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実験6

Canon alla Decima を3度で重複。

Canon alla Decimaは10度の2重対位法で作られています。
同じく10度の2重対位法で作られたContrapunctus10では、
主題を3度や6度で重複して呈示しています。
これは平均律2巻のト短調や変ロ単調にも見られることです。
では、Canon alla Decimaの旋律を10度で重ねてみたらどうでしょう?
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というわけで、重ねたものがこちらののBGMです。前半は後続声部、
後半は先行声部(つまり両方とも上声)を重ねてあります。




さて重ねてみたところ、なんとも騙されたような曲になったものです。
重ねるに当たっては、原曲の臨時記号を変えた部分が多いです。
実際のところ原曲自体が、前半と後半で臨時記号を変えているくらいで、
3度(10度)旋律を移すと、同じ調性にはならないようになっているのです。
Canon alla Decimaの分析で詳しく説明しています)
あと、原曲で音のぶつかっている箇所が、
ますますうるさく感じられるようになった気がします。
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このBGMを聞くにつけ、バッハがこの曲を3度でダブらせて
演奏しようという意図がなかった事はほぼ確実でしょう。

ツァルリーノなどは、自分が作った10度の2重対位法の作例について、
3度(10度や17度)でダブらせても良いと言っていますが、
これはあくまで旋法音楽の中での話。
24調の駆使にカミングアウトしたバッハの作品は、
音使いが複雑すぎて、簡単に理論どおりにはなりませんでした。


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