直径 (π) 高さ (H) 重さ (W) 容量 (CC)
 碗 75π 68mm 241g 160cc
 皿 127π 43mm 289g 130cc


金城次郎 魚紋コーヒ碗
人間国宝 壺屋焼

器全体の柔らかな湾曲、高くこしらえた皿。包まれて隠れたカップ。小鉢状のソーサーにした事によって「裏」が消えてしまった皿はカップを抱くような形状で何とも趣深いです。



「裏」を無くしたソーサーは、幾重もの情緒の海流が押し寄せて来て高台辺りで飛沫になって高台裏で納まります。そこだけ縦に入れた白釉薬が弾けていますね。この面があくまでも「表」なのです。茶色だった色彩が逆光下では群青に見え、下から上へと視線をやると、まるで宇宙への旅立ちのようです。



絵付けのはみ出しは古典的有田の手法で、柿右衛門の絵の先に見受けられます。笑ったような魚紋の黒い線引きは彫刻刀で削り、後に黒線入れをしてあります。コントラストの高い分だけ絵付けをはみ出させ、躍動感に演出をもたらしていますね。



ソーサー見込みは外とガラッと変わり、カップと同系色の落ち着いたクリーム色で珊瑚の粉が釉薬に混じっています。高さは43mmです。まるでお碗ですよね。高橋春斎氏は13mm侘助椿が33mmでした。


沖縄の赤土は風化土では無く。長江(揚子江)から運ばれ東シナ海大陸棚に堆積した風成塵変質土が隆起したものです。光の角度、弱光下では金色にも見えてくる不思議な「赤土」です。

この金城氏の作品は、強いルクスでは茶色、通常は緑がかった茶色(TOP写真)逆光で群青の色彩変化は、まるで気象と共に移ろいゆく琉球の海そのものであります。

この不思議な現象は壺屋焼の殆どが(島袋常秀氏を除く)生がけ(素焼きせずに釉薬をかける)である事。赤土の上に白陶土(珊瑚の粉入り)の化粧掛け工程が加わる事。微妙な下地の赤土と化粧掛け白陶土の反応。焼き入れ工程での還元焼成が進む事。等の壺屋にしかできないデリケートな工程です。

紅芋、サトウキビを育む赤土の上を吹く偏西風。芭蕉の森を抜け現れた珊瑚礁。三線を弾く島娘。一匹の魚が「さあ乗って」と次々に連想を生み、異次元へと旅立たせてくれているようです。

壺屋とは、那覇の北20k程に尚貞王が陶工を集めて作った町で、金城氏の窯は現在は残波岬の下方、読谷村に場所を移動しております。「やむちん」とは(やきもの)の意味です。

箱書きは「コーヒ碗」と書いてありました。