Canon alla Ottava
8度のカノン、2声部、9/16拍子、103小節
(主題)
曲はカノン様式となっていますが、曲の冒頭を始め
随所に装飾変形した基本主題が挿入されています。
冒頭に示される主題は、基本主題の反行形を装飾変形したものです。

装飾された主題の骨格を青い音符で示しました。
曲の途中から、更にその変形主題の反行形
(つまり基本主題と同じ向き)も示されます。

(曲の構造)
曲中に示される主題によって、曲を5つの部分に分けることができます。
なお下記の曲の詳細にも示すように、この曲には
5-80小節をリピートするよう記号がつけられています。
小節
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示される主題
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小節数
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1-24
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主調 |
24
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25-40
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主調の調性的応答形 |
16
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41-61
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属調、反行形 |
21
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62-76
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主調、反行形 |
15
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77-103
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主調(冒頭の反復) |
27
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印刷譜においてリピート記号が用いられているのは、
この曲と12度のカノンの2曲だけです。
(曲の詳細)
2声部のカノンで、装飾変形された基本主題に始まる上声部を、
下声部が4小節遅れて8度下で追いかけ続けます。

主題の前半・後半に、それぞれ独特の対旋律が付きます。
楽譜のA、Bがそうです。Aは2拍単位のモチーフの連続、
Bは1小節ずつのモチーフの連続になっています。
9小節〜では、このAにはC、BにはDの対旋律が付きますが、
主題が上行音形だったのに対して、
Cが下行音形になっているのは興味深いです。
曲の冒頭に示された主題は、曲の中で若干形を変えながら
何度も示されており、カノンでありながらフーガに似た様式となっています。
25小節〜の上声には、調性的応答のような変形主題が示されます。

これを模倣する29小節〜の下声の主題につけられた上声の対旋律は、
上記のA、Bのイメージを残しつつも自由度が増しています。
41小節〜、62小節〜には、上下転回された主題が示されます。

41小節〜は属調、62小節〜は主調です。
62小節〜の主題は冒頭が装飾変形されています。
77小節から、曲の冒頭と同じ調・形の主題が呈示され、
そののち5〜80小節がリピートされることになります。
いわゆる「無限カノン」の様式となっているのです。

81小節以降は、5小節〜がそのまま繰り返されています。
77〜80小節と81〜84小節とで、主題につけられた対旋律を
比較すると、音の重複が非常に少ないことがわかります。
バッハの対旋律作法が、1つの旋律に対して
無限の可能性を秘めていることをうかがわせます。
曲は27小節目までを繰り返したところで終了しますが、
99小節〜の上声部にはエピローグとして新たな旋律が加えられており、
ここでも バッハ の対旋律作法の妙を見ることができます。
下の楽譜には比較のために23小節〜と99小節〜を並べてあります。

102小節で上声部は下声部を飛び越え、
最後には曲中最低音に達します。
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