イ ン ド 旅 行 (2)

                   2011/02/21~27

マトゥラー考古学博物館
世界のマトゥラー仏像

 メトロポリタン博物館にある仏陀で、グプタ朝の作品。マトゥラー様式が完成に達した頃の作品です。マトゥラー仏陀像のなかで最高水準の作品です。

仏陀は、ステテコを長くしたような下履きの上からごく薄手のモスリンを羽織り、モスリンがガンダーラ由来の美しく流れる縞模様を造っている。

ニューデリー博物館に完全な光背をもつこれと類似の仏陀像があったのだが、大統領官邸に召し上げられてしまい、一般には鑑賞不可能になってしまった。

 そういえば、マトゥラー美術館には有名な仏陀坐像(入場券に写真が載っている)もあるはずなのだが、いくら探してもみつからない。これも大統領官邸に召し上げられてしまったのだろうか。

画像:
『ブッダの旅』
丸山勇
岩波新書 107, 2007
P88

初転法輪像、柔和な表情で説法する釈尊像と台座に五比丘と中央に法輪、鹿の園サールナートを象徴する2頭の鹿(サールナート出土、5世紀 サールナート考古博物館蔵)

 午後からサールナート見物。

 東南アジアからの僧侶が礼拝している。

サールナートの仏像

やれやれ、これで私の初めてのインド仏教美術行脚は終了しました。

あと残るのは、コルカタとマドラスの国立博物館になりました。

今回の旅行で大体の概念は頭に入りましたので、今後はゆっくりと取り進めましょう。

西遊旅行のナイス・アレンジメントと同行メンバーの方々の素敵な人柄のせいで、とても楽しく旅を終えました。

 最後になるのでややこしいことはすべて省略させていただくこととして、ニューデリー国立博物館で、生まれて初めてお釈迦様のご遺骨を拝観させていただきました。

遺骨が台から転がりおちているので、当初の在り姿も下に添付しておきます。

226/27日 デリー

一行のなかに仏像彫刻を趣味とされておられる高木さんがおられたので、お誘いしてマトゥラーに同行して頂いたのだが、その日の夕方、ご夫人高木善子様から早速にお礼状をいただきました。あまりの素早さに恐縮するやら、吃驚するやら。

225日 マトゥラー

 もともとのスケジュールでは世界遺産ファテープルシクリへ行くはずだったのだけれど、ガンダーラと並ぶ仏像発祥の土地マトゥラーが近くにあるし、こういう機会もそうたびたびあるわけでもなさそうだったので、西遊旅行の代理店に無理をお願いして運転手つきのジープを手配していただき、マトゥラー博物館を訪ねた。

昔、高校時代、吉岡力の「世界史」で見かけたカニシカ王の像です。首と両腕が失われています。彼が第三回仏典結集を行なったのです。

大英博物館蔵カニシカ王金貨

大英博物館の金貨に描かれたお顔を貼り合わせると、在りし日のカニシカ王のお姿を想像することができます。

224日 アグラ

絨毯屋の親父(いかにもずるそうな顔をしているのですが、実はナイーブな好人物)が「価格はUS$1,000」というのを、こちらはUS$200で指し値をして、二晩連続で交渉した結果、売値US$400買値US$300まで歩みよったが、最後の決着がつかない。「皆1000ドルか800ドルで買っていくよ」と親父がぶつぶつ言う。なにも買わないというのも彼に悪いので、小さな絹製のお祈りマットをUS$50で買った。写真をお見せしますが、綺麗でしょ。絨毯ではなくて刺繍です。カシミール産。

高さ約25cmの象、紙製。

 朝靄のガンジス河に陽が昇る。

223日 ヴァラナシ/サールナート

 破壊の神様シヴァ神の儀式のせいでしょうか、男っぽくて凄みのあるセレモニーでした。ヒンズー教信者にとってヴァラナシはインドの宗教上の中心地なのですね。

222日 カジュラホ/ヴァラナシ

 ガンジス河で沐浴する男性。

カジュラホからヴァラナシまで飛行機で飛んで、夕方ガンジス河でシヴァ神を呼ぶ儀式、プージャ(神への礼拝)を見学しましたが、ヴァラナシの町はとても混み合っていて、二人乗りリキシャに乗らなければ通り抜けられないほどの雑踏でした。自動車ではこの雑踏の中は無理です。

神殿の外側も彫刻だらけ。

しまいに皆疲れ果てて座り込んでしまうのです。

 でも、これらの彫刻群を統一する単純明快な思想はちっとも見えて来ません。要するにごちゃごちゃ。でも、「ごちゃごちゃ」が思想そのものだ、という考え方もあるのでしょう。

 日本の密教もタントリズムの表現だという説もあるのですが、くわしく源流をたどってみると、やっぱり「ごちゃごちゃ」。

 性行為も神との合一を願うタントリズムなのだって!!!

白亜の巨大なタージ・マハール。こんな美しい建物が世界にあるのか、と感嘆しました。

神殿のなかも

221日 カジュラホ

カジュラホ秘図

 素晴らしい彫刻ですね。ニューデリー国立博物館でみつけました。サンチーやバールフットで欄楯彫刻が盛んに行なわれていたころの作品。工人は腰にバナナの葉っぱを纏い、竹の編み籠を頭に引っかけて背負い、裸足ですが、それでも帽子と腕輪は忘れていません。

画像
The Metropolitan Museum of Art, New York

Title/Object Name: Buddha
Culture: India (Uttar Pradesh, Mathura)
Period: Gupta dynasty (ca. 321–ca. 500)
Date: ca. 435–50
Medium: Sandstone
Dimensions: H. 33 11/16 in. (85.5 cm); W. 16 3/4 in. (42.5 cm)

お釈迦さまがお悟りの後初めて
説法をなさった鹿野苑(ろくやおん)。遠方にそびえ立つのがダメーク・ストゥーパで、その手前にある円形の土台がアショーカ王によって造られたストゥーパ跡。

仏像の歴史からすると、このサールナート仏像が美しさの頂点にたっている。グプタ美術の最高峰である。残念ながら博物館内部は撮影禁止で、岩波新書から画像をお借りした。

下流にあるガンジス河の火葬場。ここで焼かれ、灰をガンジス河に流すのがヒンドゥー教徒の願いなのだそうだ。生臭さも匂いもなし、さっぱりした雰囲気でした。

 オルチャから朝早くバスで出発
して
4時間かけてカジュラホに到
着。早速平安時代に造られた寺院
群のうち、西群を見物にでかけた
のですが、よくまあ沢山の彫像を
作ったものだと、その根気の良さ
に感嘆しました。

画像:ニューデリー国立博物館内の写真を撮影したもの。

画像:http://www.britishmuseum.org/

では皆様ご機嫌よう。

画像:
Carving of a Cave
Sunga, 2nd Century B.C.
Bharhut, M.P.
HT. 56.5cm, WD. 135.5cm, Dep. 25.5cm
Stone, ACC. No. 68.163
National Museum, New Delhi

若い女性がタージ・マハールを背景にして写真を撮ってもらっています。観光客は圧倒的にインド人が多いのです。タージ・マハールは国家の誇りなのでしょう。

本題とは離れるが、今回のインド旅行で最高の土産物を見つけた。場所はヴァラナシのRamada Plaza Hotel。カシミール地方でつくられたもので、表面にインドの宮廷風景が細かく手書きで描かれている。表面は透明な漆加工。

朝靄のなかヴァラナシの町の河下り。霧が立ちこめていて、とても風情がある。