鉄道乗車レポートMENU>
秋田内陸縦貫鉄道 第1回 第2回 第3回
がんばれ!秋田の第三セクター 第2回
(05年4月の旅)
阿仁の山間に入る
ターミナル駅の阿仁合に到着する。さすがにこの駅では若干の乗降客があった。秋田内陸縦貫鉄道の本社と車庫があり、いくつかの車両が停まっていた。ちなみにこの駅のある阿仁町は合併により北秋田市となっていた。分かりやすい名称ではあるが、なにかもう少し地元に密着したような市の名称にはならなかったのかなとも思う。
阿仁合から車掌が女性に代わった。この女性車掌は検札業務も行うかたわら、車内販売員まで兼任している。人件費をかけない第三セクターらしさを見ることができる。ちなみに秋田内陸縦貫鉄道は、全国で初めて女性の運転士を誕生させたことで知られている。私も10年前に角館を訪れたとき、でかでかとPR看板が出ていたのを記憶している。今は退職されたと聞くが、その代わり女性車掌が乗務しているのである。この車掌、車内アナウンスのときは標準語だが、運転士と話をしていると見事な秋田弁になっている。どうせ観光列車なのだから、いっそのことアナウンスも秋田弁でやったら面白いのではないだろうか。もっとも意識して秋田弁を使うほうが難しいのかもしれない。
しばらくの間、私は車窓に注目していた。実は、難読駅でもある「笑内(おかしない)」駅の駅名板を撮影しようと考えていたからだ。もちろん、各駅停車に乗ってさえすれば、たやすいことであるが、通過する急行からバカチョンカメラで撮影するのは容易ではない。こういう時は一眼レフだと勝負しやすく、以前に山田線の大志田、浅岸という秘境駅の駅名板撮影にはなんとか成功している。やがて笑内駅にさしかかり、一瞬の勝負でシャッターを押した。だが、やはりコンマ何秒か遅れてしまったようで、あとで写真を見たら何も写っていなかった。
相当な山の中を走りながら、やがて比立内駅に着いた。かつての阿仁合線終着駅である。いくぶん開けた場所ではあるが、山深いところには違いない。ここから先は新しく敷設した路線になる。今までの曲がりくねった乗り心地のあまりよくない路盤とは違い、一転して快適な路盤になる。と同時に、もりよし号もやっと本来の高速運転ができるようになった。路線は高架やトンネルが続き、実に近代的である。最初の下車目的地、阿仁マタギまではもうすぐだ。
阿仁マタギ駅に到着した。その瞬間、私は唖然としてしまった。まわりに何にもないのである。いったいなぜ、こんなところに駅を作ったのかというくらい、なにもない片田舎の散村にポツリとホームがあるだけだ。駅名板も何者かに持ち去られてしまったのか、はがされていた。女性車掌に切符を渡し、やがて列車が過ぎ去った後、近くを流れる川のせせらぎのみが聞こえるのどかな風景に戻っていった。
(つづく)
阿仁マタギから山越えをします