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Buxtehude,D.(1637-1707)
"Mit Fried und Freud Ich fahr dahin"
BuxWV76、オルガンコラール、4声部、4/2拍子


若きバッハを魅了したオルガンの大家、ブクステフーデの作品です。
ブクステフーデは自分の演奏を聞きに来たバッハに
娘との結婚を迫ったという逸話が残されています。

コラール Mit Fried und Freud... は、一種のコラール変奏曲で、
フーガでこそありませんが、「フーガの技法」と
いくつかの共通点があることで知られています。

(1)声部ごと分けて4段に記譜されています。
(2)Contrapunctusという名称が用いられています。
(3)転回対位法が用いられています。

このため、バッハが「フーガの技法」の作曲に当たって
参考にしたのではないかと目されているのです。

下の楽譜はその1番と2番です。
1番は Contrapunctus1、2番は Evolutio と題されています。
Evolutio は、Contrapunctus1 のソプラノとバス、アルトとテノールを
それぞれ入れ替え、さらに属調に転調しています。




原曲は4段ですが、便宜上2段で記してあります。

いうなれば4重対位法により、声部を入れ替えたものです。
Evolutio が移調されたのは、音域の制限のためと思われます。

次の楽譜は3番と4番です。
3番は Contrapunctus2、4番は Evolutio と名づけられています。
Evolutio は、Contrapunctus2 を上下転回したものです。
さらに、音の高さは変わっていないものの、調は変更されています。




調の変更については、転回によって減五度などの
不快な音程進行が生じたためと思われます。

ブクステフーデは大胆な和声進行や即興演奏で
バッハを魅了したといわれていますが、この曲から
高度な対位法技術も兼ね備えていたことがわかります。

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