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以前の「ひとこと」 : 2003年5月後半



5月16日(金) 無限に開く立方体(その1)

 立方体を8個と、蝶番を8つ用意します。2つの立方体の稜同士をうまく順番に蝶番で繋いで、2×2×2の大きな立方体になるようにしながら、8個で一巡する輪ができるようにします。このように構成すると、以下のCGの図のように、2×2×2の大きな立方体を開いて裏返す操作ができるようになります。(CGでは蝶番は省略しています。)

step 1

 Step1では、観音開きのように2つずつの立方体を左右に開き、1×2×4にします。

step 2

 Step2では、1×2×4を縦に2つに折るようにします。結局外形は同じ1×2×4に戻りますが、蝶番の位置が変わります。

step 3

 Step3では、開いた本を閉じるように、二つ折りにします。これで再び2×2×2の大きな立方体に戻ります。ただしこの段階で、大きな立方体は裏返っていて、最初の2×2×2の段階では内側に隠れて見えなかった面が外に現れています。(このCGでは単色の立方体を使っているのでわからないですね。すみません。)ここで再びStep1のように開くことが出来るのですが、今度は左右ではなく前後に開くようになります。

step1 step2 step3

 この変形の蝶番の位置を、簡単なフレーム図にしてみました。Step1では青い蝶番で、Step2では赤い蝶番で、そしてStep3では緑の蝶番で変形します。その結果、今度は緑が上、赤が下に来るようになって、角度も90度回転したかたちになっているのがわかるかと思います。 

 この一連の変形プロセスを簡単な動画にしてみました。(各ステップの間にギャップがあります。)サイズが大きいので例によって分室のほうに置かせてもらうことにします。こちら(738kbyte)にあります。ファイルサイズが大きいのでご注意ください。

 この「無限に開く立方体」という呼び方は、このかたちを私が初めて知ったブルーバックスの本に載っていたのだと思います。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨日のここ<おまけのひとこと>欄に、「明日からはまたペーパーモデルのご紹介を・・・」などと書いたのですが、話がそこまで到達しませんでした。今月は忙しくて、以前から作ってあった画像や写真のストックを使ってページの更新をしているのですが、今日のものは、作ってあった図の蝶番の色が間違っていることに気が付いて、あわてて作り直したりして、更新作業に30分以上かかってしまいました。



5月17日(土) 無限に開く立方体(その2)

 昨日ご紹介した、立方体の2×2×2の開き続ける立方体ですが、以前もご紹介した幾何学おもちゃの世界というすばらしいページの中の、多面体おもちゃのコーナーにある、吉本キューブというのがこれです。このページによると、1971年に吉本直貴氏が発明されたと記載されています。 (このページのアニメーションはすばらしいので、昨日の私の動画は作る必要がなかったな、と思っています。)上記のページでは、菱形十二面体の有名な星型の形状2つでこの立体を作っていて、とても面白いです。昔、高校生くらいのころだったでしょうか、当時住んでいた街にあったデパートで、この「吉本キューブ」を見たことがありました。「ブルーバックスで見たあれだ」ととても興奮した記憶があります。でも、最近はこういうものを近所のお店で見かけることが少なくなりました。

 それはともかく、この「開き続ける立方体」を紙で簡単に作ってみたいと思いました。私がこの立体を始めて知ったブルーバックス(本が見つからないのでタイトルすらわかりません)には、この模型を1枚の紙から作ることのできる展開図が載っていて、学校用の工作用紙を使ってその展開図からこの模型を作ってみた覚えがあります。

 今日ご紹介するのは、それよりもずっと簡易版です。立方体を、側面の正方形4枚だけの筒状の四角柱として表すもので、以下の図1のような型紙から作ります。

図 1

 この図の黒い太線をカットして、細い線は折り筋をつけます(あ、もちろん外周は切り取ります)。左右の「のりしろ」を、中央の点線で示した部分に貼り付けて、2列の「四角い筒」を作ります(図2)。

図 2

 作ったものの写真を撮ってみました。図3は、図1の型紙の細い線を全て山折りにして組んだ直後です。太線をカットしてある部分に隙間があいているのがおわかりいただけるかと思います。

図 3 図 4 図 5

 図2は、立方体2つずつが「観音開き」になっているところです。側面だけの四角柱なので、形が安定しませんが、手で持って動かしてこの模型の構造を確かめるには十分です。

 この構造の面白いところは、形が安定しないことを逆手にとって、いろいろ面白い形をつくることができることです。図5はそのほんの一例です。8つの立方体(四角柱の側面)のうちの2つを畳み込んでしまって、六角星のようなかたちをつくってみました。ちなみに、もう1つ織り込んで五角星にすることもできます。そこまでやると紙の厚みで歪が大きくなってしまいますが。

 これ以外にも、四角柱を菱形角柱にしてみたり、平らに畳んだ状態で変形してみたり、いろいろ遊べます。工作の手間としては普通の立方体の展開図(のりしろつき)を切り抜いて組み立てるのとそれほど大差ありません。 なお上の写真の紙模型は、工作の手間を省くのと強度を考えて、のりしろは使わずにセロテープで固定しています。これだとさらに簡単です。

 この「開き続ける立方体」をご存知だった方もそうでない方も、ちょっと作ってみると楽しいかと思います。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 今朝は6時から小学校でPTA主催の「親子で野鳥を見る会」というのがあります。子供たちがとても楽しみにしていて、昨夜は8時くらいにさっさと自分たちで布団を敷いて寝てしまいました。今朝は4時から目覚ましが鳴って、5時には朝ごはんを食べていました。私も5時に起きて、こうしてこのページの更新をしています。(今5時半です。)



5月18日(日) 無限に開く立方体(その3)

 昨日、正方形4枚で立方体を側面の四角柱だけで表現したものを8つ連結した模型を作る話を書きました(図1)。 この構造だと四角柱の底面の形状が菱形になって変形するので、いろいろなかたちが作れます。

図 1

 例えば、こんなかたちができました。いずれも手で押さえておかないとかたちが変わってしまいます。本当は両手で押さえるといいのですが、写真を撮るために片手で抑えているので、形がきれいに整っていません。

図 2 図 3

 図4に、この写真のかたちの理想的な姿を載せておきます。太い線と細い線は、その菱形の高さが違うことを示しています。一番右の星型のものは、昨日の写真のものです。

図 4

 こうやって、いろいろなかたちができて楽しいです。子供に渡しておいたら、しばらくして「木ができた!」といって見せに来てくれました。

図 5

 この模型をつぎつぎと変形してゆく手続きや、出来上がる幾何学形状の単純さが、なんとなく「ふたりあやとり」に似ていなくもありません。



 さて、この8つの立方体の連結モデルの変形ですが、これは立方体でなければいけないか、というとそうではなくて、例えば直方体8つでやっても、同様に変形してゆくことができます。マッチ箱8つのイメージで、絵を描いてみました。

図 6

 やっぱり立方体のほうが美しいですね。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨日、「吉本キューブ」の話をちょっと書いたら、これは「遊びの博物誌」(坂根厳夫著)に掲載されていること、またこれについて掲載されているページがいくつもあることなどを教えていただきました。例えば、ふしぎな立方体とか、数学の教材3とか、吉本キューブなどです。ありがとうございました。



5月19日(月) 無限に開く立方体のバリエーション

 一昨日・昨日と、正方形4枚で四角柱(立方体)の側面を作って、それを8つ循環的に連結したかたちをご紹介しました。これは四角柱だったので形が変形してしまいましたが、三角柱であれば側面だけでも個々のユニットのかたちは安定するはずです。三角柱ならば、どんな三角形をいくつ使うのが面白いでしょうか?

 きれいな三角形といえば、まずは正三角形(内角が全て60°のもの。以下これを 60-60-60 と表記します)が思い浮かびます。次に特別な三角形というと、直角二等辺三角形(90-45-45)や、正三角形の半分の直角三角形(90-60-30)でしょうか。この2つは三角定規で有名ですね。それ以外といえば、(90-60-30)を2つ繋げた鈍角三角形である(120-30-30)とか、正五角形に関係する(72-36-36)の二等辺三角形なども面白い形です。

 今回は、立方体のかわりに、その半分である直角二等辺三角柱を使ってみることにしました。簡単に実験するため、先日と同様に図1のような展開図を考えて作ってみました。例によって太線が切断するところです。直角二等辺三角形ですから、中央の幅の広い列の幅の部分は、それ以外の部分のルート2倍の寸法になっています。

図 1

 ちょっと図が大きくなってしまいました。「のりしろ」の貼り付け先のグレーの点線のせいで、中央部分の太線(切断線)の位置がちょっとわかりにくいですが、アルファベットのHの文字を横倒しにしたかたちの太線です。 これを組み立てると、下の図2のような形になります。図中の青い太線が切断されている部分です。

図 2

 さて、これを変形してゆくと、いったいどんなかたちが現れるでしょうか? 私はとてもじゃないですが頭の中だけでは想像ができずに、実際に模型を作ってみてとても感動しました。 簡単にできてとても面白い動きをする模型です。お勧めです。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 おかげさまで昨日、このページのアクセスカウンタが4万を越えたようです。「過去のひとこと」によると、3万を越えたのが3月8日の朝ですから、私としては驚異的なスピードです。いつもご覧下さる皆様に本当に感謝いたします。
 とあるところに置かれていた、「わたしは盲導犬」(西沢聖子/著、ほおずき書籍 1989年4月発行 ISBN: 4-7952-1942-7 価格:税別1,200円)という本を斜め読みしました。 舞台が長野市のようで、多少地名になじみがあることや、最初の方のエピソードで「黒馬物語」のブラック・ビューティの話が出てきたり、時間があれば続きが読みたかった本でした。



5月20日(火) 無限に開く立方体のバリエーション:8つの直角二等辺三角柱

 ちょうど立方体を半分に切った形である、底面が直角二等辺三角形の、側面だけの三角柱8個を円環状に繋いだものを作る型紙を昨日ご紹介しました。下の図1から図6は、とりあえず三角柱のつながり具合は無視して、単に8つの三角柱を積み上げて出来る、簡単な形の凸多面体をCGにしてみたものです。

図 1 図 2 図 3

 図1から図3は正四角柱です。図1は底面の正方形の1辺の長さが1、高さが4です。図2はルート2の正方形で高さが2、図3は底面が1辺2の正方形で高さが1のものです。

図 4 図 5 図 6

 図4から図6は直角二等辺三角柱です。図4は斜辺が2で高さが4、図5は短辺が2で高さが2、図6は斜辺が4で高さが1のものです。ユニットである1つの直角二等辺三角形と相似であるという意味で、図5が最も自然な形かもしれません。

 さて、これらの6つのかたちのうち、昨日の展開図を組み立てた模型を変形して作ることが出来るのはどれで、出来ないのはどれでしょうか? また、作れるものについては、これらのかたちはどのような順番で移り変わってゆくでしょうか?

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 理化学研究所のRIKEN BSI NEWS というページに、使用依存的「言語」そして「文化」の発達という文章が載っていました。ちょっと引用させていただきます。

昨今のグローバリゼーションは、アメリカへの一極集中をもたらしつつある。そして、アメリカ英語は世界の「標準語」になろうとしている。サイエンスの世界では、すでにそうなっているともいえる。日本でもBSIのように英語を公用語とする研究所が現れた。ほとんどの国内学会が英語で行われ、研究費の申請も、大学の講義もすべて英語となる日が来ることも、もはや空想の世界ではない。

 なるほど、文化を支える言語という観点から見ても、アメリカへの一極集中というのは、日本国内の東京への一極集中と同じ構造だというわけですね。



5月21日(水) 立方体を斜めに編む(by H.Hamanaka)

 いつもご紹介している兵庫教育大の数学の先生の濱中さんのページの表紙の写真が、このところ更新の頻度が上がっていてとても楽しみなのですが、短時間で過去の表紙に移動してしまった立方体を斜めに編むを、昨夜遅く作ってみることにしました。

 濱中さんのページの写真から、まずは帯がどのようにめぐっているかを考えました(図1)。

図 1

 なるほど、立方体の正方形の面積を1とすると、編んで作るわけですから、帯は立方体の6面を必ず二重に覆うことを考えると、全ての帯の面積の合計は12になるはずです。 一本の帯の面積は2ですから、ということは帯はきっと6本だな、と最初に考えました。

図 2

 せっかくなので、帯1本のCGをつくってみました(図2)。

図 3

 図3は型紙です。真似して作るものですから、色くらいつけてみようということで、6色にしてみました。折り筋をつけて、カチッとした立方体を作ってみようと思います。パーツの両側の平行四辺形が重複する部分です。ここはもう少し短くてもよいかな、と思うのですが、現物あわせで切ってもいいやということで、このような型紙にしました。

図 4 図 5

 完成写真です。寸法は濱中さんの工作用紙の作品とほぼ同じくらいだと思います。こうやって作ると、帯のつながり具合がわかりにくくて、それがまたちょっと面白いです。

 <おまけのひとこと>
 忙しいのに(忙しいので)、今朝は寝坊してしまいました。起きたら6時半をかなり回っていてぎょっとしました。
 今日は予定では二等辺三角柱8個の連結の変形の写真を紹介しようと思っていたのですが、急遽この話題になりました。



5月22日(木) 正十二面体を斜めに編む

 昨日の「立方体を斜めに編む」のが面白かったので、他の正多面体も同じように編めないものかとちょっと考えてみました。 なかなか「これは」というアイディアがなかったのですが、若干似ていなくもない方法で正十二面体が編めそうだったので、試してみました。

図 1

 正十二面体の稜を斜めに横切る帯ですから、図1のように、正五角形の隣り合う2辺と対角線に囲まれた三角形が基本になります。

図 2

 この三角形を10個連ねると、図2のCGのように正十二面体をぐるりと一回りします。一回りに三角形10枚が必要です。この1つの帯は稜を10本またぎます。正五角形12枚なので、この小三角形は全部で60枚必要ですから、60÷10=6で6本の帯が必要です。

図 3

 昨日と同じく、虹色の六色で型紙を作ってみました。最後に重なって固定される分があるので、1パーツあたり三角形12枚です。折り筋をつけるのが楽なように、型紙の上でのパーツの位置を揃えています。

図 4 図 5 図 6

 図4〜6が完成写真です。この模型も、接着剤等は一切使わず、素材の紙の弾力で安定しています。わりと安定していて、落としたくらいではびくともしません。

 このかたち、なんとなく見覚えがあります。作ってみて思い出したのですが、確か布施知子さんだったか川村みゆきさんだったかのユニット折り紙で、確かこんな雰囲気の稜モデルを見たことがあるような気がするのですが、帯としてぐるっと一枚に繋がったものだったか、それとも1つの稜が1ユニットだったか、覚えがありません。 あるいは他の方の作品かもしれません。もしご存知でしたら教えていただけたらと思います。

 <おまけのひとこと>
 本日のひとことは説明があまり丁寧にできませんでした。そのかわり写真が少し大きいです。
 私の住む山国でも、ようやく水田に水が張られるようになりました。代掻きが終わって田植え前のこの季節は、一面に鏡のような水面が広がって、そこに山や空が映って、とても美しい風景が見られます。



5月23日(金) 直角二等辺三角柱8個を環状に繋いだかたち

 ここ2日ほど、予定外の模型のご紹介になってしまいましたが、3日前(つづく)と書いておいた、その続きの話です。実物の写真を撮ってみました。

図 1 図 2 図 3

 まず図1が、手を離して自然に床の上に置いたときのかたちです。図1を左右に引っ張ってまとめると、図2のように高さ4の四角柱になります。逆に、図1の左右を中央に集め、上下のパーツをそれぞれ手前に起こすようにしてまとめると、図3のように大きな平べったい四角柱になります。(すみません、手で押さえて写真を撮っているものですからひずんでいます。)

図 4 図 5 図 6

図4は、高さが2の四角柱です。図5、図6は、それぞれ高さが4と2の三角柱です。図2から図5が、図3から図6が作れます。図5、図6はいずれも図4に変化させることができます。以上をまとめると、

図2→図5→図4→図6→図3→図2→図5→図4→図6・・・

と変化します。図2から図3へワンアクションで変化するというところがとても面白いです。動きが想像できますでしょうか? (考えやすいようにと思って図1を載せたのでした。) これ以外にも変化の途中の形とかで面白いものが作れます。立方体の展開図(のりしろつき)を作って組み立てるのと同程度の手間で作れます。お勧めです。

 <おまけのひとこと>
 何度かご紹介させていただいている茉莉花の部屋クラフトコーナーで、木の結び目が発表されていました。表面がシールで仕上げてあって、なるほどと思いました。私のページにもコメントくださってありがとうございました。
 昨日の夕方、雷雨があって停電がありました。こういうときはノートパソコンに限ります。
 ここ二日ほどご紹介した、幅が一定の文字通りの「帯」で多面体を編むモデルで、また別の編み方を思いつきました。まあたいしたアイディアではないのですが、この週末に作ってみようと思います。



5月24日(土) 6本の帯を編む(その2)

 一昨日の正十二面体を6本の帯で斜めに編む組み方は、6つの大円を組み合わせるかたちになっていました。では、帯の折り方をちょっと変えたら、切隅二十面体(切頂二十面体:いわゆるサッカーボール)ができるだろうと思って、昨夜作ってみました。

図 1(再掲)
正十二面体
図 2
切隅二十面体

 おそらく全て白い帯で作ると、「サッカーボール」らしく見えるだろうと思うのですが、こうして全ての帯の色を変えると、6本の輪が絡み合っているという印象のほうが強くなると思います。

図 3 : 型紙

 型紙は図3のようになります。それぞれの台形は、正六角形のちょうど半分ですから、正三角形3個を並べたかたちになっています。台形10枚でちょうど一回りなのですが、オーバーラップ分を含めて12枚分用意してあります。

図 3 図 4

図3は、穴の空いた五角形の面が床面に接するように置いて、真上から見下ろしてみたところです。 図4は、正六角形の面(3色の組み合わせになります)を床面に接して置いて、やはり真上から見下ろしてみたところです。 模型としてはかなり「すかすか」な印象がありますが、これでも接着剤等は使わずにしっかり安定して組み上がっています。 ただし、ある程度丈夫な紙で作らないと弱いと思います。

 この模型を組むときは、クリップなどで仮止めしながら組むととても楽です。 ただしクリップの跡が残ってしまうと悲しいので、きつく止めすぎないように、またはずすときはパーツを傷めないように注意が必要です。 いつもならクリップなどには頼らないで組むのですが、昨夜は時間が遅かったのでつい安易にクリップで留めながら作ったらとても簡単で早かったのですが、2箇所ほど跡が残ってしまって残念です。

 このかたちを、帯に折り筋をつけないでボールのように組むやり方をすると、いわゆる「セパタクローの球」のような形になって、いろいろなところで見かけます。ただその場合は、なんらかの方法で1つの帯の輪の両端を固定する工夫が必要になります。今回の模型では、折り筋が入っているため、重なっている部分がずれてしまうのが防げています。

 <おまけのひとこと>
 パソコンでの作図に10分くらい、印刷が数分、折り筋付けが5分、切り出しが5分、組み立てが10分弱くらいで、作業開始から完成まで30分くらいだったでしょうか。 きれいですし面白いですし、比較的組み立ても簡単です。お勧めです。
 私はいつもこういった工作はパソコンで型紙を設計してプリンタで印刷してしまうのですが、最初に帯状の紙があるのであれば、帯と同じ高さの台形の型紙を丈夫な厚紙で1つ用意しておいて、その型紙を利用して帯に折り目を入れながらパーツを用意すれば簡単かな、と思っています。



5月25日(日) 台形編みによる切隅多面体

 昨日の切隅二十面体の作り方は、そのまま切隅四面体や切隅八面体に応用できます。さっそく作ってみることにしました。パーツは、昨日もちょっとご説明しましたが、図1の(a).のように正三角形3枚による台形を連ねた形になります。

図 1

 さて、組みはじめるときに1つだけ注意する必要があります。この組み方も、交互に上下になるように編んでゆく手法ですから、他のパーツの下に隠れる部分をグレーの色をつけてみるとすると、図1の(b).のような組み方と(c).のような組み方が可能です。この2つのうち、どちらが望ましい組み方かというと、(b).のように組むとパーツの両端を押さえてもらえなくなってしまうので、(c).のように組まなければいけません。下の図2に、正しい組み方と間違った組み方の例を載せておきます。

図 2

 この2つの違いと、それぞれが図1の(b).と(c).のどちらに対応しているか、おわかりになりますでしょうか?



 というわけで上記のパーツを組んでみました。今度は白一色です。とりあえず最初に、切隅四面体を作ってみました。図3が一般的な方向から見たところ、図4が正四面体の切り落とされた頂点の方向から見たところ、図5が1つの六角形の面から見たところです。 この立体は、写真に撮って視点を固定してしまうといまひとつかたちがわかりにくいかと思います。

図 3 図 4 図 5

 この模型は、当初想像していたよりもかなり丈夫にできました。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 当然続きの模型は何なのか想像がつくかと思いますので、次回(多分明日)はそれ以外の模型も載せようと思います。
 H.Hamanaka very private page過去の表紙34に、8の字結び目を四角柱を組み合わせて作った作品の写真と解説が載っています。この8の字結び目の模型も、自分でいずれ作ってみたいと思っている品物のリストに入っています。写真をみたら私も作りたくなりました。
 同じページの一番下の写真で、三葉結び目の模型をCDケーススタンドにしているのがすばらしいです。わたしがあそびをせんとや・分室に置いている写真の三葉結び目の模型を作ったときには、隙間が小さいほうが密度が高くてきれいかなと思ってそのように設計したのですが、そのため濱中さんのような使い方ができません。ちょっとうらやましいです(笑)。



5月26日(月) 台形編みによる切隅多面体(つづき)・他

 正三角形3枚による等脚台形を連ねた帯で編む多面体のつづきで、切隅八面体の写真をご紹介します。これは台形6つで一周しますから、オーバーラップ分を含めて台形8つが連なった帯を4本用意して編みます。

図 1 図 2
図 3 図 4

 図1が一般的な視点から見たところ、図2が穴になっている正方形の面から見たところ、図3が3本の帯で編まれた正六角形の面から見たところ、そして図4が、ちょうど帯2枚が重なる、1つの稜の方向から見たところです。

 ・切隅四面体は、 台形4つで一回りする帯を3本で編みました。
 ・切隅八面体は、 台形6つで一回りする帯を4本で編みました。
 ・切隅二十面体は、台形10個で一回りする帯を6本で編みました。

 この数字を見ていると、2002年4月17日のひとことにも書いた、

 ・立方体は、  正方形4つで一回りする帯3本で編めます。
 ・菱形十二面体は、菱形6つで一回りする帯4本で編めます。
 ・菱形三十面体は、菱形10個で一回りする帯6本で編めます。

 というのを思い出さずにはいられません。



 おまけに、5月22日に載せた、斜めに編む正十二面体を白一色で作ってみました。

図 5

 比較のために並べてみました。これはこれできれいです。帯の色を変えた従来のモデル(右側)は帯のつながり具合が強調されますが、同じ色で編むと全体の形のほうがよく見えるようになって、面の中央に正五角形の穴があいた正十二面体であることがわかりやすくなります。(ちなみにパーツの精度が低いと、この中央の正五角形の穴のかたちがきれいに揃いません。)

 これはなかなか丈夫なモデルなので、この2つでお手玉をしてみました。お手玉なのでもう1つつくろうかな、と思っています。

 <おまけのひとこと>
 昨日はたいへん風が強い一日でした。



5月27日(火) 台形編み:立方八面体

 昨日までご紹介した、正三角形3つ分の等脚台形による切隅多面体は、各面が正三角形の正多面体の稜の中点を斜めに繋いでいく軌跡を帯にしたものでした。 では、もとの面が三角形以外のものがあったらどうでしょうか? 立方体だと簡単すぎてあんまりおもしろくなさそうだったので、立方八面体について考えてみました。

図 1

 図1は、立方八面体の骨格(赤)に白い帯をまわしてみたコンピュータグラフィックスです。これは1つの正方形の面の外側を回っていますから、この帯6本を編むことができそうです。では帯の形はどうなるでしょう?

図 2

 別の帯と干渉しないためには、図2のように各稜を三等分して結ぶ形にすればよさそうです。ちょっと正方形の面が弱そうですが、とりあえず作ってみることにしました。

図 3

 パーツは図3のように円弧状になります。こうなると単なる帯ではないです。オーバーラップ分も含めて、60°の等脚台形と45°の等脚台形を5個ずつ交互に並べます。

図 4 図 5
図 6 図 7

 図4が一般的な視点から見たところ、図5が立方八面体の正方形の面から見たところ、図6が立方八面体の正三角形の面から見たところ、そして図7は、立方八面体の稜に当たる方向から見たところです。正多面体を作ると切隅多面体になったように、これは大菱形立方八面体に近い形になりました。45°の等脚台形の寸法を調整すれば、大菱形立方八面体になります。

 <おまけのひとこと>
 下の子がサンダーバードがとても気に入っています。ここで言うサンダーバードはJR特急ではなくて、国際救助隊の人形劇のサンダーバードです。先日も紅茶の空き缶に紙で作ったキャタピラをつけて、その上にペットボトルに紙を巻いたものを載せて、「ジェットモグラ号」を作っていました。それを布団の中に潜り込ませたりして遊んでいるのですが、そのときにずっとサンダーバードのテーマを口ずさんでいます。聴いているとこんな感じです。



 MIDIデータ(1kbyte)はこちらです。

 楽譜のA,B,Cのように、こうやって4度ずつどんどんあがっていく歌い方をしているので、本人はすごく低い声から歌い始めて、何周か歌うと裏声でとんでもなく高くなって、また低い音から始めて・・・と繰り返しています。



5月28日(水) 台形編み:捩れ立方体の検討

 等脚台形を連ねた帯状のパーツで多面体の稜を斜めに結んで編むモデルの話の続きです。自分でもこんな風に話が展開するとは思っていませんでした。昨日は立方八面体をご紹介しましたが、やはり正方形のパーツは隙間が大きくて弱いです。ということで、できるだけ三角形の面の割合が高い多面体ということで、捩れ立方体を検討してみました。(今のところ検討だけです。)

 まず、捩れ立方体の稜の中点を斜めに繋いでいくと、どんな形になるでしょうか? これを頭の中だけで考えようとしたらわけがわからなくなって、実際の模型(ジオシェイプスの写真:66kbyte) に糸を巻きつけてみたりしながら考えてみました。

図 1:捩れ立方体 図 2:稜を辿る

 図1は捩れ立方体の骨格です。図2は、手前の正方形の面の隣り合う二辺の中点を繋いで、あとは次々と隣の面の隣の辺の中点を結んでいったものです。これは立体を2周して、自分自身とは3箇所で交わって元に戻ってくる軌跡になります。いわゆる三葉結び目の形です。 また、面白いことにこの1本の軌跡は捩れ立方体の6つの正方形を1回ずつ通過します。

 ということは、この三葉結び目が4本で全体を覆い尽くすはずです。他の3本も描いてみました。

図 3 図 4 図 5

 図2から図5までの4つを重ねて、元の骨格である捩れ立方体を消してみました。

図 6 図 7

 4つの三葉結び目の絡み合いが面白いです。でも、これを紙でパーツを作って組むのはちょっと大変そうです。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 H.Hamanaka very private pageの濱中さんから、昨日の立方八面体を斜めに編む模型の絡み目としての構造は、パズル工房『葉樹林』葉樹林日記の5月10日の右側のものと同じですね、とご指摘いただきました。 言われるまで気が付きませんでしたが確かにその通りです。 さらに、これと同じことを二十面十二面体でやれば、星を組んだものをを作れると思うのだけれども、どこかで見たような気がするのですがどこでしたっけ? とコメントいただきました。 これは確か、以前幾何学おもちゃの世界の西原さん(上記の葉樹林日記の手前の2つは、西原さんの作品なのですね)に教えていただいた、Juno's Worldの中のSelf-Standing Structure of 12 Starsがその構造ですね。

 今日の「おまけのひとこと」に書かせていただいた

 ・H.Hamanaka very private page
 ・パズル工房『葉樹林』
 ・幾何学おもちゃの世界
 ・Juno's World

 いずれも大変お勧めのページです。(そろそろリンク集のページも更新しないと、と思いつつ、毎日のルーチンワークになっている更新作業と違うページをいじるのが億劫で、こんなところに書かせていただいています。)



5月29日(木) 台形編み:捩れ立方体の検討(その2)

 昨日、捩れ立方体の稜の中点を順に繋いでゆく帯を作ったらその形はどうなるか、何本で編めるかを考えてみました。底角が60度と45度の等脚台形をA,Bと呼ぶことにすると、

B-AA-B-AAAAAA-B-AA-B-AAAAAA-B-AA-B-AAAAAA

で1つのパーツになります。 とりあえずパーツの設計だけしてみました。といっても単に一昨日の立方八面体用に作った2種類の等脚台形を並べただけです(図1)。この図では、左端にオーバーラップ用に等脚台形Aを2つ追加してあります。

図 1:捩れ立方体を編むパーツ

 ひょろひょろとへびのように長いパーツになりました。これをA4の用紙いっぱいの幅で作っても、帯の幅はかなり狭くなりそうです。 この帯が捩れ立方体にどのように巻きつくか、CGにしてみました。

図 2 図 3

 図2が1本の帯のパターンです。(昨日の図2に相当します。) 図3で、4本の帯を白で作ってみました。完成した立体はこんな形になるはずです。

図 4 図 5

 図4では骨格の捩れ立方体を外してみました。これだとよくわからないので、帯の色を変えてみました(図5)。 実は帯を実際に重ねる処理をCGで指定するのが面倒だったので、外側から見て見えない部分は取り外してあります。そのため、図5で隙間から見えるモデルの内側のパーツの重なりが変です。

 形がわかりにくいので、例によって gif アニメーションにしてみました。こちら(945kbyte)です。サイズが大きいのでご注意ください。 アニメーションまで作ったら満足したので、この模型を実際に作るのはとりあえず保留にしました。そのうち暇が出来たら作ってみようかと思います。

 <おまけのひとこと>
 今朝6時過ぎからプロバイダのwebサーバが停止しているようです。ページも開けないし、ファイルも転送できないし、困ったものです。(5/29 06:30)
 ping には応答するようになりました。(06:44)
 ftp にも応答がありました。(06:45)
 でも、httpでは応答がありません。とりあえず転送だけしておきます。
 あ、やっと反応がありました。(06:50)。やれやれ。



5月30日(金) カッツの太鼓

 私たちの身の回りにある楽器というのは、弦楽器なら弦の長さ、管楽器ならば管の長さを調節することによって様々な高さの音を鳴らすことができます。もちろん弦楽器ならば、弦を引っ張る「張力」も大変重要ですし、素材や共鳴体のかたちなども、その楽器らしい音色を作るのにとても重要な役割を果たしているのですが、でも基本的には「弦や管の長さ」というのが、音の高さをコントロールするための重要なパラメータになっています。 例えば私たちは、ある弦の開放弦の音を聞いて、次にどこか適当な位置を押さえて弦を短くしたときに、その長さ(押さえた場所)を目で見なくても音を聴くことで知ることができるのです。 このことを、「弦の長さを聴く」と表現することにしましょう。

 さて、振動源が1次元の線分ではなく、2次元の面になったらどうでしょう? 面が振動する楽器と言うと、代表的なのが太鼓です。普通の太鼓の音色には、ドレミファ…というような音の高さの感覚、いわゆる「ピッチ感」はありません。しかし、オーケストラや吹奏楽などで用いられるティンパニという太鼓はピッチ感を持っていて、面の張り具合を調節することによって、高さを変えることができます。

 1966年に、カッツ(Kac)という人が「太鼓の形を聴くことができるか?」(Can one hear the shape of a drum ?) という魅力的なタイトルの論文で、音を聴いただけで振動源の面の形を決めることができるだろうか? もしできないとすれば、全く同じ音を出す、形の違う2つの太鼓があるはずだが、それはどんな形か? という問題を提起したのだそうです。(すみません、元の論文にあたっていないので、表現は不正確です。) 「カッツのドラムの問題」といって、有名な問題なのだそうです。

 ここでいう「同じ音」というのは、同じ音色ということです。音色が同じ、というのはサウンドスペクトログラムが同じ、つまり音を構成している様々な高さの純音の組み合わさり方が同じ、という意味です。 普通に考えると、音を聴いただけで形の情報を全て復元するのは不可能なのではないかと思われます。でも、太鼓の面積を聴くこと、太鼓の周の長さを聴くことはできるのだそうです。 つまり同じ音色の太鼓であれば、面積も周長も同じなのだそうです。

 これだけでもとても面白い話だと思うのですが、このカッツのドラムの問題の例、つまり全く同じ音が鳴る2つの形の違う面のペアが見つかったのだそうです。 下の図の、直角二等辺三角形を7枚組み合わせてできる妙な形の八角形がそれです。こちらのページを見ると、この八角形の固有振動パターンが掲載されています。

同じ音色に響く異なる太鼓

 この2つが同じに響くということを示すのはとても大変だと思います。よくぞ見つけた、よくぞ示したものだと感心します。

 と、ここまでが前置きで、この2つの凹八角形がどのように珍しいかをご理解いただいた上で、この2つの形で、パズルとして何か面白いことはできないだろうか、と考えてみました。というところですみません今日は時間がなくなってしまいました。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 えーと、思わせぶりなところで幕を引きましたが、あんまり面白い展開を思いついていません。単に導入の説明に時間がかかってしまって(なさけないことにこれだけ書くだけで今日は30分も費やしてしまいました)、中断です。



5月31日(土) カッツの太鼓(その2)

 昨日ご紹介したカッツの太鼓の問題の解である2つの凹八角形の形で、何か面白いことができないか考えてみました。 最初に思いついたのは、これが何か多面体の展開図にならないだろうか、ということです。

 多面体の展開図といえば、以前ちょっとご紹介した(2002年2月24日)、愛媛大学の平田先生の展開図と多面体というページが頭に浮かびました。このページのプログラムに、この凹八角形を入力したらどうなるでしょう? 同じ固有振動数のスペクトラムを持つ多角形ですから、なんとなく同じ多面体の展開図になっていそうな気がします。

 とりあえず図1のような分解能で展開図の候補を探索してもらったら、左のクリーム色の図形のほうは5つ、右の水色のほうは6つの解が出てきました。この中で1つでもいいからちゃんとした立体になってくれないかと思って解を検討してみました。

図 1

 ・・・が、残念ながらこの解のほとんどは、いわゆる二面体といいますか、ぺたんとまったいらになってしまう形でした。部分的には立体になるものもあったのですが、完全な立体になるものがありませんでした。部分的に立体になる例としては、例えば下の図2のように、直角二等辺三角形3つによる正三角錐を上下に合わせたような形(クリーム色の部分)に、平面に畳まれた半分の大きさの直角二等辺三角形(ピンク色の部分)がくっついているというかたちでした。

図 2

 もともと、この凹八角形は直角二等辺三角形7枚でできていますから、そのうち6枚で三角錐2個ができて、1つがあまってしまったのでした。

 でも、二面体であっても同じ系列の二面体ができるというのでもおもしろいかなとは思います。

(つづく)

 <おまけのひとこと>
 昨夜は職場の飲み会の幹事でした。「欧風家庭料理のお店」というところにコースをお願いしておいたのですが、最初にめいめいの席に置かれたのは、和風の塗り物のお弁当箱のようなもので、ふたを開けてみると、タラの芽の天ぷら、こごみのおひたし、ふきの煮物、お刺身の小鉢、小エビのから揚げ、といった完全に和風のメニューで、幹事としては「何か間違えたか」と驚きました。しかもその直後にパンが運ばれてきて、いったいこれは・・・と不安になりました。 結局、最初の前菜だけが和風であとは「欧風」でしたが、なかなかインパクトがありました。お料理はおいしかったです。
 帰りの雨風を心配していたのですが、幸い昨夜のうちは雨も降らず、風もそれほどたいしたことはありませんでした。今朝はかなり風が強く、小雨が窓に叩きつけられています。これから明日の朝くらいまでがひどくなりそうですね。



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