写真:イワツメクサ
木 曽 御 岳 登 山
2013/07/22
もう足の筋肉は疲れ切っていて、弾力性がなくなり、つま先は痛むは、立っていてもよろけるはで、下り切るのに往生しました。5,6回もこけたでしょうか。
田の原に到着するころには死人に近い状態でした。
そうしたら分かってきました。このおばあちゃんは若い男の子(多分運転手役に連れてきたのでしょう)を連れているのですが、ところどころで花の写真を撮るほかはひたすらじわじわと歩くのです。私の不躾な感想ですが、農耕用の牛のようだと思いました。感情を殺してひたすらのろのろと働き続けるのです。この人のあとをつけて歩いていたら、私にもわかりました。「辛い、苦しい」を声に出さず、顔にも表わさず、ひたすら堪え忍ぶのです。そして休むことなく、歩き続けるのです。これが老人の登山の妙諦なのか、とやっと思い当たりました。
なんていったらよいのか、この山はひたすら登るばかりで、一休みさせてくれないのです。途中に休憩所があるわけでもありません。ひたすら眼前に次から次へと現われる岩石の道をよじ登るのです。
半分以上よじのぼったら、今度はすこし「欲」が出てきました。下りる決心がつかなくなりました。この山は信仰の山ですから、若い登山者のほかに白い衣を着てお祈りのために登る登山者も多いので、私の前をゆっくり登っていらっしゃるおばあさんのあとについて歩くことにしました。
ただ私の動機は三浦雄一郎を真似るという不純なものがありましたので、正直最近あまり山歩きしていない私に登れるものだろうか、という不安もありました。また、前に湯ノ山の御在所岳へ登ったとき心房細動にかかり、きつい登山をすると心房細動がぶり返すのではないか、という心配もありました。歳を取ると、好きなときに好きなことをやれないようになってしまうのです。今回は三浦ショックでそれらの障碍を乗り越えることができたのです。
7月の20日前後の天候は安定し、快晴に近い状態が続いたので、22日月曜日に日時を設定しました。頂上から素晴らしい景色が眺められるだろう、と思ったのです。
22日は朝5時に出発し、7時に田の原に到着するだろう、と思っていたのですが、思ったより時間がかかり7時に到着したのは、麓の王滝村でした。
写真で見られるように駐車場に到着したときは好天だったのですが、山上には雲がかかりはじめ、少々心配したのですが、田の原まで来たのですから、心配はそれまでとして、登り始めました。
登山ガイドとしては、御嶽神社ホームページにある登山絵図をプリントしてもって行きました。
吃驚しましたよ。ここは信仰の村なのですね。木曽御嶽社里宮というのがものものしく鎮座ましましていて、とても荘厳です。譬えて言えば、山形県の羽黒山のようなものものしさが満ちあふれています。まさか長野県にこのような信仰の山があるなんて知りませんでした。
更に奥に、約30分ほど歩くと、剣が峰の奥宮があるのですが、疲れ切っていたことと視界がまったくきかないので、御嶽神社頂上奥社の後ろにある大御神火祭場まで行きまして写真を一枚撮って引き返しました。
回りの人達がこれ以上登っても何も見えないのだから、これで下山しましょう、というのに賛同したのです。
頂上小屋まで帰ってきたら、雨が降り出しました。次の日は終日雨の予報が出ていましたので、1時半になっていましたが、急いで下りはじめました。
天気はどんどん悪くなり、頂上小屋に到着するころには視界はまったくききませんでした。よれよれになった私は、頂上小屋でコーヒーをいっぱい頂戴しました。
写真:雪渓
八合目をすぎると左側に雪渓が見えてきました。このあたりから傾斜は急勾配となり、足が思うように持ち上がらないようになります。
写真:富士見岩
それでどうだったか?と聞きたいでしょう。
この山は頂上が3,087mで田の原駐車場が2,180mですから、標高差が丁度900mなのです。
ところが、200mばかり登ったところでへたってしまいました。息が切れて堪えられなくなりました。やはり平生の無精がたたっているのです。見上げると胸突き八丁の急坂が見え、沢山の登山者達が蟻のようにモクモクと歩いています。
写真:下から見上げた金剛童子
王滝村にはこれらの神々を祀る礼拝所(霊神碑)が沢山作られていて、とくに車を降りて参拝したわけではないのですが、吃驚しました。
祀られているのは、
国常立神(くにのとこたちのかみ)
大己貴命(おおなむち)
少彦名命(すくなびこな)
それぞれにご利益があって、
国常立神
始源神・根源神・元神
大己貴命
国造りの神、農業神、商業神、
医療神
少彦名命
醸造の神、高皇産霊神の子、
協力神、常世の神、医薬・石・
穀物霊
それぞれのお顔も遙拝所で拝顔することができます。
年寄りの冷や水ということなのだろうが、
1. 三浦雄一郎さんの80歳でのエベレスト登山に
刺激され、
2. ひょっとしたら私自身も100歳まで生きるの
ではないか、との妄想を抱き、
3. さすれば、年をとったからといって何もしな
いというのは道理にはずれる、と考え、
思い立って木曽御岳登山をやってみました。
調べたら、自動車で行ける最高地点は王滝口の田の原の2180mでここが頂上にもっとも近いのです。
しかし、分かりました。この山は老人にとっては「命懸け」で登らねばならない、ということです。油断も予断もいけません。そして登り始めたら、感情を殺してただひたすら忍耐するのです。
通常の若者の足で田の原から頂上小屋まで3時間の行程なのですが、私は4時間半かかりました。
画像:霊神碑の例
また雨具も必要です。私は約25年前に購入したモンベルのゴアテックスの雨着に初めて袖を通しましたが、充分役にたちました。
これで登山のコツと覚悟のしかたはわかりました。次回は晴れて見晴らしのよいときに登ることにしましょう。この次は頂上で一泊したほうが良いと思いました。
では、皆様ご機嫌よう。
写真:頂上神社の社務所で買った金剛杖。¥1,600。日付を入れて貰うと¥1,000追加。
写真:イワギキョウ
写真:大御神火祭場
拡大写真:なんとこのおばあさんは熊本県八代市から来られた方。大黒天に願をかけられ、お礼参りなのかも知れません。
しかし、200mで止めて帰ってきた、なんていうと恥をかくことになりますから、せめてほぼ半分に相当する八合目まで歩こう、とこう心決めました。そう決心して歩き出すと、思ったほどきつくはありませんでした。身体が登山に慣れてきたのかも知れません。木道はとっくになくなって、岩だらけです。
写真:キバナシャクナゲなのですが、ちょっといじけていますね。(八合目)
画像:©2013 Google
画像:木曽御嶽神社里宮。
写真:王滝口、田の原駐車場より御嶽山を見上げる。
写真:オトギリソウ
写真:下り坂。麓に近づいたら少し見晴らしがきくようになりました。
写真:山を降りて来られた行者さん。かならず供者が付いています。彼らの目的は願をかけることなのです。
写真:イワカガミ