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秋田内陸縦貫鉄道 第1回 第2回 第3回
がんばれ!秋田の第三セクター 第3回
(05年4月の旅)
阿仁から山越えで角館へ
阿仁マタギ駅から歩いて20分ほどのところにある打当温泉にて入浴と食事をしたあと、再び阿仁マタギ駅へと戻ってきた。
雨が降っているせいか、駅周辺はますます静まり返ってなんとなく寂しい。ここはマタギの里でもあり、ここが駅でなかったら獣がどこからともなく飛び出してきそうな雰囲気もある。待つこと20分、ようやくたった一両のディーゼルカーがやってきた。これが本来の秋田内陸縦貫鉄道である。ローカル線の香り漂わせ、乗っている人も明らかに地元の人たちばかり。ワンマンカーなので整理券を手にして車中の人となる。
阿仁マタギ駅を出ると、分水嶺の山にさしかかる。十二段トンネルという秋田県内でも最長のトンネルへと突入するのである。真っ暗なトンネル内では風景を見ることもできないので、しばしガイドブックなどを眺める。新線のトンネルなので路盤は安定しており、下りに入るとスピードも増す。トンネルを抜けても、しばらくは山間を走り、小さなトンネルが連続する。そうこうしているうちに戸沢駅に到着する。
川の流れは今までとは逆になった。桧木内川である。この川の下流に角館があり、桜の名所で有名な桧木内川の桜並木が連なる。列車は里山をだんだんと下っていく。少しずつ平地が広がる感じではあるものの、人口希薄地帯を走っていることには違いない。上桧木内駅で列車交換をする。私と同じ観光と思われる年配の男性がしきりに運転士に話しかけている。
やがて、かつての終着駅であった松葉駅へと到着する。角館線当時は列車本数も極めて少なかったようであるが、こうして全通することで本数もそれなりに増えた。松葉駅周辺もとくにどうってことないような風景である。終着駅だったころの名残なのか、側線を見ることができた程度だった。
カタクリの里として観光名所になっている八津に到着。天候の加減がよければ立ち寄ってもいいかなと思ったが、雨が降ったりやんだりの天気だし、事前の情報でカタクリの開花も遅れていると知り、立ち寄りは断念した。観光客数人が乗り込んできたが「寒い、寒い」を連発している。この天候では無理もないことであるが、4月下旬で「寒い」というのもなんとなく苦笑してしまう。この駅でも列車交換が行われ、対向してやってきたのはもりよし号の車両を運用した「さくら号」であった。
このあとは角館の盆地へと入っていくため、民家も田畑も増えて広々とした感じになってきた。そろそろ秋田内陸縦貫鉄道の旅も終わりに近づいている。この路線も、ご多分に漏れず赤字を抱えているという。直行の観光急行は走っているものの、普通列車の乗車率を見るとあまり先行きが明るいとは思えない。ただ、豪雪地帯ということでの冬季代替路線の役割は十分果たしているような感じはする。次に乗る機会が何年先になるかは分からないが、ぜひとも今回の乗車がラストランにならないように祈念したいものである。
(この項おわり)