私の家には、猫の親子がいます。もう十四、五年も前になりますか、娘の小学校の同級生が「この子猫ちょっと預かって。」と、学校帰りに持ってきました。娘には話してあるというのです。毛深いペルシャ系の雑種でした。
私がかわいいなと思って気を取られているうちに子供達は風のように帰っていってしまいました。娘が帰ってきて「家で飼おうよ。」というものですから、ついに「ミイ」と名前を付けて飼うことになってしまいました。
どこかで相当いじめられて拾われた猫だったようで、何時もおどおどと家族にもなかなか懐かず、お客さんが来るとたちまち逃げて自分で戸棚の戸を開けて中にひっそりと隠れてしまうのです。
それでも子供を産みあちこちに貰われていきました。
貰い手がなく残った一匹が「くろ」です。
この「くろ」が「モウ」を産んで、親子三代で私たちの心を癒してくれていたのですが、「ミイ」は三年前の三月腎臓病で他界してしまいました。お医者さんに「もう治療を施しても苦しみを長引かせるだけだから。」と言われたときは悲しくて涙が止まりませんでした。
普段はほとんど鳴くこともなかった猫でしたが最期までかわいい声で鳴き続けて死んでいきました。
私たちは胸を引き裂かれるおもいで「ありがとな。ホントにありがとな。」とこれまでのことを思い出しながら、さすってやるしかなかったのです。
それ以来、二匹の仲の悪い親子がそこはかとなく暖かいものを、私たちの心の中へ運んでくれています。
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