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以前の「ひとこと」 : 2018年2月後半



2月16日(金) シルバー菱形三角柱による三葉結び目(その1)

 このところずっとご紹介している、The Bridges OrganizationFolded Strips of Rhombuses and a Plea for the √2:1 Rhombus(Tom Verhoeff and Koos Verhoeff, 2013)という論文の中に出てくる構造の中でも特に美しいと思うのが三葉結び目です。まずは自分でCGを作ってみました(図1)。

図 1

 3回回転対称の構造になっているので、3分の1の部分を作ります(図2)。断面が三角柱になっているのがわかりますか?

図 2

 例によってgifアニメーションでくるくる回してみました。

図 3

 このかたちもぜひ作ってみたくなりました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 平昌オリンピックで小平奈緒選手が1,000mスピードスケートで銀メダルを獲得して、地元(長野県茅野市)では大変盛り上がっています。






2月17日(土) 魔方陣から多角魔方陣へ(その1)

 最近読んだ論文からの話題です。3×3マスの中に1〜9の数字を1つずつ入れて、タテヨコ斜めの3マスの和をすべて同じにする、「魔方陣」という遊びがあります(図1)。

図 1

 これは、対称性を除くと本質的に図1の解しか存在しないことが知られています。

 この魔方陣を拡張する考え方として、古くから有名なのが、4×4、5×5、というようにサイズを大きくしてゆく方法です。4×4の魔方陣は本質的に異なる解が880通り、5×5のほうはなんと275,305,224通りあるのだそうです。

 また、平面上の魔方陣ではなく、3次元に拡張したものは、過去の表紙119:立体魔方陣に、その作り方を含めて詳しく説明されています。

 今回ご紹介するのは、3×3の魔方陣を、「正方形の頂点および辺の中心、面の中心に数字を置く」と考えて、「各辺にある3つの数字の和、および面の中心を通る線の上にある3つの数字の和が等しい」と解釈する考え方です(図2)。

図 2

 上の図で、数字の和を取るのは青い線に沿って並ぶ3つの数になります。これを一般化して「魔方陣(magic square)」から「多角魔方陣(magic polygon)」と呼ぶことにします。五角魔方陣と六角魔方陣の数字を入れていないパターンを描いてみました。五角形のほうは11個、六角形のほうは13個の数字が入ります。

図 3

 さて問題です。これらには解はあるでしょうか? また、解があるとすると中心の数字は何になるでしょうか?

(つづく)



 “magic square”を「魔方陣」と呼ぶなら、“magic polygon”は何と訳すべきなんだろう? と考えました。「まほうじん」という言葉を聞くと、「魔法・陣」とイメージしやすいと思うのですが、「魔・方陣」が正しいです。つまり、魔(不思議な)方陣、なのです。方陣というのは戦闘をする際に兵士をどのように配置するかという陣形の名前の1つで、陣形の名前として方陣以外にすぐに思いつくのは円陣だと思います。「円陣を組む」という言葉は現代でも日常的に使われることのある言葉だと思います。

 調べてみると、八方向に兵士を配置する「八陣」ということばもあるようですから、上の図3の五角形や六角形のパターンは「魔五陣」「魔六陣」と呼ぶほうが良いのかもしれないです。でもそれを一般化して「魔多陣」といったらわかりにくいなあと思うのです。では、「魔五角陣」「魔六角陣」…「魔多角陣」と呼ぶのはどうかというと、このほうがだいぶわかりやすいかなあと思いますが、でも「またかくじん」という音を聞いて「魔多角陣」という漢字をすぐに思い浮かべることができるかというと、ちょっと怪しいかなあと思います。

 日本語では、「魔方陣」という言葉が、形状に限らず「タテヨコに並んだ数字の和が等しい」という性質を表現する言葉として定着している感じがします。だとすると「五角魔方陣」「六角魔方陣」と呼んだほうがわかりやすいかなあと思った次第です。



 昨日は出張で、内幸町(うちさいわいちょう)に一日いました。打合せの途中で空き時間ができてしまったので、日比谷図書文化館をちょっとのぞいてきました。妻に「あのあたりで中途半端に時間が空きそうなんだけれども、落ち着いて資料を読んだりできるところってあるかな? やっぱりカフェとかかなあ?」と相談したら、それなら図書館がいいんじゃない? 日比谷の図書館はいいらしいよ、とアドバイスをもらったのです。

図 4

 建物の外観も内部もとても良かったです。(ちなみに図4の写真は自分で撮ったものではありません。)

<おまけのひとこと>
 図書館に行こうと思って用事が合った建物をちょうど出るときにデモ隊がいました。先頭付近には宣伝カーがいて、大音量でメッセージ音声が流れていました。建物の1階部分は地下駐車場の出口のロータリーになっていたのですが、その空間にメッセージ音声が大きく反響して、何事かと思いました。
 道を歩くときにデモ隊とすれ違う方向になったのですが、隊列の後ろのほうにチンドン屋さんがいました。生で見たのは久しぶりな気がします。チンドン屋さんの奏でる音楽は、どこか哀愁を帯びた雰囲気がある気がします。これは聴き手の側に理由があるのだろうな、と思います。






2月18日(日) シルバー菱形三角柱による三葉結び目(その2)

 一昨日、CGでご紹介した三葉結び目を実際に紙で作ろうと思って、パーツを設計してみました。

再掲図

 かたちの理解を深めるために、角度を変えたアニメーションも作ってみました。

図 1

 これを眺めながら、こんな型紙を設計してみました。ペーパーモデルの手法です。

図 2

 3回回転対称形なので、同じものを3つ作って組み合わせます。全部で菱形は60枚必要なので、パーツ1つあたり20枚になります。青い点線で折り曲げます。

 このパーツ1つを組むと、図3のかたちになります。図4、図5は、それを120度回転させて、お互いに正しい位置関係になるように配置したものです。(のりしろはCGでは省略しています。)

図 3 図 4
図 5 図 6

 図3〜図5を重ねたものが図6になります。冒頭の図1のアニメーションと比較的近い視点になるかと思います。

(つづく)



 2月16日(金)は出張で東京に行ったのですが、帰りに新宿で30分くらい時間があったので、サザンテラス口から出て、東急ハンズと紀伊國屋書店の洋書フロアに寄ってきました。数学の棚のあたりをふらふらしていたら、岡部恒治先生から電話をいただいて、2018年度のリスーピアワークショップの6月16日(土)、17日(日)分を担当させていただくことになりました。

 イベントの告知やチラシの準備等があるため、今月中には内容を確定するスケジュールになります。このところご紹介しているシルバー菱形による三角柱のリング多面体をやれないかなあと思って考え始めました。でもちょっとマニアックすぎるかなあ…

<おまけのひとこと>
 Netで、「桜の開花を予想する400℃の法則」という経験則(?)の話を見かけました。「気温が高い日が続くと開花が早くなる」という感覚はわかります。わかりますけれども、「温度の数値を足し算する」というのがどうにも気持ちが悪いです。まあ平均値を計算するときにも、手順としていったんは足し算するというStepが入ったりしますので、あまり目くじらを立てる話ではないのかなあという気もしないでもないのですが、でもやっぱり気持ちが悪い。

 「40℃のお風呂に15℃の水道水を注ぐと 40+15=55℃になります」と言われたような気持ちの悪さです。まあ、桜の木が受け取るトータルの熱エネルギーみたいなものを非常に粗く近似している数値だ、と理解すればいいのかなあとは思うのですが。


 植物の発芽とか開花とか、おおきな相転移になるような活動のトリガーになるものが何なのか、光とか温度とか湿度とかいろいろあると思います。発芽にしても開花にしても、遺伝子を伝え、次の子孫を残すために重要なイベントです。花を咲かせ、実を実らせるというのは植物にとっては大きな負担なはずです。それでも次の世代のために身を削るわけです。

 植物は、昆虫をはじめとする様々な動物を上手に利用して受粉したり果実や種子を遠くに運んでもらったりします。なので、タイミングを誤ると受粉できなかったり、種子が発芽できなかったりします。生物の進化による自然淘汰の中で、適切なタイミングで開花できる種が生き残っているのだと思うのですけれども、よくもまあこんな機能が実現できているものだと感心します。






2月19日(月) シルバー菱形三角柱による三葉結び目(その3)

 昨日設計したパーツを3つ用意して、三葉結び目の模型を作りました。図1は完成品の写真です。

図 1

 昨日ご紹介したパーツの型紙を、A4サイズの用紙に2つ配置し、2枚印刷してパーツ3つを切り出します。(1つ余りました。) 図2は、切り出した直後のパーツ、折り筋に沿って軽く折ってみたもの、パーツ単独で接着すべきところまで接着したもの、の3つの写真です。

図 2

 この時点で型紙にミスがあることがわかりました。(昨日掲載したパーツ図は正しく修正済みのものです。)最初は図3の青い位置に「のりしろ」を付けていたのですが、それを赤の位置に移動しないとまずいということがわかりました。図2の写真で見えているのは修正前のものです。

図 3

 パーツ3つを組み立てて(図4)、そのうちの2つの位置関係を確認してみました(図5)。

図 4 図 5

 この模型を作ってみたかったので、作れてうれしいです。



 昔、AsusのEee-PCという小型PCを使っていたことがありました。もう10年くらい前でしょうか。そのPCに標準添付されていたマウスを最近まで使っていたのですが、最近、普通にマウスボタンをシングルクリックしたつもりが、勝手にマウスボタンイベントが複数回発行されるような振る舞いをし始めました。これはマウスの問題の可能性が高いなあと思いました。

 Ubuntu 17.10 をインストールしているPCにそのマウスをつないでみると特にそういった症状は出ないのですが、一応マウスを変えてみようかなと思いました。

 とりあえず店頭で見かけた一番シンプルな BUFFALO のUSBマウス(680円くらいでした)を買ってきて試してみました。

図 6

 クリックの問題は全くなくなったのですが、このマウス、コタツの天板の上に置くとマウスの移動の検知性能が極めて低いのです。カッターマットの上で使うと問題はないのですが。

 私はこのサイトに載せる画像は、基本はタテヨコの画素数を16の倍数にしたい、というあまり意味のないこだわりがあります。画像をリサイズしてトリミングするという作業を更新のたびに(ほぼ毎日)しているわけですが、1ドット単位でマウスの位置を制御するのがこのマウスだとちょっと大変だということがわかりました。ユーザインタフェースにはちゃんと適切にお金をかけないといけないなあと改めて思いました。

<おまけのひとこと>
 この週末(2/17,18)はワークショップの構想を考えて、内容案のレポートを書いて過ごしました。楽しいです。

 最近、週末など翌日会社が休みのときは、夕方早々にお酒を飲んで、宵の口から3〜4時間寝てしまって、夜中から明け方まで起きていていろいろやって、早朝にまた1〜2時間寝る、というパターンになってしまうことが多いです。






2月20日(火) 魔方陣から多角魔方陣へ(その2)

 先日の「多角魔方陣」の話の続きです。通常の3×3マスの正方形のかたちの魔方陣を拡張して、五角形、六角形…の魔方陣に関する考察です。ちなみに考案したのはMagic Polygons and Their Properties(Victoria Jakicic, Rachelle Bouchat:2018)です。

 例えば五角形、六角形ならこんな骨格を考えて(再掲図)、青い直線上に並ぶ3つの数字の和がすべて同じになるように、1,2,3,4…という連続する数字を配置できるでしょうか?という問題です。

再掲図

 図を見てすぐわかるように、この多角魔方陣の数字の位置には3種類あります。一番特別なのが中心の数字です。中心の数字は、N角魔方陣ではN個の和で使われます。多角形の頂点に位置する数字は3つの和で使われ、辺の中点に位置する数字は2つの和で使われます。

 この論文では、5以上のN角魔方陣には解があるか?を議論しているのですが、まず最初に中心の数値が何か?から議論を始めています。

 N角魔方陣には数値が2n+1個出てきます。五角形なら頂点が5つ、辺の中点が5つ、中心が1つで5×2+1、六角形なら頂点が6つ、辺の中点が6つ、中心が1つで6×2+1、以下同様です。

 魔方陣ですから、中心をとおるN本の線上の3つの数字の和がすべて等しくなければいけません。このとき、すべての和には中心の数字が含まれますから、中心の数字を除いた残りの2N個は、すべて和が等しいN個のペアになっていなければなりません。

 1から始まって2N+1までの連続する数字から1つの数字を取り除いて、残りの数字を和が同じN個のペアにするためには、取り除く数字は一番小さい1か、ど真ん中のN+1か、一番大きい2N+1か、そのどれかしかあり得ません(図1)。

図 1

 論文では簡単な論証で、もしN角魔方陣が存在するならば、中心の数字はど真ん中の数でしかあり得ないことを示しています。さらに、N角魔方陣のNは奇数では成立しないことが述べられています。

 6角魔方陣の解を2つほど求めてみました。

図 2

 中心が7であることは証明済みなので、最小の数字である1が辺の中点にある場合(向かい側は自動的に最大の数字である13に決まります)と、1が頂点にある場合、どちらも解があるかなあと思って試してみましたが、それほど時間がかからずにどちらの例も見つけることができました。

 解が何通りあるのか、計算機で探してみればあっという間に計算できそうです。N角魔方陣の解の個数を探索するプログラムを作ってみようかなあと思いました。プログラミングの課題にちょうどいいのではないかと思いますがいかがでしょうか。



 平昌オリンピック、一番応援して期待していた小平奈緒選手がスピードスケート500mで金メダルを獲得してとても嬉しいです。男子フィギュアの金・銀もすごいですが。

 地元では昨日から有線放送で公民館でのパブリックビューイングのアナウンスが何度か流れ、ニュースによると滑走開始1時間前くらいから公民館に有志が集まっていたようです。滑走直後と金メダル確定時の2回、お祝いの花火が上がっていました。

 前回のソチオリンピック(27歳)のときの成績(500mが5位、1,000mが13位)から、今回(31歳)の成績が伸びている(500mが1位、1,000mが2位、1,500mが6位)というのは、年齢を考えてもものすごいことだと思います。

 東京で就職している娘が、職場の飲み会で、歳が上のほうの人と話をするときに「小平奈緒さんは小・中学校の偉大な先輩です」と言うのが格好の話題になってありがたいと言っていました。

<おまけのひとこと>
 六角魔方陣の変化をいろいろ考えていたら、ちょっと面白い展開になってきました。次の更新は2月21日(水)にできるつもりです。






2月21日(水) 六角魔方陣の研究(その1)

 昨日の六角魔方陣の2つの解の例を眺めていて、「六角形の頂点は3つの和に関与しているけれど(図1左)、辺の中点は2つの和にしか関与していない(図1右)のはなんとなく面白くないなあ」と思いました。

図 1

 そう思って眺めていると、辺の中点を1つおきに結んだ三角形の頂点の和が、同じく21になっていることに気が付きました。しかも、昨日の2例ともそうなっているのです。

図 2

 これはどういうことでしょう? 偶然でしょうか? 他の六角魔方陣の解があるとして、それも図2の2つの三角形の和まで等しくなるのでしょうか? それとも六角魔方陣の定義は満たすけれども図2の三角形の和は21にならない解もあるのでしょうか?

 解の全探索はプログラムを書いてやってみるとして、「頂点と中点の違いは本当にあるのだろうか?」「これってひょっとして多面体の平面投影図になっているのかな?」というアイディアがふと浮かびました。

 平面に投影したときの外周が正六角形になる多面体はたくさんありますが、その中に2つの正三角形が相対する向きになっている多面体と言うことで、まず最初に思い付いたのは正二十面体でした。でも、しばらく手を動かして考えた後で、この構造にいちばんぴったりくるのは「立方八面体」だ、と気が付きました。

図 3 図 4

 図2左の解を、図4の立方八面体の頂点に書き込んでみました(図5)。

図 5

 六角魔方陣の6つの辺の3つの数字の和は、それぞれ立方八面体の三角形の面の3頂点の和になります。また六角魔方陣の辺の中点を1つおきにつないだ三角形は、立方八面体の1つの三角形の面そのものです。なので、立方八面体の頂点だと考えれば、六角魔方陣の六角形の頂点も辺の中点も等価であり違いはないことになります。

図 6

 つまり、六角魔方陣は立方八面体魔方陣の平面投影図になっていたのです。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 これに気が付いたときには「これはすごい!」と思って興奮しました。今日はお休みを取っているのですが、病院を2か所回るのと、リスーピアワークショップの資料や写真を準備するのと、明日の朝8時からの(本業の仕事のほうの)報告会の準備で忙しいです。






2月22日(木) 六角魔方陣の研究(その2)

 昨日、2例ほど解いてみた六角魔方陣の解は、実は立方八面体魔方陣になっていたという話を書きました。ということは、立方八面体には4つの六角形の断面がありますから、1つの立方八面体魔方陣の解から4種類の六角魔方陣の解のパターンが生成できるということになります。くどいですが全部図示してみました。

図 1 図 2
図 3 図 4
図 5 図 6
図 7 図 8

 すべての図において、左側の立方八面体の13の点の数字は全く一緒です。それぞれの段の左側、赤で示した六角形の位置が違います。赤い六角形の頂点の数字が、右側の六角魔方陣の六角形の頂点になるように六角魔方陣に数字を入れます。図は全部で4つあって、六角形の頂点は6つですから、1〜12の数字はすべてちょうど2回ずつ頂点に置かれます。確かめてみてください。また、右側の4つの六角魔方陣がちゃんと成立していること(すべて和が21になっていること)を確かめてみてください。

 先日たまたま、1が六角形の頂点になっている六角魔方陣と、1が辺の中点になっている六角魔方陣の例を作ってみましたが、実はこの2つは立方八面体を考えると全く同じだったのでした。

 いかがでしょうか。平面上の六角魔方陣の解としては別解になっている4つのパターンが、いずれも同じ立方八面体魔方陣の異なる平面射影図だと理解できるのです。とても面白いと思います。

 ここまで確かめると、次に自然に出てくる疑問は「ほかにも立方八面体魔方陣の解はあるのか?」「立方八面体魔方陣の解ではない、六角魔方陣の解はあるのか?」というものです。この疑問を解決するため、プログラムを書いて調べることにしました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 2月21日(水)は2つの病院に行くためにお休みを取りました。リスーピアワークショップの準備をしました。もう少ししたらこのページでもご案内を出させていただこうと思います。

 2月22日(木)の朝に、2/22, 2/23 の2日分の更新をしています。






2月23日(金) 多角魔方陣を解くプログラムを書いてみた

 昨日の疑問、「ほかにも立方八面体魔方陣の解はあるのか?」「立方八面体魔方陣の解ではない、六角魔方陣の解はあるのか?」を確かめるべく、計算機に頑張ってもらうことにしました。こんなプログラムを書いてみました。

 いつものようにソースコードの「画像」です。テキストではありません。ごめんなさい。(「でも、このくらいの行数なら手で打ち込んでもたかが知れているよね」とか思うのは私が年寄だからかなあと思います。)

 関数 perm() は順列を求める常套手段の再帰関数です。ここには書かれていませんが、マクロとしてN_GONというのを定義してあって、六角魔方陣ならば N_GON は6です。以下、説明を簡単にするために六角魔方陣だとします。

 グローバル変数として、Point[13] という配列を用意します。ここに、1〜13の数字が入ります。Used[13]という配列も用意しておいて、数字を配置するときに、その場所がまだ空いているかを判断するために使っています。

 Num という変数も出てきますが、これは N_GON と同じです。(N_GONにしておけばよかったですね。)13個の数字の順列を全部生成すると時間がかかるので、中心の7は固定にして、さらに7をはさんで向かい合う2つの数字の和は必ず14になるので、一度に数字を2つずつ入れていきます。

 さらにさらに、数字の1と、その向かい側の13の位置を固定します。main()関数の最初のかたまりでは1と13を六角形の頂点に配置します。2つ目のかたまりでは1と13は辺の中点にします。こうすることで、再帰の深さは高々5段に抑えられます。

 perm()は数字の2(と12)を入れるところから呼び出され、3と11、4と10、5と9、6と8まで入れたら perm()関数の最初の if 文に引っ掛かって check_array()関数で六角魔方陣として成立しているかをチェックします。具体的には6つの辺の3つの数字の和を確かめるだけでOKです。

 このプログラムでは、1を固定しているため回転解は出てきませんが、対称解は出てきてしまいます。なので計算結果の数を2で割ったものが求める解の個数ということになります。

 まず最初に N_GON を4にして、いわゆる普通の3×3の正方形の魔方陣を解かせてみたら、あっという間に2つ、鏡像解が出てきました。成功です。

(つづく)



 

 水曜日に病院に行った後で処方箋を持って薬局に寄ったのですが、薬局を出たところの掲示板に、小平奈緒選手の新聞記事の切り抜きと、いかにもプリンタで1枚ずつ出力しました、という手造り感あふれるおめでとうメッセージが掲示されていました。

図 2

 ああ、すごいなあと思いました。ここだけでなく、いろいろなところ、いろいろなお店に「おめでとう」メッセージが出ていて何かサービスがあったりして、地元としては本当に純粋に明るいニュースで、とても嬉しいことです。

<おまけのひとこと>
 上記のプログラム、いきなりあっさり動くプログラムが書けたかのごとくご紹介していますが、もちろんそんなわけではありません。高々100行にも満たないコードなので、最初に書くのは10分もかかりませんでしたが、再帰関数を私がいきなり正しく書けるはずもなく、意図通り動くようになるまでに30分近くデバッグしました。

 対称性も含めて同じ解は出力しないようにするならば、過去の解を全部記憶しておいて、新しい解が見つかったら過去の解と照合するルーチンを入れればいいのですけれども、そんな手間をかけるくらいなら鏡像解を受け入れるほうが早いと思ったので、そういう実装はしませんでした。






2月24日(土) 六角魔方陣をプログラムで解く

 本論に入る前に、昨日衝撃を受けたニュースの話から書きたいと思います。

 バッハの研究で有名な礒山雅(いそやまただし)先生が2月22日に亡くなられたそうです。1月下旬の大雪のときに転倒されたのが原因の外傷性頭蓋内損傷が原因だそうです。

 礒山先生とは、2013年の「まつもとバッハの会 音楽講座」の「バッハ<ロ短調ミサ>に親しむ」の4回講座でお話を伺い、講座終了後にポケットスコアを持って質問に行ったり、その年の冬の須坂市のレクチャーコンサートを聴きに行ったりしたときにお話をさせていただいたのが強く印象に残っています。若手の音楽家の方の演奏でヨハネ受難曲のアリアを聴いて、それが素晴らしい演奏だったので感想と御礼をお伝えしたのですが、「これからも彼ら(若手演奏家)を応援してやってください」と言われたことが記憶に残っています。

 (ちょうどこのころはホームページの更新を休止していたころで、写真とか記録が全然残っていないのです。もったいないことをしました。)

 さかのぼって検索してみると、2001年5月30日のひとことで、礒山先生のページを読ませていただいたコメントをちょっと書いていました。

 礒山先生は松本深志高校のご出身で、そんなご縁もあって松本で音楽講座をされたりしていて、お話を伺うのがとても楽しみでした。NHK-FMの「古楽の楽しみ」でもときどきお声を聴くことがあって、それも楽しみでした。本当に残念に思います。ご冥福をお祈りいたします。



 昨日のプログラムで六角魔方陣を全数探索してみました。その結果、プログラムは条件を満たす配置として、8つのパターンを出力してきました(図1)。

図 1

 プログラムが出力したのは、数字だけが並んでいる図1の下の8行です。それぞれの行の数字の意味を説明するために、補足の図を付け加えたのが図1です。1行目と4行目、2行目と3行目はちょうど反転したパターンになっています(赤い矢印)。5行目と8行目、6行目と7行目も同様です。上半分の4行が[1][13]が頂点に配置されているパターン、下半分の4行が[1][13]が中点に配置されているパターンです。中心は必ず[7]です。

 結局、六角魔方陣は、下記再掲図の立方八面体魔方陣のパターンを平面射影した解しか存在しないということがわかりました。つまりこの図がユニークな解ということになります。

再掲図

 先日書いた疑問、「ほかにも立方八面体魔方陣の解はあるのか?」の答は「無い」、「立方八面体魔方陣の解ではない、六角魔方陣の解はあるのか?」の答も「無い」、が結論でした。3×3のいわゆる普通の「魔方陣」が、本質的には1つしか解がないのと同様、立方八面体魔方陣の解も本質的には1つしかない、ということがわかったのが嬉しいです。



 

 立方八面体魔方陣について、もう少し考えてみました。立方八面体魔方陣は8つの正三角形の面の頂点の和がすべて等しいことと、相対する頂点と中心の3点の和が同じ値になっていました。一方、立方八面体は、その名が示すように正方形の面が6面あります。一応図示しておきます(図2)。

図 2

 さて、この6つの面のそれぞれの4頂点の和はどうなっているでしょうか? ぜひ計算してみてください。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 NHK-FMの早朝にやっているバロック音楽の番組名というと、私は「あさのバロック」をまず思い浮かべます。テーマ曲がバッハの狩りのカンタータの「羊は安らかに草を食み」で、この美しいリコーダー2本とソプラノのアリアを、自分たちのアマチュア古楽アンサンブルで何度もアンコールに取り上げました。今は「古楽の楽しみ」という番組名なのですね。






2月25日(日) 立方八面体魔方陣の正方形の面の和

 昨日、立方八面体魔方陣の「正方形の6つの面それぞれの4頂点の和は?」という問いかけをしました。

再掲図

 これを計算してみると、驚くべきことに、この和もみな同じになっているのです。しかも、3つの数字の和は21(7×3)でしたが、4つの数字の和は28(7×4)なのです。



 立方八面体魔方陣にはほかに面白そうな和はないでしょうか? 立方八面体は、全体を二等分する、球で言えば大円に相当する正六角形の断面が4つあります。この六角形の頂点の6つの数字の和を計算してみましょう。いくつになるでしょうか? 4つの和は同じになるでしょうか?

 もうご想像がつくと思いますが…

(つづく)



 

 10日ほど前になってしまいますが、妻からバレンタインのチョコレートをもらいました。直角二等辺三角柱の素敵なデザインの箱です。中身はどんなかたちなんだろう?と思いました。

図 1

 中身はちょうど半分のサイズの板状のチョコレートが隙間なく詰まっていました。思わず並べて遊びたくなりますが、衛生面を考えて自重しました。

図 2

 妻は「デザインだけで選んだ」と言っていましたが、味もとてもおいしいです。嬉しくて持ち歩いて毎日少しずつこっそり食べています。

<おまけのひとこと>
 妻の両親もだいぶ高齢になってきて、いろいろ心配なことも増えてきました。昨年から頻繁に実家に行くようになって、その度に実家の片づけをしているのだそうですが、つくづく懲りたようで、「次の世代(子供たち)にはこんな苦労をさせてはいけない」と思ったとのことで、このところ家の中をせっせと片付けてくれています。

 その片付けの一環として先日も机の移動とかをしたのですが、昨日は整理棚を廃棄しました。引き出し2つが正方形の外形になっていて、正面は1対3の寸法で、縦置きすれば引き出し6段、横置きすれば引き出しが3列2段になるようにできます。6つの引き出しのうち2つには飾りの陶器のタイルがはめ込まれています。昔、通販で妻が買った家具です。

 この引き出しそのものが強度が足りない華奢な造りで、手前の化粧板はすぐ外れるし、奥の先板(さきいた)の下が次々に割れて、引き出しを引き出しても底板が残ってしまって、化粧板・左右の側板・先板の四角い枠が中身をひっぱり出すため、底板と化粧板の間の隙間から中身がこぼれたりするのです。 

 デザイン性を無視して長い木ネジで化粧板と側板をつないだり、L字金具で側板と先板をつないだり、がんばって補修もして、だましだまし使い続けてきましたが、モノも減らして棚もいらなくなったし、「もういいよね」ということになって、昨日は市の清掃センターまで車で持っていきました。長年使ったものなので、最後はちょっと胸が痛みました。






2月26日(月) 八角魔方陣

 六角魔方陣の対称性について散々楽しみましたが、次に八角魔方陣を少しいじってみました。まず手作業で2〜3分挑戦してみて、これはちょっと大変そうだなと思ってプログラムで解いてみました。(すでにプログラムがあったのが敗因かもしれません。) 一連の多角魔方陣の話は2月17日(土)のひとことから書き始めています。御用とお急ぎでない方は最初からご覧いただけるとより楽しいと思います。

 多角魔方陣というのは、自転車のホイールのように中心をはさんでその両側の数字と中心の3つの数字の和、各辺の頂点と中点の3つの数字の和、これらの和の全てが等しい数字の配置です。数字は1から順番に1つずつ、連続する数字を使います。

 八角魔方陣についても、1と最大値の17のペアが頂点に来る場合と辺の中点に来る場合、どちらも解があります。

図 1

 奇数角形の多角魔方陣は存在しないそうですが、偶数角形の多角魔方陣は、おそらく辺の数が多くなるほど解が増えるのだろうな、と思います。

 ちなみに四角魔方陣(いわゆる普通の3×3の正方形の魔方陣)は、対称性を考慮すると解はユニークですが、六角魔方陣は解は4つ、八角魔方陣も同じく4つでした。プログラムの出力を載せておきます。

 先日載せたプログラムで探索しました。鏡像対称解が出てくるので、8行ありますが解は4つです。ちなみに十角魔方陣の解は12通り、十二角魔方陣の解は166ありました。十二角魔方陣の解の探索はパソコンで3時間くらいかかりました。ということは十四角魔方陣の解の探索を同じプログラムでやらせたら大変なことになりそうなので、ここまでで計算はやめることにしました。(単純に考えて、探索範囲は数百倍はあるはずなので、数ヶ月かかる計算になります。最初の解が出てきたらやめるようにすれば解だけは見つかるかもしれませんが。)

 明日の「ひとこと」で六角魔方陣のまとめを書きたいと思います。(更新は本日分も明日分も同時にしますが。)



 思いのほか盛り上がった平昌オリンピックでしたが、いよいよ閉会ですね。地元は小平奈緒選手の金メダルで大変な盛り上がりでした。先週、妻が茅野駅のパン屋さんでパンを買ったら、こんな「おまけ」をもらったそうです。

図 3

 「祝!小平奈緒選手 金メダル!」と書かれたシールが貼ってあります。

図 4

 中身はちょっと小ぶりのスコーンが2つでした。妻と1つずついただきました。こういうのって嬉しいですね。

図 5

 ありがとうございました。

<おまけのひとこと>
 大学2年生の息子が、春休みを利用して1か月間の短期の語学留学に行きました。行先は南半球です。楽しんで良い経験を積んできてほしいと思っています。






2月27日(火) 六角魔方陣→立方八面体魔方陣の話のまとめ

 このところ書いている多角魔方陣の話のまとめとして、立方八面体魔方陣の対称性を整理しておきたいと思います。六角魔方陣は実は立方八面体魔方陣の平面投影だということをお話しました。六角魔方陣として見ると解は4つあったのですが、これは実は同じ立方八面体魔方陣に基づくものでした。

 多角魔方陣の定義は、中心をはさんで向かい合う、1直線上の3つの数字の和が等しいこと(図1左)、多角形を構成する一辺の両端の頂点の数字とその中点の数字の和が等しいことでした。六角魔方陣の場合、それを図1右のように立方八面体の頂点に数字があるとみなすと、六角形の頂点とその中点は、立方八面体の1つの三角形の3頂点に対応することがわかりました。

図 1

 図1右は、赤・青・黄・緑の4色の三角形を2つずつ、全部で8つの三角形があります。(同じ色にすると、どこが三角形なのかわからなくなるため塗り分けました。) その8つの三角形の3頂点の和は、すべて21になっています。

 この六角魔方陣の立体表現である立方八面体魔方陣は、中心が1つに頂点が12で全部で13の点があります。ここに1から13までの数を1つずつ割り振りますが、数字の平均は7です。3つの数字の和は7×3=21になっています。(3×3の普通の魔方陣は、数字の1〜9を使って、平均が5、和は5×3=15だったのを思い出します。)

 実はこれに加えて、この立方八面体魔方陣は、6つの正方形の面と、4つの正六角形の断面を持っています。下の図2の左は3色で6つの正方形を表し、図2右は4色で4つの六角形を表しています。

図 2

 図2左の正方形の場合、4つの数字の和は、6カ所とも平均の7×4個=28になっていますし、図2右の六角形の場合は、6つの数字の和は4カ所とも平均の7×6個=42になっているのです。

 大変美しい対称性を持った構造だと思います。

 3つの数字の和が21になるパターンは、中心の7を用いる組み合わせは図1左ですべて尽くされていますが、7を含まない3つの数字の和では、ここでは使われていないもの、例えば{2,8,11},{3,6,12},{4,8,9},{5,6,10}なんていうのもあるわけです。(実はこれですべてだと思います。)なので、これらのパターンが出てくる六角魔方陣や立方八面体魔方陣もあるのかな、と思ったのですが、実はこのパターン

が唯一の解だったということも印象的でした。多角魔方陣の論文を読んでからこの結論に至るまでの2回の週末はとても楽しかったです。

 はるか昔、初めて3×3のいわゆる「魔方陣」を知った時、とても驚いて「すごい!」と思ったようなかすかな記憶があります。小学校1年生の算数で、3×3の数字のボードの教材があって、周囲の8マスにはマグネットか何かで印刷された1桁の数字が貼られていて、中央のマスに先生がチョークで数字を書き入れて、「先生が周囲の数字を指さしたら、中央の数字と足し算した答を言いなさい」みたいな使い方をしていました。

 最初は繰り上がりなしの足し算から始めて、答が2桁になる足し算をやって、最後は3つの数字の和まで行ったような気がします。そのとき教材を使って、魔方陣というものがあることを先生が紹介して下さったような気がします。

 今回の立方八面体魔方陣は、その時の「すごい!」に匹敵するくらい面白いと思いました。

<おまけのひとこと>
 この立方八面体魔方陣については、妻が珍しくメールで「面白かった」と感想を送ってくれました。嬉しかったです。






2月28日(水) 九角形を含む多面体の検討

 九角形を含む多面体についてちょっと考えてみたのですが、今回はその予備検討の話です。

 すべての面が正多角形から成る凸多面体というと、ジョンソンの立体と呼ばれる92種類の多面体が有名ですが、この中には正九角形を含むものはひとつもありません。唯一、自明な立体として角柱と反角柱は上下の面が任意の正N角形にできますので、正九角柱と正九角反柱がありますが、これはあまり面白くありません。

 いろいろな立体について考えるとき、手持ちのブロックでちょっと作ってみるということをよくやるのですが、正九角形とは程遠いですが、正三角形と正方形を組み合わせたこんな等辺九辺形を考えてみることにしました。

図 1

 これは3回回転対称形なので、正三角形の頂点を切り落としたかたちだとみなせます。そこで、図1のかたちを4つ用意して、正四面体のように組んでみて、頂点の部分を埋めてみる、というアプローチで模型を作ってみることにしました。 

図 2

 最初は図2左のように、正方形のパーツの辺どうしを連結してみたのですが、これだとあんまりおもしろいかたちにならなかったので、図2右のようにちょっとひねってみることにしました。

 例によってJOVOブロックで組んでみました。

図 3 図 4

 正三角形44枚、正方形12枚の多面体です。残念ながら凸多面体ではありません。でもなかなかおもしろいかたちです。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 日差しがだいぶ春めいてきました。2001年2月27日にこのサイトの公開を始めて、だいぶ年月が経ちました。当初は、いずれは書くことがなくなるかなあと思っていました。当時「ホームページ3年限界説」みたいな意見もありました。でも、ありがたいことに最初の頃よりもむしろ最近のほうが面白いことや書きたいことが増えている気がします。なかなか気が付かないだけで、世の中には面白いことや美しいことがたくさんあるんだなあと思います。






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