俺は手がかりを捜しに町へと降りた。
教会などで魔力の変動などを研究したり、神気のあるところを調べたりしていたが、どれもこれも低級な天使どもばかり。ろくな言葉もしゃべれない。俺はいらついていた。
だがそんな時、おもしろい奴とであった。
「やあ、ギアロー、神捜しに精を出しているようだな」
「ほう、おまえはいつぞやの怪しく、フクロウに踏みつぶされた奴。生きていたとはな」
男はターバンで頭を巻き、更に体中に布をまいていて、太っているのかやせているのかわからない。顔も布で目以外はほとんどかくしている。
「神はどうやらすでにおまえに目をつけていたようだぞ」
「ほう・・・どうしてそれがわかるのだ?」
「そいつは企業秘密って奴だ。どうやら神たちはおまえはただ魔法の研究だけでその生涯を終える奴だと見ていたので、とんでもない魔法を作っていたお前を放っておいたようだ。が、予定外にも私がお前をけしかけたせいで神にとって驚異となっているようなのだ」
「・・・俺はそんなつまらん生涯を送らねばならないところだったのか・・・」
「そういうことだ。幸い、私のことは神には知られていないから好き勝手にこっちは行動させてもらっているのだがな」
「俺を利用しているのか?」
俺は凄んで見せた。すると相手は少し困った表情となる。なぜ分かるのかというと、目は口ほどものを言うというからだ。
「・・・そんなつもりはない。ただお前のような奴にただあんなつまらないところでその生涯を終えてほしくなかっただけのことだ。その後の目標としてまず神を倒してもらおうとしたわけだ」
「・・・なぜ神でなくてはならなかったのだ?」
俺は今まで何とも思っていなかったことを聞く。
「いっただろう? ただ偉そうなやつらを黙らせてやろうというだけだって言うこと。ただそれだけだ・・・それよりも神よりの使者がやって来たようだ。私はここでおさらばとさせてもらおう」
そう言うと男は布を翻し、そしてその姿を消した。
(神よりの使者・・・? いったいどんな奴が・・・!?)
ひとつ−−−− おかしなことに気がついた。
それはいつの間にかに消えた人の気配。生活の音は聞こえていたが、それすら遠退いて行く。周りの景色は何も変わらない。
(ほう、なかなか凝ったことをしてくれるではないか。おもしろい)
俺は空を見上げた。そこからは何か白い物体が複数やって来る。羽が生え、形状は人間と変わりないが、目は何かに操られたように生気がなく、そして持っている武器は槍だ。全身白い装甲で覆われ、口は裂けている。
「・・・ずいぶんと醜いものが天使だな。これが戦闘のための兵士って言うところか?」
俺は呪文を唱え始めると、相手はやりを投げてきた。
「『プロテス』」
広範囲のバリアが、槍が俺のところに届く前に焼き尽くす。
すると今度は接近戦をしようと別の天使の部隊がやって来る。姿形はそう変わらないが、腕の装甲がいかつくなっているのが特徴のようだ。
「接近戦は余り得意ではないのでな。コスモソードも完成していないし」
そう言うと俺は手を掲げる。
「切り裂け! 『次元断』!」
そう言うと暗黒の剣が周囲の空間を切り裂く。闇属性のこの攻撃は相当効いたようだ。
だがまだ生きている。
(接近用が8匹、空中で漂っているのが12匹か・・・この後ろに神が控えているから少々力を抑えないとな)
そう考えていると、接近用の天使が槍で突いてきた。それに合わせて他の天使たちも一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「『ブリング』」
自分の分身を作ると一斉に散った。そして唱える。
「『ファイラ』」
どす黒い炎が接近用の天使を襲う。分身すべてに同じ魔力で放たれたのだから天使たちもたまらない。それで分身たちの魔力がつき、そして消えていった。
「さて、残りは12匹・・・!」
空中に漂っている天使たちは持っている槍を一斉に投げつけてきた。バリアをも貫いて俺を傷つける。
「ぐあ!」
そして天使たちは容赦なく、また槍を投げつけてきた。なおかつ雷を発生させ、攻撃してくるものまで現れた。
「ぐっ、ま、まだだ・・・!」
雷と槍の雨に翻弄されながらもこちらは魔法で対抗する。だが相手に魔法が到達する前にかき消されてしまっていた。
「・・・ぬう! 『レビデト』!」
俺は相手と同じ条件で戦うために空を飛ぶ。だがまだ相手の方に分があった。
「ちっ! 『ヒューイ』!」
辺りに大量の黒いかまいたちを発生させ、12匹すべてに攻撃を仕掛ける。だがそれぞれへのダメージはまちまちだ。
だがそれでも3匹にとどめを刺せた。
「よし! 後9匹・・・!」
相手はすさまじいスピードで俺を囲んだ。
「しまった!」
6匹の天使にれは集中攻撃を受ける。こちらはよけることもできず、すべての攻撃を受けてしまった。
「くっそおおおおお! 『ダークホール』!」
自分を中心にした半径5メートルの暗黒空間を作り上げ、未知なる闇へと相手を放り込む。そして再び元の空間に戻った時には心も体もぼろぼろになる魔法だ。この魔法は相当な成果を上げた。
「よし・・・後3匹だ!」
まだ力に余裕がある。これならいけると思った矢先、敵増援がやって来た。数は二つだ。
「何だ? この状況は・・・?」
緑色の髪を真ん中で分け、そして長い後ろ髪を結んだ美男子がやって来る。服装は貧しそうなものだが、その服から発せられている魔力は相当なものだ。
「スフィラリウス様が目をつけているのだ。当然だろう」
ユニコーンの角を持つ、銀髪の美男子が言う。服装は緑色の男と同じだ。むろん、二人・・・いや、二匹かな?・・・は白き翼を持っている。N・Mのなんかとは比べ物にならないようなエネルギーを持つ者たちだ。
「ほう、今回の神はスフィラリウスというのか。で、何の神だ?」
俺がそう言うと、むっとした緑色の髪をした男が言う。
「貴様ら人間がもっとも相手にしてはならない農作の神だ。この方が怒れば地球上のすべての食料が実らなくなるだろう」
「ほう、ずいぶんと強気だな。安心しろ、お前たちに敵対しているのは今のところ五人だけだ。全人類を滅ぼす必要はないぞ?」
「当たり前だ! だからおまえには消えてもらおうというのだ! わが名はギスト!」
緑色の神をした男が言う。
「そしてわが名はスザル。さて、死ぬ覚悟はできているかな?」
銀髪の男が言う。二人とも武器は持っていない。おそらく魔法のみで戦う者たちなのであろう。
(さて、とるべき行動は二つ。全力を出して戦うか、このまましっぽ巻いて逃げるか・・・だがここは異次元、全力で戦った方が早いかもな)
俺は心の中で呪文を唱え、極大魔法の封印を解こうとする。だか、かなりの時間が必要だ。
威力こそ大きいが、封印しておかなければ常に疲労を伴う極大魔法・・・
「何企んでいるかわからないが、それをさせる時間を与える気はさらさらないぞお!」
ギストが手を振りかざすと、槍の雨が降り注いできた。
俺はそれを見ていったん魔法を唱えるのをやめて防御行動に出る。
「『スルクエル』!」
防御魔法を合成させた魔法で槍の雨を防ぐ。 だが、また封印を解除するための魔法を一からかけ直さなくては。
「こざかしい! スザル!」
「わかっているさギスト。二つの槍を同時に防御できるかな?」
スザルも手をかざした。 俺は何をするかと見てみると、普通に槍を落としてきた。
何だ、と思って何もしないでいると、その槍だけバリアを通り抜けて俺に当たった。
「がっ」
幸い、ミスリルプレートで受けたので比較的ダメージは低い。だが困ったことになった。
私の防御魔法は特殊で、一度に複数のバリアを作成することができない。 普通に使えばそんなことはないのだが、特別に昇華したものなのでそうも行かない。
「・・・おもしろい、やってやろう・・・『ブレイクハート』!」
俺は封印を無理やりこじ開け、自我を失い、暴走することにした・・・
「?」
「こいつ、力尽きたか?」
オロカナルモノヨ・・・ワレガメザメルノヲキヅカヌトハ・・・
「!?」
「何い! 後に炎だと!?」
「早く払え! 羽が燃えつきるぞ!」
オソスギルノダヨ、ハンノウガ
「な! 目の前に来て・・・」
「スザル! この! その汚い手を離せ!」
ナンジハワガチカラトナルガヨイ
「ぐぁぁぁ!」
「しおれていく・・・? バカな!・・・やめろ!」
ヤリナドデハワガカラダニキズヲツケルコトハカナワヌ
「槍が通らない・・・! くっそぉ! スクリュードライバー!」
ムダダ、ヤリガクダケルダケ・・・
「だ・・・ダメなのか
「に、逃げろ・・・ギスト! こいつは俺が道ずれにする!」
「何! まさか・・・スザルの指がめりこんでいく・・・ちっ!」
ワレノハダニユビアトヲツケルカ・・・ダガソレガドウシタ?
「内部からではその走行も役立たないだろう・・・受けるがいい! わが神力を!」
ソウルデッド!
ヒカリガ・・・ワレヲハカイスルカ・・・!
「スザル! やりやがった!」
オオオ! ワレハケシテホロビヌゾオォォ!
「なにい! しぶといや・・・嘘だろう・・・? 俺もスザルの様に・・・」
ヤツノシンリョクハイマイッポオヨバナカッタヨウダ ナンジノチカラデシュウフクサセテモラウゾ
「がっ・・・バカな・・・」
ショセン、ザコハザコナノダ・・・
さあ、ここからどうする?