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只今手術中
手術が始まって開腹されると、すぐに二人は取りだされた。二人の出生時刻は1分違いなのだが、実際はほとんど同時なのではと思うほど、すばやく出された。一人は大きな声で泣いた。しかし、一人が泣かない。『吸引、吸引』『もっとしっかり』緊迫した声が響いた。だめなのか・・・と思った。助かって欲しいと願った。せっかくここまで一緒だったんだから・・・、小さなか細い泣き声が聞こえた。手術室中が安堵感であふれた。
体重が告げられた。エコー検査の時の推定体重とピッタリだった。また空気が和んだ。
二人とも女の子である事、第1子は小児科へ、第2子は産婦人科へ入院になると教えられたが、先ほど二人を取り出す時にお腹を強く押されて気分が悪く、返事をすることが精一杯だった。
後はお腹を縫うだけだが、これがとても長く感じた。麻酔が効いているので、痛くは無かったがお腹の皮をつまんだり引っ張ったりしている感覚はわかったので、思わず『痛い』といってしまった。
『ハイ終了です。よく頑張りました』ストレッチャーに乗せかえてもらう瞬間から、記憶が無くなった。
つま先が見えた
麻酔から覚めると、転院前にお世話になっていたドクターが来ていた。私のことを心配して、わざわざお見舞いに来て下さったとのこと。そこで私が手術中と聞いて、目が覚めるまで待っていてくれたのだった。子供も私も無事であったことをとても喜んでくれた。この後その病院でお世話になった看護婦さん達も、1日おきくらいに先生の用事で近くまできたといって、お見舞いに来てくれた。
暫くは麻酔がきちんと覚めるまでうつらうつらしていた。1回目を覚ました時に、自分のつま先が見えたことがとても新鮮だった。まだ鼻から酸素チューブを入れていたが、久しぶりに平らになったお腹が嬉しかった。
翌日も1日寝ていた。その次の日からベッドで起き上がる事や歩行訓練を少しづつはじめた。中毒症はまだ治らず、結局点滴がずっと続いた。ただもう妊娠中ではないので、強めの利尿剤を使用したため、トイレが近くなり、毎回『友達』と称して点滴をトイレに一緒に連れて行った。手術後の抗生剤、貧血のための増血剤、利尿剤、その他・・・暇さえあれば点滴だった。