Villeneuve les Avignon

                                  2009/10/12作成

出典:

1309年、ローマからアヴィニョンに法王庁が移転してきたのですが、1334年から約30年の歳月をかけて3法王(ベネディクト12世・クレメンス6世・イノケンティウス6世)が法王庁宮殿の建設工事を行ないました。

この間、枢機卿達は競ってアヴィニョン郊外のVilleneuve-les-Avignonに邸宅を構えたのですが、イノケンティウス6世が教皇に選ばれたとき、彼は自分の(ヴィルヌーヴレザヴィニョンの)枢機卿宮殿をカルトゥジオ修道院に変更し、祝福の谷修道院と名前をつけたのです。

 エクサンプロヴァンスのメーン・ストリート、ミラボー通りにある善良王ルネの肖像です。彼はシシリア王、ナポリ王をかねていましたから、イタリア産のブドウの木をプロヴァンスに持ち込んだので、その功績をたたえ、この肖像は左手にブドウ一房をぶら下げています。

 初期フランス絵画のパトロンは二人いて、一人は上記のRoi Renéなのですが、もう一人はVilleneuve des Avignonのカルトゥジオ修道院(La Grande Chartreuse)なのです。

 最近ykharukaさんの見事なwebsiteを拝見していたら、彼女もまた(2008年に)マドレーヌ寺院が閉鎖されていることを報告されていましたので、私は正直ホッといたしました。

 つまりこの作品「エクスの受胎告知祭壇画」はたしかにエクスに存在するらしいのですが、拝観することができないのです。それに北方の影響が強い絵だし、プロヴァンスらしい雰囲気がありません。

 でもこの絵を私はAixに滞在中は拝観す
ることができなかったのです。

 どうしてって?

 どうしてもこうしても、この絵の納めら
れているマドレーヌ寺院はつねにドアが閉
まっていて、私はなかに入ることができな
かったのです。セザンヌが洗礼を受けたと
いう由緒正しき寺院なのですが、どういう
わけかドアが締め切られていました。

前回の”Aix en Provence”

   学校のすぐ前が西暦400年頃に設立された
   サン・ソブール教会で、ニコラ・フロマンの
    傑作「燃ゆる茨」が毎週木曜日の午後
2時に
    拝観できる。この絵が
Aix En Provenceに現
    存する唯一の美術品なのです。

と書いたところが、X氏よりご指摘をいただき、
唯一の美術品とあるが、もう一つあるよ」と言
われてしまいました。

 さすがです。仰有るとおりです。Aix-en-
Provence
には有名な作品がもう一つあるのです。
しかも「エクス」と土地の名前まで入った作品な
のです。

画題:Enguerrand Quarton
         "The Villeneuve-les-Avignon Pieta"
         circa1455(?)
         Michel Laclotte
         "The Louvre, European Paintings" 1989
         Scala Publications Ltd.

こういうわけで、ついでにVilleneuve-les-Avignonも見物したことになりました。


では皆様、ご機嫌よう。


ちなみに付近の地図は

画題:

『聖母戴冠』は、今現在はl'hôtel Pierre de Luxembourgと呼ばれる美術館に展示されていて多くの見物者を集めていますが、もう一方のPieta衝立は西暦1900年パリの万国博覧会のときに、ルーブル博物館に当時の金で10万フランで売却されたので現在はルーブルへ行かなくてはなりません。私はこの絵画こそフランス人の描いた絵画のなかの最高傑作だと思っています。

この修道院はフランス革命のときに破壊されたのですが、イノケンティウス6世がローマから呼び寄せたMatteo Giovannettiが、礼拝堂に壁画「洗礼者ヨハネの一生」を描きました。1355年のことです。この壁画は部分的に残っています。

カルトゥジオ修道院とは、独居と沈黙と瞑想を実践するフランス版禅寺です。本部はグルノーブルの山の中にあるのですが、見てください。素晴らしいセッティングですね。

日本の鎌倉時代の禅宗流行時代と精神構造が似ているような気もします。

 これらエクスの絵二枚は、15世紀前半の善良王ルネ(Good King René I - 1409-1480)の庇護後援のもとで生まれました。ルネ王はタラスコンにお城をもっていましたが、文学サロンをエクスで開いており、エクス滞在が多かったようです。

写真:タラスコンの城

 「エクスの受胎告知祭壇画」です。

 エクスの反物業者ピエール・コルピ
チの遺志によりバルテルミー・デック
によって制作されたこの祭壇画の、し
かも真ん中の絵だけが切り離されてエ
クスに存在するのです。描かれたのは

144345年です。

写真:

画像

写真:

そればかりではありません。

はたしてカルトゥジオ修道院がみずから出費したのか、あるいは金持ちから寄付されたのか知るよしもありませんが、この教会の主礼拝堂に今現在初期フランス絵画の最高傑作とされる「Pieta」と『聖母戴冠』が飾られていたのです。作者はともにアンゲラン・カルトン(Enguerrand Quarton)。フランス北部出身の画家で、1444年からアヴィニョンで活躍しはじめたのです。

写真: 祝福の谷カルトゥジオ修道院

画像

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写真:La Madelaine

写真:

画像:西野嘉章『一五世紀プロヴァンス絵画研究』岩波書店 1994