマスを選択すると、(b)のように黄色のマスの色が反転します。 このパズルのバリエーションとして、このようにタテヨコ4近傍が反転するものもあれば、8近傍のものやそのほかの形状のものもありますし、選んだマス目(図のAのマス)自身が反転するものもしないものもあります。
ライツアウト このルールを正十二面体骨格に適用したものをこちらに作ってみました。お試し下さい。
(つづく) <おまけのひとこと>
昨日の運動会では2種目に出たのですが、しっかり筋肉痛になりました。