―日記からこぼれた里山暮らし余話―
里山らいふ

 惜桜小屋の森ササ原のノウサギの宴は、久々の森のトピックスとなったが、ノウサギについては今冬、これまでとちょっと様子が違うんじゃないかな、という兆候みたいなものはいくつかあった。
 とにかく足跡が目についた。
 冬季の運動不足解消のために買ったスノーシュウ
で、雪原を苦もなく歩きまわれたせいもあるけれど、森の中でも、ふもとの丘陵地でも
 「おっ、絶滅の危機を心配してきたのに、意外にがんばってるな」
と感じる場面が多かった気がする。

  ふもとの山畑を過ぎて、すぐ下を中央高速道路が走る農道の脇で、ノウサギの足跡を見た日もある。山際から300メートルは離れている。雪の山畑に餌を求めてさまよい、ついつい遠出をしてしまったようである。 
 これまでにないくらい、たくさんの足跡が見られたのは、ノウサギの数が増えていることの証(あかし)なのか。単にタイミングがよく見るチャンスが多かっただけなのか。そこのところは分からない。
 敵が近づくのをいち早く察知できる大きな耳と、"脱兎"のごとく逃げ去る自慢の足で、ただ逃げて逃げて逃げまくるだけの弱い立場にあるとはいえ、一匹のメスが春先と夏の二回、それぞれ二匹前後のこどもを産む繁殖力を考えれば、天敵や環境など条件によっては、増えてもおかしくはない。
 ただ、諏訪湖西山の森では、毎日のように森を巡回する狩人キツネが健在のようだし、里山の荒れようをみれば、昔のように爆発的に繁殖して食害をもたらすようなことはないだろう。
 「キツネやテンなど敵さんの攻撃はどんなだろう」「嫁さん探しには苦労していないか」「仲間が増えたっていうのはほんとうか」
 ここはぜひ直接会って、最近の暮らし向きについてあれこれ聞いてみたい?

どんなに雪が積もっても、山でも畑でも、野原でもどんどん歩けるスノーシュウによって、行動範囲はぐんとひろまった。運動不足の解消にはもってこいの新兵器。

車のわだちのすぐ脇を里に向かっているノウサギの足跡。この20メートルほど下を中央道が通っている。林から300メートルほども離れたこんな場所で見たのは初めてのこと。

山畑の雪原に残されたノウサギの足跡。手前に進んでいる。スノーシュウでたどったけれど最後は雑木林に消えていった。

雪原につけられたユーモラスなノウサギの足跡。ことしの冬は、これまでになくたくさん見られた。

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