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「岩泉線」乗車体験記 第4回

(01年9月の旅)
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岩泉駅を去る列車

無人終着駅・岩泉

 これまた昔の名残なのか、駅舎内はかなり広く立派な待合室であった。駅の窓口は民間委託がされているようで、おばあさんが窓口業務を行っていた。せっかくの記念ということで、私は二升石駅までの切符を買った。ささやかながら、岩泉駅の旅客収益になればというところだ。

 ホームに列車がいるうちは、駅周辺や線路上などを探検することはできないので、しばらくは待合室やホームをうろうろとしていた。待合室には先ほどまで列車に乗っていたおばあさんと孫娘が、駅にいたおばあさんたちと話をしている。見てると、列車に乗るようすはないので、バスかなにかを待っているようだ。

 やがて、列車の発車時刻が近づいた。ホームにいると、乗車するものと思われるのでホームの外に出て、出発する列車を見送ることにした。はっきり確認しなかったが、車内には先ほどまで一緒だったマニアの男性二人のみ乗車しているうようであった。ジリジリとベルが鳴り、ディーゼルカーはゆっくりと発車した。「行ってしまった・・・」そうつぶやきながら、私はひとり、列車を見送った。

 列車が行ってしまったので、周辺の探検を始める。まずは、この路線がどうなっているのかを探る。終着駅ではあるが車止めはなく、そのまま線路が延びている。もともと岩泉線は岩泉が終着ではなく、小本まで続く計画であった。ところが、赤字路線だったため工事が凍結され、結局そのまま延伸することなく盲腸線として現在に至っている。途中から藪になってしまい、確認はできなかったが、線路はもう少し先まで伸びているような感じであった。終着駅なのに、終着駅という感じがしないというのが岩泉駅の印象である。

 それにしても、列車案内板を見ると唖然とする。改めて一日たった3往復というのがいかにすごいかというのを感じる。今、8時03分の列車が出て行ったが、次に岩泉駅に列車が着くのは午後4時23分。その間、8時間以上も列車の姿がない。幹線であれば、たとえ夜中であってもそこまで間隔が空くことはない。

 そんな駅舎の一角に「岩泉線物語」と題した駅ノートがあった。私も一筆したためてきたが、読ませてもらうと、この岩泉線に興味や愛着を持って乗ってきた人が多いことがわかる。都会では考えられないようなローカルな列車と、のどかな雰囲気、そしてゆっくりとした時間の流れ。そんなことが、旅人を寄せ付けるのかもしれない。

 岩泉街の名所・龍泉洞周辺の散策を終えたあと、時間に余裕があったのでいったん岩泉駅に戻ることにした。

 再度、岩泉駅にやってくると、さらに静寂が待っていた。昼間列車が来ないため、駅舎は事実上休業状態である。むろん、待合室にはだれもいない。切符売り場の窓口も閉まっている。私はホームに出て、セルフタイマーで記念撮影をすませると、だれもいない待合室に腰を下ろした。これだけの規模の駅舎に誰一人いないという状況は、カルチャーショック以外のなにものでもない。再び、「岩泉線、大丈夫だろうか」という不安がよぎる瞬間でもあった。ちなみにこの日は土曜日。あの高校生たちは、午前授業の土曜にもかかわらず、夕方まで列車を待たなければならないのだろうか?

(この項おわり)

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