第3章:三本指パターンあやとりにおける様々な装飾処理・終了処理
4.イヌイットの網 [終了処理]
「イヌイットの網」という伝承あやとり作品があります。いくつか知られている、ダイヤ型4つが上下2段になっている構造のあやとり作品の1つです。
さてこの2つの完成形は何が違うでしょうか。8つのダイヤ型の連結部分のうち、糸が単純に交差している箇所と折り返している箇所があります。
Fig.3-41c:交差と折り返し 上記の2つのあやとりは、最初に取る糸を変えることで、2か所の「折り返し」が「交差」に変わっています。「折り返し」になっているところにマル印をつけてみました。
Fig.3-41d:折り返しの箇所 パターンあやとりとしては対称性が高いほうが嬉しいので(個人的な意見です)、このサイトでは「イヌイットの網の終了処理」と言ったら、「ナウルの太陽」と同様な操作を行うFig.3-41bのほうの操作を指すことにします。
「イヌイットの網の終了処理」も、いろいろとバリエーションを試してみましょう。まずは「人差し指の構え」の後で、全ての指の輪を1回転ひねってみましょう。
Fig.3-42a:人差し指の構えから全ての指の輪を1回転ひねってイヌイットの網
- 人差し指の構え
- 全ての指の輪を1回転向こうへひねる
- 「イヌイットの網」の終了処理
ご覧のように上下のダイヤ型が6個ずつに増えました。また、中央付近にあった2つの「折り返し」がなくなって、すべて「交差」になっています。
続いて「ナウルの太陽」から「イヌイットの網」をやってみました。「正ナウルの太陽」と「逆ナウルの太陽」の両方を試してみました。
Fig.3-42b:「正ナウルの太陽」から「イヌイットの網」 Fig.3-42c:「逆ナウルの太陽」から「イヌイットの網」
- 正ナウルの太陽
- 「イヌイットの網」の終了処理
- 逆ナウルの太陽
- 「イヌイットの網」の終了処理
「正ナウルの太陽」からだと、1つ前のFig.3-42a の「全ての指をひねったバージョン」とよく似たかたちになります。ただし2か所の「折り返し」があります。一方、「逆ナウルの太陽」から「イヌイットの網」を取ると、3つの太陽が横に並んだようなパターンになります。(「ガイアナの星」から始めても同様な射影図になります。)
さらに、ナウルの太陽を2回やってみました。正・正、正・逆、逆・正、逆・逆の4通りが考えられます。
Fig.3-43a Fig.3-43b ・正ナウルの太陽
・正ナウルの太陽
・イヌイットの網・正ナウルの太陽
・逆ナウルの太陽
・イヌイットの網
Fig.3-43c Fig.3-43d ・逆ナウルの太陽
・正ナウルの太陽
・イヌイットの網・逆ナウルの太陽
・逆ナウルの太陽
・イヌイットの網仕上げが甘いのと、両手の間に張ったまま写真を撮ったので出来が悪いです。ぜひ試してみて下さい。
次に、小さな輪の処理を追加してみます。最初に(4つではなく)2つの輪を追加してみました。
ナウルの伝承あやとり作品の「アメアング」の中央のパターンがこれと同じです。(「アメアング」は終了処理は「エオンガツバボ」です。)
小さな輪を4つにしてみます。(参照:「四隅の小さな輪の処理」)
Fig.3-44b:「四隅に小さな輪」→「イヌイットの網」
- 人差し指の構え
- 「四隅に小さな輪」の処理
- 「イヌイットの網」
さらに類似のパターンとして「ビヤトエイディオウィナゴの処理」も試してみました。
Fig.3-44c:「ビヤトエイディオウィナゴの処理」→「イヌイットの網」
- 「ビヤトエイディオウィナゴの処理」の処理
- 「イヌイットの網」
これも美しいと思います。
バリエーション検討の最後に、ダブルハートの処理と組み合わせてみました。また、類似の エガラウィナゴと比べてみました。
Fig.3-45a:「ダブルハート」→「イヌイットの網」 Fig.3-45b:「エガラウィナゴ」→「イヌイットの網」
- ダブルハートの処理
- イヌイットの網
- エガラウィナゴ
- イヌイットの網
この2つを比べるとエガラウィナゴで始めるほうがきれいかな、と思いました。
「イヌイットの網」の処理も終了処理として身に付けておくと良いと思います。様々な継続処理を組み合わせて、もっと複雑なパターンもぜひ試してみてください。
2021.05.09
長谷川 浩(あそびをせんとや)
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