第1章:開始処理・装飾処理・継続処理・終了処理
3.輪を移す、輪をひねる、裏返す
装飾処理の最も基本的なテクニックである「輪を移す」「輪をひねる(1回転ひねる)」「輪を裏返す(半回転ひねる)」処理について解説します。
3-1. 輪を移す
ある指にかかっている輪を逆の手でつまんで外して、別の指に掛ける操作を「輪を移す」と呼びます。下の図は薬指の輪を人差指に移す例です。
薬指の輪を人差指に移す
もしくは
- 左薬指の輪を右手の親指・人差指でつまんで薬指から外し、そのまま左人差し指にかけて右手を離す
- 人差指で薬指手前の糸を取る
- 薬指の輪を外す
最初の手前と向こうの糸が最後にどうなったのかわかりやすいように、手前の糸(赤)と向こうの糸(青)の色を変えています。
3-2. 輪を裏返して移す
ある指にかかっている輪を半回転ひねりながら別の指にかける操作を「輪を半回転ひねって移す」「輪を裏返して移す」と呼びます。輪が透明な板の上に載っているとイメージして、その板をパタンとひっくり返すイメージです。第1節のナウルの太陽で出てきた取り方です。回転させる方向は「手前」と「向こう」の2通りがあります。手前に半回転させるともともと向こうにあった糸が上になります。向こうに半回転させるともともと手前にあった糸が上になります。
薬指の輪を手前に半回転ひねって人差指に移す
もしくは
- 左薬指の輪を右手の親指・人差指でつまんで薬指から外し、手前に半回転ひねって左人差し指にかけて右手を離す
- 人差指で薬指向こうの糸を上から取る
- 薬指の輪を外す
上の図では手前に半回転ひねっているので、もともと向こうにあった青い糸が交差の上側になっています。向こうに半回転ひねる場合は逆に赤い糸が上になります。「逆の手でつまんで外す」やり方ならば難易度はあまり変わりませんが、人差指で直接取りに行く場合は「人差指で、薬指の手前の糸(赤い糸)の下を通って薬指の向こうの糸(青い糸)を取る」という操作になるので、ちょっと大変です。この場合なら人差指のかわりに親指で取って、その輪を親指から人差指に移すほうが取りやすいと思います。
3-3. 輪を半回転ひねる、裏返す
ある指にかかっている輪を半回転ひねる(裏返す)、という操作もよく出てきます。先ほどの「輪が透明な板の上に載っている」イメージだと、板を裏返して同じ指に戻すイメージです。
下の例では薬指を向こうへ半回転、人差指は手前へ半回転ひねっています。結果の糸の重なり具合を確かめてください。
薬指の輪を向こうへ半回転、人差指の輪を手前へ半回転ひねる
輪に交差をつくるために半回転ひねることもあれば、すでにできている交差を解消するために半回転ひねる操作をする場合もあります。日本の「網」という美しいあやとりがありますが、このあやとりが完成直前で親指・中指・小指の交差を解消するために半回転ひねるという操作をします。
3-4. 輪を1回転ひねる
ある指にかかっている輪を1回転ひねるという操作はとても重要です。この操作は半回転のときとは違って輪を指から外す必要がありません。輪をひねる方向は「手前」と「向こう」の二通りがあります。輪をひねる方向によってパターンが変わる場合もありますし、見かけ上区別がつかない場合もあります。
たとえば「ハワイの星」「ハワイの夜」というあやとり作品がありますが、これらは1回転ひねる方向を逆にすることで取り分けることができます。
薬指の輪を向こうへ1回転、人差指の輪を手前へ1回転ひねる
左人差指の輪を手前に1回転ひねるやり方
- 方法1:輪を固定して指を回す
- 人差指を人差指の向こうの糸の向こうに上から入れる
- 人差指を、自身の輪の下を通って手前から上に向ける
- 方法2:指を固定して輪を回す
- 左人差し指を真上に向けておく
- 右手の親指・人差指で左人差指の手前と向こうの2本の糸を左人差指の根元に近くでつかむ
- つかんだ2本の糸を左人差し指の手前から甲側、向こう側から掌側へ時計回りに1回転させる
- 右手を放す
パターンあやとりでは、このように手の向こう側の指(薬指・小指)と、手前側の指(親指・人差指)をひねる方向を逆にする、ということをしばしば行います。そうすることで対称性が上がって美しくなることもあるためです。
3-5. 輪のねじれを解消する
指にかかっている輪のねじれ(交差)を解消するために輪を裏返すことがあります。裏返す方向を間違えると、ねじれが解消されずに逆に増えてしまいます。
人差指の輪が手前の糸が上になって交差している
- (1).向こうに裏返すと交差は解消される
- (2).手前に裏返すと1回転ひねるの状態になる
あやとりの工程の中で、「指の輪をひねる、裏返す」という操作を行うと完成形がどう変わるのか、指定された「ひねり」の向きを逆にするとどうなるのか、いろいろ試してみると面白いです。
以上で基本的な説明を終わりにします。最初なのでこのページでは説明の時に図を併記しましたが、今後は完成図だけで、言葉だけの説明になります。ぜひ慣れて下さい。次章からはいよいよ具体的なパターンを構成する要素の解説を始めます。
2021.05.03
長谷川 浩(あそびをせんとや)
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