パターンあやとりの世界


第3章:三本指パターンあやとりにおける様々な装飾処理・終了処理

4.イヌイットの網 [終了処理]

 「イヌイットの網」という伝承あやとり作品があります。いくつか知られている、ダイヤ型4つが上下2段になっている構造のあやとり作品の1つです。

Fig.3-41a : 「イヌイットの網」 Fig.3-41b : 「イヌイットの網(改)」
  1. 人差し指の構え
  2. イヌイットの網の終了処理
     (「人差し指の輪の中から小指の手前の糸」バージョン)
    1. 親指を人差し指の輪に上から入れ、小指の手前の糸を取る
    2. 中指で親指の向こうの糸を取る
    3. 親指を外す
    4. 親指を人差し指の輪に上から入れ、小指の向こうの糸を取る
      (ここまでは最初に取る糸以外は「ナウルの太陽」と同じ手順)
    5. 中指の輪を小指に移す
       裏返さないで移す
    6. 人差し指を外す
    7. 小指の2つの輪を、上下の関係を保ったまま人差し指に移す
    8. 小指を親指の輪に下から入れ、親指手前の糸を掌に握りこんで親指を外す  小指に薬指を添えてもよい
    9. 親指を小指が握っている輪に手前から入れ、全ての糸の向こうを通って人差し指上向こうの糸を親指の腹で引き下げ、親指の背で小指の向こうの糸を取る。親指の腹で引き下げた糸は自然に外れる
    10. 小指を放す
    11. 人差し指をナバホ取り
  1. 人差し指の構え
  2. イヌイットの網の終了処理
     (このサイトではこちらを「イヌイットの網」の終了処理と呼びます)
    1. 親指で人差し指の向こうの糸を取る
    2. 中指で親指の向こうの糸を取る
    3. 親指を外す
    4. 親指を人差し指の輪に上から入れ、小指の向こうの糸を取る
      (ここまでは「ナウルの太陽」と完全に同じ手順)
    5. 中指の輪を小指に移す
       裏返さないで移す
    6. 人差し指を外す
    7. 小指の2つの輪を、上下の関係を保ったまま人差し指に移す
    8. 小指を親指の輪に下から入れ、親指手前の糸を掌に握りこんで親指を外す  小指に薬指を添えてもよい
    9. 親指を小指が握っている輪に手前から入れ、全ての糸の向こうを通って人差し指上向こうの糸を親指の腹で引き下げ、親指の背で小指の向こうの糸を取る。親指の腹で引き下げた糸は自然に外れる
    10. 小指を放す
    11. 人差し指をナバホ取り

 さてこの2つの完成形は何が違うでしょうか。8つのダイヤ型の連結部分のうち、糸が単純に交差している箇所と折り返している箇所があります。

Fig.3-41c:交差と折り返し

 上記の2つのあやとりは、最初に取る糸を変えることで、2か所の「折り返し」が「交差」に変わっています。「折り返し」になっているところにマル印をつけてみました。

Fig.3-41d:折り返しの箇所

パターンあやとりとしては対称性が高いほうが嬉しいので(個人的な意見です)、このサイトでは「イヌイットの網の終了処理」と言ったら、「ナウルの太陽」と同様な操作を行うFig.3-41bのほうの操作を指すことにします。




 「イヌイットの網の終了処理」も、いろいろとバリエーションを試してみましょう。まずは「人差し指の構え」の後で、全ての指の輪を1回転ひねってみましょう。

Fig.3-42a:人差し指の構えから全ての指の輪を1回転ひねってイヌイットの網
  1. 人差し指の構え
  2. 全ての指の輪を1回転向こうへひねる
  3. 「イヌイットの網」の終了処理

 ご覧のように上下のダイヤ型が6個ずつに増えました。また、中央付近にあった2つの「折り返し」がなくなって、すべて「交差」になっています。

 続いて「ナウルの太陽」から「イヌイットの網」をやってみました。「正ナウルの太陽」と「逆ナウルの太陽」の両方を試してみました。

Fig.3-42b:「ナウルの太陽」から「イヌイットの網」 Fig.3-42c:「ナウルの太陽」から「イヌイットの網」
  1. ナウルの太陽
  2. 「イヌイットの網」の終了処理
  1. ナウルの太陽
  2. 「イヌイットの網」の終了処理

「正ナウルの太陽」からだと、1つ前のFig.3-42a の「全ての指をひねったバージョン」とよく似たかたちになります。ただし2か所の「折り返し」があります。一方、「逆ナウルの太陽」から「イヌイットの網」を取ると、3つの太陽が横に並んだようなパターンになります。(「ガイアナの星」から始めても同様な射影図になります。)




 さらに、ナウルの太陽を2回やってみました。正・正、正・逆、逆・正、逆・逆の4通りが考えられます。

Fig.3-43a Fig.3-43b
 ・ナウルの太陽
 ・ナウルの太陽
 ・イヌイットの網
 ・ナウルの太陽
 ・ナウルの太陽
 ・イヌイットの網

Fig.3-43c Fig.3-43d
 ・ナウルの太陽
 ・ナウルの太陽
 ・イヌイットの網
 ・ナウルの太陽
 ・ナウルの太陽
 ・イヌイットの網

 仕上げが甘いのと、両手の間に張ったまま写真を撮ったので出来が悪いです。ぜひ試してみて下さい。




 次に、小さな輪の処理を追加してみます。最初に(4つではなく)2つの輪を追加してみました。

Fig.3-44a:上下に小さな輪2つの処理からイヌイットの網
  1. 人差し指の構え
  2. 上下に2つの小さな輪の処理
    1. 小指を人差し指の輪の中に上から入れて人差指向こうの糸を小指の背にかけて、左小指を下から向こう、上へと回して人差し指向こうの糸を絡めとる
    2. 小指を逆ナバホ取りする
    3. 親指を人差し指の輪の中に上から入れて人差指手前の糸を親指の背にかけて、右親指を下から手前、上へと回して人差し指手前の糸を絡めとる
    4. 親指を逆ナバホ取りする
    5. できた小さな2つの輪を中央に寄せておく
  3. 「イヌイットの網」

 ナウルの伝承あやとり作品の「アメアング」の中央のパターンがこれと同じです。(「アメアング」は終了処理は「エオンガツバボ」です。)

 小さな輪を4つにしてみます。(参照:「四隅の小さな輪の処理」)

Fig.3-44b:「四隅に小さな輪」→「イヌイットの網」
  1. 人差し指の構え
  2. 「四隅に小さな輪」の処理
  3. 「イヌイットの網」

 さらに類似のパターンとして「ビヤトエイディオウィナゴの処理」も試してみました。

Fig.3-44c:「ビヤトエイディオウィナゴの処理」→「イヌイットの網」
  1. 「ビヤトエイディオウィナゴの処理」の処理
  2. 「イヌイットの網」

 これも美しいと思います。




 バリエーション検討の最後に、ダブルハートの処理と組み合わせてみました。また、類似の エガラウィナゴと比べてみました。

Fig.3-45a:「ダブルハート」→「イヌイットの網」 Fig.3-45b:「エガラウィナゴ」→「イヌイットの網」
  1. ダブルハートの処理
  2. イヌイットの網
  1. エガラウィナゴ
  2. イヌイットの網

 この2つを比べるとエガラウィナゴで始めるほうがきれいかな、と思いました。




 「イヌイットの網」の処理も終了処理として身に付けておくと良いと思います。様々な継続処理を組み合わせて、もっと複雑なパターンもぜひ試してみてください。

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2021.05.09
長谷川 浩(あそびをせんとや)


(c)2021 長谷川 浩
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