―消え行く―

長峯遺跡―タイトル

保存を考える

           この長峯遺跡は、縄文中期全般から後期前半にかけて連続的に集落が形成
    された八ヶ岳山麓の拠点遺跡の一つと見られています。
     戦後の開田工事や近年の県営圃場整備事業により完全消滅するため県埋蔵文
    化センターにより緊急発掘されました。遺跡の全容は同尾根上に二つの大きな遺
    跡(聖石遺跡・長峯遺跡)があり、住居数・出土物は質・量共に豊富で総合的に見
    て県内屈指の遺跡であることが判ってきました、しかしこの長峯遺跡も隣の完全破
    壊された聖石遺跡同様2001年末には地形が変わってしまうほど大規模な構造改
    善事業が行われます。遥かなる縄文の時代約1500年営々と続いた生活の足跡
    が記念すべき21世紀の扉が開いた年にこの地上から完全に消えようとしています
     私たちは、今、21世紀を迎え遺跡の持つ意味、開発のあり方、考古学とは何か
    遺跡保存はどのようにあるべきか、人類の歴史、未来、環境等など多義に渡り、
    しっかり考える時ではないでしょうか。
     下の写真は、2001年(3/17〜5/13)に長野県立歴史館で開催されている長
    野県埋蔵文化センター発掘速報展のポスターです。
    自然美の美しい八ヶ岳をバックに長峯遺跡発掘現場がメインに作られています、
    長峯縄文人も愛した破壊され行くこの美しい土地をせめて心に留めたいと思いま
    す、このホームページを訪れていただいた全ての皆さんと共に・・・。
 

2001年開催長野県遺跡発掘速報展ポスター
長峯遺跡発掘現場がメインに作られた今年の長野県立歴史館企画展ポスター



所 在 地長野県茅野市北山糸萱7964-2他一帯
調査期間平成11年4月1日〜平成13年1月12日
調査面積36,160u
遺跡の特徴台地上に形成された縄文時代中期全般の集落と南斜面に
形成された、縄文時代後期の大規模な集落遺跡


主な検出遺構
遺構名 備考
竪穴住居跡 225 縄文中期 219 後期前半 6
昭和30年代の開田工事により一
部消滅しており全体では300位
と考えられています
掘立柱建物跡
(方形柱穴列)
約20 縄文時代中期が大半であるが後期
前半は2棟確認された
土坑 約3,300 貯蔵穴、墓壙、柱穴他
焼土跡 12 削平された住居の炉、野外の焼土遺構
埋設土器 10 野外埋設土器
集石跡 黒曜石の剥片散布(石器製作跡か)
昭和30年代の開田工事により不明部多数あり


主な出土遺物
縄文土器中、後期
土製品土偶、土鈴、耳飾り、吊手土器
石器石鏃、石匙(せきじ)、打製石斧、磨製石斧、磨石、敲(たた)き石、
石皿
石製品ヒスイ製垂飾4、滑石製垂飾2、石棒
その他住居入口の埋石
遺物出土総数コンテナ600箱相当



          ― 遺跡保存私の提言 工事中 ―

        

           止めようのない開発、生活環境の整備、景気刺激対策事業等々
           これは人々がより豊かな生活を求める限り、現代生活の一部として
           常につきまとう問題である。
            私達は今の文明を享受しているし、より向上することを更に望むが
           生活環境の後戻りなど考える訳がない。
           そんな時代にあって、狭い日本列島には縄文一万年の歴史の足跡が
          いたるところに存在する。人々が生きていく限り遺跡破壊は避けられ
          ないことなのかもしれない、共存の道もあるが大金がかかり中小個々
          の保存など叶わぬ願いである。
           しかし、このたった100年の間にどのくらいの遺跡が全国から
          姿を消しているのだろうか?正確に調べたらとんでもない数字が出て
          くるだろう。将来の歴史教科書に「昭和、平成という発展途上の時代
          に大半の縄文遺跡が保護されないまま姿を消しました」という一文が
          書かれる時代が来るかもしれません。
           広い意味で歴史上では、今、私達一人ひとりは現在進行形で個々の
          遺跡破壊の最後の瞬間に立ち会っているのです。
           遺跡の破壊者たる現代に生きる私達は、後に続く未来に対し最低限
          解決しておかなければならないことがある筈である。

          以下の提言は破壊者たる現代人がなすべきことであり、未来に遣り残
          してはならない気がします。それが未来人への遺産であり、縄文人へ
          の礼儀であり、今を生きる人間としての良識ではないでしょうか。


       ∇  記念碑の設置・・・・・壊滅的な遺跡からの順次整備

            内 容

         遺跡の時代及び略説明
         遺跡略図(遺構・住居址等の鳥瞰図・台地断面図等)
         代表的出土物の図示(石、銅版等への掘り込み・打ち出しやレリーフ等)

         以上は板看板等暫定的な措置でなく石・耐腐食処理銅版等耐年構造とする

       ∇  遺跡一部保存・・・・壊滅的な破壊を避け次世代への考察資料の保存

            内 容

         遺跡全壊を避けるため一部保存の徹底
                     (土盛り、架橋、トンネル、土地買い上げ、移転あらゆる方法の検討)

       ∇  その他


         以上の提言は文化財政の厳しい中にあって難しい事ではある。大切な事は
         保護が重要と気付いた人が黙殺せず声を出す事である。頑張るしかない。
         しかし遺跡保存など本当は誰でも判っていることではある。
          全国では毎年プラスチックコンテナ30万箱の土器が発掘されている
         その受けザラである地方公共団体では、増え続ける土器の保管整理には相当
         頭を悩ませている。一般の私達が見ることが出来るのはその内の1〜5%程度
         あとはお蔵入りといったところか?どのように一般に公開し、有効利用して
         いったらいいかこちらもお互い知恵を出し合い考えたいものである。


         全国には遺跡保存の先進地があると思いますが、事例等お聞かせ戴けたら幸いです。