VI
2主題によるフーガ、4声部、4/4拍子、49小節
フーガの技法出版譜のContrap. a 4はこのVIとほぼ同一の曲です。
ただし、Contrap. a 4では曲全体の音価が2倍に変更されており、
拍子は4/4のままですので、曲の小節数も倍増しています。
さらにこの曲は、Contrapunctus10の原曲でもあります。
以上の3者を表にまとめてみました。
このVIは変形された共通主題の反行形に始まっています。
変形主題はContrapunctus5などの反行フーガと同じものですが、
この曲では1/2縮小形のみが用いられています。

自筆譜のVIの冒頭。
同様にContrap. a 4も変形共通主題に始まっています。
ただし、Contrap. a 4は曲全体の音価が2倍に拡大されているため、
結果として主題は縮小形ではなくなっています。

出版譜のContrap. a 4の冒頭。
Contrapunctus10では曲の冒頭に22小節の追加があり、
VIの冒頭にあたるのは23小節以降の部分です。
こちらはバスに自由な旋律が伴っているほか、
24小節〜のアルトには主題の断片も加えられています。

出版譜のContrapunctus10の23小節〜。新たな追加を青い音符で示しました。
共通主題の呈示部以降は旋律の修正があちこち見られますが、
中でも重要なのは26小節に見られるソプラノの旋律の変更です。

青い音符で変更点を示しました。小節数の倍加と曲の延長により、
自筆譜VIの26小節は出版譜Contrapunctus10の51-52小節に当たります。
ここでは、ソプラノの旋律を変更する事により、
その前後にしばしば現れ、あるいは模倣される主要モチーフと
形を一致させ、統一感を持たせているのです。
下の楽譜はVIの29小節〜にみられる主要モチーフの模倣です。

主要モチーフを青い音符で示しました。
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