直径 (π) 高さ (H) 重さ (W) 容量 (CC)
 碗 90π 60mm 79g 150cc
 皿 145π 20mm 137g ---


初代深川製磁 水辺もよう
昭和初期

初代が1900年パリ万博出展後に欧州から圧縮空気を利用したエアログラフ(吹き掛け)を導入。現在も当時の器具を利用して多くの作品に活用されています。つけ濃(だみ)技法で濃淡表現された蓮。カップ裏を見てみましょう、メダカは金彩にて描かれています。水も薄く濃くグラデーションになっています。



筆跡を敢えて残す「石垣濃」と違い、エアログラフによる吹付けが前面と裏面とでは面積が違いますね。ここまでのグラデーション表現は圧巻です。蓮の花の下2枚だけグリーンの演出も素敵です。



初代深川製磁の時代のコーヒーカップは今では製作不可、入手も困難かと思われます。日本人が粉の苦い珈琲を一般的に飲みだした頃ですね。年号も昭和・平成・令和と変わり時代遍歴に懐かしさと、過ぎ去ってしまった時の儚さを感じますね。

初代の妻、深川勢似子の「みのりのかほり」(日々の書綴り)の中に「心の垢を洗へ」とあります。ハッとしてドキリとしてしまいます。明治期に既に珈琲を飲んでいた深川家。日本で真っ先に喫茶に親しんでいた貴婦人の、賢くも慎ましい薫陶は示唆に富む思いです。

「薫陶」とは、香を練り込み陶器を作る事。そして香りだす品格によって他に良い影響を与える事ですね。

心のつかえも日々の悩みも、洗ってスッキリ。しゅっーとエアログラフの音。久しい以前の時の移ろい。豆の匂い、背伸びして立派なカップで飲んだであろう苦い珈琲に子供らの顔。清々しく爽やかなこの器を眺めていると、レトロな作品のみが持つ歴史とロマンを、春の日差しが肌に沁み入るように感じます。