第2章:三本指パターンあやとりにおける様々な開始処理・継続処理
7.開始処理としての「エオンガツバボ」
ナウルのあやとりで多用される手法に「エオンガツバボ」と呼ばれる終了処理があります。「ナウルの太陽」を何回か行った後で「エオンガツバボ」で終了する、というのが典型的な使われ方のようです。でもこの手法、開始処理としても使えるのです。
7-1. トランス-エオンガツバボ[開始処理]
まず、エオンガツバボの取り方を説明します。
人差し指の構えから始めると、中央に小さな二重のX字型のパターンができます。このX字型の間の縦の糸を中指で取ると、Fig.2-71 のように中央にX字型をパターンを持つ三本指パターンになるのです。これを「トランス-エオンガツバボ」と呼ぶことにしました。(トランス型、シス型という有機化学で用いられる用語を借用しました。)
Fig.2-71:トランス-エオンガツバボ 最後に中指で取った直後は中央のX字型のパターンが大きいです。三本指パターンの開始処理として利用するためには、中央のX字型のパターンを小さくする必要があります。ちょっと大変かもしれませんが小さくバランスよく中央に配置できるように調整してみて下さい。
この「トランス-エオンガツバボ」に、典型的ないくつかの終了処理を施してみました。終了処理については次の第3章でご説明する予定です。
Fig.2-72a:小さいアムワンギヨの終了処理 Fig.2-72b:ダンスの舞台の終了処理
Fig.2-72c:イヌイットの網の終了処理 Fig.2-72d:大きいテントの扉の終了処理 いかがでしょうか。中央にX字型のパターンが残っているのがわかると思います。
実はこのX字型、単に「輪っか」がひっかかっているだけなので、交差している状態から平行な状態に変えるのは簡単なのです。輪の位置を調整して平行な形状に変えてみました。これを「シス-エオンガツバボ」の(三本指パターンの)開始処理と呼ぶことにします。
Fig.2-71:トランス-エオンガツバボ Fig.2-73:シス-エオンガツバボ これも、2つほど終了処理をしたものを取ってみました。トランス型とシス型を並べてみています。まずは終了処理「ダンスの舞台」です。
Fig.2-72b:トランス型 Fig.2-74a:シス型 続いて終了処理「イヌイットの網」です。
Fig.2-72c:トランス型 Fig.2-74b:シス型 シス型の平行なパターンもいいなと思いました。
実は今回、「シス-エオンガツバボ」で一番面白いと思ったパターンがこれなのです。
Fig.2-75a:シス-エオンガツバボ これは、最近研究している「二本指パターンの終了処理」を施してみたものなのですが、額縁のようなかたちになっているのがわかるかと思います。これ、(三次元の)立方体の骨格(の二次元への射影図)そのものなのです。
立方体は正方形の面が6つ、頂点が8つ、稜が12本です。全ての頂点の次数は3で、どの頂点からも3本の稜が出ています。あやとり紐の1本の「輪っか」ですから、あやとりで作れるパターンは必ず一筆書きをしてもとの場所に戻ってこられるようになっていなければなりません。これは、全ての頂点の次数が偶数であるということです。
上の Fig.2-75a のあやとりは、下の図の右のように稜の4か所が二重になっています。
Fig.2-75b:立方体骨格を一筆書きできるようにする このおかげで全ての頂点の次数が4になって、一筆書きが成立しているのです。
以上で一通り、3本指の開始処理・継続処理をご紹介しました。いろいろな継続処理を組み合わせてみるとどんな結果になるか、ぜひやってみてください。試しているうちに自然と同じ手順を何度も取ることになるので、気が付くと手順が身に付いているのです。次章ではこれらのパターンを美しく仕上げるための終了処理を何種類かご紹介します。
2021.05.23
長谷川 浩(あそびをせんとや)
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