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田園、山、海そして終着駅へ 第3回

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(12年6月の旅)

日本海沿いを走って終着駅へ

 連結していた後ろの車両が深川行きの単行として出発したのち、改めて増毛行きの改札が行われる。今度は日本海にそって走るため、車窓は右側に陣取る。乗客は数人でほぼ旅行客に限られていた。留萌駅の構内は広々としており、漁業で栄えたころの面影を残す。またここからはかつて日本海沿いを北上する羽幌線が分岐していた。2列2面のホームではあるが、ほぼ駅舎寄りのホームしか使っていないようだ。増毛行きは定刻にゆっくりと出発。しばらく市街地を走り、まちを大きく迂回するように左カーブを切り続けたところで、視界が一気に開けて日本海が広がる。劇的な車窓の変化に目を奪われているうち、瀬越駅に到着する。

 瀬越から次の礼受までは海岸沿いを走る。その間にはゴールデンサンビーチと呼ばれる海水浴場があり、早くも海水浴を楽しむ人たちの姿がみられた。もっともここ数日の北海道は真夏なみの暑さが続いているようで、海水浴には絶好の陽気といえる。今までの山ルートとは異なる趣の風景を楽しみながら、礼受駅に到着。海沿いとの反対側は海岸蝕になっていて、このあたりは北海道らしい。礼受も海に近いのどかな無人駅で、貨車の待合室を設けている。さらに海沿いを走っていくと、次の阿分駅に着く。この駅は板張りの短いホームで、車両三分の一くらいの長さしかないのには驚いた。実はその前に同じようなホームの北秩父別を過ぎていたのだが、改めて仮乗降場そのままの駅が存在していることに驚きを隠せなかった。もっとも、国鉄当時には校庭の朝礼台くらいしかなかった仮乗降場もあったと言われている。

3分の1両分のホームしかない朱文別駅


 阿分からさらに海沿いに近いところを走っているなあ、と思っていたらいきなりトンネルの洗礼を浴びてびっくりした。トンネルを抜けると海からは遠ざかり、里山のような雰囲気のところを走っていき、信砂駅に到着する。この駅も板張りの簡素なつくりではあるが、阿分とは違ってホームは一両分の長さが確保されていた。宮脇俊三さんの時刻表2万キロによると、この駅の脇に川が流れていて小さな滝があったと記されているが、そうした光景は確認できなかった。

 信砂の次の舎熊は、貨物車両の待合室と駅前広場がしっかりとあり、昔からあるローカル線の駅という感じだった。海は先ほどよりも近づいてきたようで、駅間も北海道としては珍しく非常に短い。舎熊を出ると、次の朱文別、箸別と仮乗降場だったと思われる駅が続く。いずれもホームは阿分と同じくらいの長さしかなく、駅名板一つだけ立てられているシンプルな駅であった。朱文別では車両の後部が手前の踏み切りの上にきてしまうほどであるが、もとより停車時間は短いし、道路が数珠つなぎになるほど車両は通行していない。それにしても、留萌を出てからの各駅は北海道ならではの駅名がずらりと並んでいて楽しい。おそらくアイヌ語の地名からきているのだろう。

 朱文別から再び海沿いを走るようになり、箸別を出発するといよいよ終点の増毛。ところからこの区間はカーブの連続ということもあってか、極端なのろのろ運転をして、もうすぐそこまで来ているのになかなか到着しないという感じだった。確かにカーブがかなりきついので、徐行もやむを得ないところなのだろうが、それにしても結局増毛の手前でほんの少しスピードを上げたと思ったら、もう停車の態勢へと変わっていった。

 増毛駅は、雑誌やインターネットで何度か見ていて印象は分かっていたが、まさしく板張りのホーム1線だけという日本屈指の簡素な終着駅であった。ホームが切れたすぐのところに車止めがあり、ここから先は一歩も前に進めないということを強調しているかのようであった。ホームを出ると駅舎が建っていたが、どうやら最近つくられたものらしく、駅舎内はそば屋と海産物店が入っていた。JRの詰め所みたいなところは確認したなかでは見あたらず、切符も当然のことながら車内精算であった。無人の小さな駅にもかかわらず、構内が広々としているので、かつては漁港からの貨物列車の側線があったのかもしれない。増毛駅では最大1時間から10分程度ですぐに留萌方面へと列車は折り返していく。私が乗ってきた列車は折り返しまでの時間が短く、あちこち写真を撮っているうちに出発時間を迎えたのである。増毛駅を発車する列車をビデオクリップにおさめながら、列車が出ていったあとの静けさに包まれた増毛駅のホームにしばし見入っていた。
 

(おわり)

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