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Buxtehude,D.(1637-1707)
"Magnificat noni toni" 〜 alla duodecima
BuxWV205、マニフィカト編曲、4声部、4/4拍子


若きバッハを魅了したオルガンの大家、ブクステフーデの作品です。
ブクステフーデが対位法的技術に関して、並々ならぬ
技量を持っていた事はBuxWV76を見ても明らかですが、
このマニフィカトの中でも、その技術の一端を見せています。

曲の展開は「フーガの技法」のContrapunctus9に類似しており、
マニフィカトの旋律冒頭とその対旋律が配置を変えながら呈示されます。
下の楽譜の黒い音符がマニフィカトの旋律、青い音符が対旋律です。
1〜2小節に示された両旋律が、3〜4小節では上下入れ替えられており、
マニフィカトの旋律は12度下に、対旋律は8度上に移っています。


3〜4小節の対旋律は若干変形されています。

対旋律は曲が進むにつれて次第に自由に扱われるようになります。
例えば10小節では、対旋律が10度で重複しています。
下の楽譜には重複した対旋律を青い音符で示しました。


ソプラノの対旋律は変形されています。またテノールの対旋律は断片です。

曲の終盤では対旋律の一部が繰り返し呈示されるようになり、
ストレッタ風の印象を与えています。


モチーフが繰り返される様は、「フーガの技法」のContrapunctus7の結末によく似ています。

以上のようにブクステフーデは、技法を用いることに束縛されず、
自由な発想で作品を展開していることがわかります。
バッハ同様、作曲技術よりも作品の音楽性を重視していたのでしょう。

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