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実験2

Canon per Augmentationem をひっくり返す。

Canon per Augmentationemでは、後続する声部が
先行する声部を上下転回して模倣しています。
この転回は鏡像フーガと転回と同じで、h-c' を中心にしています。
旋律としてみれば、d と a が入れ替わる、すなわち
f を軸として転回し、1オクターブ下に移調しているわけです。
転回した旋律が曲として成り立つならば、
あらかじめ先行する声部を転回してみたらどうなるでしょう。

という、くだらない思いつきの結果がこちらのBGMです。
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で、早速ひっくり返してみたわけですが、
案の定おかしな曲になってしまいました。
(部分的には面白いのですが・・・)

Contrapunctus12で述べたとおり、
転回対位法による作曲には様々な制限がありますが、
それ以前に音楽として美しいものであるためには、当然ながら
調性の進行を乱すような音を使わないようにしなくてはなりません。



譜例では29小節にドミナントを予想させる和音進行となっていますが、
そこに主音が現れるという拍子抜けな展開になりました。
音のおかしい箇所はこればかりではなく、
調性・旋律両面で難のある箇所が多数発生しています。

やはり旋律自体が転回可能とはいえ、曲全体を転回することは
意図されていなかった曲ですから、無理が生じるようです。
-+-
しかし不思議なもので、何回も繰り返し聞いていると、
これでも良いような気になってきてしまいます。
さすがバッハというべきでしょうか?皆さんはどう感じますか?

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