直径 (
π
)
高さ (
H
)
重さ (
W
)
容量 (
CC
)
碗
79π
60mm
127g
110cc
皿
127π
24mm
120g
---
村越風月
窯変象嵌珈琲碗皿
常滑焼 特注品
使用上の実利を問うのか、美意識の内部に入り込む情緒を問うのか?芸術の概念的属性は後者であるので飾られ愛でて鑑賞されればいいはずです。しかし、風月氏はその両方をこの器に練りこんでいます。
風月氏が理想とする表現創出、想いの出口は象嵌と三度焼き入れによって古典的な常滑の作風を打ち破り、新たな領域の確保、氏独自の表現となりました。象嵌、多回焼き入れ、カップ内側、底の刷毛目による釉薬被りも常滑史上初。
数ある常滑焼の中で皿、碗に象嵌を施す作風は今の所、風月氏のみです。白い部分は凹ませて白土を埋め込んであります。特筆すべきは残った元地肌の線。髪の毛程の太さの部分もあります。彫刻刀、コロ(棒の先に車輪が付いた道具)でもなく、謎の技法です。
茶人が選ぶ急須は「常滑」であって、茶器はあれど朱泥のコーヒーカップは数が少なく、2020年春ならば作ってもらおうと依頼したのが村越風月さんでした。
b器(陶器と磁器の中間)は通常釉薬を被らず、その地肌を鑑玩するものである為に長年使用すると、部分的に鏡面になったり、磨耗による風合が趣を出してきます。三度焼き入れにより朱泥は表層が炭化して黒く変化し、カップ天渕、皿の渕は磨きによって内層の朱を見せています。
萩や唐津の時代変化、使い込んだ黒漆が磨きによって内部の朱漆が現れる漆器の如く、この常滑はどうぞ使い込んで頂き、その変化をお楽しみ下さいとの作者の魂が込められています。
2021年春、届いた箱を開けました。
そこには見た事も無い「風月」の常滑が。
目頭が熱くなって頬を伝うものが止まりません。
優しい情と暖かい氏の性格がそのままこの器に乗り移って結晶化されておりました。