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寝台特急なは号 第1回 第2回 第3回
なは号を旅路に選んで 第3回
そして熊本へ到着
鳥栖に到着すると、マニアたちはある一点に殺到した。なは号とあかつき号の切り離しをする車両付近である。当然のことながら、これに命をかけていた?というような人も多いので、ベストポジションはすでに人で埋まっている。私も遠巻きに切り離し作業のようすを見守った。
切り離しの最中に博多からのつばめ号が到着し、なは号を抜いていく。ふとその時にあかつき号の写真を撮影していなかったことに気がつき、あわてて最後尾まで行って何枚かの写真を撮りまくった。なは号に乗り遅れればお話にならないので、朝っぱらからバタバタと駆け足になってしまった。
鳥栖からはしっかりと車窓を眺めて乗車するが、まだまだ夜が明けるまでは時間がありそうだ。この光景も夜行列車ならではの独特のもので、だんだんと夜が明けてくるようすに、旅の気分も同じように少しずつ盛り上がってくる。こういう夜行列車の旅がしずらくなってくる世の中になり、やがては夜行列車の旅そのものが昔話として語られる時代がくるのかもしれない。寂しい限りである。
郷愁にばかりひたっていても仕方がない。大牟田を過ぎると車窓は完全に明るくなり、寒空が広がる朝を迎える。いよいよ終点の熊本駅に到着する。なは号の旅もクライマックスが近づいてくる。廃止まであと1ヵ月あるが、私自身のラストランに名残惜しさ募る。
なは号が熊本駅に到着した。いつもの旅行なら「さあ、これから旅が始まるぞ」という高揚感だけに包まれるものだが、今回ばかりはどこか心残りに部分が占める。この思い、出雲号のラストラン、北斗星で初のロイヤル個室に乗った時、それぞれでも同じように感じたものだが、今回はとくに時間に余裕があるせいか、余計にそんな気がした。
乗客が降り、やがて回送列車としてホームをあとにする。多くのマニアや観光客がなは号にカメラを向ける。もちろん私もそのなかの一人である。列車はゆっくりゆっくりと、まるでさよならを告げるかのように去っていく・・・。
(この項おわり)