パターンあやとりの世界


第4章:四本指パターンの様々な処理

2.四本指の終了処理:親指と小指を取り合う処理 [終了処理]

 四本指パターンの終了処理、まずは一番使い勝手の良い「親指と小指の内側の糸を取り合う処理」から始めたいと思います。三本指パターンのときには3章2節で詳しく調べましたが、四本指パターンも考え方は同じです。

 最初に、三本指パターンの「焼け焦げた葉のククイ」と同様な操作を「ナウルの構え1」から行ってみます。

Fig.4-21a Fig.3-23c:焼け焦げた葉のククイ
  1. ナウルの構え1
  2. 全ての指の輪を向こうへ1回転ひねる
  3. 親指を人差し指の輪に上から入れ、続いて中指の輪に上から入れ、小指の手前の糸を取る
  4. 小指を中指の輪にしたから入れ、続いて人差し指の輪に下から入れ、親指の向こうの糸を取る
  5. 人差し指・中指の輪を外す
  1. 人差し指の構え
  2. 全ての指の輪を向こうへ1回転ひねる
  3. 親指を人差し指の輪に上から入れ、小指の手前の糸を取る
  4. 小指を人差し指の輪に下から入れ、親指の向こうの糸を取る
  5. 人差し指の輪を外す

 続いて「ナウルの終了処理」までやってみました。対応する三本指パターンでは「小さいアムワンギヨ」と呼ばれるあやとり作品になります。

Fig.4-21b Fig.3-26c:小さいアムワンギヨ
  1. ナウルの構え1
  2. 全ての指の輪を向こうへ1回転ひねる
  3. 親指を人差し指の輪に上から入れ、続いて中指の輪に上から入れ、小指の手前の糸を取る
  4. 小指を中指の輪にしたから入れ、続いて人差し指の輪に下から入れ、親指の向こうの糸を取る
  5. 人差し指・中指の輪を外す
  6. ナウルの終了処理
  1. 人差し指の構え
  2. 全ての指の輪を向こうへ1回転ひねる
  3. 親指を人差し指の輪に上から入れ、小指の手前の糸を取る
  4. 小指を人差し指の輪に下から入れ、親指の向こうの糸を取る
  5. 人差し指の輪を外す
  6. ナウルの終了処理

 前節で「ナウルの構え1」の装飾処理をご紹介しましたが、その1つである、人差し指・中指の輪を互いの輪のなかから取り出して掛け直す処理に続いて親指・小指を取り合う終了処理を行ってみました。

Fig.4-12a Fig.4-21c

 元の図形が中央に配置されます。




 親指・小指の内側の糸を取り合うときに、内側の指(人差し指・中指)の輪を通します。それによって内側の指の輪を外しても図形が崩れないのです。ナウルの構え1のような四本指パターンの場合、内側の輪は2つ(人差し指の輪と中指の輪が)あることになります。それぞれの輪はほぼ水平面上にあると見なして、その輪に上から入るのか、下から入るのか2通りの場合が考えられます。輪は2つあるので可能性のある組み合わせは4通りです。

 内側の輪がひねられている場合、手前の糸と向こうの糸のうちどちらが上にあるかがひねった方向に応じて決まります。例えば下の Fig.4-22a をご覧ください。人差し指は手前にひねった状態、薬指は向こうへひねった状態です。

Fig.4-22a

 この場合、人差し指は手前の糸が上、薬指は向こうの糸が(どちらかというと)上になっています。なので、それぞれ上になっている糸(人差し指の手前の糸と薬指の向こうの糸)を逆の手でつまんで持ち上げて、黒い矢印のような通路(トンネル)を作って、そのトンネルを通して親指と小指で糸を取り合うのがやりやすいです。

 この図の場合、言葉で丁寧に説明するならば

  1. 親指を、人差し指の輪に下から入れ、続いて薬指の輪に上から入れて小指の手前の糸を取る
  2. 小指を、薬指の輪に下から入れ、続いて人差し指の輪に上から入れて親指の向こうの糸を取る

 となります。親指と小指が同じ通路を通っています。特に断らない限り、この図のように「自然な上下に合わせて内側の輪をくぐらせる」ことにします。

 余談ですが、「ハワイの夜」「ハワイの星」というあやとり作品では親指と小指は同じ通路ではなく、内側の指の輪の糸の上下を逆にして取ります。あたかも機織りで行きと帰りで縦糸の上下を切り替えているような操作です。そうすることで外した内側の指の輪が2本の糸に挟まれます。

 内側の指の輪をどちら向きに通るかは、完成形の射影図に影響しない場合もありますが、大きな違いになる場合もあります。一例として、前節でご紹介した「ナウルの構え1」から人差し指と中指の輪を交換する処理の後で親指小指を取り合う処理を行う場合をご紹介します。

Fig.4-22b Fig.4-22c
  1. ナウルの構え1
  2. 人差し指と中指の輪を入れ替える
    1. 人差し指の輪を薬指に移す
    2. 中指の輪を人差し指に移す
    3. 薬指の輪を中指に移す
  3. 人差し指の輪を中指の輪の中からつまみ出して外し、人差し指に掛け直す
  4. 外側の指を外側に1回転ひねる
  5. 親指を人差し指の輪にから、中指の輪にから入れ、小指の手前の糸を取る
  6. 小指を中指の輪にから、人差し指の輪にから入れ、親指の向こうの糸を取る
  7. 人差し指・中指の輪を外す
  1. ナウルの構え1
  2. 人差し指と中指の輪を入れ替える
    1. 人差し指の輪を薬指に移す
    2. 中指の輪を人差し指に移す
    3. 薬指の輪を中指に移す
  3. 人差し指の輪を中指の輪の中からつまみ出して外し、人差し指に掛け直す
  4. 外側の指を外側に1回転ひねる
  5. 親指を人差し指の輪にから、中指の輪にから入れ、小指の手前の糸を取る
  6. 小指を中指の輪にから、人差し指の輪にから入れ、親指の向こうの糸を取る
  7. 人差し指・中指の輪を外す

 左の Fig.4-22b のほうは自然な糸の上下のになるように内側の輪をくぐっています。右の Fig.4-22c のほうは内側の輪の自然な上下に合わせて内側の輪をくぐらせています。こんな風にパターンが大きく変化する場合もあります。




 もう1つ、四本指パターンならではの「親指・小指を取り合う終了処理」として、「タイガーショベルノーズキャットフィッシュ」の終了処理があります。このあやとり作品では、内側の指の輪を通さずに親指・小指を取り合う処理をします。

Fig.4-23a:タイガーショベルノーズキャットフィッシュ
  1. ナウルの構え1
  2. 親指で小指の手前の糸を取る
  3. 小指で親指の向こうの糸を取る
  4. タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理
    1. 人差し指の先端を、掌を横切る2本の糸を越えて自分自身の輪の中に上から入れる
       パターンを水平に保つと、人差し指の指先は下向きになっている
    2. 同様に中指の先端を、掌を横切る2本の糸を越えて自分自身の輪の中に上から入れる
    3. 親指・小指の二重の輪を外し、人差し指・中指を下から手前へ回転する。人差し指・中指の背の糸は外れる。
    4. 人差し指を上向き、中指を手前向きにして図形を展開する

 従来の「小さいアムワンギヨ」系の終了処理では親指・小指を残して内側の指の輪を外しましたが、この「タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理」では逆に内側の指を残して親指・小指を外します。なので、親指・小指を取り合うとき、内側の指の輪を通す必要がないのです。

 念のため、「タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理」で人差し指・中指の先端を入れる場所を図示しておきます(Fig.4-23b)。

Fig.4-23b

 「ナウルの構え1」から親指・小指を取り合うと、掌には2本の糸が横切っているはずです(図の赤い糸)。人差し指は(自分の輪である)青い糸の輪、中指は同じく緑の輪の★印のところに指の先端を上から入れます。親指・小指を外して、手首を回転させて図形の下の面が自分側に来るように、パターンが垂直になるように、指が自分のほうを向くようにします。

 前の節でご紹介した簡単な装飾処理を施したものに対してこの「ノーズキャットフィッシュの終了処理」を取ってみました。

Fig.4-23c Fig.4-23d
  1. ナウルの構え1
  2. 人差し指と中指の輪を入れ替える
    1. 人差し指の輪を薬指に移す
    2. 中指の輪を人差し指に移す
    3. 薬指の輪を中指に移す
  3. 人差し指の輪を中指の輪の中からつまみ出して外し、人差し指に掛け直す
  4. タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理
  1. ナウルの構え1
  2. 人差し指の輪を中指の中からつまみ出して外し、人差し指に掛け直す
  3. 中指の輪を人差し指の中からつまみ出して外し、中指に掛け直す
  4. タイガーショベルノーズキャットフィッシュの終了処理

 シンプルな操作ですが、装飾処理によって完成形のパターンが変化する様子が面白いです。「パターンあやとり」らしさがあります。




 何か途中の手順を変えてみたときに、最終形がどのように変化するかを確かめたい時など、この「親指・小指を取り合う終了処理」はとても役に立ちます。本サイトではこれを「親指・小指を取り合う処理」と呼んだり、「焼け焦げた葉のククイの(終了)処理」と呼んだりします。「ナウルの終了処理」まで行う場合は「小さいアムワンギヨの(終了)処理」と呼びます。

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2021.05.15
長谷川 浩(あそびをせんとや)


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