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2024.12.31 公開ひとこと
7月30日(木) カリソンパズル(その6)
カリソンパズルのつづきです。
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不可能立体のようなかたちを部分的に含むカリソンパズル問題は作れないだろうか? と思って試したところ、穴が空いたかたちであればカリソン(正三角形を2つ連結した菱形)で不可能立体を描くことができること、でも内部の穴をカリソンで埋めようとしても、試した範囲ではうまくいかなかった、ということをご紹介してきました。
改めて、元の論文The Calissons Puzzle(カリソンパズル:Jean-Marie Favreau, Yan Gerard, Pascal Lafourcade, Leo Robert:2026) に戻ってみることにしました。
論文では、カリソンパズルは3次元の立方体格子の階段状表面(stepped surface) の投影として記述されること、この表面は立方体格子における高さ関数(height function) によって定義される単一値の関数として記述可能なこと、が述べられています。(x,y)座標から高さzへの写像 z=f(x,y) が存在して、領域全体でこの高さ関数が整合的である(=一意に定まる)ことが、タイリングが存在するための必要条件となります。
階段状表面というのがどういうことなのか説明します。たとえば下図のカリソンパズルの盤面の一例です。図のように座標系を決めます。
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図 1:カリソンパズルの一例 立方体格子の各マスごとにx軸方向、y軸方向の断面を考えてみると、いずれの方向にも必ず単調増加になっています。これを階段状表面と呼んでいるのです。
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図 2(a):x軸方向に単調増加 図 2(a):y軸方向に単調増加 x,y座標方向に進んだときに高さが減少してしまうと、「隠れ」が生ずる可能性があるため、カリソンでは描けなくなってしまうのです。
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不可能立体を含む盤面が成立しないのは、「高さが一意に定まる」という条件を満たさないからなのです。ただし、これが成立するのは円と同相な単純連結領域、要するに穴のないひとつながりの領域での話です。不可能立体の内部の穴をカリソンで埋められなかったのはそのためなのです。(たまたま試した例が悪かったのではなく、原理的にできない。)
逆に言うと、すでにカリソンで不可能立体が描画できているわけですから、それそのものが「盤面」であるとすれば、そういうカリソン問題を作ることができるわけです。カリソンパズルにはなっていませんが(カリソンの配置を制限する黒線を入れていない)、盤面の形状としてたとえばこんなかたちがあったとします(図3)。
図 3:穴のあるカリソン盤面 これはたとえばこんなカリソンの配置が可能でした。
図 4:カリソン配置例 この配置における「高さ」を考えてみると、下図のように右回りと左回りで高さが違ってしまうのです(だから「不可能立体」なのですが)。
図 5(a):左側は高さ 4 図 5(b):右側は高さ 5 つまりこれは数学で言う「被覆空間」(covering space) になっている、ということだと思います。この「穴」を時計回りに回ると高さが1つ減ります。反時計回りに回ると高さが1増えます。これは、次の図のようにカリソンの配置を変えても(回転方向による変化量は)変わりません。
図 6:別のカリソン配置例 この「周回すると高さが1だけ変わる」というのは何が決めている特徴なのでしょうか。この盤面で、高さが2以上変わる、もしくは高さが変わらないカリソン配置は作れるでしょうか。あるいはこの盤面とは異なる形状で、高さがもっと変わる盤面は作れるでしょうか。
(つづく)
<おまけのひとこと>
昨夜、「数学セミナー」8月号の「エレガントな解答を求む」を1問だけですが解のレポートを作って送付しました。解説が掲載されるのは11月号(10月12日発売)です。こういう気の長い楽しみを仕込んでおけるというのはとてもいいなあと思います。
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