Rigi

R i g i K a l t b a d

（リギ・カルトバード）

2009/06/24-26

写真：リギ・クルム（リギ山頂上、標高1800m）。

小学生が遠足にきている。彼らは標高400mの麓から歩いて登ってくるのだ。

ちなみに世界で一番初めにコグ式の登
山電車が敷設されたのは、アメリカの
New Hampshire州Mt. Washingtonで1869年
のことだった。カナダ人の技師Silvester
Marshが作った。

Rigiの登山電車がこれについで世界で二
番目なのだが、しかし、だからといって
Mt. Washingtonが素晴らしいわけではない。
Mt. Washingtonには景観というものがない。
そもそもが麓の保養地Bretton Woodsとい
うところも美しくはない。そこがアメリ
カとスイスの大きな違いなのだ。

久しぶりに訪れたBergsonneは昔のRenggliおば様の繊細な芸術の匂いが薄れ、ベートーベンの持つきわめて男性的な雰囲気に変わりつつあるように見受けた。ただ食事ははるかに洗練されたスイス料理にかわっていた。どちらかというと、現在の食事のほうが現代人には合うだろう。食事が美味しくて景色が綺麗だし、宿泊代が高くないから「お得な」ホテルといえるだろう。

このRenggliさんは寄る年波に勝てず、約20年前に引退されて、そのあとを継いだのがRenggliさんの妹の息子であるWilly Camps-Stalderなのである。髪が巻き毛でもじゃもじゃだから、私の娘が「ベートーベン」という渾名を付けた。それ以来、彼はベートーベンである。

さて、そのRenggliさんには子供が二人いたのだが、長女は誰とも結婚することなく、ホテルを継承し発展させた。私達がお世話になったのは、このFrau Ellie Renggliの時代なのである。このRenggliさんには植物画の才能があり、美しい植物画を描き、絵はがきとしてホテルで売っていた。私達の家族はこのRenggliさんにスイス人の生活と堅実な生活態度を教えていただいた。私達の子供たちが人様に迷惑をかけることなく後ろ指をさされることなく育っているのは、この時のRenggliさんの影響もあろう、と私達夫婦は感じている。

このDahinden氏の二代目か三代目に娘が一人いたらしい。その娘さんは結婚してRenggli家に嫁したのだが、お父さんのDahinden氏は彼女にすこし山手に土地を買い、小規模のホテルを建てた。これが現在のホテル　ベルクゾンネなのである。

写真：1875年当時のRigi-Kaltbad
右手の大きなホテルがGrand Hotel
左手の小さなホテルがHotel Bellevue
手前に伸びる鉄路は現在は廃止されてしまったRigi-Scheidegg行きの線路

出典：RIGI ? Konigin der Berge, Rigibahn Gesellschaft, Vitznau 1971

冬は山全体が雪に包まれて天国のような清澄感があって、スキーで山を滑り降りると、粉雪がダイヤモンド・ダストを巻き上げる美しさがあった。

この山は19世紀の後半、1871年に欧州で初めて登山電車が敷設され、アルプス見物の名所となり、一世を風靡した天下の観光名所なのだ。

食事はイタリア人が住み込んでいてとても美味しいイタリア料理とスイス料理を楽しむことができた。

昔なんども訪れたリギなのだが、約二十年ぶりに訪れることになった。

私達が欧州に住んでいた頃、私の家族は夏休みも冬休みもRigiに来た。子供が小さかったから、遊んで回っても車に轢かれることのないRigiを選んだのだ。

斎藤茂吉の漫遊した当時のリギ・カルトバードは観光客で溢れかえり、現在のリギ・カルトバード駅前には大きな宮殿ホテルが二軒も建っていた。

大きな方のホテルは1962年に火災で全焼してしまったが、小さい方のホテルは20年前にはまだ建っていた。このベルヴューの創立者がMr. Alois Dahindenで、いまでもベルクゾンネのなかに彫刻の額が残っている。

斎藤茂吉がミュンヘン大学に留学中、
（大正11年1922年のことだと思います
が、）てる子夫人が来欧して、茂吉は
お供をさせられてRigi山の山頂に登り、
山頂にあるリギ・クルム　ホテルに宿泊した。
お転婆娘、その当時の言葉を使えば
「モガ」、の行状にほとほと手を焼い
ていた婿養子たる茂吉は「リギ山上の
一夜」という文章を公表して自らの嬶
（かかあ）天下の状態を嘆いている。