以前の「ひとこと」 : 2025年11月後半
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11月16日(日) 稜の長さが1本だけ異なる“F=6, V=8, E=12 の凸多面体” (その2)
11月も後半になりました。
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先日思い付いた類題の話です。
【類題】
面の数が6、稜の数が12、頂点の数が8の三次元の凸多面体で、12本の稜のうち11本の長さが等しくて1本だけ長さが異なるものは存在するでしょうか?結論から言うと「存在します」。私が思いついたのはこんなかたちです。
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図 1 図2の赤い部分は側面が正方形の正三角柱です。
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図 2 図3の赤い三角形は正三角形です。先ほどの正三角柱の側面の正方形とあわせて等辺五角形になっています。
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図 3 仮に長さの等しい辺が1だとすると、唯一の1よりも長い辺の長さはどれだけでしょうか? 図4の赤い三角形は正三角形です。
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図 4 ということは、唯一の長い辺の長さは 1+√3/2 になります。これですべての寸法がわかったので模型も作れますが、この多面体の模型は…まあ作らなくてもいいか、と思いました。
この多面体、等辺五角形のかたちを変えることで、条件を満たす多面体は連続的に無限に存在します。たとえば、2019年6月に二枚貝多面体というアイディアをご紹介したことがありましたが、この「五角形二枚貝」というのが上の多面体とおなじグラフ構造のものです。正五角形2枚、正三角形2枚、等脚台形2枚というのも良い形だなあと思いました。
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日曜日の朝、喫茶店に行きました。窓の外の紅葉した木がきれいでした。木漏れ日を浴びながらコーヒーをいただきました。ミルクを断り損ねてしまったので、めずらしくミルクを入れてコーヒーをいただきました。
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長かった夏が終わったと思ったらもう冬が目前です。
<おまけのひとこと>
すでに暖房が必須です。困ったものです。
11月17日(月) 数学セミナー12月号:「エレガントな解答をもとむ」の解説(その3)
月曜日です。今年もあと1カ月半、本業のほうがありがたいことに忙しいです。
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エレガントな解答をもとむ(数学セミナー)9月号の問題1、くどいですがもう一度問題を載せます。
今日は(2)の解答用紙です。
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このCGを作るためにいろいろ計算しました。 (すみませんこの話題もう少しつづきます)
(つづく) ○
土曜日の午前中に散髪に行ったとき、こんな植木鉢を見かけました。
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上下に六角形の面が2つ、側面に五角形の面が12ある十四面体です。多面体のかたちの植木鉢、ちょっといいなと思います。
<おまけのひとこと>
行きつけの駅前の本屋さんに行ったら、このお店でブックサンタで選んだ本の1冊である「アルフレートの時計台」(斉藤洋)がお勧めの本のところに2冊、ディスプレイされていました。嬉しくなりました。売れるといいなあ、買ってくれた人が「買って良かった」と思ってくれるといいなあと思っています。
11月18日(火) 稜の長さが1本だけ異なる“F=6, V=8, E=12 の凸多面体” (その3)
凸多面体の設計の話です。
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先日来、面と頂点と稜(辺)の数が立方体と同じで、12本の稜のうち1本だけ長さが異なるものの話をしています。下図右のような多面体グラフで表されるかたちで条件を満たすものがある、というのをご紹介して、
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一例としてこんなかたちが条件を満たすことをご紹介しました。
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例 1 上の例では五角形の面は正方形と正三角形をつないだかたちでしたが、この面を正五角形にしてみたくなりました。イメージとしては、2枚の正五角形を1つの辺を蝶番にして角度を変えていって、蝶番の隣の頂点どうしの距離が正五角形の1辺の長さと同じになればよいはずです。
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(これを「二枚貝多面体」という呼び方をしてみていたのでした。)
この多面体の等脚台形の長い辺、多面体全体で唯一長さが異なる辺の長さを求めたいのです。昨夜、夜中に目が覚めたときに計算をし始めたら、一度、正五角形の対角線の長さと同じ黄金比の値が出てきて興奮したのです。でもCGを描いてみたら五角形のかたちがおかしいのです。計算を追いなおしてみたら間違えていました。(追記:間違っていたのは唯一長さが異なる辺の長さではなく、他の部分だったようです。)
計算をやり直して、正三角形(のはずの面)、正五角形(のはずの面)の法線方向からCGを描画してみて、おそらく今度こそ計算が合っているのではないかと思われる値が出てきました。
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この計算結果から展開図を設計して模型を作ってみようと思います。
(つづく) ○
長野県の地元のスーパーとして人気の「ツルヤ」(TSURUYA)の、長野の善光寺の古くからのブランドである七味唐辛子の八幡屋磯五郎(創業はなんと1736年、あと10年ほどで創業300周年です)とのコラボ製品の「おやき」を妻が買ってきてくれました。
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蓼科が市内にある土地柄、別荘の滞在者や観光客のような方々も見かけるのですが、そんな感じの年配男性のグループがこのコラボ商品を仲間内で「おいしい」と話題にしていたそうです。確かにおいしかったです。
<おまけのひとこと>
今朝、ゴミを出してきたのですが、このあたりだと高々数百メートルの距離でも車を出します。エンジンをかけたらカーナビが「今日は土木の日です」と言いました。漢数字の十一を合わせて「土」、同じく十八を重ねて書くと「木」なのだな、と感心しました。
11月19日(水) 稜の長さが1本だけ異なる“F=6, V=8, E=12 の凸多面体” (その4)
稜の長さが1本だけ違う正五角形×2,正三角形×2,等脚台形×2の多面体の話です。
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昨日ご紹介した正三角形と正五角形と等脚台形の図1の多面体ですが、ちゃと考えてみたら、1本だけ長さが異なる辺の長さは正五角形の対角線の長さと等しいことがわかりました。
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図 1 初等幾何で示すことができました。「こんなところに黄金比!」と興奮したのですが、よく考えてみたら当たり前だったのでした。
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図1に寸法(辺の長さ)を入れてみるとこうなります。
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図 2 ということは、この六面体の等脚台形は正五角形の対角線で三角形を切り落としたかたちなのです(図3右)。
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図 3 模型を作ってみることにしました。
(つづく) ○
あやとりです。現代創作作品の蟹の網(Thomas Storer) を取ってみました。
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蟹の網:Thomas Storer 手順はリンク先の石野さんのサイトをご覧ください。最初に「1回転ひねったはじめの構え」(下図)から取り始めて、「井戸」→「蟹」の手順の途中までの操作をします。
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1回転ひねったはじめの構え 「蟹の網」というタイトルはとても納得感があります。タイトルの中の「蟹」は手順が伝承作品の「蟹」とほぼ同じであることから、「網」は斜め格子系の作品であるという完成形から、言葉が選ばれているのだと思います。
このあやとり作品のかたちが面白いなあと思うのは、上の段のダイヤ型の数は奇数(3個)で下の段のダイヤ型の数が偶数(4個)になっていることろです。
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ダイヤ型の数 最初の「1回転ひねったはじめの構え」の中央の糸の絡みが、完成形の中央の上の辺の絡み(上の段の2のダイヤ型の上の頂点)になっています。実に巧妙で美しいデザインで、感心して何度も取ってみて楽しんでいます。
(つづく)
<おまけのひとこと>
今日は雪が降るかもしれないという天気予報です。寒いですが今のところは晴れています。
11月20日(木) あやとりの手順解説、稜の長さが1本だけ異なる“F=6, V=8, E=12 の凸多面体” (その5)
稜の長さが1本だけ違う正五角形×2,正三角形×2,等脚台形×2の多面体のつづきです。
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『数学セミナー』に連載させていただいている「あやとりの楽しみ」、最新号(2025年12月号)に掲載した「2本の木」とその変化の変化形のほうがうまく取れません、というメールをいただきました。コメントありがとうございます。わかりにくい記載でごめんなさい。
おそらく、ここが難しいだろうと思われる部分の図を作って、サポートページのこちらに掲載しました。
2H:親指の輪をつまんで外し,人差し指の輪に上から下に通して親指に掛け直す 私自身が最初にシャーマン氏の論文を見ながら取ろうとしたときに苦労した箇所でもあります。もともとの論文には上のような図はなく、シャーマン氏の表記法で下のように表記され、英語の自然言語表記で[Thread thumb loops down through index loops and replace]. と補足説明されています。
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Thread thumb loops down through index loops and replace. これが上に図示したような操作を意味するのだ、ということがわかるまで試行錯誤したのでした。“Thread thumb loops” 親指(Thumb)の輪を取り上げて “down through index loops” 人差し指(index)の輪に下方向に通して “and replace.” 置き直す(元に戻す)、という意味なのだ、ということがなかなか理解できなかったのでした。
ひとつひとつの単語は難しくないはずなのに文の意味が理解できない、というのははるか昔の大学入学試験の英語のテストのようだなあと思いました。「単語の意味がわかればあとは雰囲気でなんとなくわかった気になる」というのが通用しないのです。(いつまでたっても英語は苦手です。)この例のように読み解いて理解するのが時には大変なこともあるのですが、目標のかたちが取れるととても達成感があるのです。
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昨日までご紹介してきた「稜の長さが1本だけ違う正五角形×2,正三角形×2,等脚台形×2の多面体」ですが、
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1本だけ辺の長さが異なる六面体 実はこの六面体、正二十面体の12の頂点のうちの8つを選んだ凸包になっていることに気が付きました。(気が付いていらした方はいらっしゃるでしょうか。)
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正二十面体の12の頂点のうちの8つ ひとつずつ面を張ってゆくアニメーションと、外側の正二十面体の骨格と一緒に六面体を回転させてみるアニメーションファイルを作ってみました。それぞれ下の画像をクリックすると別窓で開きます。
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6面体の面を1面ずつ張ってみる 回転させてみる 1本だけ長さが異なる辺が正五角形の対角線の長さと等しいというのは昨日のような証明を考えることすら必要がなかったのです。自明でした。
<おまけのひとこと>
あやとりや多面体で遊んでいると楽しくて時を忘れます。