北大窯跡からの伊部
    
初めてやきものの里を訪ねたのは備前です。妻と二人で朝6時20分下諏訪駅出発、塩尻から特急「しなの」、名古屋から特急「のぞみ」で岡山へ、倉敷で大原美術館を見て、赤穂線で伊部駅に着いたのは10月の備前祭りの2日ほど前の午後でした。(1997.10.16〜18)

伊部駅前の備前陶芸美術館は、3人の人間国宝を始め現代備前焼作家の作品があり、備前焼の全てがわかるところです。本で見るのとは全然違う感動があり、焼締め陶公募展の作品集を買いそろえました。

山本旅館までタクシーで行き宿泊しました。ここは、人間国宝の藤原啓と親交があったそうで、部屋の花生け、掛け軸が藤原啓の作品でした。食事に出される食器ももちろん全て備前焼で、麦酒杯の火襷はビールを注ぐとより赤くなり、火襷の飯椀はご飯がくっつかないとか、名物の「あなごすき」は量が多く残念ながら食べ切れませんでした。

翌日は山本旅館で紹介された窯元の高畠さんの所で作品を作りました。穴窯は窯詰めが終わって中を見ることは出来ませんでしたが、窯は1週間ほど焚き、その間は工房も母屋もものすごい熱気につつまれるとのこと。作品を見せてもらうと、徳利の窯変・棧切が素晴らしく、つい3本買ってしまう。ぐい呑も買う。
 
午後はバスで伊部駅に出て、天津神社からその裏手の忌部神社、北大窯跡、天保窯跡を観て、駅の2階にある備前焼伝統産業会館を観ました。ここは、備前焼作家の作品を展示即売しています。どれも買いたくなる物ばかりで、迷いながら花生けとぐい呑みを買う。

バスで藤原啓記念館へ。藤原啓は、作家をやめて故郷に帰り、陶芸家になり人間国宝となった。ここは、片上湾を見下ろす高台にあり、美しい庭に背景の海が素晴らしい。隣にやはり人間国宝の藤原雄の作品があるギャラリーがある。ほしい作品はうん十万円で手が出ず断念。

再び山本旅館へ宿泊しました。今夜は日本酒にしましたが、ぐい呑みの窯変がすごい。醤油差しから灰皿まで全て備前焼。買い集めたやきものは梱包して宅急便を使う。

3日目は備前焼き祭りです。まず人間国宝の山本陶秀宅(現在は山本雄一宅)ですごい徳利を見せてもらい、湯飲みと小皿(安いもの)を買う。山本陶秀はろくろの陶秀で有名。テレビで山本雄一が徳利を作るところを見たが、本当にあっという間に作ってしまう。ろくろの名人のすごさに感嘆する。

不老川の袂にある伊勢崎満を見ているうちに、大勢の人が出てきてゆっくりと見られなくなってきたので、前日に決めた中村真一郎の湯飲みを買って早々に駅に引き上げました。

午後3時頃伊部を出発し、下諏訪に着いたのは夜の8時30分ころでした。      

藤原啓記念館 備前陶芸美術館

 再び備前を訪ねたのは、6月(1999.6.11〜13)の観光客のいない時で、備前焼き祭のあった前回と違って窯元をたずねても前回ほどは作品が展示してありませんでした。もちろん、お店にはあります。

備州窯で作品(緋襷)をつくり、ここの店内で備前焼を見る。ここは、展示してある数は伊部でも大きい方と思う。
松山(しょうざん)で小道具と組み紐を買う。

今日は陶里苑に宿泊。ここは作家のビール杯を選べるので二人で4個のビール杯を呑み比べました。また、作家の方に会うこともあります。

翌日は、アポもなく妻の好きな作家川井明子先生を訪ねました。先生は炭桟切りを発明した小松陶古の娘とか。朝から昼近くまで、迷惑だったと思うけど気持ち良く作陶の話をしてくれて、作品をいただきました。作品は水漏れなどを確認してから後日送ってくれるという。これがプロなのかと思う。

午後は、電車で1駅戻って香登の松園(登り窯作品を作るならここはお薦め)で作品を作りました。ちょうど登り窯を焚いている最中で、後1日で窯焚きが終わる時でした。隣の工房で作品づくりをしましたが、窯の熱気で汗がしたたり落ちました。お店の作品も良い物が安いのでここで土産を買う。

ギャラリーしょうざんで買い物。ここは広いお店に作家のものを始め何でもある。喫茶室も在って便利。

伊部に戻り今夜はトービ
ホテルに宿泊しました。ここはツインで1万円くらいとべらぼうに安い。但し夕食がないので、駅からすぐの心寿司を利用する。ここの備前焼の器がすごい。

3日目は、買い物をしながら伊部駅に向かいました。衆楽館で窯出しをしていて、醤油差しが気に入ったので買い求める。前回と同時刻に帰宅。
              備州窯    松園

    

 信楽は山田剛敏先生の陶芸教室「楽陶の会」の研修旅行(1998.9.26〜27)の時、貸切バスで行き1泊しています。その時は、大勢ですから観光コースを回りました。

翌年9月(1999.9.23〜25)今度は、妻と二人車で出かけました。朝5時出発、中央道から名神高速道の栗東ICを降りて、山越えして9時に信楽到着。

紫香楽陶料の今岡さんに紹介された、「のぼりがまねんど」で早速作品づくり。「のぼりがまねんど」の今井さんは元ろくろ職人とか、数ものをいかに早く、楽に作るか教えていただきました。物づくりは職人の技術の上に成り立つと思う。

ペンション紫香楽は前回も泊まりましたが、大戸川沿いの「炎の美通り」にある。夕食の時宿のおばあさんから信楽の話を聞き、情報を仕入れる。

翌日は、古谷道生先生を訪ねました。前回は大人数のため断られましたが、私の大好きな作家でどうしてもお会いしたく、今回は今岡さんにアポを取っていただき伺いました。

有名な、電信柱で手作りした茶室でお茶をいただき、酒注とぐい呑みを買う。

にこやかな先生に工房を案内されて、素人の私ですが、緋色大好きということで、緋色について2時間ほど話していただきました。

午後は滋賀県立陶芸の森で「朝日陶芸展」を観ました。前回見たときもショックでしたが、この陶芸展は私の考える陶芸とは全然違うものがあります。

大きな陶器店を見て、特産品の朝宮茶を買いに朝宮へいく。再びペンション紫香楽に宿泊。

3日日は、駅近くの「信楽伝統産業会館」で、天平から近代のすばらしい緋色を見る。

信楽から栗東ICへ行く途中の「MIHO MUSEUM」へ。駐車場に車をおいて、電気自動車で大きな橋を渡り、隣の山の地下に作られた素晴らしい美術館へ行き、信楽伝統の「蹲(うずくまる)」を堪能して帰路に就きました。

古谷道生先生は平成12年7月にご逝去されました。平成11年10月に池袋東武で個展をしていて、図録を贈っていただいたので、出かけて行きました。小柄な先生で、やせてはいましたが、病気とは全然感じさせないお元気でした。私より1歳年上の54歳でした。御冥福をお祈りします。