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[見学会・その他 目次]


98/11/16 ジャック・リブーレル来訪・奥野田ワインで歓迎

奥野田ワイン

 葡萄の木も葉を落とし、冬を待つばかりの勝沼の風景はちょっと寂しげ。ですが諏訪から訪問すると温かく感じられる陽気の中、今日はフランス・ラングドックからの客人、ドメーヌ・ド・ロスピタレのオーナー、ジャック・リブーレル氏を奥野田ワインで迎えます。せっかく訪問していただくのだからと奥野田ワイン流の気取りのない雰囲気での歓迎です。パスタ、キノコのパイ、牛肉の煮込みなど辻料理学校出身でなぜかいまは明野村で葡萄栽培を始めた立野健さんの料理です。リブーレルさんの到着を持つ間、おいしい香りが奥野田ワインのテイスティングルームに漂います。この日リブーレルさんの歓迎会に参加して下さったのは奥野田ワインの中村社長夫妻、葡萄畑担当の佐藤広滋さん、山上直さん、中村夫妻のお友達で同じくワイナリーを経営している機山ワインの土屋幸三さん、料理担当で葡萄生産者の立野健さん、私共リカーハウスながさきの社長と取材担当の私です。

ドメーヌ・ド・ロスピタレのオーナー
ジャック・リブーレル氏
 予定より30分程遅れて到着したリブーレル氏は高速道路を降りてからの車窓の風景がこのように一面棚仕立ての葡萄畑が広がっているとは予想していなかったようで、挨拶もそこそこ、リブーレル氏から「この葡萄はなんという品種だ」「植樹密度はヘクタール当たり何本だ」「ヘクタール当たりの収量はどのくらいだ」と矢継ぎ早の質問。「ほとんどが甲州種、植樹密度は約20本/1ヘクタール、収量は200kg/1本」と地域の農業指導員でもある佐藤さんが答えます。リブーレル氏は見慣れた葡萄畑の風景とは違いますが、この雰囲気には満足した様子。リブーレル氏はフランス語オンリー、通訳はヴィノスやまざきの西岡さん。

 本日の一本目は機山ワインの甲州'97。在来品種で勝沼の白ワインの主要品種であることを紹介する。リブーレル氏は「クリーンで飲みやすく、よいワイン」と評する。機山ワインの醸造規模などを質問。機山ワインの醸造規模は750ml瓶でトータル三万本余り、あと蒸留酒の免許も持っておりマールを生産している。土屋氏個人としてはマールに熱を入れているというと「フランスではワイナリーで蒸溜酒を生産してはいけない。私のところのオードーヴィーも免許のある業者に生産を委託している」

機山ワイン・土屋氏とリブーレル氏
 二本目はリブーレル氏に敬意を評してドメーヌ・ド・ロスピタレ・白'96。なんとこのワインには11種もの葡萄品種をアッセンブラージュしているそうだ。リブーレル氏は白ワインの味わいについて「ワインの初心者にはシンプルな単一品種のワインがいいだろうが、上級者になってくると物足りなくなってきて複雑な味わいのワインに移行して行くはず。アッセンブラージュすることによって複雑なワインを造ることができる。この甲州単一ワインは残念ながら今日このテーブルに出ているブルーチーズには負けてしまうが、アッセンブラージュすれば負けないものができるはずだ。シャルドネなにかとアッセンブラージュしたらどうか。後、樽熟を行うのも複雑味を出す手だ」これに対して土屋氏は「現状では使用した品種の個性を引きだしたワイン作りに傾注しています。まだ甲州種に関してはそのポテンシャルを完全に引きだしていないと思っています。樽とかの使用はその次の段階です。」
 樽の話が出たところでリブーレル氏が「日本では樽はいくらで手に入る」と質問。中村社長が「フレンチオーク樽だと約10万円です。」と回答。フランスではフレンチオーク樽が約7万円、アメリカンオーク樽が約4万円だそうだ。

奥野田ワイン・中村夫妻とリブーレル氏
 次に開けたのは奥野田ワイン・メルロー&甲斐ノアール・ウッド'96とドメーヌ・ド・ロスピタレ赤'96。奥野田ワイン・メルロー&甲斐ノアールは・ウッド'96はフレンチオーク樽で初めて一年間熟成させた処女作。棚仕立てで栽培されたメルローを80%とブラッククイーンとカベルネ・ソーヴィニョンの交配種である甲斐ノアールを20%でアッセンブラージュしたこのワインを飲んでリブーレル氏は「独特な香りがする」と。このメルローは棚仕立てで作られているが収穫糖度は20度になると中村社長がいうと「'98のロスピタレの収穫糖度は14ボーメ(アルコール度にして15%)だった」とリブーレル氏は自慢。

 「樽熟をしたこのワインはワイナリーを訪れる人々に結構評判です。ただワイナリーでの直販は市価より安価で手にいるという側面もありますが・・・」と中村社長が言えば、「確かに直販は市価より安いだろう。しかし直販売は生産者の顔がみえるので消費者が喜ぶという要因の方が多いのではないだろうか。リカーハウスながさきの様な小売店ではそういうわけにはいかない。私のところでは直販店のほかにクラシックカー博物館やアート工房、レストランを併設してドメーヌにわざわざ来て下さったみなさんにワイン以外でも満足してもらえるようにしている。それでドメーヌでは年間一万四千本のワインを直販している。」

醸造設備を説明する
 樽の使い方について質問すると「ドメーヌ・ド・ロスピタレでは毎年1,000樽を新規購入しており、その内150樽がアメリカンオーク樽で残りはフレンチオーク樽だ。アメリカンオークは現状では実験段階だ。なぜならばアメリカンオークとフレンチオークでは木の成長スピードが全然違う。フレンチオークは直径30cmになるのに約150年掛かるがアメリカンオークはその1/4の年月しか掛からない、ということはアメリカンオークは木の密度が低く目が粗いということだ。実際、使用してみるとアメリカンオークでは樽香、樽味が多く付く、それだけ樽にワインが浸透しているということ。その結果、アメリカンオーク樽は使用できる品種を選ぶ。」新樽100%使用のポリシーを聞くと「二年目、三年目の樽に熟成させるとワインを含んだときに口の中が乾いたように感じるニュアンスが付いてしまう。それが好ましくないと感じているので新樽を100%使用している。一年間使った樽は約三万円で売却しているのでドメーヌの経営の助けになる。」樽熟時のカーブの環境について質問すると「カーブは地中で年間13-14度に保たれている。私は湿度はあまり重要なファクターではないと思う。」

 ここらでこの日の最後のアイテム、機山ワインの自信作・ブラッククイーン種のマール"マール・ド・キザン"を出す。「これはおいしい!」と一言。更に「ちょっと甘味を感じ、アルコール度がすこし低いように感じるが、これはおいしい」とリブーレル氏。「アルコール度は40%あるので低いということはありませんが、ブラッククイーン種の柔らかさがでているのでそう感じるのでは?いずれにしてもブラッククイーン種のマールは世界のどこを探してもここにしかありません。」と機山ワイン・土屋氏。「2-3年樽熟したらもっとよくなる。これはいくらで売っているんだ」とリブーレル氏。市価で1,000円(360ml)であると答えると信じられないという顔をしている「これを2-3年樽熟したら一般的なブランデーの値段で売ってもいいだろう。レミー・マルタンは日本ではいくら?一万円?そのくらいで売ったほうがいい」土屋氏はこのマールの生産量が200L/年と少ないことなどで樽熟には消極的。また日本には食後にハードリカーを嗜む習慣はないので需要がないと説明しても「少量生産品を高額で販売するのも販売戦略のひとつだ。私は現在、極めて低収量のワイン生産を計画しており、それは市価で一本一万円程度の値がつくように販売するつもりだ」とあまり理解いただけない(^^;

カベルネ・ソーヴィニョン畑で
 食事が終了したので、醸造設備と醸造所から歩いて2分程度のところにあるカベルネ・ソーヴィニョン畑と瓶熟庫を見せる。カベルネ・ソーヴィニョン畑では今年の春植えた木の成長を見て「今年はこんなに大きくするべきじゃないな、それにうちではもうすこし深く植える。これはどういう剪定方法にするの?ギヨ?それだったら今年はここで剪定して伸びた新梢をここに誘引する、来年はここ剪定してこう、再来年はこうする」と結構細かく教えてくれる。が一同今年はここで切れと鋏みのジェスチャーをしたのが地上30cm程度の日本では考えられない位置だったのでちょっとショックを隠せない。「4年間は木を成熟させることに専念しろ、その間は結実しても早くに落としてしまえ、そうすれば100年は寿命のあるいい木になる」と更に追い打ちをかける。
 施肥や潅水について質問すると「私の所では肥料はまったく与えない。石灰岩質の畑では潅水もしない。潅水などしなくても葡萄は根を伸ばし、自力で十数メートルの地下から水と養分を吸い上げる。ただし、石灰岩質ではないコトー・デュ・ラングドック以外の地域に持っている土の土壌の新しい畑ではパイプから水を垂らすシステムで潅水している。いずれにしても葡萄を自力で強く成長させ、そして収量をコントロールして濃縮度を高めることが重要だ。石灰岩質の畑は岩がゴロゴロしているので耕したりもしない、土がある畑では草生栽培をして土壌にエアレーションするという試みも試している。」
 ドメーヌ・ド・ロスピタレでは1000haの敷地に60haの葡萄畑とその他の敷地に27haの別畑を持っているそうだ。そこで働く栽培農夫はなんとわずか15人。醸造や博物館、工房などのスタッフを含めても全体で70人余りでドメーヌとその関連施設を運営しているということだ。ホテルも持っているのでしきりとフランスに来ればもっと詳しく教えてやる、と言ってくれる。

畑を見終わってお茶
今度は栽培について質問が集中
 ワイナリーに戻ってお茶をする。畑を見てきたので今度は葡萄栽培について質問が飛ぶ。栽培担当が興味があるのは農薬についてだ。農薬を撒いているか、どんな農薬を撒いているのか、その頻度はどのくらいか、といった感じだ。さすがに話が専門的になってくると通訳の西岡さんもギブアップ!ラングドックでも年により多少の違いはあるが年間8-10回程度の農薬を散布しており、病害虫に併せて混合液を使用している程度の情報量しか得られなかった。リブーレル氏はラングドックにドメーヌ・ド・ロスピタレを購入するまでの検討期間で世界中のワイン産地を旅して歩き、それまでほとんど知識がなかったワインやその醸造について勉強したそうだ。今もっとも注目されているニューワールド・チリにも足を運んだそうだが、誰かがなぜチリにはしなかったのか、という質問には「チリはあまりにもフランスから遠いから」という子供みたいな答えが返ってきた。話の流れで醸造コンサルタントの話になると「ミシェル・ロランはとても高いのでとても通年では雇えない、アッセンブラージュの時に呼んで意見を聞く程度の使い方もできる」と醸造コンサルの賢い使い方も教えてくれる。

 時間は瞬く間に過ぎ、予定時間を一時間もオーバー。リブーレル氏と共に次の予定地に向かう。いずれにしても短い時間ではありましたが、若い醸造家、栽培家にはよい刺激になった訪問ではなかったでしょうか。

(98/11/16 ジャック・リブーレル来訪・奥野田ワインで歓迎編 文、写真:Takumi Nagasaki)


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