―――――どこまでも落ちていく感覚に身をゆだね、俺はただ落ちていった。
『死ぬのが怖くない? 当たり前でしょ。…母さんは、微笑んで天国へいったのよ。それなのになんで怖いの?』
そうか、そうかもしれないな。死ぬのは怖くない…
ちがう、死んで悲しむ奴がいるなら死をのぞんじゃいけない。置いて行っちゃいけない
『ばっかじゃないの。人に死ねって言っといて、本当に死ぬと思ったら馬鹿見たいに必死になってさ』
そうだ、何で俺は必死になったんだろう。あいつら以外俺は何も必要ないはずなのに
だって、俺はミストを必要としてるから、独りぼっちになりたくないから…
『…そうね。もしかしたらあたしは…』
何だろう、お前は何を言おうとしたんだ? 何を想って俺を助けたんだ?
そうか、わかる。今ならお前の気持ちが。俺にもわかる…
『あたしは、さみしかったんだ』
そう、姉が去り、母が死に、友が逝き…
『大事な人が死んで、頭が混乱して、消えてくように存在がなくなるのに気づかずに』
いつか気がつけば、自分しかいなくなっていて…
『あたしは…』
俺は…
「―――独りぼっちでさみしかったんだ…」
…くん…シード…ん
―――声が聞こえる…
シー…シード…
落ちていくような俺に降ってくるように声が届く。
シード様…シード様…
想いが俺に降り注ぎ、落ちていく速度が緩やかになっていく。
シード…シード…シード様…シードさん…シード
いつしか俺の身体は落ちる事を止めていた…
―――シード君!
そうだった。
俺にはまだ生きなきゃいけない。仲間のためにも…あいつのためにも…
身体が押し上げられるように上昇していく。
「俺は―――まだ、死ねない!」
叫んだ瞬間、光が俺に降り注いだ。
「やっと起きたか! このねぼすけ太郎!」
目が覚めた瞬間、待ち構えてたかのように―――というか、待ち構えてたんだろう、セイが何故かスリッパで俺の顔面をはたいた。
なんか懐かしいものすら覚える、スモレアーの店内である。俺は椅子を連結させた簡易ベッドに寝かされていた。周りにはいつも通りににやにや笑ってスリッパを持っているセイとか、瞳をうるうるさせて泣き出しそうなテレスとか、クレイス、トレンにカリスト…あと見知らぬ女性が俺の傍らに立っていた。
「ふぅ…何とか生き返りましたね…」
見知らぬ女性が、にこやかに微笑んだ。
「シード様ぁぁっ!」
いきなりテレスが抱き着いてきた。
「お、おいおい…」
「シード様。シード様あっ! あのまま死んじゃうかと思いましたぁ!」
「ふん、俺はまあこれぐらいで死ぬようでは俺のライバルたる資格はないと思っていたがな」
いつ誰がお前のライバルに、なった? クレイス。
「いやあ…あのまま死んじゃったら、もう二度とシードさんのスペシャルメニューが食えなくなるかと心配しましたよ」
カリスト…お前の心配はそれだけか?
「しかし、本当にびびったなぁ、いきなりシードさん死んじゃうんだもん」
「ちょっと待てトレン。俺がいつ死んだって?」
ったく、勝手に殺すな。
しかしセイが笑いながら、
「さっきお前一回心臓止まったんだぜ?」
「なにー!?」
「まあ結局息を吹き返しましたけどね」
にっこりと見知らぬ女性…って、
「え…と。あなたは?」
その女性はくすっと笑って、
「セイルーンの第一王女…と言えばわかるかしら?」
えーと…てぇことわ…
「サリス姫?」
「はい」
…言葉に詰まる。
「あーあなたが俺を治癒してくれたんですか?」
思わず腹を見る。服は破れたままだが、傷はすっかり治っていた。
「はい。知ってるとは思いますが、私たちの血筋では代々神術が使えるもので…」
「はぁえと…それはどうもありがとうございました」
「なぁに緊張してるんだよ?」
セイがにやにやしながら茶々を入れてくる。
顔が熱くなるのを感じながら俺は言い返した、
「う、うるさいな。た、ただ王族らしく…きれいかなとか…」
「あら…ホホホ…」
「ほぉほぉ、つまりお前ってこういうのが好みのタイプと…」
「駄目です! シード様はミステリアお姉さまと結ばれるんですから!」
「いつなんでそうなった!」
て…ミスト?
今更ながらに俺は気づいた。ミストがいない。
「なあ…ミストは?」
俺がきくと、みんなは静まり返った。
「…? どうしたんだよ?」
「お姉さまは…」
「ミストは魔族たちのところに行ったよ! 馬鹿な王子と馬鹿なお姫様のためにな!」
クレイスが吐き捨てるように怒鳴る。
「お兄さま! その言い方は…」
「本当の事を言って何が悪い? だいたい捕まるのは勝手だが、どうしてミストが行かなきゃ行けないんだ!」
「おい」
俺は立ち上がると、激昂するクレイスの胸座をつかんで問いただした。
「どう言う事だよ、それは」
俺がカオスに殺されかけたのが、今日の昼。
魔族が何故あんな所にいたのかは不明だが、テレスの話によると、最初エイクがあの二人の魔族を引き連れてミストたちの前に現れたらしい。そして、ルナとテレスが魔族だと見破ると、二人はエイクとルナをあっさりと捕まえて、テレスが悲鳴を上げて駆けつけた冒険者達をカオスが吹き飛ばしたところに俺が来たと言うわけだ。
そして俺が気を失ってから、魔族達は『この二人を取り戻したくばトゥニルの森までこい』
と言い残して去って言ったと言う。
それで、テレスの念話…頭の中で会話する魔法らしい…で学院長達と連絡を取り、スモレアーに集合して、気がつくとミストの姿はなく、机の上に一通の書き置きが残されていただけだった。内容は、
『王子と王女が連れ去れれたのはあたしの責任です。だから、あたしが取り替えしにいきます ミスト』
「で、そのミストをおうようにして、スモレアーさんたちの討伐隊が出陣したというわけです」
「あの馬鹿…」
言いながら俺は立ち上がった。
「どこへいく気?」
サリス姫が厳しい口調には答えずに俺は無言で扉へと向かう。
「待ちなさい!」
姫の声に俺は立ち止まった。
「いっても子供じゃ足手纏いになるだけよ! それに、もう間に合わないわ」
俺は笑いながら、振り返った。
「足手纏い? そんな事関係ないね。俺は俺のやりたい様にやる。ただそれだけだ。それに…」
扉を開ける。カランと鐘が鳴った…
「俺は最強の―――」
『暗殺者だ』と言おうとして俺はやめた。
「―――ちょっと特殊な元彫刻家なんだぜ」
外に出ると、赤い夕日が当たりを照らしていた。
「もう間にあいませんよ! トゥニルの森は街の外ですよ! ついた頃には終わってます」
「そうよ! ここはお父様達を信じて、待っていましょう」
お父様? てことはルーンクレスト王も行ってるのか?
なおもとめようとするテレスと姫に俺は舌を出して答える。
「やだね、ミストはこの俺が助けるんだよ」
「シード様…」
「それに、間に合わないと決まったわけじゃないしな」
「え?」
「俺の瞬間移動をあてにしてるなら無駄だぞ。俺はその森に行った事すらない」
わあってるよ
「こういう時便利だよな。超非常識な奴って」
俺はつぶやくと大きく息を吸い込んだ。
そして叫ぶ。
「へーい! タクシーっ!」
叫んでから五秒後…あの、競走馬が馬車をひいてるような音が聞こえてきて、やがてすさまじい砂埃とともにあの馬車が現れる。
「奥義っ! ミラクルスピンターン!」
ぎぎぃっと、ものすごく無理矢理半回転しながら馬車が突っ込んできた。俺のすぐ目の前で止まる。
「よおにいちゃん。呼んだかい?」
馬車の陰から顔を出して、御者のおっさんがにひるに歯を光らせて言ってくる。
「ああ、トゥニルの森まで頼む」
「おおけぇっ! のりなっ!」
いやーやっぱ便利だわ
「シード様!」
「…止めても、無駄だからな」
「いえ! とめません! あたしも一緒に行きます!」
「へ?」
「あたしも力になりたいんです」
「…わかった。行くぞ」
「ちょおっとまった!」
今度は何だ?
振り返るとクレイスがポーズをつけている。俺はため息をついて馬車にのり―――
「だぁあっ! 無視するなあっ!」
「時間ないんだ、とっとといくぞ」
「お、おう…」
いそいそとクレイスが駆け寄ってくる。
「なあ、お前変わったか?」
クレイスに問われて俺は「かもな」と答えた。
「シード…」
「セイ…お前は…」
「俺は残るさ。そろそろ潮時だしな…他の街にいこうかと思ってる。どうもこの街と俺とは相性が悪い様だしな」
「そうか…なら…また縁があったら…」
死に別れるわけじゃない。生きていれば絶対にどこか出会える。
「短い間だったが…」
だから、また会う日まで…
「さよならだ…」
「ああ」
そして俺達は別れた。
夕日の中、馬車は失踪する。超非常識的な速度で。
「あ、あああしぬぅ、しんじゃううぅ…」
「く、くぞぉおぉぉお…と、どれんだちとい、い、いしに、まって、りゃ…あでっ!」
「はあっはっ! あと十分もありゃあつけるぜい」
おっさんが豪快に笑いながら言う。
十分か…遅いな…
「おっさん。五分じゃ無理か?」
「げっ? 五分だと? そりゃあむりってもんだぜ。兄ちゃん」
「そこを何とか…ほら、限界を超えてデッドラインぎりぎりまで突っ走るのって漢だと思わねえかい?」
おっさんの口調を真似していってみる。
「ぉおおなるほど、そりゃあ一理あるなぁ」
「あぃ〜(注:ない〜)」
「あでがおおこあっ!(注:何が漢だ!)」
後ろからなんか聞こえてきたが俺はきっぱりと無視した。
「よしっ! 俺も漢だ! やぁぁってやるぜっ!」
「おう! いっちまえっ!」
「いくぜぃ! ターボチャージャー・オン リミッター解除 ニトロ爆発 スタンビートモードぉっ! 限界を超えるぜ、あいぼぉ!」
「ひひひひ〜んっ!」
『ぎゃああああ〜』
「いっけぇーっ!」
それから俺達は、三分で森についた。
「つ、ついたぜ…」
森の中に少し入り、馬が完全にばてたように倒れこむ。ぐらっと、馬車が傾き、御者のおっさんが馬車の外にほおりだされる。
「はぁはぁ…やったぜ…俺達は限界を超えたんだ、なぁあいぼう」
「ひん…」
…馬が疲れるのはわかるとしても、何でおっさんが死にそうなほどばててるんだ?
ま、どうでもいいか。それよりも…
「し、しーど…」
よろよろとクレイスが馬車の中からはいでてくる。
「俺はもうここまでかも知れん…」
「ああ…よくがんばったな」
「そうか…そういってくれるか…というより…何でお前は平気なんだ?」
「さあな」
案外ひらきなおったからかもしれない。
「し、しーどさま…」
ずるずると兄と同じようにテレスがはいでてきた。
「テレス…なにか言い残す事はあるか?」
「みすとおねえさまのためにここまでくるなんて―――あ、あいですね…」
愛か。そうかもしれない。
ま、とりあえず!
とそこで俺はふとなにか忘れてる様な気がした。
―――なんだ? たしかあれは俺が生死の境をさ迷ってる間…
ええい! ま、いい。そのうち思い出すだろ!
それよりも今はミストを探す事が先決。
「いくぜ!」
森の中を進むに連れて、あちこちで血のニオイや魔物の死骸、人の姿態が目に付くようになった。
どうやら、カオスは魔界から魔物を大量に召喚したらしい。今現在フィアルディア大陸に魔物はそんなには存在しないはずだからだ。
…にしても、魔物が多いせいか? 森の中をすごい瘴気が漂っている。これではまるで噂に聞く死の森のようだ。あと、何故だかこの森に懐かしさを覚える…まさか俺は実は魔族だったっておちはないよな。
俺も何度か魔物に襲われたが、あっさりと虚空殺で塵にする。
「くそ…魔物が厄介だな…何体いるんだ? あれ?」
人間の集団と魔物の集団が剣を交えている。
見慣れた顔を見つけて俺は駆け寄った。
「シード、何故ここに?」
「マスター。そんな事よりミストは?」
「わからん、というよりもまだ魔族達に遭遇していない」
魔物の一体を切り捨てながらおっさんが答える。
「でも、ま、会わないなら会わないほうがいいけど」
これが俺の正直な気持ちである。
羅刹とか言う方はともかく、カオスって方相手にならないぐらい強すぎる。
たぶん次戦えば確実に殺されるだろう…いくら、大陸最高の魔術師や、最強の元傭兵がいようと、勝てない。
「マスター…もしカオスが出てきたとして…俺とマスターと学院長で倒せるかな」
「カオスか…」
マスターはぎりっ、と歯を噛み締めて答えた。
「多分勝てないだろう…な。だが、引き付けておく事はできる。だからシード、お前はその隙に王女たちを救出するんだ」
なるほどな…目的は王女たちの奪取か…でも俺の目的はミストだ。王女たちなんてどうなっても…てなわけにはいかないよな…
と、俺が考え事していると、
「危ない、シード君!」
声に振り返ると、魔物が俺の目の前で真っ二つに断ち切られるところだった。
魔物の体液や黒い血が俺の顔に飛び散った。
「こんな所になんで君がいるんですか?」
子供を咎めるような口調でカインさんが俺を注意する。
なんだ、この人も来てたのか。
俺は顔をぬぐいながら答える。
「あんたと同じ理由だよ。他になにかあるか?」
「う…でも…」
言いかけた瞬間、俺は懐からナイフを瞬時に抜くと、カインさんに…というより、カインさんの方に向かって投げつけた。
「うわっ!」
慌てて避ける。避けなくても当たらないのに。
「なにを…」
彼が言いかけた瞬間、彼の後ろで魔物の悲鳴が上がった。
「え?」
と、カインさんは振り返った。
早い話が、魔物がカインさんを後ろから狙っていたのだ。
「危ない、カインさん」
俺がおどけて言うと、カインさんは仏頂面で俺を見た。
「ふぅ…何とか片付いたな…」
モンスターを殲滅して、マスターが額の汗をぬぐいながらつぶやいた。
「…ところでマスター。学院長の姿が見えないけど…」
まさかやられたって事はないよな。
「ああ、二手に分かれたんだ。わしらと、学院長とセイルーン王とで。
…ずいぶん戦力に偏りがあるな。
と、負傷者の数を調べていたカインさんが戻ってきた。
「お師匠。生き残ったのは、十名ほどで、そのうち半数が重傷を負い戦闘不能です」
「…その師匠というのは止めてくれないか? わしはお前に何も教えてはいないぞ」
「いえ…私はあなたにいろいろなものを学びました。だから師匠と呼ばせていただきます!」
熱血してるなぁ
「まあいい…しかし元の数の半数か…更にそのうち半分は重傷で戦闘不能と来たか」
マスターはしばらく考えていたが、やがて、
「そうだな…よし、カイン、シード。生き残ったものを率いて街に戻れ」
「な、何でですか?」
「ここからはわし独りでいく。お前たちは街に戻れ」
「いやです。私も戦わせてください!」
「駄目だ。…わしを師匠と思うなら、わしの命令にしたがえ!」
「…っ。はい…」
うなだれて、カインさんは肯いた。
「じゃあシード君、いきましょうか…」
「俺は戻らない」
「だ、駄目ですよ。お師匠の足手纏いになります」
ったく、みんな歳が若いと思っていいたい事言いやがる。
「二十三回…」
俺はポツリとつぶやいた。
「え?」
「魔物を倒してからおっさんたちを殺せた回数だよ」
「は? な、何をいっているんですか?」
「二十三回…殺す機会があった。つまり、あんたらは二十三回俺に殺されてるんだ」
数字は適当に言ってるだけだ。
だが、確かにそれぐらいの数、いやそれ以上殺せる機会はあったはず。何せ俺の虚空殺はかすっただけで致命傷なのだから。
「ふん…俺は最強の――――ちょっと特殊な彫刻家だぜ? その俺を足手まといあつかいか…」
「はい??」
困惑顔のカインさん。なんかこのひとからかうの面白い…
―――は! なんか俺って、セイやミスト化してないか?
「ま、冗談はさておき、俺はいくぜ。あいつを守らなきゃいけないんでね。そして…」
そして…なんだ? …そうだ、言わなければいけない事があるんだ。
「―――言わなければならない事があるんだ」
…言わなければならない事? なんだ? 確かに言わなければならない事がある。あったはずだ。…何故か思い出せない。あれは…夢の中の…
? なんか頭が混乱してるな。俺。
「シード…だが…」
マスターがなにか言いかけた瞬間!
俺は感じ。そしてはじけるよう、導かれるままに駆け出した。
まただ。またあの感じだ!
わけが分からない、あのときと同じ胸騒ぎが込み上げてくる。
不安が込み上げ、何かにたいする恐怖を感じ、それを振り払うように俺は駆ける!
その対象は―――
「ミストぉ!」
俺は叫んだ。
「お、おぉ…何故君がここに?」
学院長が驚いて俺を見る。その顔はかなり消耗していた。
「はぁ…はぁ…ミスト…」
俺の視線の先にミストがいた。
「シード君!」
何故か白いドレスを着て、羅刹に捕まっている。しかし、よくつかまる奴だ。
白いドレス…それを見た瞬間。俺はすべてを理解した。
「おまえ…まさか…」
おもいっきりあきれかえって俺は叫んだ。
「まさか、白いドレスきて『実はそっちのは偽者であたしが本物のセイルーンの王女よ!』とか言ったんじゃないだろうな」
「ふっ…よくわかったわね…」
「わかるわっ! 馬鹿かお前はっ! んなに騙される奴が―――」
「いたわよ、ここに」
「へ?」
俺は呆れ返って、羅刹を見た。
驚愕に震えている。
「そ、そんなばかな…まさかこいつが偽者だったとは!」
「馬鹿だお前もっ!」
と、そう言えば。ルナたちの姿が見えない。じゃあ、ルナたちはどこにいるんだ?
「おい、ルナたちはどうした?」
「はっはっは、あのガキどもは寛大な俺様の慈悲で逃がしてやったぞ」
なんか…こいつっていい奴かもしれない。
ま、そんな事はなくてただの馬鹿って事なんだろうが。
「我が子達は一足先にかえした。後は彼女を救うだけだ」
セイルーン王。あのむくれた顔でパレード行進をしていた人である。が、きっと羅刹を睨み言う。他の兵達はルナたちを送るのに使ったのか、ここにはセイルーン王と学院長と俺と…それから羅刹だけである。
それともう一人。
「やっと追いついたか…」
「遅いぜ、マスター」
「お前が速すぎるんだ。おおっ」
マスターはミストを見て、感嘆の息を漏らす…
「美しい…若い頃のサレナを見るようだ…」
「やぁだ、父さんたら」
もしもし…あんたたち状況わかってます?
「…ところでカオスはどうしたんですか? まさかもう倒したとか?」
俺は学院長にきいた。さっきからきになっていたのだが、カオスの姿が見えない。近くに隠れているとしてもあの圧倒的なプレッシャーを感じない。
「はっ、馬鹿めが! カオス様は魔界にお帰りになられた! この場は俺一人で十分だとまかされてな!」
「…人選ミスだな」
「なにぉう!」
…さて、どうするか…
天空八命星が相手に通用するかが問題だ。通用したなら一撃だが、もし通用しなかったら―――ミストはただじゃすまないだろう。
「きさま! リセス姫の名を語り、何が目的だ?」
へ?
思わず俺は学院長を見た。
「リセス姫って…?」
「なんじゃ知らなかったのか?」
「シード、この魔族達がリセス姫の名を語って脅迫状を送り付けてきたんだ。脅迫状の事は…ルナ姫から聞いていたと思うが…」
…忘れてた。
そういやそんな話もあったな…
セイやクレイスも、犯人は魔族だとか言ってたっけ。
「くくく…さてな…」
「こいつらの目的は。セイルーンの魔女をおびき寄せるのが目的よ!」
「なに?」
「そして、大方魔族に引き入れようとかそういう事を考えているのよ!」
「くっ、なぜしっている!」
驚いた表情で羅刹が怒鳴る。
「うるさいわね…適当に言っただけよ!」
…はい?
「…どういう事だ?」
「だからあ、適当にカンでいっただけ。もしかして全部あたり? あたしってすごーい!」
確かにすごい。神や魔王もびっくりの反則すれすれのカンの持ち主だな。
…沈黙…
「くっくく…知られてしまったならば仕方ない」
沈黙をあっさりやぶったのは羅刹だった。
「そのとおり! 我々の計画では、セイルーンの魔女をおびき寄せ、捕獲し。魔族化して仲間に引き入れようとするものだったのだ」
「なにっ!」
みんなが顔色をかえる中、俺は一人ポツリとつぶやいた。
「…魔族化って…何?」
緊迫の場面が壊れていく。
『なんでそんな事も知らない』というような目で全員が俺を見た。
ああっ! そんな目で俺を見ないでくれ!
「魔族化って言うのは言葉通り、別の種族を無理矢理魔族にしちゃうって奴よ!」
「っていうか、『天魔四王』も知らない奴がなんでそんな事知ってるんだ!? ミスト!」
「昔、魔族が出てくる小説にそういうのがあったの!」
納得!
「ふっ…ともかく、噂のセイルーンの魔女ならば、力の強い魔族になれるとあの方はお考えになられたのだ」
「…なんで急にそんな事を考えたんだよ?」
「はっはっは、もうすぐあのお方は地上を再び支配しようと考えているのだ! その時までに戦力を整えようと…」
「…なにぃ。地上を支配だと?」
「なにっ! 何故お前がその事を知っていやがる!」
やっぱり馬鹿だ…
「知られたからには行かしておくわけにはいかねえな…」
「って、あんたが勝手に話したんでしょ! 馬鹿!」
だからそういうふうに緊迫した場面で煽るなっていってるんだ!
「なにぃ…貴様から殺してやろうか」
「――――待ちなさい!」
声は頭上から降ってきた。
「こ、この声は…」
セイルーン王が体をわなわなと震わせている。
「リセス!」
なに?
「まさか、本物のセイルーンの魔女!?」
この局面で出てくるか!? 味方だったらともかく…もし敵に回ったら…
羅刹も上を見上げて叫ぶ。
「どこだっ! 姿を現わせ! セイルーンの魔女!」
「下だよ」
「なにっ!」
そう、言葉は上からではなく、下から現れた。
目をやると、金髪の―――男が、羅刹のすぐ前にしゃがんでいた。
「くっ」
羅刹が片手でかまえるが―――
「おせえ!」
そいつは手とうでミストを捕まえている手を払い、ミストをを後ろに押しやる。
「このっ…」
「天破ぁ落地ぃ…逆天アッパー!」
奴は跳びながら拳を上に突き出し、羅刹の顎にアッパーを決める。あっさりと羅刹は吹っ飛んだ。
「おまえ…」
俺の声に、そいつは気取りながら振り返った。
「真打は最後に登場ってね!」
奴―――セイはいつも通りににやりと笑っていた。
「き、きさまらぁ…」
怒りの形相で羅刹はセイを睨み付けた。
「もう許さん…殺す!」
「ふん…独りで何ができる。貴様ごときにこのセイルーン王、やられはせん」
確かに…こいつ一人なら、俺一人でも大丈夫なような…
「だめっ! やらせちゃ駄目ぇっ!」
ミストが叫ぶ…が、
何をやらせるなだって?
「もう…おそい…」
不意に、羅刹の周りから黒いものが広がってくる。ものすごく濃い瘴気だ。
「魔界の暗殺者と呼ばれる、羅刹一族の力…見せてやる…」
こいつ、暗殺者だったのか?
「お前の同業者か」
マスターがこっそりといってくる。
失礼な。こんな奴と一緒にしてほしくないものだ。
瘴気があたりに広がり、日が落ちたように闇に染まった。いや、もうすぐ実際に闇に落ちるんだけどな。
「これは…魔界化!?」
学院長が叫ぶ。
『魔界化って何?』なんて事はきかない。どうせ、一時的に魔界になる事だとかそういう事だろ。
「ふははは! そのとおり、一時的にこの空間を魔界と同じにするのだ!」
ほら。
しかし、それでなんか意味があるのか?
「そして、我ら魔族はパワーアップ! 光に属す貴様らはパワーダウンというわけだ!」
ご説明ありがとよ。
「くぅ…これでは神術が使えない」
「わしの魔法は…むしろ強くなるかも知れんが…ごほっ! このままでは身体が持たん」
…そういえば身体が重く感じるような…
「う…うう…」
ミストも苦しそうにうめいている。
「セイ! ミストだけでも瞬間移動で逃がしてくれ!」
「そうはいくかぁ!」
俺が叫ぶと、羅刹がミストに手を伸ばした。
そう、文字どおり手が伸びたのだ。
あっさりとミストは捕まり、羅刹の腕の中に抱き寄せられる。
「くっ…ミストをどうする気だ?」
「手ぶらで帰ったとあっては、俺が怒られるのでな。せめてこいつだけでも、魔族化してやる!」
「なんで、ミストなんだよ…」
「知らねえのか? 女のほうが魔力が高い。そして魔力が高いもの程よい魔族になれるんだよ!」
「…だったら、この学院長を連れてけよ!」
「おい…」
「ふん、じじいに興味はないね」
「結局てめえの趣味かぁっ!」
「はっはっは! さて、貴様らはこいつらに殺されるがいい!」
ぶんっ!
と、羅刹が腕を降ると、闇の中から数体の魔物が染み出るように出現した。
「魔物!?」
「ふははは! ではサラバだ!」
そういって、羅刹は闇に消える!
「まてっ!」
「シード! 追いかけるよりもまず、こいつらを倒すほうが先決だ!」
「くっ…」
でも、この数は…
かなりきつい。それにからだが思うように動かないのだ。
「俺に…まかせてくれ」
今までずっと黙っていたセイが俺達を制した。
「何をするつもりだ?」
「見てろよ」
と、気がつく。いつのまにか片手に巨大な杖を持っていた。
セイが弟の事を言われた時に持っていた杖だ。
「ちょぉっとこの数は…完全に開放しないと無理かな」
少しおどけて、目を閉じる。
「我は開放する…シオンの杖よ…」
シオン…セイの弟の名前らしい。
杖が淡い赤い光を放つ…
「『門』よ!」
その一言で…すさまじいエネルギーが開放されたのが分かった。
モンスター達の後ろ…木々に隠れて見えないはずなのに、はっきりと見えた。
巨大な門が…
「な…」
「汝らの…還るべきところに還れ!」
セイが叫ぶと、門が開き、魔物たちが門の中に吸い込まれていく。
「す…ごい…」
「こ、これは…失われし『門』の魔法…何故これを君が?」
学院長が震える声でセイに尋ねる。
「く…はぁ…さすがにきつかったな…」
「セイ!」
セイは消耗していた。こんなセイは初めて見る。
「シード!」
セイは杖をついて何とか俺のところまでくる。
「お前をこれから、跳ばす…ミストの事を感じられるな?」
「ああ…わかる…感じられる」
俺は肯いた。なんとなく、ミストの事が感じられる…
「もしかしたら、もう魔界についたのかもしれない。それでも…いくか?」
「ああ!」
「ここには俺達がいる。だが、向こうではお前一人だぜ?」
「一人…」
―――独りぼっちでさみしかったんだ…
蘇る。夢の中の記憶。
そうだ…俺があいつに言いたい事は―――
「大丈夫さ、俺は一人じゃない」にやりと笑ってセイを見る「だろ?」
「ああ」
にやりとセイも笑った。
「シード君」
セイルーン王が俺を見る。
「神の祝福があらん事を…」
「シード君…いや、もう何も言うまい…」
学院長がかぶりを振った。
「シード。ミストを頼む。どうやらあいつに必要なのはわしではなくお前のようだ…」
なんかそれって、お嫁にくださいって言って、口論した挙げ句に娘に嫌われた父親の台詞みたいだな。
「いくぜ、シード…」
セイがよろよろと杖を振り上げた。
「『門』よ!」
「な、なんだ…今のは…」
セイの作った門を見たのだろう、羅刹が驚愕の表情で立ちすくんでいた。
「離しなさいよ!」
ミストがばたばたと暴れている。もう元気になったのか、順応性のある奴だ。
まだ魔界ではない。森の中だ。魔界みたいな状況だが、魔界ではない。
ま、とにかく不意をつくなら今しかないな。
俺は意識を空間に広がらせようとして…
…!
愕然とする。
意識が…空間が支配できない!
…くそ、この瘴気のせいか。
仕方ない。『神眼』抜きでやるしかない!
『無音』と虚空殺だけで何とかなるだろ。
元々『神眼』と言うのは、音を消す『無音』と存在を消す『虚無』を発動させている時に、目標しか見えなくなるために発動させる…って、んなこと言ってる場合じゃないか。
…とにかく、一撃で決める!
ナイフを取り出し集中する。
音が消え…駆ける。
存在が消え…跳ぶ…
「!? なにっ!」
気づいたか…だがっ!
ナイフを一閃させる―――手応えは…あった。
「くっ! きさま!」
振り返る。ミストを捕まえているほうの羅刹の腕に一筋の赤い線が走っている。
「塵となり…消えろ…」
俺が言った瞬間、羅刹の腕が塵へと変わる。
腕だけ…か。だが、十分通用する!
「ミスト!」
「あっ」
俺はミストを強引に引き寄せた。
「シード君、痛い」
「うるせ! 勝手な事しやがって」
文句を言いながらも俺はほっとした。
「何とかなったか…」
「ぐぅぅう! 俺の腕がぁっ!」
羅刹は憎しみの顔で俺を見た。
「貴様ぁ…殺す!」
「さっきも聞いたぜ、その台詞!」
「人間がっ!」
羅刹が爪を伸ばし、俺に襲い掛かってくる。
「猫かてめえはっ!」
俺もナイフで迎え撃つ。が、
?
羅刹は横に跳びすさると、俺の脇を摺り抜けてミストへと襲いかかる。
しまった!
「くそ!」
間に合わない!
必死で俺はミストをかばおうと跳ぶが…
「シード君、違うっ!」
ミストの声に俺はふと気がついた。
そうか、こいつの狙いは―――
にやりと笑う羅刹の顔。
―――俺か!
俺は羅刹の攻撃を回避しようとするが…
「ぐわあっ!」
目の前に熱湯をかけられたような感じ。
痛みはあるような気がするが、麻痺しているのか、それすらもぼんやりしている。
…目を…やられたか…
「シード君!」
ミストが俺に駆け寄ってくる。
「どうして! どうして、あたしなんかのために…」
「うるせえっ! 俺はお前に一言いいに来たんだ!」
そうだ…また忘れるところだった…
「え…?」
「お前には俺達がいる…お前は一人じゃないんだ…」
「……」
「お前がさみしがる必要なんてないんだよ。そして…」
―――俺もな。
「シード君…」
「わかったら泣くな。お前は俺が守ってやる」
あれ? なんでこいつが泣いてるってわかったんだ? 別に嗚咽を漏らしてるわけでも泣く、涙が俺にかかったわけでもないのに…?
そうだ、俺はこいつが涙を流している事をわかっている。
こいつの事が…わかる…?
「ははは…別れはすんだか…?」
「いつ誰が別れるって…?」
俺はゆっくりと立ち上がった。
「駄目、シード君…」
「お前はさがってな…いったろ、俺が守るって」
「でも、そんなんじゃ…」
「何とかなるさ」
「……」
ミストは無言で…前に出た。
「おい、ミスト?」
と、不意にこいつの次の行動が分かった。
俺が口を塞ぐよりも速く。
「おい単細胞の馬鹿。あんた悔しくないの? 人間一人殺すのに卑怯な手を使ってさ、魔族の名が泣くわね、それじゃ。まったく…むがっ」
慌ててミストの口を塞ぐ。だが既に遅し…
「きさま…貴様も殺してやるぞ! 女ぁ!」
「くそ…なに言いやがる! おまえは!」
俺が怒鳴ると、ミストは微笑んだ。というか微笑んだのがわかった。
「死ぬ時は一緒だよ。シード君」
…はぁ?
「冗談じゃない。俺はお前と心中する気は更々ない」
俺は強引にミストを引っ張り、後ろに投げ飛ばす。
「痛ぁ!」
「選択肢は一つだけだ! ここで悪い奴をぶったおして、二人で生きていくっ!」
羅刹が長い爪を振りかざして襲いかかってくる!
「死ねぇえっ!」
「死んでたまるかっ!」
俺は羅刹の一撃を受け止めた。
って、え?
何で、俺は羅刹が襲いかかってくる事がわかったんだ?
と言うか、見えてる。
羅刹の爪を俺が受け止めて…って、え?
俺は思わず首だけ振りかえった。
俺と俺の目が合う。いや…
これって、ミストの視界なのか…?
!…もしかして…セイにもらったペンダントの力か?
『そ、マジックアイテムさ。効果はそれをつけているお互いの居場所が分かるって所かな』
セイの言葉を思い出す。
もしかして、居場所が分かるって…心がつながるって事か?
ミストが自分の胸元を見る、赤い石はぼんやりかがやいていた。
俺のほうはというと、ズボンのポケットに入れっぱなしになっているからわからないが、多分光っているのだろう。
気がついた瞬間、洪水のようにミストの心が伝わってくる。
寒い、怖い、さみしい…独り…
誰が独りだ。誰がさみしいって? 怖いなら俺が守ってやる。寒いなら俺が暖めてやる!
シード君…
俺だけじゃない! テレスだってクレイスだってセイだって…みんないるんだぜ!
うん…もう寒くないよ。怖くない…さみしくない…あたしは独りじゃないから…
「そうだよ…お前には俺がいる! …そして、俺にもお前がいる!」
「くうっ!」
羅刹は後ろに跳び退る。
「塵になれ!」
俺の声とともに、羅刹の爪が塵へと変わる。
「これで終わりだーっ!」
俺は羅刹に向かって駆け出した。
「うぉぉおおっ!」
俺と羅刹が交差して、羅刹のもう一方の腕が塵へと変わる。
だが、羅刹は止まらずに駆ける。その先は…
「ひゃあーっはっは! しねえっ!」
しまった!
「ミスト!」
―――シード君
叫んでからミストの声が俺の心に届いた。
その一言で俺はミストの考えを理解した。
俺は羅刹に向かってナイフを投げ、意識を集中させる。
「けーっへへへ! あたんねーよ!」
羅刹はくる事がわかってたかのように、ナイフをかわす。
そしてそのナイフはミストへと…
「天空八命星…」
俺はナイフを受け取り、あたしはつぶやいた。
俺の意識がナイフに込められ、あたしの意識が存在を消す。
「なんだ…?」
羅刹が違和感を感じるのを見て、俺は駆け、あたしは不敵に笑う。
俺達は駆けた。
あたし達の音はすでになく、存在もない。
ただあるのは…
「「虚空殺!」」
あたしが羅刹の胴をなぎ払い、俺の意識が羅刹を崩壊させる。そして―――
「シード君!」
「ミスト!」
俺は…ミストを抱きしめ…あたしは…シード君に抱きしめられた―――
…ふう
俺は気の根元に腰掛けてため息をついた。隣にはミストが座っている。
「つかれたねぇ…」
本当にな
羅刹を滅ぼした後、森は元の姿に戻った。もっとも、真っ暗ということは変わらないが。
「……」
「なに考えてるの? シード君?」
すでに俺達は心を共有していない。ペンダントも光を放ってはいなかった。
「ん…なんかここ、見た事あるようなきがしてさ…なんか懐かしいんだよな…」
俺が言うと、ミストはくすっと笑った。
「覚えてない? ここ…あたし達がはじめて会った森だよ」
「へ? そうだったけ?」
「そうだよ。シード君を見つけたのもここら辺だった様な気がする…」
どうりで、見覚えのあるはずだわな…
「シード君…」
「なんだよ?」
「あたしは独りじゃないよね」
なにを今更。
「誰か必ずそばにいるさ。お前も…俺もな…」
「あたしは…シード君に…ずっとそばにいてほしい…」
「え?」
俺は少し戸惑いながら、ミストを見る。
白いドレスは汚れて、敗れてる箇所もある。借り物だろうが、いいんだろうか。
「シード君…」
つぶやき、ミストが俺を見上げる。
そして、目をとじる…
え〜と…
俺は少し虚空に視線をさまよわせた。
これはやっぱりあれって事だろうな…
俺は目を閉じると、ミストにかぶさるように…
「シード! ミスト! ぶじか!」
マスターの声に、俺達は目を開いた。
「え〜と…どうやらお迎えが来たようだな…」
「そ、そうね…」
戸惑いながら俺達は立ち上がる。
「さ、さてと…」
「シード君」
「え…?」
と振り返った瞬間、目の前にミストの顔があった。
唇に暖かいものが触れる。
「好きだよ」
それだけ言うと、ミストはさっさと離れて、声のするほうへと駆け出して行った。
俺はそれを呆然と見送っていたが、やがて唇を抑えると、なんとなく笑みを浮かべる。
「とんでもない不意打ちだな。ミスト。お前も立派な暗殺者になれるぞ」
俺はつぶやくと、ゆっくりと声のする方へと歩き出した…
第二章 了
登場人物たちの自爆な座談会ッ!
セイ:どんどんぱふぱふ〜♪ つーいーにー俺が登場!
シード:あー、やかましい。
セイ:うるせーラブコメ男。
シード;んなっ、だだだだ誰が誰がッ!
クレイス:をや? テレス、何を書いてるんだ?
テレス:いえ、今回の騒動を書いてるんです。そして、アイレリア劇場に投稿して―――
シード:―――虚空殺ッ!
テレス:ああっ! 原稿が塵にッ! シード様、酷いです・・・
シード:うるさーい! そんなもん書くんじゃない! 恥ずかしいだろが!
ルナ=イクタ=エル=セイルーン(以下ルナ):初めまして。ルナ=イクタ=エル=セイルーンです。こっちが・・・
エイク=アルタ=イル=セイルーン(以下エイク):てっ、いててて、耳を引っ張るな!
ルナ:エイク=アルタ=イル=セイルーンと申しまして、私の弟です。
サリス=レーン=エル=セイルーン(以下サリス):あらあら、ケンカはダメよ。二人とも。
ルナ:これはケンカじゃなくて、お姉さまの愛の指導よ!
エイク:み、みみっ! 耳が引きちぎられッ!
サリス:あら、痛そう。
エイク:そこっ! 馬鹿姉! ノホホンと弟の! セイルーン国の財産たる俺の危機を見守るんじゃない!
サリス:あらあら、馬鹿姉だって、酷いわね。お姉ちゃん、ショック。
ルナ:(全然、ショックを受けてる様に見えないんだけれど・・・)
ダイス=セシル=イル=セイルーン(以下光矢):ちなみに「イル」と「エル」は性別と身分を表す。
サリス:あら、ダイス。久しぶりねー、旅からずっと帰らなくてお姉ちゃん、心配だったわよ。
光矢:(心配していたように見えないのは何故だろう?)そして、二番目にある「イクタ」や「アルタ」は・・・
きむな
エイク:”公名”といって王族のみにつけられる、公式な呼称―――もう一つの名前なのだ! つまり、俺は偉い!
ルナ:でも、公名って代々使われてきた名前なのよね。やっぱり、私は父さんと母さんにつけられた名前がいいわ。
光矢:そうだな。だから私達は公名はあまり使ってないのだけどな。
リセス=クイン=エル=セイルーン(以下ツァル):・・・しかし、光矢はペンネーム使ってるが。
光矢:はうっ! いもーとよっ、お前にそういうこと言われるとお兄ちゃんはツライッ!
ツァル:・・・・(イヤそーな顔をしている)
シード:どーでもいいが、まだ出て来ないやつが出てくるなよ・・・
ミスト:さぁて、次回の”パニック!”は?
セイ:第二章+αでは俺が主役ッ! やりぃ!
ミスト:でも、不幸よねー
セイ:うっ。
シード:・・・なんか、使い魔が書く小説の主人公って、ことごとく不幸になってないか?
ろう:うっ・・・
ミスト:まるで牙○忍の小説みたい・・・(笑)
セイ:ちくしょー、めげないぞ! あと、外伝「虚空の暗殺者」でもなんか主役っぽいし!
シード:でも、メインは俺。なんか、クレイスのおかげで入院して記憶失った挙句にまた入院・・・
テレス:ほんっとーに不幸になってますね。
ろう:あうあう〜・・・
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第二章+α「セイ=ケイリアック」 AND 第三章「シード=アルロード」