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第百五十九回自然と歴史探訪[漆芸家巣山定一氏を訪ねて] |
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市川笑野さんの鏡台。 |
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工房・巣山:漆工町・木曽平沢 |
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マリオさんのエントランスホールに岡谷出身の歌舞伎役者・市川笑野さんのポスターと漆塗の立派な鏡台が展示されていました。 今回の旅は、この鏡台から始まります。 この鏡台は、大正時代に作られた江戸指物で、鏡台・脇台・小抽斗がセットとなった独立型三面鏡台だそうです。 初代市川猿翁の夫人・巾子さんが所有しておられたものだそうですが、 二代目猿翁さんり別荘にねむっており、いたんでいたのを弟子の笑野が譲り受けたものだそうです。 その修復を木曽の漆芸家・巣山氏に依頼、修復に7ケ月、漆を固める為にそれから1年寝かせて今年5月に納品されたものを、 マリオさんであずかっておられたものだそうです。 素晴らしい作品を観賞するだけでなく、今回はその作られる過程の勉強を、 直接巣山氏の工房を訪れ、巣山氏から直にお話を伺おうと企画されたものだそうです。 まずは、作品を観賞し、会長さんからいきさつを説明いただいて、巣山氏の工房のある漆工の町平沢へと向かいます。 天気も上々、見事な紅葉の上に北アルプスの薄ら雪化粧した山並みが、今日は白馬のあたりまで続くのが見えています。 山装う季節、木曽路は素晴らしい紅葉です。 贄川にあるトチの大木はすつかり葉を落としていました。 平沢では、巣山氏が駆け足でやってきて、バスを駐車場へと案内して下さいました。 又、家の前では奥様が我々を出迎えて下さいました。 平沢も古い建物が多く残っており、重要伝統的建造物群保存地区になっているそうです。 間口は狭いが奥にずっと続いているという作りで、工房は土間を通った奥にありました。 最初に、訪問のきっかけになつた鏡台の話をしていただき、続いて漆器作りの説明をして頂きました。 器に入った白い液体は、生漆だそうで、下地の木地固めには使うが、 塗で使うのは精製して水分を飛ばした漆だそうです。 生漆を染み込ませると、木が水分を吸って伸び縮みするのを防ぐ事は出来るそうですが、強度は無いそうです。 器等の角を補強するのに麻布を糊漆で貼る布着せという作業をやるそうです。 そこで、巣山さんはいきなり器を台にゴツン、薄い器の角はビクトモしませんでした。 次に行うのは錆付け、木曽塗では地元でとれる錆土を入れるそうです。 これで強度が一段と増すそうです。 輪島塗では、錆として魚貝成分からなる珪藻土を使い、会津塗では砥の粉を使うそうで、 強度はいまいち、各塗で大きく違うのは、この下地作りの部分だそうです。
漆は、松本・中山霊園のあたりや地元でもとれるそうですが、1本の木からとれるのは200gほどで、
大半は中国製の漆にたよっているそうです。 中国製も品質は悪くないそうで、同じ緯度のものなら問題ないそうです。 プロでも漆に被れる事があるそうで、最初の漆掻きの時と、精製の時は要注意だとか、 被れると火傷の様になるそうで、治療法が無いのでほっておくそうです。 塗に使う漆は精製したもので、なやし(撹拌して成分を均一にする。)とくろめ(加熱撹拌で水分を飛ばす。)の作業があるそうです。 くろめの作業により白かった漆も基本のべっ甲色になり、 さらに水分をなくし97%ぐらいの水分をなくすそうです。 これに顔料を混ぜて色を付けるのだそうです。
出ない色は白で、白の塗物を見たらそれは化学塗料だと思った方が良いそうです。
精製のやり方も今は機械でやるものもあるそうですが、機械でやったものは時間がたつと粘って来て、 薄めるのにテレピン油を使う事もあるそうです。 又機械の場合は、時間がたつとつやが引けてしまうそうです。 写真の大きな器は今年の手精製の漆、小さい方は10年たつたものだそうですが、 手で精製したものは、粘りが出ず新しいものと混ぜる事で、使えるそうです。 そして時間がたつとツヤも出てくるのが特徴だとか。 塗の作業は、下塗り・中塗り・上塗りと途中に研ぎを入れながら繰り返していくと、ツヤと強度がでてくるそうです。 道具も市販のものは無く、全て手作りになるので、職人として一人前になるには16年ほどかかるとか。
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