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«ウラジーミルの聖母»
12世紀初頭
コンスタンチノープル
木板、テンペラ 104 x 69cm
V.ロジオノフ
『国立トレチャコフ美術館』 
«P-2» 2003




  ルーシ(訳注:ロシアの古称)がキリスト教を受け
入れた時、寺院をフレスコ画やモザイクで装飾し、イ
コンを描くという伝統がビザンチンから伝わった。現
在まで伝わるビザンチンで制作された作品のうち、
«ウラジーミルの聖母»12世紀初頭)は、国の聖宝
となっている。この絵はユーリー・ドルガルーキー公
の治世にルーシに運ばれ、キエフ郊外のヴィシュゴロ
ドの女子修道院に安置された。ウラジーミル・スーズ
ダリの土地の昇格に伴い、
1155年、アンドレイ・ボゴ
リュブスキー公が、後にウラジーミルと名づけられる
ことになる土地へこの絵を移した。
1395年にチムール
がルーシに来襲した時、この聖画像はモスクワに移さ
れた。すると、敵軍はかなりの優勢にあったにもかか
わらず、戦わずして退散したのであった。母の顔に自
分の頬を優しく押し付けている幼子キリストを腕に抱
いた聖母像は、聖像学上「ウミレーニエ(感動)」と
呼ばれている。高い精神性、聖画の室の高さ、ロシア
史上奇跡をもたらした像としての特別な役目から、
«ウラジーミルの聖母»像は完璧な聖像の手本となりル
ーシで最も崇拝される像の一つになった。現在この聖
像画は、トルマチのトレチャコフ美術館付属聖ニコラ
イ聖堂博物館に安置されている。

美術作品に使われるときの金の特性

これまで集めた作例の特徴を綜合しておきましょう。

スキタイ文化の「櫛」                   非変質性、永遠性
Elihu Vedder                                     信頼性
Enguerrand Quarton                         精神的な深さ
Fra Angelico                                      不可視の価値
Simone Martini                                 不可視の世界
快慶、観世音菩薩                            豊満さ、豊かさ

このように「金」(きん)は、到達可能な精神的極限を表現
するときに用いられるのです。