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八幡平を駆け抜けて 第2回

花輪線めぐり・県境編

  進行方向を変えた列車はターミナル駅である鹿角花輪駅へと向かう。鹿角市は十和田、八幡平の玄関口であり、観光地としては大館よりも観光資源を持っている。ただ、花輪線で観光地を訪れようという人はほとんどないようで、下車・乗車する人は今までの駅で最も多かったのであるが、大部分が地元の人だった。その先、八幡平駅という周辺観光地の総称をいただいた駅があるが、パッとしない無人駅であった。

 八幡平駅を過ぎると、この路線で初めて深い山間に入っていく。米代川も渓谷を刻むようになっていく。はるか上方を走る高速道路と違い、花輪線は川をぬうように鉄橋とトンネルを繰り返しながら進む。これまでの平凡な車窓が一転して見所満載の場所を迎えたと思ったら、山間にホテルが立ち並ぶ湯瀬温泉へと到着する。

湯瀬渓谷

 いったん湯瀬温泉駅で途中下車し、次の列車までの二時間ほどの待ち合わせを利用し、湯瀬渓谷の散策と日帰り温泉入浴をしようと思う。花輪線のちょうど中間にあり、湯量も豊富ななかなかいい温泉と聞く。私のほかにも地元の高齢者グループが下車し、たぶん温泉と宴会というパターンでひと時を過ごすのであろう。

 この湯瀬温泉は、深い渓谷のなかに突然いくつものホテルが姿を現すという場所で、山深い温泉地としてはややそぐわない建物が並ぶ。しかし、駅は小ぢんまりとしており、駅前もこれといった店はない。大きなホテルの間を埋めるように小さな個人商店があり、わずかに山間の湯治場の雰囲気を感じさせてくれる。

 湯瀬温泉立ち寄りを終え、駅に戻って昼食のパンをかじっているうちに快速八幡平号が入線してきた。四両編成の列車で、花輪線では唯一の快速列車である。乗客はやはりまばらで、快速とはいってもローカル線に雰囲気はたっぷりである。

 渓谷沿いから山間を走り抜ける中で秋田県に別れを告げ、岩手県へと入ってきた。温泉のある田山駅付近も林間を走り抜けていき、里山の風景よりは見栄えがある。その先、盆地が広がったところに岩手県側のターミナル駅でもある荒屋新町駅に到着する。

(つづく)
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