第2章:三本指パターンあやとりにおける様々な開始処理・継続処理
4.ダブルハートの仲間
4-1. ダブルハート[継続処理]
これまでは伝承あやとり作品の名前を使ってパターンを説明してきましたが、「ダブルハート」という伝承作品があるわけではありません。伝承作品では「エガラウィナゴ」というナウルのあやとり作品があるのですが、「太陽」とか「亀」と違って「エガラウィナゴ」と言っても大部分の方にはイメージが湧かないと思うので、敢えて別の名前にしました。
「ダブルハート」というのはこんなかたちのことです。上向きと下向きのハートが組み合わさっています。
→ Fig.2-41a:ダブルハート Fig.2-41b:下きと上向き 余談ですが数字の8を2つ並べて書いてもこのかたちになります。
Fig.2-41c:2つの8でダブルハート ダブルハートの処理はこんな風になります。途中で人差し指と薬指を退避用に利用するので、「中指の構え」から始めました。
かなり対称性が高い構造です。(細かいことを言うと、上の手順3.と手順4.をどちらが先にやるか、手順5.や手順6.の糸の回転方向をどちら向きにするかによって糸の交差の上下が変わる箇所があります。)また、一般に継続処理として使う場合、例えば「ナウルの太陽」に続いて「ダブルハートの処理」を行うときに手順3.や手順4.で引き出す糸は、図形全体の下を通してできるだけ図形全体の中央から取り出すことが望ましいです。
このパターンはいろいろな開始処理や継続処理に続けて取ることができます。とても使い道が豊富です。これは覚えておきたい手順です。
例えば「ダブルハート」を2連続で取るとこうなりました。
Fig.2-43:「ダブルハート」2連続 もっと長い糸を使って3連続にするとさらに複雑で美しいパターンになりそうですが、かたちを整えるのがさらに大変になりそうです。
4-2.「エガラウィナゴ」[開始処理]
「エガラウィナゴ」というのはナウル共和国の伝承作品です。射影図としてみると、重なり具合を無視すればダブルハートと同じかたちをしています。これは、5本指の構えであるナウルの構え2から始めます。
「ナウルの構え2」は「人差し指の構え」から人差し指の輪を3つに増やしています。この「エガラウィナゴ」も、同様に中指の輪を3つに増やして5本指のパターンにしてからもう一度「エガラウィナゴ」を取ることもできますが、あまりきれいなパターンを作れませんでした。
ダブルハートと「エガラウィナゴ」の糸の重なり具合の違いがわかりやすい写真を載せておきます。
Fig.2-45a:ダブルハート Fig.2-45b:「エガラウィナゴ」 ハート形のふくらんだ部分に注目してください。上下左右に4か所あります。「ダブルハート」のほうは、ふくらんだ部分のカーブは4か所とも親指や小指に至る糸の上を通っています。一方、「エガラウィナゴ」のほうは、小指側(写真の上側)は「ダブルハート」と同じく上を横切っていますが、親指側(写真の下側)は下を通っています。
「エガラウィナゴ」は開始処理としてはとても有用なパターンです。
2021.05.04
長谷川 浩(あそびをせんとや)
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