(1) 人間の心は内的なエネルギーを蓄積する。

   玉城康四郎  円覚寺で接心を続ける。
              身も心もへとへとの状態。悶々の日を
           送っていた。

   林 武    松原村の掘っ立て小屋。
          画業がうまくいかず、悩みぬく。

   テレサ    アヴィラの修道院。
          ひたすら潜心、そして命がけの念祷。

   白隠     高田の英巌寺で苦修練行。
          大疑団の出現で身動きもできない状態。

(2) 突然、思いがけなく、心が跳躍する。

   玉城康四郎  突然の大爆発、木っ端微塵、雲散霧消                            驚くべき忽然の大転換。

   林 武    突然、杉林の樹幹が天地を貫く大円柱
                    に変化。

          雷に打たれたよう。

   テレサ    突然、神の現存の内的感じ。
          神が私のうちにおいでになる。

   白隠     鐘声を聴くや否や従来の世界がひっく
                    りかえる。

          氷盤をたたき砕くような。

(3) 超常的な状態に暫時滞留する。そこは光に満ち溢れてい
   る。

   玉城康四郎  求めに求めていた目覚め、不可思議の
                    光。

          喜びのなかに呆然。どれだけの時間か
                    わからない。


   林 武    実在のすべてが、賛嘆と畏怖。沙羅双樹
                    の花。

          神秘の光明。時間の感覚なし。

   テレサ    それは善。熱して炎と変化した烈火。

          短時間、長くて30分の能力停止状態。

   白隠     玉楼をおし倒すような。

                                従来の疑惑が消え失せる。
          (時間についての記述なし)

(4) その後、通常の状態にもどる。このとき喜悦の感情が生
    れる。

   玉城康四郎  我に帰った瞬間、むくむくと腹の底か
                    ら歓喜が
湧き起こった。

        林 武     狂うような歓喜の世界。
                               手の舞い足の踏むところを知らない。

   テレサ    霊魂は喜びを味わい、心は感動し涙が
                    流れる。
喜びにひたりきる。

   白隠     ありがたく嬉しい気持ち。声高に叫ん
                    で曰く、
也太奇(やたいき)也太奇。

(5) 従前の精神状態にもどる。

   玉城康四郎  元の木阿弥に戻る。
          煩悩、我執がもどってくる。

   林 武    精神的なバックボーンを得て元の画業
                    に戻る。

          (格別の記載なし)

   テレサ    正気にもどってもまだ茫然としている。
          時々引きもどされることがある。

   白隠     得意の絶頂状態となり、高慢ちきとな
                    り、
正受老人に張り倒される。

神 秘 体 験 A の パ タ ー ン 化

 筆者がこれまで述べてきた人間の心の神秘的な挙動、神秘
体験
Aは、この量子力学モデルを使用すると、よりよく説明
できるのではないだろうか。

 量子力学においては、陽子にたいし電子が無限遠の位置にあ
るときのエネルギー準位を0としているので、電子のエネルギ
ー準位は常にマイナス値で示されるが、人間のこころの場合は
陽子を基準地としてプラス値で示すことにしよう。



上図につけた(1),(2),(3),(4),(5)の順番で説明してみることとし
たい。


Carlo Crivelliは
ベニス生まれでありながら
何故ベニスで活動できなかったのか?
若き日のベニスでなにがあったのか?

美は、陰影を帯びるとき、輝きを増すのか?


ヴェネチアの異端審問については
『名画による歴史探訪』ローゼマリー・ハーゲン
新井皓士訳、岩波書店 1996 P189
を参照せよ。

画題:
Carlo Crivelli
"Die hl. Maria Magdalena" 1485/90
"Museen der Welt,
Die Kunstschaetze im Rijksmuseum Amsterdam"
Scala Publications Ltd. 1990