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八幡平を駆け抜けて 第3回

 

安比高原

花輪線めぐり・岩手編

  次の小屋の畑駅は珍駅名として私も注目していた。どうしてこんな駅名がついたのかも興味深いところだが、列車はここぞとばかりにスピードを上げ、あっという間に過ぎ去ってしまったため駅名板を撮影する暇すらなかった。ただ、周囲を見る限りではごく平凡な里山のなかの駅にしかすぎず、再来訪してわざわざ途中下車をしてみようという気にはならない。

 安比高原駅の少し手前で八幡平の大パノラマがいきなり現れる。反対側の車窓だったので撮影しそびれたが、平凡な里山や山間部を走ってきただけにこの光景はまさに素晴らしい。安比高原駅は、かつては竜ヶ森という駅名だったそうだが、全国的な知名度を持つ安比高原の最寄り駅として名称を改めたこの周辺は高原らしいパノラマが続く。林も白樺が目立ち、高原の雰囲気をかもし出してくれる。この安比高原駅と次の松尾八幡平駅は駅間が最も長く、しかも無人地帯の林のなかを疾走する。安比高原からは下りで列車もぐんぐんと降りていく。逆の上りとでは一分ほどの違いがある。

 松尾八幡平を過ぎると、列車はさらに下って行き、盛岡平野の雄大な平坦地へと入っていく。ここまでくると、車窓は再び平凡なものになっていくが、それでも後方には過ぎ去ってきた八幡平が、また岩手山の雄大な姿も眺めることができる。

 そうしたなかで好摩駅へと到着する。かつては東北本線の連絡駅だった好摩も、東北新幹線の延伸により第三セクターいわて銀河鉄道に移管。JR区間を走ってきた花輪線が第三セクターに乗り入れるという形になったのである。とはいうものの、もともと東北本線としてしっかりとした路盤が形成されているだけあり、今までとは比べ物にならないくらいスピードアップをしてひた走った。

 こうして、湯瀬温泉から一時間半かけて盛岡に到着した。地味な路線かなと思っていた花輪線だったが、平凡な車窓が続く中で突如として景観の素晴らしいハイライトシーンが目に飛び込むローカル線。とくに湯瀬渓谷、安比高原付近は第一級の車窓と言ってもいいだろう。

(この項おわり)

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