いらっしゃいませ
Ver.14

2004/05/28

この前の喫茶室 次の喫茶室
クロの絵手紙 只今クロちゃん貸し切り中

 諏訪の平が御柱祭に燃えて、里引きも終わったのに夫は、まだその興奮さめやらぬようにテレビにかじりついて、繰り返し流されるあの場面に酔っていました。
 私もそんな熱気に元気を取り戻していた五月十五日の朝十時少し前でした。
夫が「クロが車にひかれた!すぐ行って!!」と近くの家でお掃除をしている私を呼びに来ました。急いで帰ってみると、庭先にクロがうずくまっています。「クロちゃんどうしちゃったの?」と声をかけると「ニャーン」とひと声だけ・・・。
ぐったりしてしまった「クロ」を車に乗せ急いで近くの犬猫病院へ・・・。先生が首を横に振り、静かに「もうダメ!」・・・突然のクロとの別れ・・・流れ落ちる涙も拭かず、家まで抱いて帰りました。
 夫は「道向こうの奥さんが見ていて知らせてくれて判った。」と言います。道から庭先の何時も出入りするガラス戸の前まで必死に走ってきて力つきたのでしょう。
 「ミー」の子どもの「クロ」は、ペルシャ猫の血統を受け継ぎ毛並みは柔らかくフワフワしていて、足

は靴下をはいているように白く、目が大きくて優しい猫でした。草取りなどしていると、必ずどこかからやってきて、まとわりついてきます。若い頃は立って食事の支度をしている私の背中へかき上がって肩の上で甘えていました。そのときは、背中に爪を立てられるので「いたい!」と何度飛び上がったことか・・・。
 近くに住む姉の家でお茶していると、「早く帰ろう」と外の洗濯機の上にやってきて鳴き続け「帰ろうね。」と、おいとますると家まで先に立って帰っていきます。
洗濯するときはホースから、家の中では蛇口から水を飲みます。
 いろいろ思い出すとつきません。悲しみは ジワーン と深く・・・。
「癒してくれた十三年間ありがとう。」と呟いただけで涙はポタポタと落ちて止まらず・・・。
 ついに親子三代居た我が家の「小さな家族」も「モー」だけになってしまいました。
親の死を知っているのか・・・。じっと外を見つめ、たたずんでいます。
寂しそうな背中に「モー」と声をかけてやるんです・・・。
 

あやめの絵手紙 ありがとうをあなたに
この前の喫茶室 次の喫茶室
おしながきへ戻る

ご感想をお寄せください。 ふきこ宛メール